<Erstes Ergänzungswerk>
「化学者たちのパズルゲーム 第一補遺」です。COSY以外のテクニックについて直積演算子法で解析していきます。
ページを書いていくのにも必要なのでもう一度載せておきます。
A/H |
ωE |
ωIx |
ωIy |
ωIz |
E |
E |
E |
E |
E |
Ix |
Ix |
Ix |
Ixcosωt - Izsinωt |
Ixcosωt + Iysinωt |
Iy |
Iy |
Iycosωt + Izsinωt |
Iy |
Iycosωt -Ixsinωt |
Iz |
Iz |
Izcosωt - Iysinωt |
Izcosωt +Ixsinωt |
Iz |
A/H |
2πJIzSz |
Ix |
IxcosπJt + 2IySzsinπJt |
Iy |
IycosπJt - 2IxSzsinπJt |
2IxSz |
2IxSzcosπJt + IysinπJt |
2IySz |
2IySzcosπJt - IxsinπJt |
Sx |
SxcosπJt + 2IzSysinπJt |
Sy |
SycosπJt - 2IzSxsinπJt |
2IzSx |
2IzSxcosπJt + SysinπJt |
2IzSy |
2IzSycosπJt - SxsinπJt |
そのほか |
変化しない |
3スピン以上の系の直積演算子は、2スピン系の直積演算子を拡張することで得ることができます。
まず、磁場や化学シフトについてのハミルトニアンIx,Iy,Izに関しては2スピン系同様に積の要素に独立に働きます。つまり例えばI1xI2xI3xにI1zを作用させればI2xI3xは変化せずにI1xだけが変化し、I1xI2xI3xcosωt + I1yI2xI3xsinωtと時間変化します。
スピン結合のハミルトニアンI1zI2zに関しては、I1,I2の積の部分にだけ働きます。例えば4I1xI2zI3zにI1zI2zを作用させればI3zは変化せずにI1xI2zだけが変化し、4I1xI2zI3zcos πJt + 2I1yI3zsin πJtとなります。 また、4I1xI2xI3xにI1zI2zを作用させてもI1xI2xはI1zI2zによっては変化しないので何の変化も起こりません。
NMRにおいては複数のパルスを使う測定がしばしばあります。ここに2つのスピンがあり、それぞれω1とω2というLarmor周波数を持っていたとします。最初に90度xパルスを当てると磁化ベクトルはy軸上に倒れ、それぞれのLarmor周波数で回転を始めます。もし、ここに第2のパルスを当てるとどうなるでしょう。2つのスピンは違ったLarmor周波数で回転していますから、違う方向を向いているはずです。例えば片方のスピンはy軸上にあるときに、もう一方はx軸上にあるかもしれません。ここに90度xパルスを当てたとすると前者はz軸上に回転しますが、後者はx軸上のままです。このように複数のパルスを使う測定においてはLarmor周波数によってパルスの効果が違ってしまうことが起こり得ます。これを避けるために使われるテクニックが次のようなものです。
まず単独のスピンIを考えます。この系に対して次のようなパルスを当てます。
まず最初はρ0 = Izです。これに90度xパルスを当てるとρ1 = -Iy となります。次に、τ時間待つとρ2= -( Iycos (ω0-ωI) τ -Ixsin (ω0-ωI) τ)。ここに180度yパルスを当てるとρ3= -(Iycos (ω0-ωI) τ +Ixsin (ω0-ωI) τ)。さらにτ時間待つと、ρ4 = -Iy となります。
この結果は、「τ時間待つ-180度yパルスを当てる-τ時間待つ」という操作を行うとどのようなLarmor周波数ωを持つスピンでも再びy軸上に揃えられることを示しています。このような操作を再結像といいます。また、この様子を観測すると2τ時間前の磁化が再び観測できるわけです。ちょうどこれは山びこが聞こえるようなのでスピンエコーといいます。
次に2つの化学シフトが異なりカップリングしているスピンI、Sを考えます。
この系に対して先ほどと同様のパルスを当てます。
まず最初はρ0 = Iz + Szです。これに90度xパルスを当てるとρ1 = -Iy - Syとなります。つぎにτ時間待つと化学シフトとカップリングによりρ2= -( (Iycos πJτ - 2IxSzsin πJτ)cos (ω0-ωI) τ -(Ixcos πJτ + 2IySzsin πJτ)sin (ω0-ωI) τ)-( (Sycos πJτ - 2IzSxsin πJτ)cos (ω0-ωS) τ -(Sxcos πJτ + 2IzSysin πJτ)sin (ω0-ωS) τ)となります。
ここで180度yパルスを当てるとρ3= -( (Iycos πJτ - 2IxSzsin πJτ)cos (ω0-ωI) τ +(Ixcos πJτ + 2IySzsin πJτ)sin (ω0-ωI) τ)-( (Sycos πJτ - 2IzSxsin πJτ)cos (ω0-ωS) τ +(Sxcos πJτ + 2IzSysin πJτ)sin (ω0-ωS) τ)となります。
