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空間宝貝「香水陣」!

香料物質の大事典(をめざす)ページ

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注意

 こっちも本気で書くと収拾がつかなくなりそうなので官能基別に分類しました。必ずしも適当な分類とは言えないが(複数官能基を持つものはなるべく後ろ側の分類に記載)。

 ここに載っているのは市場に出回っている合成香料や天然香料中の重要な成分の一部です(それも匂いが特徴的で説明しやすいものばかり)。市場に出回っていないような合成香料も数多くあるという話(日本での使用が判明している食品香料については日本香料工業会(JFFMA)のページに記載があります)。

 この事典では故意に(主に香料業界での)化合物の慣用名(商標?)を多用しています。これはそれらの名前からその化合物の由来、香気の特徴が分かることが多いためです。なお香料業界では一般的にIUPAC系統名の使用が嫌われます。これは系統名では類似した化合物名が多発し非常に調合ミスを起こしやすいことが理由と思われます。最近では工場ではバーコード認証を使った調合システムとかも使われているので徐々にIUPAC名が使われるようになっていくかもしれませんが。

炭化水素

ピネン
pinene
テレビン油の主成分で、においも松の香りである(左がα体、右がβ体)。ウッディな香料の他、ゲラニオール、リナロール、シトロネロール等、他の合成香料の原料として利用されている。
ベルドラシン
verdoracine
天然には知られていない。ベチバーやゴボウを思わせるような根っこ的な香りでやや灯油臭いようなところがある。
リモネン
limonene
レモン、オレンジ等柑橘類の精油の主成分である。弱いファンタ・オレンジ様の香気を持つ。柑橘類に含まれるのはd体(左の構造式)だが、ミント類にはl体が、テレビン油や樟脳油にはラセミ体が存在する。

エーテル

アネトール
anethole
アニス、フェンネル、スターアニスといったスパイスに含まれる。甘く清涼感を伴ったスパイス香気を持つ(つぶしお歯磨きがこの系統の香りのものが多い)。味も歯磨き粉的な甘い感じ。日本ではこのくらいしかなじみがないが(民族的に受けつけない香りらしい)、中国では五香粉の香り(チャーシューとかに使われる)として、ヨーロッパではケーキやキャンディーにも使用するそうである。
アンブロキサン
ambroxane
龍涎香(アンバーグリス:マッコウクジラの消化器官にできる結石)の香気成分でアンバーグリスの主成分(アンブレイン)の分解で生成すると考えられる。捕鯨の禁止されている現在ではアンバーグリスの入手はほとんど不可能であるためにアンブロキサン、アンブロックスといった合成香料でまかなわれている。なおアンブロックスもアンブロキサンと同じ化合物である。龍角散のような粉薬を思わせる非常に粉っぽくほのかに甘い香りがする。
インドラローメ
indorarome
着変色の激しいインドールの代用として開発された合成香料。インドール的な匂いであるがイメージは結構違う。結晶状態では血や鉄錆を思わせるメタリックなノートがある。希釈状態ではコールタールのようなノートがある。
エストラゴール
estragole
しばしばメチルチャビコールとも呼ばれる。アニスやバジルなどに含まれ、エストラゴン(タラゴン)の主な香気成分である。バジル特有のハーブ様の香気を持っている。
ガラクソリド
galaxolide
合成ムスクの中で最も多く使用されている香料。天然には存在しない。他のムスク香料とは違った乾いたウッディな感じを併せ持っている。
p-クレジルメチルエーテル
cresyl methyl ether
イランイランやナルシサスに含まれる。少しクレゾール臭いが、それらの花を思わせる甘い香りを持つ。
1,8-シネオール
cineole
ユーカリプトールとも呼ばれるとおりユーカリの葉の香りの主成分である。他にローズマリーやセージ、ローレル(月桂樹)といったハーブの香りでもある。メンソレータムのような清涼感の強い香り。
フロロパール
floropal
天然には存在しない。グレープフルーツの果汁のような香りがする。ボディソープやシャンプーなどに多用されている。
メチルオイゲノール
methyl eugenol
バジル、シナモン、ピメント、クローブなどに含まれる。きなこのような甘くて粉っぽい匂いを持つ。最近動物実験で弱い発がん性が指摘されたため使用が自主規制されている。
ヤラヤラ
yara yara
このふざけた名前の香料はオレンジフラワー様の香りといわれる(ただしオレンジフラワー・アブソリュートやネロリ・オイルとはかなり匂いが異なる)。オレンジピールとグレープの果肉を足して2で割ったような匂いで、アントラニル酸メチルと同じように薬臭いざらざらした感じがある。虫さされ薬ウナコーワを思わせる香り。
ローズオキサイド
rose oxide
ローズやゼラニウムから見いだされている。ゼラニウムの葉もしくは一味唐辛子のようなグリーンな香りがする。異性体の中で一番香りが強く質も良いのは左のl-cis体とされている。

