「空理空論様御誕生日プレゼントSS」
タイトル「シャオの短冊」
コメント「御誕生日が7月7日だけにやはり七夕ネタでGO!」(安易だな)


 それは彼女の一つ疑問からじまった。
「太助さまぁ。短冊ってなんですか?」
 いまは7月上旬、もうすぐ七夕だ。
「え? 短冊? 短冊っていうのはね。七夕のときに笹に飾りつける細長い紙のことだよ。 七夕のときにはそこに願い事を書いてもいいんだ」
「え? 願い事を?」
「そうだよ。由来は憶えてないけど・・・・(苦笑) ・・・シャオ、君だったら何をお願いしたい?」
 太助はやさしく問いかけた。勿論彼はシャオの口から自分の事が出てきたらいいなぁ、 などと密かに思っている。いや、むしろ期待している。この情景的には、 なんだかわざと言わせてるみたいで、少しいやらしい感じもしないでもないが、そこはそれ。 たまには彼にだって欲まみれの喜び(オイ)を掴ませてあげてもよいのではないのだろうか?
「わたしの・・・お願い事?・・・・・」
 はにかんで少し戸惑ったように右手を軽く口元にそえ、言葉を止めて一瞬考え込む。 その姿はどことなく焦らしているようにも見えなくも無いが。 彼女にはそんな風にわざと他人を焦らせるような心根は無いので天然なのだろう。 そんな彼女のいじらしい姿がいやがおうでも太助に期待をさせるかたちになるのだが。
「わたしのお願い事は・・・・」
 太助は期待に満ちた瞳で彼女の一挙一動をやさしく見守っている。
「た・・・・」
「あーん! たーさまー!!」

 どがぁ!! 
 ↑ 
 抱きついた音(?)この音量と音の鈍さからいくと恐らくかなりヘビーなタックルなのでは?  つーか、太助君大丈夫か?
「ぐわぁ!? いきなりなにすんだ!? ルーアン!!(かなり怒)」
「だって、あたしの短冊はたー様の幸せを願うことでいっぱいなんですもの!  流石慶幸日天! ルーアンったらなんてたー様想いなのかしら? ねぇ、たー様ぁ?  そんな健気なルーアンを少しは誉めてよ、ね?」
 慶幸日天たる彼女が神頼み(ちょっと違う)とは 根本から矛盾があるような気がしないでもないだが・・・・いささか、いや、 かなり鬱陶しそうにする太助。
「はいはい、わかったよ。偉い偉い。ルーアンありがとな」←(心がちっともこもってない)
 そしてなんとも投げヤリで冷たいなこの返答。 普段の太助ならここまでいい加減な言い方はしないだろう、 しかし今回ばかりは、一番良い所で見計らったかのようなタイミングで邪魔に入ったのだ。 太助のこの振舞いを誰が責められようものか?
「ぶー。たー様いけずぅ。なんだか投げヤリな言葉で、ルーアン悲しいわ」
 よよよよ、とあからさまな嘘泣きが入り、わずかに上目遣いで太助を見返すルーアン。 ちょっとまて! 悲しいのは俺もなんだぞ!?  ここ一番ってところで邪魔しやがって!・・・・なんだかこれじゃあ、 一方的に俺が悪いみたいじゃないか!? などとのかなりトホホな太助の心の叫びは 決して口からは出ないが、お互いがお互いを非難するような微妙なにらみ合いになってしまった。 ちょっと無理(?)すれば見つめあってるようにも見えなくもない。


「試練だな・・・・」
 一部始終を遠目に眺めていたキリュウが綺麗に締めくくった。


 そんなやりとりのなかを、ポツリと話から置いていかれてしまったシャオ、 彼女が短冊に書きたかった願い事は、勿論太助の幸せを願う事。 しかし、ルーアンに先に言われてしまい、ちょっぴり(?)残念そうに短く小さな溜息を吐く。 傍で見てると意気消沈しているようにも見えるが。そして、ルーアンと太助のやりとりを見て、 こんな気持ちが芽生えた。

シャオのモノローグ
 ルーアンさんはいいなぁ、太助様とあんなに楽しそうにお話が出来て・・・羨ましいなぁ。 私もあんな風に太助様とお話が出来たらなぁ・・・・

 などと、どこで何を間違ったのか(オイ)ルーアンに憧れてしまったシャオ。 この後シャオはどうするのか? 
 シャオは暫く考えた後、ルーアンを師匠と仰ぎ彼女に 弟子入りする決意をした。←シャオ本当にそれでいいの?(心配)