ここでτ時間待つと、化学シフトとカップリングによって密度演算子は時間変化します。まず化学シフトの効果を考えますが、Iycosωτ+Ixsinωτ→Iy、Ixcosω τ - Iysinω τ→Ixになることに注意すると、ρ4= -(Iycos πJτ - 2IxSzsin πJτ)-( Sycos πJτ- 2IzSxsin πJτ)。さらにカップリングの効果でρ5= -(Iycos 2πJτ - 2IxSzsin 2πJτ)-( Sycos 2πJτ- 2IzSxsin 2πJτ)となります。
ρ1 →ρ5の結果を見ると、化学シフトによる時間変化は消滅しており、カップリングによる時間変化はそのまま2τ時間分働いていることが分かります。つまり180度yパルスによって化学シフトだけが再結像されたことが分かります。
一方、180度yパルスをスピンSにだけ当てた場合を考えます(これは普通はIとSが異なる核であるときに可能です)。ρ3' = -( (Iycos πJτ + 2IxSzsin πJτ)cos (ω0-ωI) τ -(Ixcos πJτ - 2IySzsin πJτ)sin (ω0-ωI) τ)-( (Sycos πJτ + 2IzSxsin πJτ)cos (ω0-ωS) τ+(Sxcos πJτ - 2IzSysin πJτ)sin (ω0-ωS) τ)となります。τ時間待つと、まず化学シフトの効果を考えると、Iycosωτ+Ixsinωτ→Iy、Ixcosω τ - Iysinω τ→Ixになることに注意すると、ρ4' = -( (Iycos πJτ + 2IxSzsin πJτ)cos2 (ω0-ωI) τ -(Ixcos πJτ - 2IySzsin πJτ)sin 2(ω0-ωI) τ)-( Sycos πJτ + 2IzSxsin πJτ)。さらにカップリングの効果でρ5= -( (Iycos2 (ω0-ωI) τ -Ixsin 2(ω0-ωI) τ)-Syとなります。
この場合にはスピンIについてはカップリングだけが再結像され、スピンSについては化学シフト、カップリングともに再結像されたことが分かります。このようにして化学シフト、カップリングのどちら(あるいは両方)を再結像させるかを選択することができます。
パルスシーケンスを選べば、化学シフト、カップリングのどちら(あるいは両方)を再結像させるかを選択することができますから、化学シフトとカップリングを分離することができます。
上で書いた方法「90度xパルスを当てる→t1/2時間待つ→180度yパルスを当てる→t1/2時間待つ」により、まず最初に化学シフトのみを再結像します。するとρ= -(Iycos πJt1 - 2IxSzsin πJt1)-(Sycos πJt1- 2IzSxsin πJt1)となります。
続いて、これをそのまま化学シフトとカップリングで時間変化させれば(その時間をt2とする)、ρ= -((Iycos (ω0-ωI) t2 -Ixsin (ω0-ωI) t2)cos πJ(t1+t2)- (2IxSzcos (ω0-ωI) t2 +2IySzsin (ω0-ωI)t2)sin πJ(t1+t2))-((Sycos (ω0-ωS) t2-Sxsin (ω0-ωS) t2)cos πJ(t1+t2))- (2IzSxcos (ω0-ωS) t2 +2IzSysin (ω0-ωS)t2)sin πJ(t1+t2))となります。
すると<Iy> = -cos πJt1cos (ω0-ωI) t2cos πJt2 + sin πJt1cos (ω0-ωI) t2sin πJt2となり、2次元フーリエ変換によって(1/2((ω0-ωI) +πJ), πJ)、(1/2((ω0-ωI) -πJ), -πJ)にピークを与えることが分かります。実際にはコンピュータ上にて(x,y)のピークを(2(x-y), y)にずらしてプロットするようにしてやることで、(ω0-ωI, πJ)、(ω0-ωI, -πJ)にピークが現れるチャートを作り出すことができます。これがJ分解スペクトルで、カップリングによって分裂したシグナルが重なり合って複雑になっているスペクトルを解析するのに役立ちます。
もう一つ再結像のパルスシーケンスを利用する重要な測定があります。それは13Cに結合している1Hの数を決定する測定法です。古くはこれは1Hを弱くデカップリングしてJ値の大きいカップリングだけがスペクトルに現れるようにすることによって測定していました(オフレゾナンス・デカップリング)。しかしこの方法では分裂によってピークの高さが減少するため測定時間が多くなったり、分裂したピーク同士が重なり合って解析が難しくなったりするという問題があります。そこで結合している1Hの数によってピークが正になったり負になったりすることで識別できるようにする実験法が開発されました。最もその中で基本的なものがAPTです。APTのパルスシーケンスは
というものです。これを直積演算子法によって記述してみます。スピン Iを13C、スピンS1、S2、S3をその13Cに結合している1Hとします。また IとS1、S2、S3のカップリング定数はそれぞれ等しくJであるとします。(一般的にFIDを観測する核をI、その核の相互作用相手をSとする習慣があります。)
まず最初はρ0 = Iz です。ここに90度xパルスを当てるとρ1 = -Iyとなります。ここで1/J時間待ちますが、その際のハミルトニアンH = (ω0-ωI)Iz + 2πJIzS1z+2πJIzS2z+2πJIzS3zとなります(Sn:nは結合している1Hの数までとる)。まず化学シフトによってρ2 (n=0) = -( Iycos (ω0-ωI) /J -Ixsin (ω0-ωI) /J)となります。