アルコール

青葉アルコール
leaf alcohol
cis-3-ヘキセノール。多くの生葉、野菜、果実に存在する。生のナスをかじったときに口の中に広がる青臭い香り。なお青葉アルコールは異性体のtrans-2-ヘキセノールを指すこともある(こちらは未熟なアップル的なニュアンスのグリーン香気を持つ)。
イソアミルアルコール
isoamyl alcohol
酒類の重要香気成分で、多くの果物などにも含まれる。天然香料として使用されるフーゼル油(蒸留酒や食品工業用のエタノールを製造するときに蒸留釜に残る成分)はこの物質と異性体の2-メチルブタノールが主成分である。安っぽい辛口の日本酒のような匂いがする。
イソカンフィルシクロヘキサノール
isocamphyl cyclohexanol
サンダルウッドオイルの代替の合成香料として最初に開発されたもので様々な商標(サンデラ、サンデオール、サンタレックスTなど)を持っている。香気本体は左の化合物とされているが、市販品中のこのものの純度は非常に低く7%程度らしい(残りの部分は無香のイソボルニルシクロヘキサノールなどの異性体)。ご飯のおこげのような香りを伴うサンダルウッドノート。
キュウリアルコール
cucumbar alcohol
cis-3-cis-6-ノナジエノール。スイカ、メロン、キュウリのような瓜の仲間に含まれる。またスミレの葉に含まれるためバイオレットリーフアルコールとも呼ばれる。スイカやメロンに特徴的なみずみずしくわずかに甘い香り。なお、cis-2-cis-6、trans-2-cis-6異性体なども同様にキュウリアルコールと呼ばれる。
ゲラニオール
geraniol
優雅なやわらかく甘いバラの花の香り。少しレモン的な雰囲気もある。
サンタロール
santarol
サンダルウッド(白檀)の主香成分。左がα体で右がβ体である。サンダルウッドは高価で年々生産量も減少している(栽培しようにも他の木に寄生するという特異な木である上、精油がとれるまで30年以上かかる)が、代替品としてサンタロールを合成することは困難であるため、別の合成香料が研究されている。
サンダロア
sandalore
Givaudan社が開発したサンダルウッド様香気を持つ合成香料。天然には見出されていない。イソカンフィルシクロヘキサノールよりも強く、よりサンダルウッドオイルに近い香りだが、液状糊が乾いたような匂いを伴う。この骨格を持つ化合物が現在のサンダルウッド代替香料の主流であり、サンタリノール(大洋香料)、バクダノール(IFF)、ブラーマノール(Dragoco)、ポリサントール(Firmenich)など各社が類似した化合物を開発している。
ジオスミン
geosmin
ギリシア語で土の臭いを意味する名前をもつ化合物で、よどんだ沼のようなかなり強い泥くさい臭いがある。水道水が泥臭くなる原因となっている化合物である。土中の放線菌や水中の藻類などが産生しているらしい。薄めるとほうれん草のおひたしを思わせるような臭いになる。
シトロネロール
citronellol
新鮮で刺激的なバラの花またはゼラニウムの葉の香り。なお特に左図のl体がローズの香りに重要な化合物であるのでロジノール(Rhodinol・・・ギリシア語のバラRhodonに由来。金属元素のロジウムもそうだが。)と呼ばれている。
ジヒドロミルセノール
dihydromyrcenol
天然には見いだされていない合成香料。テルピネオールと同じくライム的な爽快感のある香りだがウッディな感じがなく、リナロール的な甘さが強いためラムネのような感じ。スカッシュ感のある車用芳香剤や男性用オーデコロンなどに良く使用されている。
セドロール
cedrol
セダーウッド(俗に鉛筆の木とも言う)に含まれる。純度の高いものは焼香のような香りでアンバー調の香り。純度が若干落ちるとライムのような感じを伴う。
チンベロール
timberol
Dragoco社のスペシャリティーでアンバー調の香りがする。この手の香りのアンバー香料はほこりっぽくかび臭い感じしかしない人がときどきいる模様。環上の置換基は製法によりcisにもtransにもなりうるがtrans体の方が良好な香気といわれている。
テルピネオール
terpineol
ディスティルド・ライムオイルの香気成分として重要(普通、柑橘類は果皮の水蒸気蒸留によって精油を得ることはないのだが、ライムだけは例外でこれをディスティルド・ライムオイルという)。スプライトのような爽快感のある香りで針葉樹のようなウッディな感じがある。スズランやライラックの花の香りや森林の香りを調合するのにも使われる。異性体が多いが左のα体が最も香りの質が高いとされる。
ネロール
nerol
ゲラニオールの異性体であり、香りも類似する。ゲラニオールよりもローズ調の香りが弱く、水っぽく柑橘類のようなさわやかなみずみずしさを感じさせる部分がある。
ネロリドール
nerolidol
ネロリやペチグレイン、茶などに含まれている。緑茶の茎やペチグレインにある生木の枝を折った時に漂うグリーン・ウッディなノートの香りがする。
パチュリアルコール
patchouli alcohol
パチュリに含まれる。押入れの臭いがする(土臭く少しカンファー臭のあるウッディな香りとも言い換えられる)。あるいは仁丹の匂いにも近い。
β-フェネチルアルコール
phenethyl alcohol
ローズPという通称がある(この名前を使用するかどうかで香料業界人かどうかを見分けることができるといわれる)。ローズの香気の主成分。咲いてから時間のたったローズのような香り。グレープやピーチのような果物の果肉感もイメージさせる。
ベチベロール
vetiverol
ベチバーに含まれる。ゴボウとタバコのヤニとバニラを合わせたような独特のウッディで土臭く甘い香りを持つ。ベチベロールは単一の化合物名ではなく、主に左の4種の化合物からなる混合物である(他にも多数の成分を含む)。左から順にクシモール、クシノール、ベチセリノール、ビシクロベチベロール。オリエンタル系香水のラストノートに使用される。
ボルネオール
borneol
龍脳、ローズマリー、ラベンダーなどに含まれている。墨汁のような香りを持つ。
マツタケアルコール
matsutake alcohol
マツタケの香り。ちょっと苔むした土のような臭い。
メントール
menthol
薄荷、ペパーミントの主要香気成分。特有の爽快な冷涼感を与えるのは左図のl体だけである。最も需要の多い香料の一つであり食品、医薬品、たばこ、歯磨き、オーデコロン、化粧品などさまざまな製品に添加されている。
リナロール
linalool
ラベンダー、ネロリ、水仙、ベルガモット、芳樟、ボアドローズ、コリアンダー・シード等様々なものに含まれている。アールグレイの香りもベルガモットで着香した紅茶なのでこれが主成分。起源となる植物によって光学純度は大きく異なる。右図のl体はラベンダーなどに含まれ、ラベンダー様香気。光学異性体であるd体はコリアンダー・シードなどに含まれネロリ様の香気である。

