パソコンやスマホで乗り換え情報を調べたりメールをチェックすると、「乗り換え案内を表示せよ」、「届いているメールを送れ」といった要求と、それに対する応答の信号がインターネット上を行き交います。
多種多様なタイプのコンピュータや通信機器が繋がるインターネットで、相互の通信に確実性を持たせるには共通のルールが必要です。コンピュータ ネットワークの黎明期に誕生した TCP/IP という仕様(約束ごと)は、そのままインターネットの共通ルールとして採用されました。
IPアドレスは32ビット
※4の整数値で、インターネットに接続するホストは必ずIPアドレスの割り当てを受ける必要があります。
IPアドレスはパソコンやネットワークの内部では2進数(ビット列)で存在しています。このままでは人間にとって扱いにくいので、32ビット(桁)の2進数を8ビットごとの4つのブロックに区切って10進数に直して表記します。区切りの記号にはドット(.)を使います。
例えば park12.wakwak.com のIPアドレスは次のように表記します。下段は同じIPアドレスを2進数で表記したものです。
10進数表記 | 219.103.130.73 |
2進数表記 | 11011011.01100111.10000010.01001001 |
パソコンのIPアドレスは次の方法で確認できます(windows10の場合)。
- [スタート] をクリックし、歯車模様の [設定] を選択。
- [ネットワークとインターネット]を選択。
- 右側[ネットワークの状態]概略図の下に[インターネットに接続されています]と表示されているのを確認します。
- グレーの長方形枠で囲まれた[プロパティ]をクリックします。
- 最下段の[プロパティ]ブロックにある [IPv4 アドレス:] を参照します。
※ 同じブロック内にある[物理アドレス(MAC)]が後述するMACアドレスになります。
IPアドレスはIANA(アイアナ)を頂点とする組織によって管理されています。この管理組織は階層構造になっていて、日本における管理組織の頂点はJPNIC(ジェイピーニック)と呼ばれています。
下記は管理組織構造の日本に関連する部分の抜粋です。
IANA(ICANN) |
Internet Assigned Numbers Authority (The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)
IANAはIPアドレス等の割り振り(分配)や管理を行う組織として米大学の教授や技術者が中心となって1988年に設立されました。
1998年になると国際的な非営利法人のICANNが設立されてIANAの業務は移管されましたが、その後もIANAという名称はIPアドレス等の管理部門の名称として存続しています。
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APNIC (RIR) | Asia Pacific Network Information Centre
地域インターネットレジストリ(RIR:Regional Internet Registry)のアジア太平洋地域を担当する組織
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JPNIC (NIR) | Japan Network Information Center
日本ネットワークインフォメーションセンター
国別インターネットレジストリ(NIR:National Internet Registry)の日本組織。
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ISP (LIR) |
Internet Service Provider (Local Internet Registry)
JPNIC(またはAPNIC)から割り振られた(分配された)IPアドレスを、エンドユーザーに割り当てる組織をLIRといいます。ISP(Internet Service Provider)がその役割を担っています。
ISPは一般にプロバイダーと呼ばれます。
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EU | End User
ISPやJPNIC,APNICからIPアドレスの割り当てを受けてインターネットに接続しているサーバーや一般ユーザー。
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エンドユーザーがIPアドレスを使うには、管理組織(一般にはプロバイダー)から割り当てを受ける必要があります。
全てのIPアドレスはIANAが管理しています。上位の組織は自身が管理しているIPアドレスの中から、ある程度まとまった量のIPアドレスを下位組織へ割り振ります。
割り振りを受けた組織は、そのIPアドレスをさらに小分けして下位組織へ割り振って行きます。最終的にプロバイダーがエンドユーザーに向けて必要数を割り当てます。