次にS1とのカップリングによってρ3 (n=1) = -((Iycos π - 2IxS1zsin π)cos (ω0-ωI) /J -(Ixcos π + 2IyS2zsin π)sin (ω0-ωI) /J) = = Iycos (ω0-ωI) /J -Ixsin (ω0-ωI) /Jとなります。
さらにS2とのカップリングによってρ3 (n=2) = ( Iycos π - 2IxS2zsin π)cos (ω0-ωI) /J -(Ixcos π + 2IyS2zsin π)sin (ω0-ωI) /J = -(Iycos (ω0-ωI) /J -Ixsin (ω0-ωI) /J)となります。
さらにS3とのカップリングによってρ3 (n=3) = -(( Iycos π - 2IxS3zsin π)cos (ω0-ωI) /J -(Ixcos π + 2IyS3zsin π)sin (ω0-ωI) /J) = Iycos (ω0-ωI) /J -Ixsin (ω0-ωI) /Jとなります。
結局のところρ2 はn = 0,2で-( Iycos (ω0-ωI) /J -Ixsin (ω0-ωI) /J)となり、n = 1,3でIycos (ω0-ωI) /J -Ixsin (ω0-ωI) /Jとなることが分かります。
ここで180度xパルスを当てるとρ3はn = 0,2ではIycos (ω0-ωI) /J +Ixsin (ω0-ωI) /Jとなり、n = 1,3では-Iycos (ω0-ωI) /J -Ixsin (ω0-ωI) /J。さらにSnをデカップリングするとその際のハミルトニアンはカップリングの項が消滅してH = (ω0-ωI)Izとなります。その状態で1/J時間待つと、なのでρ4はn = 0,2ではIy、n = 1,3では-Iyに再結像します。これはすなわちn= 0,2とn=1,3は逆の符号のピークを与えることを意味しています。
I、Sが異なる核である場合について次のようなパルスシーケンスを考えます。
まずρ0 = ΔwS Sz + ΔwI Izです。ここで Δwはそれぞれのスピンの|+>と|->の占有確率の差です。Sに90度xパルスを当てると、ρ1 = -ΔwS Sy + ΔwI Iz。さらに1/4J時間後の時間変化はρ2= -ΔwS ( (Sycos π/4 - 2SxIzsin π/4)cos (ω0-ωS) 1/4J -(Sxcos π/4+ 2SyIzsin π/4)sin (ω0-ωS) 1/4J)+ΔwI Iz。S、I両方に180度xパルスを当てると、ρ3= -ΔwS ( -(Sycos π/4 - 2SxIzsin π/4)cos (ω0-ωS) 1/4J - (Sxcos π/4+ 2SyIzsin π/4)sin (ω0-ωS) 1/4J)-ΔwI Iz。さらに1/4J時間後の時間変化はρ4= -ΔwS ( -Sycos π/2 + 2SxIzsin π/2)-ΔwI Iz = -ΔwS 2SxIz -ΔwI Izとなり化学シフト変調が消去されると同時に2SxIzという項のみが取り出されることが分かります。
ここでSに90度yパルスを当て、Iに90度xパルスを当てるとρ5= -ΔwS 2SzIy + ΔwI Iy。この時間変化はρ6= -ΔwS ((2SzIycos πJt - Ixsin πJt)cos (ω0-ωI) t -(2SzIxcos πJt + Iysin πJt)sin (ω0-ωI) t) + ΔwI ((Iycos πJt - 2SzIxsin πJt)cos (ω0-ωI) t -(Ixcos πJt + 2SzIysin πJt)sin (ω0-ωI) t) 。よって<Iy> = ΔwSsin πJt sin (ω0-ωI) t +ΔwI cos πJtcos (ω0-ωI) t。
一方、Sに-90度yパルスを当て、Iに-90度xパルスを当てるとρ5= -ΔwS 2SzIy - ΔwI Iyとなり、<Iy> = ΔwSsin πJt sin (ω0-ωI) t -ΔwI cos πJtcos (ω0-ωI) になります。この2つの磁化を足しあわせると<Iy> = 2ΔwSsin πJt sin (ω0-ωI) t 。
INEPTはSz →-Sy→-2SxIz →-2SzIy→-Iyというように演算子が変化していますから、コヒーレンス移動の実験の一種です。また、コヒーレンス移動に伴ってSの分極(|+>と|->の占有数の差ΔwS)が最終的にIに移動しています。これを分極移動といいます。単純にIを2回測定して磁化を足しあわせた場合には<Iy> = -2ΔwIcos πJt cos (ω0-ωI) tですから、分極移動によってスペクトルの強度をΔwS/ΔwI = γS/γI倍になるわけです(SとIがカップリングしている場合にだけですが)。すなわちSとして1Hや19Fのようなγの大きい(つまり感度の高い)核、Iとして13Cや15Nのようなγの小さい(つまり感度の低い)核を選ぶとIの感度を大幅に向上することができます。
上で述べたINEPTは2スピン系のものでした。しかしINEPTの利用が最も多い13Cにおいては2スピン系(CH)以外に3スピン系(CH2)、4スピン系(CH3)が存在します。これらの場合はどのような挙動を示すのでしょうか?