 それはひとつの驚きからはじまった。
「なんですって!? あんたそれ本気なの?」
「はい」
 答えるシャオは至って真面目だ。
「・・・そう(ちょっと遠い目)とうとうこのあたしの素晴らしいさに気付いたって訳ね。 うふふ・・・良い心がけだわ。シャオリン」
「・・・ところで・・・一体どういった風の吹き回しで、 このあたしに突然『弟子入りしたい』なんて言い出したのかしら?  聞かせてくれるわよね? シャオリン」
「はい。私、いつも思うんです。ルーアンさんや花織さんは凄いなぁって、 言いたいことを言いたい時に言えて、さっきだって太助様と私の間に割って入って来て 太助様と楽しそうに(?)お喋りして・・・とっても羨ましく思うんです。 その強引さ・・・じゃ無くってルーアンさんのその力強さを是非、私に教えて欲しいんです!」
 シャオには悪気はない。それはルーアンにもよく解っている、 しかし、彼女の額には一本の青筋が浮かび上がり、こう言わずには居られなかった。
「・・・・シャオリンあんた・・・誉めてるの? けなしてるの?」
「そんなことは・・・何かお気に障ることでも?」
 これだからポケポケさんは・・・ルーアンは心の中で毒づいた。
「・・・まぁ。いいわ。あたしの教えは厳しいわよ!」
「はい! 頑張ります!」



レッスンその1、「見た目から入ってみよう!」

「シャオリン。よく御聞きなさい」
 ルーアンは真顔で言った。
「はい」
 返事をするシャオも真剣そのものだ。
「まずは格好から入ってみましょうか」
 そう言ってルーアンはシャオに耳打ちをする。
「はい。わかりました。来来、女御!」




「なかなか、いいんじゃない? あたしほどじゃないけど、まぁそれなりに似合ってるわね」
「ありがとうございます(ちょっと照れ)ところでルーアンさん。 この格好には一体どういった意味があるんですか?」
「ふふ・・・それは良い質問ね」
 腕組みをしていたルーアンは「その質問を待っていたのよ」と 言わんばかりにフッと軽く笑い、得意げで不敵な笑みで答える。
「その服装は伝統と歴史のある由緒正しいものなのよ!(ホントか?) 沢山ある私の慶幸日天たる自信の根源の一つでもあるわね。 どう? その格好だと「たー様を幸せに出来るぞ!」って自信が沸いて来るでしょう?」
「・・・うーん、言われてみればなんとなく・・・」
「・・・・なんだか効果薄いわねぇ・・・・」
 若干がっかりしつつも、所詮はこんなものか、とそれなりに納得するルーアンだった。

 ルーアンの部屋の扉が僅かに隙間が空いていた、 キリュウはたまたまそこから中の様子その偶然見てしまった。
「シャオ殿達は一体なにをやっているのだ? あんな格好をして」
 シャオの姿は「慶幸日天」のコスチュームだった。
「これはなんとも面妖な・・・那奈殿にでも伝えるか?」


レッスンその2 「あーん、たー様ぁー!!」のこと

「いいこと? シャオリン。次は行動よ!」
「はい!」
「まずの基本の常套手段からよ。「たー様に抱き付く」よ!」
 ルーアンの表情は真面目そのものだ。
「はい!」
 シャオも真面目に頷いている。
「基本にして最重要! これの味を占めてしまったら病みつきになるわよ!」
「ええっ!? そんなに凄いんですか?」
「ええ、凄いわよ!」(何故か背中を反って大威張り)
「よくお聞きなさいよ! たー様に抱きつく→たー様喜ぶ(幸せ)→ たー様の傍に居られてあたしも嬉しい!(幸せ!)どう? 一点のスキも無く完璧でしょ!!」
 かなり強引なルーアン論理だったが、シャオは ルーアンの言った事をシャオなりに思い浮かべてみた。



「す、凄すぎですぅ! ルーアンさん!! 完璧です!」
 シャオは瞳をキラキラ輝かせて大喜びだった。←それで納得する貴方も凄すぎるぞ。
「でもね、これは本当にタイミング命なんだからね。蝶のように優雅に舞い、 一瞬のスキを逃さずに、電光石火で蜂のように刺す。 あたしは常日頃機会を伺いうながら生活してるわ」(ホントにか?)
「やっぱりルーアンさんは凄いですぅ」
「まあ、当然よ」
 誉められるルーアンも得意げだ。誰かこの二人を止めてくれ・・・・ すでに当初の趣旨から外れまくっているのだが、とっくの昔に目的と手段が 入れ替わってしまっているルーアンと、そんなルーアンに一点の疑いを持たずに 信じきっているシャオには、ずれた歯車には気付くことは出来なかった。


