タイトル キネマ地獄へようこそ(笑)その5ルーアン編
ジャンル コメディとギャグ(予定)
コメント ルーアン大活躍のルーアン、エンディングです。
6、キネマ地獄へようこそ(笑)
七梨家前にて、午後5時過ぎ、Xタイムは午後9時から11時である。
(ふうー、どうやら、誰にも悟られずに、ここまで来た。あと約6時間、頑張らなくては。)(太)
太助は先ほどまで、乎一郎と一緒に、たかしの補修に付き合っていた。
何かしていないと落着かないからだ。それと罪悪感も多少ある。
2人は、荷物(たいした量じゃないが)と着替えに家に帰っていった。
「ただいまぁ。」
と、太助は玄関に入り、靴のそろえながら、現在、家に上がり込んでる人物を靴で確認する。
(ひい、ふう、みい・・・山野辺も宮内出雲も、来てるな。よし、作戦通りだ。)(太)
やはり、購買部での駄目押しが、効いたのだろう。
部屋に入って着替えを終えて、リビングに入ると、
コカを抱いて楽しく談笑している翔子と奈々、出雲持参の薄皮饅頭の空箱を前にして、
満足そうなルーアンと離朱。キリュウはここには居ないようだ。
恐らく自室で扇風機に、かじりついているのであろう。
視界端には憔悴しきった宮内出雲の姿が目に入った。
(何が、あったかは、あえて聞かないでおくとしよう。
さらば、宮内出雲、お前のことは、忘れない・・・)(太)
心の中で、多分、今日は復活しないと、思われる、宮内出雲に数秒、黙とうする太助。
そして、いつも通りに振る舞う。
「おーい、シャオなんか手伝うことないか?」
夕食後7時半過ぎ、恐怖の時間は刻一刻と迫っている。しかし、まだ、誰も気づく気配は無かった。
大勢の夕食は、楽しかった。誰も気づかないだろうとタカをくくっていた。
油断していたと思う。キリュウの一言よって破滅へ踏み出す。
「なあ、主殿。」
太助は、キリュウの方に向き、刮目した。
「!!」
キリュウは何か手に持っている。紙だ。灰色の紙には、大小文字が書かれてる。そう、新聞だ。
「キ、キリュウ。その手に持っている、物は一体、何処にあったのかな?」
声が若干震えていた。
「ああ、これか。今日、階段で足を滑らせた時にな、玄関のそばに積んであった。
古新聞をひっくり返してしまってな。奈々殿と一緒に片づけていたら、何故かそこにあったのだ。
主殿心当たりはないか?」
まさか、ここで、俺が隠しました。などと言えるはずもなく。言葉を濁そうとする、太助。
ここで追求されると、逃げ切れない!!太助大ピーンチ!!
「まあ、見つかった物は別に、いいんだがな。」
心の中でほっと一息。太助は生きた心地がしなかった。それもつかの間。
「ところで、今日の水曜映・・・」
「うわー!!」
いくら、キリュウの言葉を止めるとはいえ、大声を上げてしまった太助、最悪の失敗を犯した。
皆の注目を集めてしまった。しかし、もう手遅れだ。太助は観念した。
「・・・いきなり、驚くではないか。
今日の水曜映画ショーの、「きらめき記念日」とは、なにか試練に役立ちそうか?
もし何か知っていたら、教えて欲しくてな。」
みんなの注目を集めた状態で、「俺は吹き替えの役で、出演してました。」などとは、
口が裂けても言えるはずもなく、何か言ってごまかそうと、思った太助だが、その時、たかしが。
「なあ、乎一郎、その「きらめき記念日」ってどこかで、聞いたことないか?」
「うーん、そうだね。僕も何処かで聞いた事あるような、気がするんだよね。なんでだろう?えーと。」
たかしと乎一郎は何かを思いだそうとしている。
シャオもルーアンも翔子もなにか引っかかるらしく、首をひねっている。
出雲も事実を知っているはずなのだが、考える元気がない。
太助は、針のむしろに立たされて。誰かに心臓を、鷲づかみにされている気分だった。
ドクン、ドクンと自分の心音が聞こえて来そうだった。
(このまま、このまま、誰も、思い出さないで、そのまま流れてくれ!頼む!!)(太)
太助は祈る様な気持ちで、周りを見た。何のことだか訳がわからない、といった顔をしている。
奈々姉、キリュウ、花織、ぐったりしていて、話そのものの参加していない出雲、
首をひねって考え込んでいる。シャオ、ルーアン、翔子、たかし、乎一郎。
しかし、太助の祈りは通じず、誰かの顔に変化が訪れた。
ルーアンだ。パッと、難問が解けたような、晴れやかな顔を一瞬した後、
口元がニッと上がって、こちらを見る目が、なにやら自信に満ちている。
「!!!」
太助は一瞬で悟った。これは、勝利者の笑みだと・・・・太助は、
ルーアンの口を封じる為に彼女に近寄った。しかし、意外な所で破局はは訪れる。
「思い出しましたわ!確か、あの映画は・・・」
なんと、シャオであった。ああ、もう駄目だ・・・と太助は諦めた。しかし、ここで。
「あーん!たーさまー!!」
と、シャオの声をかき消す様に、がばっと、ルーアンが太助に、飛び付いて来た。
ルーアンは太助に顔を近づけると、急に真顔になり。ささやくように、こう言った。
「あたしは、たーさまの味方よ。
だから、言う事を聞いて。このまま後ろに、廊下の方倒れて。お願い。」
太助は、わらにもすがる思いでルーアンの言う通りに廊下に倒れた。
「陽天心招来!!」
ルーアンは、廊下に立てかけてあった。ダス○ンに陽天心を掛けて、こう言った。
「ほー、ほっほっほっ!みんながぼーっとしてるから。ルーアンの、たーさま一人占めよ!