INEPTにおいてスピン Iを13C、スピンS1、S2、S3をその13Cに結合している1Hとします(Sn: nは結合している水素の数までとる)。また SとI1、I2、I3のカップリング定数はそれぞれ等しくJであるとします。
まず最初は、ρ0 = ΔwS S1z + ΔwS S2z + ΔwS S3z + ΔwIIzです(以下すべて ΔwSがかかっている項は最初から水素の数だけとる)。Sに90度xパルスを当てると、これがρ1 = -ΔwS S1y - ΔwS S2y - ΔwS S3y + ΔwIIzとなります。ここで1/4J時間待つと、まず化学シフトによりρ2 = -ΔwS ( S1ycos (ω0-ωS) 1/4J -S1xsin (ω0-ωS) 1/4J) -ΔwS ( S2ycos (ω0-ωS) 1/4J -S2xsin (ω0-ωS) 1/4J) -ΔwS ( S3ycos (ω0-ωS) 1/4J -S3xsin (ω0-ωS) 1/4J) + ΔwIIzとなります。
次にS1とIのカップリングによりρ3 = -ΔwS ( (S1ycos π/4 - 2S1xIzsin π/4)cos (ω0-ωS) 1/4J -(S1xcos π/4 + 2S1yIzsin π/4)sin (ω0-ωS) 1/4J) -ΔwS ( S2ycos (ω0-ωS) 1/4J -S2xsin (ω0-ωS) 1/4J) -ΔwS ( S3ycos (ω0-ωS) 1/4J -S3xsin (ω0-ωS) 1/4J) + ΔwIIzとなります。次にS2とIのカップリングによりρ4 = -ΔwS ( (S1ycos π/4 - 2S1xIzsin π/4)cos (ω0-ωS) 1/4J -(S1xcos π/4 + 2S1yIzsin π/4)sin (ω0-ωS) 1/4J) -ΔwS ((S2ycos π/4 - 2S2xIzsin π/4)cos (ω0-ωS) 1/4J -(S2xcos π/4 + 2S2yIzsinπ/4)sin (ω0-ωS) 1/4J) -ΔwS ( S3ycos (ω0-ωS) 1/4J -S3xsin (ω0-ωS) 1/4J) + ΔwIIzとなります。次にS3とIのカップリングによりρ5 = -ΔwS ( (S1ycos π/4 - 2S1xIzsin π/4)cos (ω0-ωS) 1/4J -(S1xcos π/4 + 2S1yIzsin π/4)sin (ω0-ωS) 1/4J) - ΔwS ((S2ycos π/4 - 2S2xIzsin π/4)cos (ω0-ωS) 1/4J -(S2xcos π/4 + 2S2yIzsin π/4)sin (ω0-ωS) 1/4J) -ΔwS((S3ycos π/4 - 2S3xIzsin π/4)cos (ω0-ωS) 1/4J -(S3xcos π/4 + 2S3yIzsin π/4)sin (ω0-ωS) 1/4J) + ΔwIIzとなります。結局のところこの場合にはS1、S2、S3はスピン結合によってそれぞれ独立に時間変化することになるわけです。
S1、S2、S3は独立に時間変化するわけですから、S、Iに180度xパルスを当て、1/4J時間待つとρ6 = -ΔwS 2S1xIz -ΔwS 2S2xIz -ΔwS 2S3xIz -ΔwI Izに再結像します。ここでSに90度yパルスを当て、Iに90度xパルスを当てるとρ7= -ΔwS 2S1zIy -ΔwS 2S2zIy -ΔwS 2S3zIy + ΔwI Iyとなり、3スピン系以上でもINEPTのコヒーレンス移動が起こることが分かります。
さてここでさらに
というパルスシーケンスを付け加えます。このようなパルスシーケンスをINEPT-Rといいます。
まずτ/2時間待つと化学シフトによってρ8= -ΔwS (2S1zIycos (ω0-ωI) τ/2 -2S1zIxsin (ω0-ωI) τ/2) -ΔwS (2S2zIycos (ω0-ωI) τ/2 -2S2zIxsin (ω0-ωI) τ/2) -ΔwS (2S3zIycos (ω0-ωI) τ/2 -2S3zIxsin (ω0-ωI) τ/2) + ΔwI (Iycos (ω0-ωI) τ/2 -Ixsin (ω0-ωI)τ/2)となります。
次にS1とIのカップリングによりρ9= -ΔwS ((2S1zIycos πJτ/2 - Ixsin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -(2S1zIxcos πJτ/2 + Iysin πJτ/2)sin (ω0-ωI) τ/2) -ΔwS (2S2z(Iycos πJτ/2 - 2S1zIxsin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -2S2z(Ixcos πJτ/2 + 2S1zIysin πJτ/2)sin (ω0-ωI) τ/2) -ΔwS (2S3z(Iycos πJτ/2 - 2S1zIxsin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -2S3z(Ixcos πJτ/2 + 2S1zIysin πJτ/2)sin (ω0-ωI) τ/2) + ΔwI ((Iycos πJτ/2 - 2S1zIxsin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -(Ixcos πJτ/2 + 2S1zIysin πJτ/2)sin (ω0-ωI)τ/2)となります。
