「M」

第12章 side-B


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『ハローモーニング。いぇ〜い』
TVで若い女の子たちがそろって番組タイトルをコールしている。
宗像はその声にちらりとTVの方を見た。
『モーニング娘。・・・・か』
宗像はカップラーメンをすする手を止めてテレビに見入る。
そこでは市井紗耶香と福田明日香という名の少女が、なにやら手をつないで一緒に街を歩きウィンドウショッピングをする様子が流れていた。
(西田くんの話ではたしか向こうではこの2人は芸能界をやめてるんだったな。ということは、こちらの世界でもいずれやめるということだろうか?)
そこで宗像は、このmシステムが未来予測システムとして機能するだろうかということを検討し始めた。
(・・・・いや、無理だな。所詮は与えられる情報は、被験者のフィルターを通したものになるわけだからな。結局それは我々人間の「予測」という範疇を超ええないか・・・・)

その時、mシステムと繋がっている端末PCが効果音を発し、そのモニターにいくつかのウィンドウが立ち上がった。
宗像は今いる研究室の端の場所から、急いでPCの前の席へと移動して表示を確認した。
(さっそく来たな)
宗像は、先刻の消去シールによるオブジェクト欠損プロセスのデータを下に、同様の欠損が起きた場合にはただちにこのPCに通知するようなプログラムを作り上げ、さきほど作動させたところだった。そして今、はやくもそのプログラムが欠損を検知したとというわけだ。
ウィンドウ上の一連のデータに目を通し、状況を分析する。
(データ消去パターンは全く一緒。場所は・・・・)
『こんどは千葉県か・・・・遠いな』
宗像は少し驚いた表情でそうつぶやいた。
そして新たにいくつかのコマンドを打ち込み、その結果を調べた。
(西田君は・・・・東京にいる。ということは、西田君の存在がm世界に何かしらの干渉をしているという方向は無しか・・・・)

宗像は食べかけのカップラーメンを放置したまま考えにふけった。
(西田君の存在が関係しないとなると・・・・やはりウィルスか?いやしかしウィルスにしては指向性がなさ過ぎる。まるで自由意志で誰かが気まぐれに事を起こしているかのようだ・・・・・しかし・・・・・)

宗像は傍らのリンクイン装置に横たわる西田の姿をちらりと見た。
『まさか。そんなことがどうやって可能だというのだ。可能なわけがない』



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