フェノール

グアイアコール
guaiacol
クレオソート(コールタールの方じゃなくて木酢液の方)の香り。すなわち正露丸の臭いである。
オイゲノール
eugenol
クローブ(丁字)やピメント(オールスパイス)といったスパイスの香り。歯医者臭い(これは歯医者が歯の治療の際にクローブ油入りの薬を使っているからである)。ソースの香りにも大きな寄与をしている。あとはバナナの香りの甘い感じにも寄与している。
チモール
thymol
タイム(立麝香草)、オレガノ、マジョラムの香りの主成分。新しいゴムタイヤのような独特の匂いを伴った薬品臭い匂いである。
2,3,6-トリメチルフェノール
trimethylphenol
燻製の煙臭い匂いがする。

アルデヒド

青葉アルデヒド
leaf aldehyde
トマトの青臭さを思わせる強烈なグリーン調の香料。酸やアルカリに対してあまり安定でない。
アセトアルデヒド
acetaldehyde
ほとんどあらゆる果実、発酵食品に含まれる。酔っ払いの吐く息やカブトムシなどを飼っている入れ物、渋柿を思わせるような刺激臭がする。沸点が21℃しかなくすぐに揮散してしまうが、果物などをナイフで切った直後に漂うフレッシュな香りの重要な成分である。
アニスアルデヒド
anisaldehyde
アニス、フェンネルなどに含まれる。一部の有機合成の研究室ではTLCの呈色試薬として使用されているためおなじみの香りである。サンザシの香りといわれる。ベンズアルデヒドと同様にチェリーをイメージさせる香りだが、ずっとマイルドで粉っぽく甘味が強い(さくらんぼよりもアメリカンチェリー的な感じ)。
α-アミルシンナムアルデヒド
amylcinnamaldehyde
バスクリンのジャスミンの香りに非常に類似した香り。天然には見いだされていない。
アルデヒドC-8
octanal
オレンジの香りのキー成分の1つ。オレンジの香りだが、古くなった植物油のような臭みがある。
アルデヒドC-10
decanal
オレンジや香菜(シャンツァイ=コリアンダー・リーフ:中国やタイなどの料理に入っているカメムシ様の臭いのするハーブ)の香りのキー成分の1つ。オレンジの香りだが、ややカメムシ的な臭みがある。
アルデヒドC-11:1
undecenal
天然には見つかっていない。洗っていない髪の毛のような感じの臭いである(ややカメムシ的)。Chanel No.5の系統の化粧品の香料に使用される。
イソバレルアルデヒド
isovaleraldehyde
紅茶やチョコレートなどに含まれる重要香気成分。濃い状態ではプールの消毒を思わせるような鼻が痛くなる刺激臭がする。希釈状態では若干リンゴのような甘さを伴い紅茶の渋味やビターチョコの苦味を思い起こさせるような香り。
エチルバニリン(エチルワニリン)
ethyl vanillin
天然には見つかっていない。バニリンと良く似ているが、バニリンより2倍以上強い香気を持ち、変色しにくい。バニリンと併用で使用される。
キュウリアルデヒド
cucumbar aldehyde
trans-2-cis-6-ノナジエナール。スイカ、メロン、キュウリのような瓜の仲間に含まれる。またスミレの葉に含まれるためバイオレットリーフアルデヒドとも呼ばれる。切ったばかりのキュウリのような香り。なお、cis-3-cis-6、cis-2-cis-6異性体などもキュウリアルデヒドと呼ばれる。
クミンアルデヒド
cuminaldehyde
クミンの香気成分であり、カレーの重要な香気成分である。シソ様の香りをはじめに感じさせるが、カレー粉のスパイシーな香りとなる。一部に腋臭臭いという意見もあるが。
シクラメンアルデヒド
cyclamen aldehyde
メロンの皮の部分に似た感じの非常にグリーンな感じの強いスズランの香り。天然には花ではなくナツメグに微量含まれているという。
シトラール
citral
レモンの重要な香気成分であり、レモングラス(トムヤムクンの中に入っているレモンのような香りのする草)やレモンバーム(メリッサ)といったハーブの精油の主成分でもある。レモンのさわやかな香りを持つ。cis体ネラールとtrans体ゲラニアールの混合物である。
シトロネラール
citronellal
シトロネラの香り。山椒の重要な香気成分でもある。ゼラニウム的なニュアンスを持ったレモン様の香りである(つまりシトロネロールとシトラールの中間)。悪臭をマスキングする効果が強く、芳香剤にしばしば使用される。また、蚊の忌避効果があると言われている。英語で記載されるときはシトロネロール(CitronellOl)との間違いを避ける為CitronellAlと記載されることがある。
シンナミルアルデヒド
cinnamaldehyde
シナモン、カシアの甘くスパイシーな香り(八つ橋の香りである)。コーラなどにも使用される(コーラの基本はレモン+ライム+シナモン)。
バニリン(ワニリン)
vanillin
バニラ(ワニラ)の主な香気成分。ココア、チョコレート、アイスクリーム、焼き菓子などに広く使用されている。
ヒドロキシシトロネラール
hydroxy citronellal
天然には存在しない。スズランの香りとしばしば表現され、その系統の調合香料に使われる(スズラン調の香水はディオリッシモなどが有名)。蚊取りマットのような匂いを持つ。安定性があまり良くなく、アレルギーを起こすこともあるため最近は使用されなくなってきている。
フェニルアセトアルデヒド
phenylacetaldehyde
その名もずばりヒヤシンスアルデヒドという名の商標があるくらいで、ヒヤシンスの香りの調合に重要。フェニルエチルアルコール的なローズ調のフローラルな香りとtrans-2-ヘキセナール的な酸っぱいグリーンな香りを併せ持っている。酸、アルカリに対して不安定である欠点がある(そのためこれのジメチルアセタールで良く代用されるが、これはさらにワサビ的な刺激臭が加わった香りである)。
フルフラール
furfural
砂糖を含む食品を加熱調理することによって生成する。麦芽豆乳や甘栗のような甘さとプールの消毒液のようなつんと来る刺激臭を併せ持つ。精製するとほとんど無色だが、褐色に容易に変化する。
ヘリオトロピン
heliotropine
バニラなどに含まれている。ヘリオトロープ様の香りといわれる。鼻を近づけると弱い正露丸のような薬臭い香りがするが、鼻を遠ざけた瞬間に強いバニラの甘い残香を感じさせる。
ペリラアルデヒド
perillaldehyde
青しその香り。青しその他に柑橘類(特にユズ・カボスなど)にも含まれている。天然に存在するのは左のl体。
ベンズアルデヒド
benzaldehyde
ビターアーモンド、つまり杏仁豆腐の香り。アンズ・梅などの実やチェリーにも含まれる。
trans-2-ヘキセナール
tarns-2-hexenal
梅仁丹のような香り。リンゴやイチゴの香りに寄与している。なおこちらも異性体であるcis-3-ヘキセナールと同様に青葉アルデヒドと呼ばれることがある。
リラール
lyral
ヒドロキシシトロネラールと良く似たスズラン様香気を持つ合成香料。2種類の異性体の混合物である。天然には存在しない。安定性も良く、ヒドロキシシトロネラールと比較するとアレルギーの発生もあまりないとされる。