次にS2とIのカップリングによりρ10= -ΔwS ((2S1z(Iycos πJτ/2 - 2S2zIxsin πJτ/2)cos πJτ/2 - (Ixcos πJτ/2 + 2S2zIysin πJτ/2)sin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -(2S1z(Ixcos πJτ/2 + 2S2zIysin πJτ/2)cos πJτ/2 + (Iycos πJτ/2 - 2S2zIxsin πJτ/2)sin πJτ/2)sin (ω0-ωI) τ/2) -ΔwS (((2S2zIycos πJτ/2 - Ixsin πJτ/2 cos πJτ/2 - 2S1z(2S2zIxcos πJτ/2 + Iysin πJτ/2 )sin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -(2(2S2zIxcos πJτ/2 + Iysin πJτ/2 )cos πJτ/2 + 2S1z(2S2zIycos πJτ/2 - Ixsin πJτ/2 )sin πJτ/2)sin (ω0-ωI) τ/2) -ΔwS (2S3z((Iycos πJτ/2 - 2S2zIxsin πJτ/2)cos πJτ/2 - 2S1z(Ixcos πJτ/2 + 2S2zIysin πJτ/2)sin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -2S3z((Ixcos πJτ/2 + 2S2zIysin πJτ/2)cos πJτ/2 + 2S1z(Iycos πJτ/2 - 2S2zIxsin πJτ/2)sin πJτ/2)sin (ω0-ωI) τ/2) + ΔwI (((Iycos πJτ/2 - 2S2zIxsin πJτ/2)cos πJτ/2 - 2S1z(Ixcos πJτ/2 + 2S2zIysin πJτ/2)sin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -((Ixcos πJτ/2 + 2S2zIysin πJτ/2)cos πJτ/2 + 2S1z(Iycos πJτ/2 - 2S2zIxsin πJτ/2)sin πJτ/2)sin (ω0-ωI)τ/2)となります。
さらにS3とIのカップリングによりρ11= -ΔwS ((2S1z((Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)cos πJτ/2 - 2S2z(Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)sin πJτ/2)cos πJτ/2 - ((Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)cos πJτ/2 + 2S2z(Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)sin πJτ/2)sin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -(2S1z((Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)cos πJτ/2 + 2S2z(Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)sin πJτ/2)cos πJτ/2 + ((Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)cos πJτ/2 - 2S2z(Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)sin πJτ/2)sin πJτ/2)sin (ω0-ωI) τ/2) -ΔwS (((2S2z(Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)cos πJτ/2 - (Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)sin πJτ/2 cos πJτ/2 - 2S1z(2S2z(Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)cos πJτ/2 + (Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)sin πJτ/2 )sin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -(2(2S2z(Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)cos πJτ/2 + (Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)sin πJτ/2 )cos πJτ/2 + 2S1z(2S2z(Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)cos πJτ/2 - (Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)sin