<序>

 よもや、年三回目の岡山訪問があるなどとは、ついぞ想像すらしていなかった。
 しかしながら、
わざわざこのような拙いHPにまで真備町役場企画課より横溝正史疎開宅新装のお知らせメールを戴いたり、吉備路文学館で「横溝正史展」といった催しがあると聞いたのなら、やっぱり横溝正史生誕百周年の年の締めとしては、やはりもう一度…という気にもなってくる。
 ところが、このところ同じ横溝正史作品ではあるものの、すっかり『人形佐七捕物帳』にハマってしまっているものだから、岡山を舞台にした作品の地(なんか日本語変?)を訪ねるぞー!というテンションはさすがに前回、前々回の時のような高まりがない。あるいは『佐七』の捕物帳の中に「備前の国の〜」とか「備中は〜」とかの記述でもあればまた違っていたのかもしれないが、残念ながら、まだそれほどまでに『佐七』を読み込んでいるわけでもないので、そういった記述に心踊るといったこともない(唯一気にかかったのは、『竹法螺』という作品のなかで、豆六が「割下水の“ねき”まで来ると…」といった台詞を言っている場面があり、『ねき』って言ったらやっぱり、あの『ねき』なんだろうなぁ…。でも、『ねき』って岡山弁じゃなかったの…?豆六は大阪生まれじゃなかったっけ?大阪でも『ねき』って使うのだろうか?などと思ったくらいか…)。
 そうこうしているうちに時間だけが過ぎ去って行き、気がつくともう師走の声を聞くようになってしまっていた。
「こりゃいかん。マジで行くなら行くで、それらしい気持ちにもっていかないと、とてもじゃないけど夜中何時間も走り続ける気にならんぞ…」
 と、思いを集中すべく、前回二度でのことを思い返してみると、楽しい思い出はいくつもあったが、これといった岡山名産の土産を買ってきていないこと、そしてもうひとつは、岡山ではないものの、二度とも往路に横目に見つつも通り過ぎてしまっただけになった淡路島にも行ってみたいかな…といった思いがフツフツと沸き上がってきたのである。
 とりあえずネットで岡山土産をあたってみると、ひとつ興味深いものを発見。
 津山地方振興局のHPで見つけた『西条柿ワイン』というものである。
 普通、ワインといったら葡萄でつくるもの…としか考えたことがなかったが、いろいろと問い合わせたりして調べてみると、この『西条柿ワイン』というのは、100%柿からつくられたワインだという話しである。
 面白い。こういうのは好きなのである。
 …と、いうことで、岡山土産はこのワインに決定(他にもいろいろあるだろうとの声は聞こえないふりをします)。

 さて、そうなると、次に淡路島であるが、交通経路を考えているなかで、ふと思ったのが、
「車ごと海を渡ってみるのも面白いかも…」
 ということである。やたらと車で走り廻るのも決して嫌いなわけでもないのだが、自走しないでもそのまま移動できる、カーフェリーというものの存在も気にかかる。遥か大昔、両親に連れられて、佐渡に行った際、一度使ったことがあるような記憶が朧げにあるが、正直カーフェリーがどういうものであったかというのはあまりハッキリとは覚えていないのである。ニュースなどで高速道路建設についてあれやこれやと取り沙汰されているのを耳にしているだけに、天の邪鬼としては、「なにも高速道路建設だけじゃないだろ」という気にもなっていて、年末のやたらとあちらこちらで掘り起こされ渋滞している道路事情にウンザリさせられることもこの旅行とは何の関係もないのに思い返されてしまう。…そうは言っても、これまでの高速道路建設の成果のお蔭でこう年に三回も岡山に行ったりもできたりするんだよな…という、ありがたいと思う気持ちはこの時ばかりは脇に置いてしまうことにして…。
 調べてみると岡山から四国にわたるカーフェリーというのがある。それも橋を渡るより金額的には安いし、時間にしたところで、岡山→高松間一時間程度しかかからない。これって、結構いいかもしれない。一度岡山から四国へ渡って、淡路の南側から入ってそのまま神戸へ抜けて帰路にというのもこれまでとは違ったコースだし、なによりも、四国という未見の土地に足を踏み入れるというのは、ちょっと面白そうである。考えてみると、なかなか四国へ旅行してみようかとはこれまで考えることもなかったし、わざわざ四国へだけというのも気後れしてしまうところであるが、岡山旅行のなかに組みいれてみたらすんなりと行ってみたいような気になれる。
 実は、以前から四国には行ってみたいところが一ケ所あったのだが、ここに行くためだけの旅行を考えるまでにはならなかった。
 でも、今回こう考えてみると、行けそうじゃん。


 かくして、表題とは若干赴きを異にした要素ばかりが増えていくなか、岡山に行くなら、これまでまだ訪れることのできていない「岡山を舞台にした事件現場」もまだまだあるのに…との思いを頭の隅においやりながら、予定を大雑把に検討し、あとは『いつ行くか』を決定するだけである。

 だけ…って簡単に言うことだけはできるけど…。


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