ケトン

アセトイン
acetoin
ヨーグルト様の酸っぱい香り。発酵乳製品に多く含まれる。
アセチルセドレン
acetyl cedrene
セダーウッド中に含まれるセスキテルペン炭化水素留分を原料として合成される。鉛筆を削った時に漂うようなウッディな香りを持っている。主成分はセドレンに由来する左の化合物であるがこれはほとんど無臭であり、香気の本体はツヨプセンに由来する右の化合物とされる。
イオノン
ionone
左がα体、右がβ体である。α体はスミレのフローラルな香りを持つ香料として重要。さらにベリー調のフルーティーな香りと岩海苔のようなニュアンスもあるウッディな香りを伴う。β体はよりウッディ感が強くクマリンのようなパウダリーな甘い香りがある。またビタミンAやβ-カロテンの合成原料として重要。
イソEスーパー
iso e super
天然には存在しない。IFF社が開発したアンバー香気の合成香料。ほこりっぽい香りで落雁を思わせるような甘さを持つ。主成分は左側の構造式のものだが、香気の本体は不純物として含まれる右側の化合物とされている。なお、イソシクレモンEというのも同じ物質であり、その異性体比率をコントロールしてより香気を強めたのがイソEスーパーである。
エチルマルトール
ethyl maltol
天然には見つかっていない。マルトールより6倍以上強い香気を持ち、溶媒への溶解性に優れる。マルトールと同様の用途に使用される。
オレンジクリスタル
orange crystal
ヤラヤラ同様オレンジフラワー様の香りといわれる(ただしオレンジフラワー・アブソリュートやネロリ・オイルとはかなり匂いが異なる)。オレンジピールとグレープの果肉を足して2で割ったような匂いであるが、ヤラヤラよりも匂いが弱く、薬臭い感じのないマイルドで繊細な香りである。
カシュメラン
cashmeran
IFF社のスペシャリティーケミカル。松の葉のようなウッディな香りと焼香のような香りと弱いムスク的な香気をあわせ持つ。
カルボン
carvone
l体はスペアミントの香り。ガムや歯磨き粉などに多用される。d体はキャラウェイに含まれる。こちらも少し歯磨き粉に使われる他、ライ麦パン、焼クッキー、ケーキなどに使用される。左の構造式はl体のもの。
カンファー
camphor
樟脳、カンフルとも呼ばれる。防虫剤・医薬品などに使用される。メンソレータムの臭いに近いがもっと土臭い感じ。
キャロン
calone
オゾン・ノートの素材として有名な合成香料。天然には存在しない。メロンの皮に近い部分のような、みずみずしい香りだが、グリーンな感じはあまりしない。
ジアセチル
diacetyl
バターを暖めたときの香り。発酵乳製品に多く含まれる。
シクロテン
cyclotene
その構造からメチルシクロペンテノロンとも呼ばれる(命名法の原則には合っていないが)。また、ラクトンではないがメープルラクトンと呼ばれることもある。麦茶のようなローストされた食物に含まれ、メープルシロップやカラメルのような香気を持つ。
シクロペンタデカノン
cyclopentadecanone
エキザルトンとも呼ばれる。霊猫香にも含まれるが主に合成で得られる。ムスコンに良く似ているがやや脂肪様の香りを持つ。ムスコン・シベトンの代用品である。
シベトン
civetone
霊猫香(シベット:ジャコウネコの香嚢から得られる)の主要香気成分。クレオパトラが媚薬として体に擦り込んでいたという。シベットも麝香と同様に希釈して保留剤として使用される。エチオピアではジャコウネコを飼育しておりシベットを得るのが産業となっているので、唯一の安定供給されている動物性香料といっても良い(生産量に限りがあるので相当高価だが)。
cis-ジャスモン
jasmone
ジャスミンの花の香りの重要な成分のひとつ。他に紅茶などにも含まれている。セロリのような焦げ臭い感じのスパイシーな香り。
ダマスコン
damascone