πJτ/2 )sin πJτ/2)sin (ω0-ωI) τ/2) -ΔwS ((((2S3zIycos πJτ/2 - Ixsin πJτ/2) cos πJτ/2 - 2S2z (2S3zIxcos πJτ/2 + Iysin πJτ/2) sin πJτ/2)cos πJτ/2 - 2S1z((2S3zIxcos πJτ/2 + Iysin πJτ/2)cos πJτ/2 + 2S2z(2S3zIycos πJτ/2 - Ixsin πJτ/2) sin πJτ/2)sin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -(((2S3zIxcos πJτ/2 + Iysin πJτ/2)cos πJτ/2 + 2S2z(2S3zIycos πJτ/2 - Ixsin πJτ/2) sin πJτ/2)cos πJτ/2 + 2S1z((2S3zIycos πJτ/2 - Ixsin πJτ/2) cos πJτ/2 - 2S2z(2S3zIxcos πJτ/2 + Iysin πJτ/2)sin πJτ/2)sin πJτ/2)sin (ω0-ωI) τ/2) + ΔwI ((((Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)cos πJτ/2 - 2S2z(Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)sin πJτ/2)cos πJτ/2 - 2S1z((Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)cos πJτ/2 + 2S2z(Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)sin πJτ/2)sin πJτ/2)cos (ω0-ωI) τ/2 -(((Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)cos πJτ/2 + 2S2z(Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)sin πJτ/2)cos πJτ/2 + 2S1z((Iycos πJτ/2 - 2S3zIxsin πJτ/2)cos πJτ/2 - 2S2z(Ixcos πJτ/2 + 2S3zIysin πJτ/2)sin πJτ/2)sin πJτ/2)sin (ω0-ωI)τ/2)となります。
S、Iに180度xパルスを当て、再びτ/2時間待つと化学シフトが再結像されますからcos (ω0-ωS or I) τ/2→1、sin (ω0-ωS or I) τ/2→0、πJτ/2→πJτと置き換えた形になります。すなわち
ここから1Hをdecouplingしながら観測します。すると観測されるのはIx、Iyの項だけですから
上のINEPTのところで述べたようにΔwIIyの項は「Sに90度yパルスを当て、Iに90度xパルスを当てる」代わりに「Sに-90度yパルスを当て、Iに-90度xパルスを当て」たスペクトルと和をとると相殺することができます。すると<Ix>だけを観測することになります。
するとτの値によって<Ix>は次の表のようになります。つまりτ = 1/4Jのときは水素の結合していない炭素だけが消失、τ = 1/2Jのときは水素が1つ結合した炭素だけが現れ、τ = 3/4Jのときは水素が1つまたは3つの炭素が正、水素が2つ結合した炭素が負のピークで現れることが分かります。このようにしてINEPT-Rでも炭素数の区別を行うことができます(しかもコヒーレンス移動で感度が高くなっています)。
τ |
1/4J |
1/2J |
3/4J |
C |
0 |
0 |
0 |
CH |
0.707 |
1 |
0.707 |
CH2 |
1 |
0 |
-1 |
CH3 |
1.061 |
0 |
1.061 |
炭素に結合している水素の数が分かり、しかも感度が高いINEPT-Rですが大きな欠点があります。それはパルスの間の待ち時間が正確にカップリング定数Jに対応していないと、良い結果が得られないということです。待ち時間がJ値に正確に対応していない場合、コヒーレンス移動の効率が悪くなってピーク強度が低下したり、消えるはずのシグナル(τ=1/2JのときのCH2、CH3シグナル)が消えなかったりします。しかし、13C-1H間のJの値は120~250Hzと大きな幅を持っています(sp3、sp2炭素に限定しても120~190Hz)。そのためいくつかのJ値に対応するスペクトルを測定してみたり、J分解スペクトルと組み合わせて解析しないと解釈を誤る可能性があり面倒です。そこでDEPTというINEPT-Rとまったく同様の結果を与え、かつJ値が多少ずれていても良好なスペクトルが得られるパルスシーケンスが開発されました。現在この方法が炭素に結合している水素の数を知る標準的な手法になっています。
DEPTにおいてスピン Iを13C、スピンS1、S2、S3をその13Cに結合している1Hとします(Sn: nは結合している水素の数までとる)。また IとS1、S2、S3のカップリング定数はそれぞれ等しくJであるとします。DEPTのパルスシーケンスは
というものです。