再び部屋の外
「那奈殿。あの二人どう思う?」
「ホント珍しいなぁ、ルーアンとシャオがあんなに仲よさそうにしてるなんてな」
「なにか悪いことの前触れではないのだろうか?」(超失礼)
「おいおい、いくらなんでもそれはないだろう?」
「そうか? 私の考えすぎか?」
 このキリュウの心配もあながち外れでは無かった。あくまで局地、もとい太助限定なのだが


レッスンその3 「早速実践してみよう!」

 リビング、太助一人で退屈そうにテレビのリモコンを弄びつつ、 御茶を啜っていた。リビングの入り口でその姿を確認するルーアンとシャオ。 その更に後ろ、階段の影から彼女達を心配そう(?)に見守るキリュウと那奈 といつの間にか七梨家に呼ばれてた翔子。なんとも不思議な構図が出来上がっていた。
「いよいよ、実践ですね。わたし頑張ります!」
 太助に聞こえない程度の小声で自らの意気込みを述べるシャオ。 やる気満々で早速太助との距離を詰め始めようとしている。
「ちょっと、おまちなさい。これだから素人は困るわね」←あんたプロなのか?
 そういってルーアンは、シャオの襟首の後ろを猫でも掴むように引っ張る。
「うにゅ? なにをするんですか?」
「たー様をよくご覧なさい。御茶を飲んでるじゃない」
「言われてみれば、そうですね」
「こんな時に急に飛び付いたら、御茶がこぼれてたー様が火傷しちゃうかも知れないじゃないの」
「・・・・」
 うんうんと無言で感心して頷くシャオ。
「もう少し様子をみましょう。そうね、たー様が御茶お置いた時がチャンスね」

そして、その時は来た!
「あーん。たー様ぁ!(太助様ぁ!)」
 助走をつけて勢いよく飛び付く二人。

 ごばきぃ!!

 物凄く痛そうな音がした(手加減してあげましょう(笑))
「ぐわぁー、離れろぉ、ルーアン!!」
「あらぁ? たー様、そんなこと言って言いのかしらん?」
「え?」
 自信に満ちたルーアンの口調に少し戸惑いつつも冷静に状況を判断してみる太助。 なんだか今日はヤケに重い(失礼だなぁ)まるで二人分に質量が自分にのしかかっているみたいだ。
「今回はあたしだけじゃなくってよ」
 言われてみて反射的にルーアンに抱きつかれてる反対側の腕を見る。
「え? ってシャ、シャオ!?」
「はい(ハート)」
 シャオは少し恥ずかしそうに、やや控え目に太助の腕に自らの腕を絡ませていた。

シャオのモノローグ
 ルーアンさんは凄いです。私の腕の中の太助様の逞しい腕・・・ 何故か胸の奥から暖い気持ちが湧き上がってきます。これで本当に太助様が嬉しいなら・・・

「い、一体どうして?」
 太助は混乱気味だ。でもやっぱり少し嬉しみたいで、顔がややにやけ気味で声で少し上ずっていた。
「ルーアンさん。太助様、なんだか困ってるみたいですよ」
「そんなことないわよ。照れているだけよ」
 今回ばかりは、あながちそれもはずれでは無かった。
「ねぇ。たー様両手に華よ? 嬉しいでしょ?」
「ちっとも嬉しくな・・・・いやちょっと嬉しいかな? だってそのシャオが・・・」
「太助様・・・・」(ポッ)
 太助のそのリアクションと今まさに構築されようとしている 二人の世界を目の当たりにしたルーアンは面白くなかった。 そしてそれを皮切りに急速に彼女は冷めていき当初の目的を思い出した。 そしてそこから逸れていることに気がつく。
「・・・・なんだか、つまんないわ・・・」
 そう言ってルーアンは不機嫌そうに太助から離れた。
「ルーアン?」
「ルーアンさん?」
「あたしはなんか飽きちゃったから、後はあんた達で好きにしてちょうだい」
 ルーアンはそそくさとその場を後にする。シャオはルーアンと太助を交互に見て、 どうしてよいか迷っていた。太助の体温を傍で感じていたい。 でも、ルーアンのことも気になる。シャオの気持ちは揺れ動いていた。 そんなシャオを見るに見兼ねた太助は、シャオを優しく促した。
「シャオ。ルーアンの事が気になるんだろ? 行ってあげなよ」
「はい! 太助様」
 シャオはパッと明るい顔をしてルーアンを追いかけてリビングを出ていった。
「ちょっと勿体無いことしちゃったかなぁ?」
「いや、なかなか立派だったぞ。主殿」
「キリュウ? 見てたのか?」
「ああ、那奈殿達とな」
 悪びれも無く頷く。
「那奈姉達?」
「よっ 七梨、なんだかまた面白いことになってるなぁ♪」(鬼)
「や、山野辺!?」
「あたしが呼んだんだよ。面白そうだったからな」(こっちも鬼)
 太助はなんて所を見られてしまったんだ。と深く後悔した。 この後那奈と翔子にどれほど冷やかされたのは、皆様の想像にお任せすることにしよう。