左からα体、β体、δ体である。α体とβ体はブルガリアローズ(ダマスクローズ)のアブソリュートから発見された。どちらも紅茶を思わせるような甘い香気を持っているが、α体の方には少しリンゴの皮や芯を思わせるグリーンウッディなクセが、β体にはカンファー調のウッディなクセがある。δ体はIFF社のスペシャリティーケミカルで天然には存在しない。β体と似ているがヨモギ様の香りがある。
ダマセノン
damascenone
ダマスコンと同じくブルガリアローズ(ダマスクローズ)のアブソリュートから発見された。一般的には左図のβ体のことを指す。ローズアブソリュートに微量含まれ、その優雅な甘さを出すキー成分である。リンゴの蜜を思わせるような甘い香気で湿った木を思わせるようなカンファー調のウッディノートを伴う。
トナリド
tonalid
ガラキソリドと同様に汎用されている合成ムスク香料。しばしば文献でTonalideとなっているがTonalidが本来正しい(PFW社(現在はGivaudanに吸収された)の登録商標)。ムスク香であるが、プラスチックを思わせるような香りを伴う。
ヌートカトン
nootkatone
グレープフルーツの主要香気成分。グレープフルーツの果肉入りゼリーをイメージさせる香り。味の面では低い濃度でもかなり強い苦味を持っていて、グレープフルーツ独特の苦みに貢献している(グレープフルーツの苦味成分はナリンジンなど他にもあるが)。一般的に流通しているのは粘性の高い液状だが、純度が高いものは体温程度で融解する結晶である。
フラネオール
furaneol
マルトールの異性体であり、イソマルトールとも呼ばれる。パイナップルやストロベリーから見出されており、ストロベリージャムの甘味を思わせるようなカラメル香気を持つ。
マルトール
maltol
綿菓子のにおいを持つ。からまつの樹皮、いちご、蒸し焼きした麦芽などに見いだされる。
ムスコン
muscone 
麝香(ムスク:ジャコウジカの雄の香嚢から得られる)の主要香気成分。ムスクは古代より媚薬として珍重された。ムスクは高濃度では不快な動物臭(インドールなどを含むためである)だが、希釈すると芳香となり香水に保留剤として使用される。現在ではジャコウジカの捕獲が禁止されているため天然の麝香は非常に高価であり使用は不可能に近い。そのため合成品もしくは代用品でまかなわれている。ムスコン自体は白粉のような芳香(もしくは石鹸の残り香)で動物臭はない。
ムスセノンデルタ
muscenone delta
Firmenich社のスペシャリティーケミカルでムスコン同様ムスク系のラストノートのために使用。ムスコンにコスタスオイル様の毛玉っぽいニュアンスの香りを伴っている。
メチルヘプチルケトン
methyl heptyl ketone
少しフルーティーな感じのブルーチーズの香りがする。発酵乳製品に含まれている。
メントン
menthone
ミント類に含まれ、ペパーミントに特に多い。天然に存在するのは左のl体がほとんどである。ペパーミントがマイルドで、薄荷がシャープな香りを持つ最大の違いはメントールとメントンの量比に起因すると思われる(ペパーミントは2:1くらいだが、薄荷では7:1くらい)。ペパーミント味の錠菓を思わせる香り。
ラズベリーケトン
raspberry ketone
文字通りラズベリーから発見された、ラズベリーの香りのキー成分である。ベリー類の軽いフルーティーな香り。

カルボン酸

イソ吉草酸
isovaleric acid
納豆様の臭い。むれた足の裏の臭いという人もいる・・・
カプリル酸
caprylic acid
牛乳を拭いた雑巾のような臭い。乳製品全般に含まれる。
酢酸
acetic acid
酢に含まれる。またフルーツ類にも良く見いだされる。食品用香料および酸味料として頻繁に使用される。
フェニル酢酸
phenylacetic acid
犬の臭いとしか思えない。が、フレーバーではハネー、チョコレート、バターなどに、フレグランスでは保留剤として使用される。
酪酸
butyric acid
パルメザンチーズ様の強烈な臭い。ぎんなんの皮の悪臭でもある。多くの発酵乳製品に含まれている。