まず最初は、ρ0 = ΔwS S1z + ΔwS S2z + ΔwS S3z + ΔwIIzです(以下すべて ΔwSがかかっている項は最初から水素の数だけとる)。Sに90度xパルスを当てると、これがρ1 = -ΔwS S1y - ΔwS S2y - ΔwS S3y + ΔwIIzとなります。ここで1/2J時間待つと、まず化学シフトによりρ2 = -ΔwS ( S1ycos (ω0-ωS) 1/2J -S1xsin (ω0-ωS) 1/2J) -ΔwS ( S2ycos (ω0-ωS) 1/2J -S2xsin (ω0-ωS) 1/2J) -ΔwS ( S3ycos (ω0-ωS) 1/2J -S3xsin (ω0-ωS) 1/2J) + ΔwIIzとなります。次にS1、S2、S3とIのカップリングによりρ3 = -ΔwS ( - 2S1xIzcos (ω0-ωS) 1/2J - 2S1yIzsin (ω0-ωS) 1/2J) - ΔwS ( - 2S2xIzcos (ω0-ωS) 1/2J - 2S2yIzsin (ω0-ωS) 1/4J) -ΔwS( - 2S3xIzcos (ω0-ωS) 1/2J - 2S3yIzsin (ω0-ωS) 1/2J) + ΔwIIzとなります。(INEPTのときと同様にこの場合にはS1、S2、S3がスピン結合によってそれぞれ独立に時間変化するからです。)
ここでSに180度xパルス、Iに90度xパルスを当てると、ρ3 = -ΔwS ( 2S1xIycos (ω0-ωS) 1/2J - 2S1yIysin (ω0-ωS) 1/2J) - ΔwS ( 2S2xIycos (ω0-ωS) 1/2J - 2S2yIysin (ω0-ωS) 1/4J) -ΔwS( 2S3xIycos (ω0-ωS) 1/2J - 2S3yIysin (ω0-ωS) 1/2J) - ΔwIIyとなります。ここで1/2J時間待つと、まずSの化学シフトによりρ4 = -ΔwS ( 2S1xIy )- ΔwS ( 2S2xIy ) -ΔwS( 2S3xIy ) - ΔwIIyとなり化学シフトの再結像が起こります。続いてIの化学シフトによりρ5 = -ΔwS ( 2S1xIycos (ω0-ωI) 1/2J -2S1xIxsin (ω0-ωI) 1/2J )- ΔwS ( 2S2xIycos (ω0-ωI) 1/2J -2S2xIxsin (ω0-ωI) 1/2J ) -ΔwS( 2S3xIycos (ω0-ωI) 1/2J -2S3xIxsin (ω0-ωI) 1/2J) - ΔwI(Iycos (ω0-ωI) 1/2J -Ixsin (ω0-ωI) 1/2J)となります。
さらにS1とIのカップリングによりρ6 = -ΔwS ( 2S1xIycos (ω0-ωI) 1/2J -2S1xIxsin (ω0-ωI) 1/2J )- ΔwS ( 2S2x( - 2S1zIx)cos (ω0-ωI) 1/2J -2S2x(2S1zIy)sin (ω0-ωI) 1/2J ) -ΔwS( 2S3x( - 2S1zIx)cos (ω0-ωI) 1/2J -2S3x(2S1zIy)sin (ω0-ωI) 1/2J) - ΔwI(( - 2S1zIx)cos (ω0-ωI) 1/2J -(2S1zIy)sin (ω0-ωI) 1/2J)となります。
さらにS2とIのカップリングによりρ7 = -ΔwS ( 2S1x( - 2S2zIx)cos (ω0-ωI) 1/2J -2S1x(2S2zIy)sin (ω0-ωI) 1/2J )- ΔwS ( 2S2x( - 2S1zIx)cos (ω0-ωI) 1/2J -2S2x(2S1zIy)sin (ω0-ωI) 1/2J ) -ΔwS( 2S3x( - 2S1z(2S2zIy))cos (ω0-ωI) 1/2J -2S3x(2S1z( - 2S2zIx))sin (ω0-ωI) 1/2J) - ΔwI(( - 2S1z(2S2zIy))cos (ω0-ωI) 1/2J -(2S1z( - 2S2zIx))sin (ω0-ωI) 1/2J)となります。
さらにS3とIのカップリングによりρ8 = -ΔwS ( 2S1x( - 2S2z(2S3zIy))cos (ω0-ωI) 1/2J -2S1x(2S2z( - 2S3zIx))sin (ω0-ωI) 1/2J )- ΔwS ( 2S2x( - 2S1z(2S3zIy))cos (ω0-ωI) 1/2J -2S2x(2S1z( - 2S3zIx))sin (ω0-ωI) 1/2J ) -ΔwS( 2S3x( - 2S1z(2S2zIy))cos (ω0-ωI) 1/2J -2S3x(2S1z( - 2S2zIx))sin (ω0-ωI) 1/2J) - ΔwI(( - 2S1z(2S2z( - 2S3zIx)))cos (ω0-ωI) 1/2J -(2S1z( - 2S2z(2S3zIy)))sin (ω0-ωI) 1/2J)となります。
ここからは炭素に結合している水素の数によって場合分けして考えます。
1)結合している水素が0個
ρ5 = - ΔwI(Iycos (ω0-ωI) 1/2J -Ixsin (ω0-ωI) 1/2J)で、ここにSに45度、90度、135度yパルスのいずれかを当て、Iに180度xパルスを当てるとρ = ΔwI(Iycos (ω0-ωI) 1/2J +Ixsin (ω0-ωI) 1/2J)となり、1/2J時間待つと、化学シフトが再結像してρ = ΔwIIyとなります。
2)結合している水素が1個