ラストレッスン「本当に大事な事」

 ここは屋根の上、ルーアンは一人膝を抱えて溜息をついた。
「あたしったら、何やってるのかしらね、これじゃあまるでピエロだわ」
 そしてまた溜息を吐く。
「ルーアンさん、お隣いいですか?」
 シャオが屋根の上にあがってきた。
「シャオリン? 一体どうしたのよ。アンタはあたしなんかのところより たー様の傍の方がいいでしょうに・・・・」
「それは・・・・」
「なんであたしの方なんかに来たの?」
 ルーアンは少し責めるようなキツめの口調で言った。
「なんだかルーアンさんがの事が気になって・・・・」
「・・・・シャオリン・・・・」
 シャオは少し上目遣いで、
「いけませんか? ルーアンさんの事心配しゃ」
 親の言い付けを破ってしまった子供のよう顔で恐る恐る言った。 そんなシャオの姿にルーアンは、文句を言うとかそういう事を通り越えて呆れてしまった。
「ぷっ、アンタって子は本当にお人好しよねぇ。 あたしはそういうのって嫌いじゃないわよ。心配してくれてありがとう。シャオリン」
「ルーアンさん・・・・」
「それにしても、なんだか悪い事しちゃったわね。 あたしがあの場を壊しちゃったじゃない。 本当ならアンタがあたしに文句を言って良いくらいなのにね」
 ルーアンの言葉にシャオは首を傾げる。
「? どうしてルーアンさんに文句を言わなきゃいけないんですか?  あんなに凄いことを教えてくれたのに・・・」
「ふふっ、ほんとにあんたって、ポケポケさんよね」
 ルーアンは軽く微笑む。シャオは言われた意味をいまいち理解出来ず、 頭の上に?マークを浮かべていた。
「解らなかったなら、それでもいいわ。それがあんたの良い所でもあるんだからね」
「私の良い所?」
「そう、アンタの良い所よ」
 そして彼女は大切な言葉を紡いでいく
「あたしはあたし、アンタはアンタ。幾らアンタがあたしを見習って真似したって。 それはあたしのモノマネでしかないし、あたしがアンタの真似をしたってアンタにはなれないのよ。 だからアンタがこれからするべき事は、アンタ自身の良い所を自分で見つけたり、 自分の意思をしっかり口に出せるようにしたりして自分自身を磨くこと!  そうすれば・・・・シャオリン、アンタはもっと素敵な女の子になれるわよ」
「はい! 難しそうだけど頑張ります!」
「なかなか良い返事ね。あたしがから教えられることはこれでおしまいよ」
「ありがとう、ございました!」
 シャオは深々と頭を下げた。
「シャオリン。あたしもう平気だから、たー様の所へ行ってあげなさい」
「はい!」
 元気良く返事をしたシャオの顔は極上の笑顔だった。


数日後、七梨家の七夕飾りには

「自分の思ったことをキチンと言える私になれますように」

と書かれた短冊があったとさ


おしまい

空理空論さん御誕生日おめでとうございます!
どうにか間に合わせることができました。
最後に短冊ネタをもって来てしまったので、マルチエンドになりません(謝罪)
他の誰かに相談したって、きっと最後の方は同じような結末になりそうですしね。 今回はルーアンということで、途中の過程がハチャメチャで私的に大変愉快なものになりました。 書いてて楽しかったし(笑)
こんな駄目そうな小説ですが、貰ってください。


最後に改めて、24歳御誕生日おめでとう!!
でも厄年←めでたいのに業と堕とす(核爆)
(自分も厄年なんだけどね)

2001年7月5日 ふぉうりん
2001年7月8日 誤字等修正


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