エステル

アセト酢酸エチル
ethyl acetacetate
マスカットの皮のような感じのある香り。アルデヒドと反応するので扱いにくい香料である。
エベリニル
evernyl
オークモスの香気成分。おそらくオークモス・オイルの主成分(エベリン酸)が分解して生成すると思われる。昆布の佃煮のような感じの香りである。シプレー調の香料の調合に重要。
カプリン酸エチル
ethyl caprate
天然では多くの果物や酒類全般に見出される。ラム酒やブランデーを思わせる香りがする。
カプロン酸アリル
allyl caproate
「いわゆるアルデヒドC-19」とも呼ばれる。アルデヒドでないのにアルデヒドの名を冠する香料の一つ。パイナップルの香り。しかしパイナップルには含まれず、ポテト、マッシュルームに微量存在している。ただしパイナップルにはよく似た香りのカプロン酸エチルが含まれている。
桂皮酸メチル
methyl cinnamate
マツタケなどのキノコやバジル、イチゴなどに含まれている。マツタケのお吸い物の香り。
酢酸イソアミル
isoamyl acetate
多くの果物に含まれているが、特にバナナの香りのキー成分である。
酢酸イソボルニル
isobornyl acetate
松の葉をもんだときに漂う香りで、少し甘い感じがする。森林調の香りの調合に良く使用される。
酢酸エチル
ethyl acetate
りんご・ぶどう・いちご・パイナップル等いろいろな果物に含まれる。メロンやブドウを思わせる香り。フルーツの香りを調合する際に一般的に使用される。
酢酸ゲラニル
geranyl acetate
ローズなどに含まれる。紅しょうがのような香りがする。
酢酸ジメチルベンジルカルビニル
dimethylbenzylcarbinyl acetate
ジメチルベンジルカルビニルはしばしばDMBCと略される。ザラメ砂糖やゆで小豆を思わせるような甘い香りがある。
酢酸スチラリル
styrallyl acetate
グレープフルーツを思わせるようなジューシーな香り。またガーデニアなどのフローラルの調合香料にも使用される。
酢酸ヘキシル
hexyl acetate
多くの果物に含まれるが、特にリンゴおよび洋ナシの香りのキー成分である。
酢酸 cis-3-ヘキセニル
cis-3-hexenyl acetate
多くの果物に含まれる。リンゴの皮のグリーンな感じやイチゴの青臭い感じを思わせる香り。
酢酸ベンジル
benzyl acetate
ジャスミンの香気の主成分。非常に軽いフルーティーな香りで、桃(ネクター飲料)やイチゴ(シロップ)などの甘さをイメージさせる。
サリチル酸メチル
methyl salicylate
ウィンターグリーンに大量に含まれるが、普通は合成で得る。捻挫などの炎症に対する外用薬として使用されるが、それ以外に歯磨き、口臭予防剤、(日本にはほとんどないが)ガムや炭酸飲料(Root Beer)に使用される。
サリチル酸 cis-3-ヘキセニル
cis-3-hexenyl salicylate
カーネーションの花などから見いだされている。わずかにガソリンスタンドに漂っているようなエンジンオイル臭い重いノートを伴うグリーンな香り。
ストロベリーアルデヒド
aldehyde c-16 so-called
「いわゆるアルデヒドC-16」。化学名はメチルフェニルグリシド酸エチル(EMPGと略されることもある)。アルデヒドでないのにアルデヒドの名を冠する香料の一つ。天然には発見されていない。やや焦げた感じの臭いがあるが、ストロベリー味のフラッペと良く似た香り。
フェニル酢酸エチル
ethyl phenylacetate
フローラルな蜂蜜を思わせる香り。
へディオン
hedione
化学名ジヒドロジャスモン酸メチル。バスクリンのジャスミンのような香りだが、α-アミルシンナムアルデヒドよりもずっとマイルドでグリーンな感じが強く透明感がある香りで、ユズやレモンの皮もイメージさせる。通常の市販品はラセミ体でtrans体を主成分とする混合物であるが、香気本体は左図の光学活性体であることが判明している。そのためcis体を主成分にしたヘディオンHC(High Cis)のような高級版も市販されている。
ヘルベトリド
helvetolide
Firmenich社が最近開発したムスク香料。ニトロムスク(ニトロベンゼン誘導体:ムスクケトンなど)ともポリサイクリックムスク(ベンゼン環に他の脂肪族環が縮合した化合物:ガラキソリドなど)ともマクロサイクリックムスク(大員環化合物:ムスコンなど)とも構造が違うのが特色。他のものと調合した形でしか販売されていない模様。セドロール調のウッディな香りを伴うムスク香がある。名前はFirmenich本社のあるスイスの古い名(Helvetia)からとられているのだろう。
酪酸エチル
ethyl butyrate
天然では多くの果物に見出される。メロンソーダやジューシーフルーツガムを思わせる拡散力の強い香りがする。

ラクトン

エチレンブラシレート
ethylene brassylate
天然には存在しない。優雅なフローラルな感じのするムスク香である。
クマリン
coumarine
トンカ豆、カシア、桜や桃の花や葉などに含まれている。桜餅のような甘い香りを持つ。食べると肝臓に対する毒性があるので石鹸などにだけ使われる。食品用にはクマリンの香りを再現した代用の調合香料が存在する。
ココナッツアルデヒド
aldehyde c-18 so-called
「いわゆるアルデヒドC-18」とも呼ばれる。アルデヒドでないのにアルデヒドの名を冠する香料の一つ。化学名はγ-ノナラクトン。ココナッツの香り。ココナッツの他、桃やアンズなどのフルーツに含まれる。
シクロペンタデカノリド
cyclopentadecanolide
アンジェリカの根に含まれる。エキザルトリド、ペンタリッドといった商標がある。ブルーベリーガムのようなフルーティさを伴ったムスク様の香りがする。ムスクなどと同様に保留剤として香水などに使用される。
ソトロン
sotolone
糖蜜(粗糖)から発見された。他に醤油や熟成した日本酒、フェヌグリークなどからも見つかっている。濃い状態ではカレー様の生薬っぽい匂いだが、薄めると麩菓子を思わせる甘い匂いになる。現在知られている窒素、硫黄を含まない香気物質の中では最も低い閾値を持つ。
δ-デカラクトン
delta-decalactone
ベリー類や乳製品に含まれる。ココナッツアルデヒドと類似するが、それに加えてコンデンスミルクのような香りがある。クリーム系の香料に使用されている模様。
ピーチアルデヒド
aldehyde c-14 so-called
「いわゆるアルデヒドC-14」とも呼ばれる。アルデヒドでないのにアルデヒドの名を冠する香料の一つ。化学名はγ-ウンデカラクトン。桃やココナッツを思わせる香り。桃をはじめとするフルーツ、乳製品などに存在。
γ-ヘキサラクトン
gamma-hexalactone
アプリコットやパイナップル、チーズ、ミルクなどに含まれる。ハーブ的な薬臭い感じのあるクマリンに似た香り。
ベルガプテン
bergaptene
ほとんど無香の物質。ベルガモットの精油に含まれるフロクマリン類である。この物質が皮膚についた状態で日光に当たるとベルロック皮膚炎と呼ばれる炎症を起こし、その跡が日焼けをしたようになる。そのため化粧品に使用されるベルガモットの精油は脱ベルガプテン処理が行われている。