ρ6 = -ΔwS ( 2S1xIycos (ω0-ωI) 1/2J -2S1xIxsin (ω0-ωI) 1/2J ) - ΔwI(( - 2S1zIx)cos (ω0-ωI) 1/2J -(2S1zIy)sin (ω0-ωI) 1/2J)で、ここにSにφ度yパルスのいずれかを当て、Iに180度xパルスを当てるとρ = -ΔwS ( -2(S1xcos φ- S1zsinφ)Iycos (ω0-ωI) 1/2J -2(S1xcos φ- S1zsinφ)Ixsin (ω0-ωI) 1/2J ) - ΔwI(( - 2(S1zcos φ+ S1xsinφ)Ix)cos (ω0-ωI) 1/2J -(-2(S1zcos φ+ S1xsinφ)Iy)sin (ω0-ωI) 1/2J)。1/2J時間待つと、まずIの化学シフトによる時間変化でρ = ΔwS ( 2(S1xcos φ- S1zsinφ)Iy) + ΔwI(2(S1zcos φ+ S1xsinφ)Ix)。Sの化学シフトによる時間変化でρ = ΔwS ( 2((S1xcos (ω0-ωS) 1/2J + S1ysin (ω0-ωS) 1/2J)cos φ- S1zsinφ)Iy) + ΔwI(2(S1zcos φ+(S1xcos (ω0-ωS) 1/2J + S1ysin (ω0-ωS) 1/2J)sinφ)Ix)。さらにS1とIのカップリングによりρ= ΔwS ( 2((S1xIycos (ω0-ωS) 1/2J + S1yIysin (ω0-ωS) 1/2J)cos φ+ 1/2Ixsinφ)) + ΔwI(2(1/2Iycos φ+(S1xIxcos (ω0-ωS) 1/2J + S1yIxsin (ω0-ωS) 1/2J)sinφ))。
3)結合している水素が2個
ρ7 = -ΔwS ( 2S1x( - 2S2zIx)cos (ω0-ωI) 1/2J -2S1x(2S2zIy)sin (ω0-ωI) 1/2J )- ΔwS ( 2S2x( - 2S1zIx)cos (ω0-ωI) 1/2J -2S2x(2S1zIy)sin (ω0-ωI) 1/2J ) - ΔwI(( - 2S1z(2S2zIy))cos (ω0-ωI) 1/2J -(2S1z( - 2S2zIx))sin (ω0-ωI) 1/2J)で、ここにSにφ度yパルスのいずれかを当て、Iに180度xパルスを当てるとρ = -ΔwS ( 2(S1xcos φ- S1zsinφ)( - 2(S2zcos φ+ S2xsinφ)Ix)cos (ω0-ωI) 1/2J +(S1xcos φ- S1zsinφ)(2(S2zcos φ+ S2xsinφ)Iy)sin (ω0-ωI) 1/2J )- ΔwS ( 2(S2xcos φ- S2zsinφ)( - 2(S1zcos φ+ S1xsinφ)Ix)cos (ω0-ωI) 1/2J +(S2xcos φ- S2zsinφ)(2(S1zcos φ+ S1xsinφ)Iy)sin (ω0-ωI) 1/2J ) - ΔwI((2(S1zcos φ+ S1xsinφ)(2(S2zcos φ+ S2xsinφ)Iy))cos (ω0-ωI) 1/2J -(2(S1zcos φ+ S1xsinφ)( - 2(S2zcos φ+ S2xsinφ)Ix))sin (ω0-ωI) 1/2J)。1/2J時間待つと、まずIの化学シフトによる時間変化でρ = -ΔwS ( 2(S1xcos φ- S1zsinφ)( - 2(S2zcos φ+ S2xsinφ)Ix))- ΔwS ( 2(S2xcos φ- S2zsinφ)( - 2(S1zcos φ+ S1xsinφ)Ix)) - ΔwI((2(S1zcos φ+ S1xsinφ)(2(S2zcos φ+ S2xsinφ)Iy)))。Sの化学シフトによる時間変化でρ =-ΔwS ( 2((S1xcos (ω0-ωS) 1/2J + S1ysin (ω0-ωS) 1/2J)cos φ- S1zsinφ)( - 2(S2zcos φ+ (S2xcos (ω0-ωS) 1/2J + S2ysin (ω0-ωS) 1/2J)sinφ)Ix))- ΔwS ( 2((S2xcos (ω0-ωS) 1/2J + S2ysin (ω0-ωS) 1/2J)cos φ- S2zsinφ)( - 2(S1zcos φ+ (S1xcos (ω0-ωS) 1/2J + S1ysin (ω0-ωS) 1/2J)sinφ)Ix)) - ΔwI((2(S1zcos φ+ (S1xcos (ω0-ωS) 1/2J + S1ysin (ω0-ωS) 1/2J)sinφ)(2(S2zcos φ+ (S2xcos (ω0-ωS) 1/2J + S2ysin (ω0-ωS) 1/2J)sinφ)Iy)))…この後S1とIのカップリング、S2とIのカップリングを作用させますが、あまりにも複雑なので省略します。重要なのは最終的に導かれるρの中で観測されうる項がρ= 2ΔwSIxcos φ sin φ+ ΔwI Iycos φ cos φだということです。
4)結合している水素が3個
…あまりに複雑なため省略します…重要なのは最終的に導かれるρの中で観測されうる項がρ= 3ΔwSIxcos φ cos φ sin φ + ΔwI Iycos φ cos φ cos φだということです。
ここから1Hをdecouplingしながら観測します。すると観測されるのはIx、Iyの項だけですから
INEPTの結果と見比べると πJτがすべてパルス幅φに置き換わっていることが分かります。このようにすることでJ値に依存しないで良好なスペクトルを得ることができるわけです。