管理組織から割り当てを受けたIPアドレスは貸与されたもので、特定の組織・個人の所有物にはなりません。またIPアドレスを勝手に指定・使用することもできません。
こうして貸与されたIPアドレスの情報は、インターネットを構成するルーター
※5の経路情報に反映されます。
プロバイダーからエンドユーザーに割り当てられたIPアドレスは、一般家庭や小規模な事業所では家庭用ルーターに設定されてしまうため、エンドユーザーの目にはあまり触れることがありません。
家庭用ルーターにログインし[WAN側IPアドレス]等を参照することで確認できます。
上位の管理組織から割り当てられるIPアドレスは、インターネット上で一意(たった一つで重複なし)になっています。このようなIPアドレスを
グローバルIPアドレスといいます。
一意であることは通信を行う際に相手を特定する上で必須条件ですが、IPアドレスの数は有限(約43億個)なので世界中の全端末に割り当てることは現実的ではありません。
そこで企業や家庭といった組織・集団を、インターネットとは隔離された限定的(ローカル)なネットワーク(LAN : Local Area Network)として個別に管理する方法が採用されています。
IANAはLAN内部で使用するIPアドレスを
プライベートIPアドレスとして次の範囲を定義しています。
- 10.0.0.0 〜 10.255.255.255
- 172.16.0.0 〜 172.31.255.255
- 192.168.0.0 〜 192.168.255.255
この外にリンクローカル アドレスやループバック アドレス、マルチキャスト アドレス等がIANAによって予約・定義されています。
- リンクローカル アドレス
169.254.0.0 〜 169.254.255.255
同一リンク(ルーターを超えない範囲)内でのみ使用可能。
IPアドレスが設定できない状況の時、パソコン(windows)自身が設定します。
- ループバック アドレス
127.0.0.0 〜 127.255.255.255
自分自身を示す仮想的なIPアドレス。(通常は 127.0.0.1 が使われます)
- マルチキャスト アドレス
224.0.0.0 〜 239.255.255.255
特定のグループに所属するホストに同時送信します。
「複数のパソコンを同時にインターネット接続する」また「パソコンを直接インターネットに晒さない」目的で、多くの家庭や企業が
家庭用ルーター※6を設置しています。
家庭用ルーターはLAN内のパソコンにプライベートIPアドレスを割り当てると共に、インターネットとLANを中継する役割を持っています。
パケットに記載されているプライベートIPアドレスをLAN外部のグローバルIPアドレスに(あるいはその逆に)書き換えて、異なるネットワーク間の相互通信を可能にする機能を、NAT(Network Address Translation:ネットワークアドレス変換)といいます。
プライベートIPアドレスを割り当てられたパソコンが、家庭用ルーターを介してインターネットアクセスした時の通信の流れは概ね次のようになります。
下図は家庭用ルーターがLANとインターネット間の通信を仲介する様子を模式化したもので、この例では、グローバルIPアドレス 123.45.67.89 が割り当てられています。ユーザーA(IPアドレス 192.168.1.2)はホームページを閲覧しようとしています。
(1) ユーザーAがホームページの閲覧を開始すると、要求内容や制御情報と共に宛先IPアドレス(192.168.1.1)、要求元のIPアドレス(192.168.1.2)が書き込まれた要求パケットが家庭用ルーターに送られます
※7。
(2) 家庭用ルーターはパケットに記載されている要求元のIPアドレス(192.168.1.2)を、プロバイダーから割り当てられたグローバルIPアドレス(123.45.67.89)に書き換えてインターネット側に送出します。書き換え情報はNAT管理テーブルに記録しておきます。
(3) 要求パケットを受信したホームページを管理するwebサーバーは、要求内容を処理した結果と宛先IPアドレス(要求元のIPアドレス123.45.67.89)を応答(返信)パケットに書き込んで、インターネットに送り出します。
(4) インターネット側から届いた応答(返信)パケットの宛先IPアドレス(123.45.67.89)は、家庭用ルーターがNAT管理テーブルを参照して要求元IPアドレス(192.168.1.2)に書き換えてからLAN側へ送り出し、要求元であるユーザーA(192.168.1.2)に届きます。
宛先のIPアドレスや送信元(差出人)のIPアドレスも制御情報の一部です。
▽制御情報はバラバラに届くパケットの欠落検査や、パケットの整列にも使われます。
▽一般に扱われるデータはサイズが大きいため、いくつかに小分けにして送り出します。
小分けにしたデータがパケット(packet:小包)という名称の由来です。