悔しかったら、取り返してみなさい!!」
そして、ルーアンは陽天心ダス○ンにまたがり。そのまま太助を連れ去ってしまった。
みんなはしばらく、あっけにとられていたが。事態を理解し大騒ぎになる。
こうして、太助を取り返す為に、ルーアンとの追いかけっこが始まるのであった。
ルーアンと太助は、
陽天心ダス○ンに乗って夜空の散歩をしていた。頬をなでる夜風が気持ちが良かった。月が綺麗だった。
「なあ、ルーアン。聞いていいかい?」
「いいけど、なにかしら?」
「どうして、助けてくれたんだ?」
「やーねえ、たーさまったら。このあたしが、
本気で貴方が本当に困る事を、するはずがないでしょう?」
「・・・サンキュ、ルーアン。」
「しっかし、危なかったわね、もう少しで、守護月天に不幸のどん底に落とされるところだったわね。」
そう言って、笑い合う、2人。
「まあ、あの子には、悪気はないんでしょうけどね。その辺のとこ、もう少し、気が利かないかしら?」
「仕方がないよ。そんなことに気が利いたら、シャオがシャオじゃ、なくなっちゃうよ。」
「あら、それもそうね。」
そしてまた、2人で笑い合う。
「慶幸日天が主を護るってのも、なかなか悪くないわね。
だって、こんな美味しい思いが、できるんだからね。うふふ・・・」
月に映えた、ルーアンの美しい笑顔に、太助は見とれ、言葉を失った。
「・・・・」
「あら、どうしたの?たーさま?黙っちゃて、具合でも悪くなったの?」
「い・いや、べ、別に、、な、何でもないよ。でも、それより、これからどうする?」
「どうせ今頃、大騒ぎで追いかけて来ようとしてるんじゃない?
適当にこの辺一回りしたら、帰りましょ。」
「あー、そうそう、家に帰ったら、あたしのこと庇(かば)っちゃだめよ。
これは、あたしが勝手にやったことなんだからね。」
「・・・・・・」
太助は黙って頷くしかなかった。庇ってしまえば、何か企んでいたことが、解ってしまうからだ。
「なに、しんみりしてるのよ。ほら、来たわよ。楽しい追いかけっこの始まりよ!」
後ろを見ると、軒猿に載ったシャオたち、何やらキリュウも駆り出されたようだった。
暫くして、七梨家
「あー楽しかった。食後の良い運動になったわ。」
ご機嫌なルーアン、しかし、機が良いのは、ルーアン一人であった。
「ルーアン先生!あー楽しかった。じゃないですよ。なんで、七里先輩一人占めにしちゃったんです?」
抗議する。花織。しかし、ルーアンは悪びれもせず。
「はいはい、文句はちゃーんと聞いてあげるから、あっ、シャオリン、
お茶と、お茶菓子、準備してくれない?なんだかまた、食べたくなっちゃった。」
「ルーアン先生!!」
吠える花織をよそに、リビングに消えるルーアン。
そして、シャオのお茶を、待たずして、応接セットに対峙する、ルーアンと花織。
本日の修羅場到来って感じだ。
しかし、ルーアンには筋書きがあった。ここまでは、予定通り。
この後、花織と言い争い、エスカレート、して
「じゃあ、お嬢ちゃんお得意のゲーム勝負をつけようじゃないのよ。
勿論、全員参加で、一番、勝った人が好きな事をできる。ってルールで。」
こう言ってしまえば、こちらのものである。これで、誰も映画の事は思い出さない。
あわよくば、ゲーム勝って・・・・。である。
「ルーアン先生!今日と言う今日は、はっきりさせますよ!!」
(ほら、来た。その調子よ)(ル)
と言って、花織は、応接机をバンッ!と叩く、その時
ブゥゥゥン
という機械音がし、テレビがつく。どうやら、リモコンを叩いてしまったらしい。
なんとなく全員が音のする方に注目してしまった。
テレビにはでかでかと、「きらめき記念日」というタイトルと、
太助に良く似た少年が元気に走っていた。
・・・・合掌。
キネマ地獄へようこそ(笑)
後書き
ようやく、完結しました。ここまで読んでくれた方、どうも、ありがとう!
そして、自分にお疲れ様。コメントに書いてある通りこれは、ルーアン編です。
ってことは、他の人のエンディングも準備してあるってことです。
初の小説にして、マルチエンディング。無謀ですね(笑)
最初にこれ(ルーアン編)思い付いてから、しばらくして思ったんですけど。
「ルーアンの一人勝ちじゃん。○○ファンに怒られそうだわ。」って訳で、
自分を苦しめながら(笑)逃げ道を作った訳です。
とりあえず、シャオと、キリュウのは書きます。
あと、○○編が読みたいって方は、私と交渉して下さい。
ご意見、御感想はメールでも受け付けております。
ふぉうりんのアドレス
fou_rin@f5.dion.ne.jp
です。
では、皆さん、次は「キネマ地獄へようこそ(笑)キリュウ編」で、お会いしましょう 再会!
2000年7月29日 ふぉうりん
2000年7月30日 一部修正
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