門付けの旅



戦前まで瞽女のたびは全て徒歩でした。弟子の中に目が不自由だが日常生活に不自由しない程度の視力の人や、まったく目に障害がないが幼くして孤児になり瞽女に養ってもらった人などが「手引き」といって先頭にたっては道案内を務めました。連なって歩く瞽女たちは右手に杖を持ち、左手の三本指を前の人の背中の風呂敷包みに触れて歩きました。押したり引っぱったりすると叱られました。一日に歩く距離は10kmから20km程度だったでしょうか。瞽女の旅の道筋の村々の庄屋や地主などの大きな家が「瞽女宿」を引き受け、瞽女を泊め、演奏会の会場になりました。
親方達は2、3軒で「組」を作って合同で旅をしました。一年のスケジュールは、まず正月は家にいて高田の町の門付けをします。1月29日に座元の家に親方全員が集まる総会で年間の旅の予定を立てます。「おそおそ何月何日に出て何月何日には帰るだのう」と座元がおやかたたちに諮ると「はーえ、そうだのう」と親方全員が口を揃えます。ひとつのセレモニーですが、昔はこの席で信州番と上州番が決まったといいます。


1月(正月) 家に居て街の門付けをする
1月11日 蔵開き
1月15日 鏡開き
1月25日 弁天講
1月29日 座元の家での総会
2月1日〜21日 高田近郊の農村回り
2月22日〜28日 やぶ入り
3月1日〜24日 海岸地方の漁村回り
3月27日〜4月30日 北陸海岸の谷筋(西浜七谷)名立谷→能生谷→海川谷→海岸線筒石→桑取谷
5月3日〜12日 山寺薬師祭礼
5月13日 妙音講(高田寺町天林寺)
5月20日〜6月15日 東頸城の農村回り 牧村→安塚町→松之山町→松代町→大島村→浦川原村
6月20日〜8月12日 信濃路 新井市長沢→富倉峠→長野県下水内郡→下高井郡→小県郡→丸子町→北佐久郡→南佐久郡→北国街道を上田、善光寺とたどって帰る
8月13日〜20日 やぶ入り
8月22日〜9月23日 西浜七谷 ほぼ春のコースと同じ
9月23日〜28日 東本願寺高田別院報音講
9月30日〜10月26日 東頸城、牧峠から信州野沢へ出て飯山近郊の農村回り、富倉峠を越えて帰る
11月1日〜12月27日 中頚城の農村回り














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