<二日目-2002.12. 8

 さて、物語もここまでくるとおしまいである。…と、言うべきなのかもしれない。

 今回の放浪記が『番外篇』としてあるのも、実際、廻っている最中も、確かに『横溝正史展』なり真備町へも行ったりもしていたが、どうも今一つ「横溝ワールドに触れてみる…」といった部分に関していうと、ちょっと微妙に盛り上がりに欠けているような気がしていたのである。それは、あまりにも無理なスケジュールの中での強行軍だったからかもしれないし、他の要素なり行程目的に入れたことも理由の一つであるのかもしれない。ともあれ、二日目は、初日以上に横溝的要素からは懸け離れてしまっているので、そういう意味ではこれ以降はこのページタイトルどおりではなくなってしまっているかもしれない。ま、『放浪記』であることは紛れもない事実であるが。
 『奇行記』という部分のみ…ということで、一応話しは簡単に進めていくことにする。

 朝、ホテルを早々にチェックアウトする。
 倉敷を後にし南下。玉野市の宇野港へ。

 画像では夕焼けのように見えてしまうかも知れないが、ようやく朝らしくなってきた太陽が眩しいこの港から宇高国道フェリーで四国へ渡る。
 途中、最近ではコンビニでフェリー料金も割引きクーポンチケットを購入できるので、宇野港へ来る途中のコンビニでモーニングコーヒーを購入するついでに買ったのはいうまでもない。
 

 このフェリーというのも、実際予想以上に楽しい。船内はそこそこのビジネスホテルのロビー並の内装だし、これで、何にも煩わされることもなく一時間もしたら四国に着いてしまうのである。それに、なにより、前回の旅行の時、真鍋島へ渡った時に感じられなかった「海を渡る風を感じてみたい」という希望も展望スペースに上がれば達成できてしまうのである。…いやはや、こりゃ、いいわ。これで、波間に漂う×××とかがあったりしたら、またしても横溝気分を掻き立てられたところであろうが、ま、さすがに、こんな朝早くからそんな重大事件に遭遇しても差し障りがあるので、そこはちょっとした妄想の中だけに留めておくことにしよう。
 一時間後には高松に到着。
 簡単な食事を取りながら、時間をつぶし、高松市内にあるいくつかの古書店を見て廻る。昭和28年の読切小説集(もちろん『佐七捕物』掲載誌)があったので、値段もそこそこだったので、記念に購入。…まさか四国の古本屋で、こういったものに出会えるとは思ってもいなかったので、かなり嬉しい。こうなってくると気分も高揚してきて、ただただ高松市内を車で走っていること事体からして、面 白いことのように思えて来て、「全都道府県古本屋制覇(仮称)香川県完了〜〜!」だの「オイオイ、俺何だって四国なんかを車で走ってるんだよ〜〜」と、一人でキャッキャとハシャギながら走っていた。…はた目から見られたらさぞかし異常な光景であったに違いない。
 さ、四国にまで渡ってきた、本来の目的地へ向かおうかね。

 四国へ来た目的。実は、私は平賀源内が好きだったりするのである。それこそ学生時代にちょっと齧って以来、十数冊の研究書くらいは目を通 しているくらいの興味の対象といえば、だいたい程度は判っていただけると思う。もっとも、平賀源内って何者?…という人もいるかもしれないが、それはまた場を改めて、その気になったら源内ページでもつくって御案内させてもらうとして、ここでは他へのリンクだけで省略することにする。
 その平賀源内が生まれたのが高松から程近い志度町というところであり、ここには、生家が『平賀源内遺品館』という常設展示館になっている施設があり、数々の展示品などが観ることができるのである。以前よりここには来たいと思っていたのだが、今回やっと実現するに至ったのであった。
(志度町は平成14年4月1日より香川県大川郡西部の5町が合併して「さぬき市」となりました。さぬき市のHPによる平賀源内の紹介はこちら
 …いやぁ、こちらも、すっかり楽しむことが出来た。来て良かった。
 ま、ひとつくらいへそまがりな襟裳屋らしい苦言を言わせてもらえば、吉備路文学館での横溝正史展もそうであったが、折角これだけの資料を展示しているのに、来館した記念に購入したいと思うような“資料”がないのである。せめて展示資料の画像とか収録されたパンフレットとかあれば、少しくらい高額でも買うのに…。吉備路文学館の方は企画展だったから仕方ないとしても、源内遺品館の方くらいはもう少しなんとかならないものであろうか…。ま、源内に関してはそこそこ資料持ってるからいいけど…。あ、そう考えると横溝正史展の方は貴重な資料も沢山あったしなぁ…。

 ともあれ、満足のうちに遺品館を後にし、志度町の外れにある『源内うどん』といううどん屋で本場讃岐うどんを食べようかと思って立ち寄ってみることにする。
  メニューに『源内うどん』という店名そのままのうどんがあったので、これを注文してみると、「茶わん蒸しになっているので、ちょっと時間がかかりますが…」と言われる。…?茶わん蒸しがセットでついてくるのかな?くらいに思ったので「構いませんよ…」と待つこと十数分。出て来たのは鍋焼き風に丼に蓋がのったままのうどんであった。「え?…ま、まさか…」と思いつつも蓋をあけてみると、まさしくそこには丼一面 の茶わん蒸しであった。『源内うどん』それはまさしく具沢山のうどんを茶わん蒸し仕立てにした逸品だったのである。面白い。…いや、面白いだけではなく、これが食べてみると、なかなかどうしていけるじゃないか。考えてみると、茶わん蒸しもダシが結構重要だが、こちらのうどんも関東で普通 に食べているものよりダシにはもっと気をつかっているようだから、そういう意味では関東よりもこういう発想は有りなのかもしれない。ネーミングの源内も、どことなく平賀源内のキャラとあっているような気もさせるし、普通 の讃岐うどんを食べるよりもよかったかもしれない。

 さて、四国滞在も実際そろそろこの辺で切り上げないと…。

 徳島県に入り、鳴門側から淡路島へ入り、そのまま神戸淡路鳴門自動車道をひた走る。途中、サービスエリアで正月用にするつもりの瀬戸内産の海の幸を少々買うために停車するが、今回の旅行での淡路島は実際このサービスエリア以外にはただただ自動車道の路面 だけしかないのである。

 明石海峡大橋を渡って本州に戻ってくると、そのまま神戸を素通りして再び山陽自動車道を経て中国自動車道へ。大阪の手前で思い出し、これも正月用の神戸牛関連商品をサービスエリアで購入するが、こうなってくると、年末買い出し旅行のようにも思えてしまう…。

 さ、あとは、名神、東名と走り続けて帰るだけである。

 自宅に辿り着いたのは、出発してからキッチリ48時間後であった。

 今度はもう少しゆっくりと旅を楽しみたいものである…。

                                                       


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