含窒素化合物

アセチルピラジン
acetylpyrazine
シリアルあるいは鳥の餌のような感じのにおいがする。
アントラニル酸メチル
methyl anthranilate
アメリカ系ぶどうの香りのキー成分。ちょっとサリチル酸メチルのような臭いを帯びたぶどうの香りを持つ。ぶどう以外には柑橘類やネロリ・ジャスミンなどの花にも含まれている。アルデヒドと反応しやすく(いわゆるシッフ塩基を生成する)取り扱い注意の香料の1つ。
イソブチルキノリン
isobutylquinoline
ピーナッツの皮のような感じの香りでやや石油臭い。男性用化粧品にレザー、タバコといった感じのイメージを付加させるために使用される。市販品は左の2位置換体と右の6位置換体の混合物である。
インドール
indole
防虫剤臭い香り。100分の1程度に希釈した場合には煎茶をイメージさせる香りとなり、10000分の1以下に希釈した場合にはジャスミンやガーデニアなどを思わせるフローラルな感じになる。実際、ジャスミンやネロリの花にわずかに含まれている。また多くの食品にも含まれる(特に発酵食品)。着変色が激しいので使用には注意を要する。
N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド
n-ethyl-p-menthanecarboxamide
極めて弱いミント様の香気を持つ。香りよりも冷感に寄与するクーリングエージェントと呼ばれる物質のひとつ。l-メントールの約5倍の冷感作用があるといわれている。もともとWilkinson Sword社の特許物質であり髭剃りなどから使われるようになったと思われる。
ガーダミド
gardamide
珍しいアミドの香料。乾いたウッディな香りを伴ったレモンの皮の白い部分のような苦い感じのシトラスノートがある。
カプサイシン
capsaicine
唐辛子の辛味。無臭なので厳密には香料ではないがフレーバーの1つに含まれる。
ゲラノニトリル
geranonitrile
天然には存在しない。アルカリに不安定なシトラールの代替香料として開発された合成香料。シトラールと同じくレモン様の香気で、シトラールに比べて力強いが、石油臭いような感じがありさわやかさには欠ける。最近変異原性があるという報告があったため使用規制される模様。
トリメチルアミン
trimethylamine
魚介類や生肉の生臭いにおいの原因。かに蒲鉾っぽい臭い。沸点4℃なので常温では気体。
ムスクケトン
musk ketone
ニトロムスクと呼ばれるムスク調の香気を持つニトロ化合物のひとつ。ほのかにバニリン的な甘く粉っぽさを伴ったムスク香気を持つ。ニトロムスクは香気的には他の合成ムスクよりも優れているのだが光で変色しやすい、慢性毒性がある、生分解性が低く環境に残存しやすいといった欠点を持つものが多く現在はあまり使用されない。
ピーマンピラジン
bellpepper pyrazine
ピーマンやゴボウ、グリンピースやポテト、朝鮮人参などに含まれ、これらの野菜に独特の苦い泥臭い香りを持つ。
ピペリン
piperine
コショウの辛味成分。無臭なので厳密には香料ではない。はじめは無味だがあとから焼けるような辛味を感じさせる。
ピリジン
pyridine
コーヒーや燻製などに含まれる重要香気成分。ミルクコーヒーを思わせるような甘いロースト香気を伴う不快臭がする。
ピラジン
pyrazine
コーヒーやチョコレート、燻製、焼いた肉などに含まれる重要香気成分。天然には1つ以上のメチル基やエチル基で置換されているものもよく見出される。置換基のパターンにより若干印象が異なるが、総じて炒った豆やローストアーモンド、ナッツ、チョコレート、ココアを思わせるような甘いロースト香気を持つ。ピラジン類は一般に食品中にはppbオーダーでしか存在しないが閾値が低いものが多いため香気に大きく貢献している。

含硫黄化合物

イソチオシアン酸アリル
allyl isothiocyanate
カラシ、ワサビ、キャベツ、カブ、ダイコン等の辛味成分で強い刺激臭を持つ。
ジアリルジスルフィド
diallyl disulfide
生タマネギや生ニンニクの重要香気成分の1つ。ニンニク臭がする。
ジメチルスルフィド
dimethyl sulfide
アオノリの主要な香気成分。緑茶、タマネギ、ダイコン、ポテト、トマトなどにも含まれる。
スルフロール
sulfurol
ビタミンB1(チアミン)の生合成や工業生産での中間体であり、また食品中で加熱調理時の分解生成物としても知られている。暖めたミルク様の匂いがする。
チオテルピネオール
thioterpineol
グレープフルーツから極微量見出された化合物であり、非常に希釈された状態でグレープフルーツの特徴的な香りを持つ。今まで知られている中で最も匂いが強い化合物の1つとされている。
テトラヒドロチオフェン
tetrahydrothiophene
プロパンガス、都市ガスに臭いをつけるのに使用される。他にt-ブチルチオールも使用されるようである。
フルフリルメルカプタン
furfuryl mercaptane
この化合物はそのままではニラの臭いを強烈にした感じで非常に臭いが、10000分の1程度まで薄めるとコーヒーやナッツのローストした感じに良く似た香りとなる。ローストした食品から見いだされる。
マンゴーケトン
mango ketone
そのままでは猫臭としばしば呼ばれるけもの臭い感じだが、10000分の1程度まで薄めるとマンゴーなどのトロピカルフルーツの青臭い感じのにおいとなる。天然ではワインなどから見出されている。
メチオナール
methional
そのままではそぼろ肉の匂いを強くしたような不快臭だが、薄めるとミートソース様の匂いとなる。しょうゆやポテトチップスなどから見いだされている。
メチルメルカプタン
methyl mercaptane
ぬか漬けを思わせる香りがする。沸点6℃なので常温では気体。
レンチオニン
lenthionine
シイタケの重要香気成分。シイタケ独特の香りを持つ。

溶剤

香料化合物の大部分は水に溶解しにくいという特性があり、一方、食品にしろ、化粧品にしろ香料が使われる最終製品は水ベースのものが多々あります。このような最終製品に香料を直接混ぜ合わせようとしても製品全体に満遍なく混ぜ合わせるのが困難です。そこで、香料の大部分は最終製品と良くなじむような溶剤で希釈されて提供されます。以下に代表的な溶剤を挙げます。

エタノール
ethanol
酒類を蒸留することによって得られる。香料の溶剤に使用されるのは純度約95%のもの。残りの5%は水、すなわちエタノール-水系の共沸混合物である。エタノールは香料化合物の大部分を良く溶解し(とはいえ5%の水の影響はかなり大きく純粋なエタノールには溶解するものが濁ったりする)、また水に溶解するという特性から、香水発明の時代から香料の溶剤として使われてきた。食品香料においても水に溶解させる香料の溶剤として繁用される。溶剤自体の揮発性が高いので、香料の揮散をアシストする効果があるとされる。エタノールには当然のことながら酒のにおいがあるが、香料としての添加濃度ではまず気づかない強度である。バニラエキスなどの抽出では含水エタノールの形で使用されたりもする。イスラム教国では当然禁忌である。
プロピレングリコール
propylene glycol
略してPG。プロピレングリコールはもっぱら食品香料用に使用される。エタノールよりもさらに水溶性が高い。エタノールよりずっと沸点が高いので、エタノールとは逆に熱による香料の揮散を抑える効果があるとされる。そのため、加工時に加熱される水ベースの食品に対して使用される。乳酸の還元体に相当するが、天然にはほとんど存在しない(そのため、使用を忌避する場合もある)。なお、工業的な冷媒としては通常エチレングリコール水溶液が用いられるが、食品工場においては(エチレングリコールに毒性があるので)プロピレングリコール水溶液が使用されている。
グリセリン
glycerin
グリセリンは油脂の加水分解で脂肪酸とともに生成する(つまり、石鹸製造の副生成物である)。ほぼ食品用のみに使用される。プロピレングリコールよりさらに親水性かつ高沸点である。耐熱性の付与に有用であるが、親水性が高すぎるので香料化合物によっては溶解しにくい欠点も持つ。なお、構造的には糖アルコールの一種であり、甘味を持つ。とはいえ香料としての添加量ではまず甘味料としての役割は発揮しない。
植物油
vegetable oil
親油性の食品香料の溶剤として使われるのは、植物油である。ただし植物油には原料によって固有のにおいがあるため、使用できる油の種類は限定される。また使用可能な油であっても充分な脱臭処理が行なわれている必要がある。また油が酸化するとアルデヒド類などが生成してにおいが出るため、酸化しにくい油がよい。親水性をもつ溶媒とは混和しないので、他の溶媒を使用した香料を混ぜることが想定される際には手当てが必要。
グリセリン中鎖脂肪酸エステル
mcg
MCT(medium chain triglycerideの略)と称される。それぞれが石鹸の副産物であるグリセリンと中鎖脂肪酸(主にカプリル酸とカプリン酸)をエステル化して製造される。植物油ほど親水性化合物との相性が悪くなく、また不飽和脂肪酸エステルを含まないので酸化の心配がないのがメリット。
トリアセチン
triacetin
グリセリンと酢酸のエステルで食品香料に使用される。親水性と親油性をあわせもつ溶媒。特性が中途半端ということでもあるが。酸性条件下で加水分解されてグリセリンと酢酸になってしまうのが欠点の一つ。沸点はグリセリンより若干低い程度なので耐熱性の付与によい。
ジプロピレングリコール
dpg
DPGと略される。香粧品用香料の溶剤として使用される。エタノールと同様に親水性であるが、揮発性が低いので肌に残る(洗い流さない)製品ではべたつく可能性があり、多分あまり向かない。
ミリスチン酸イソプロピル
ipm
DPGとは逆に親油性の溶剤。揮発性が低いのは同じだが、粘性が低いので肌に残ってもべたつきにくい(のだと思う)。直鎖のエステルでは凝固点が高いため冬季に凝固してしまうので、分枝のあるイソプロピルエステルを用いていると思われる。
イソパラフィン
isoparaffin
親油性の溶剤。沸点のスペックから見て、おそらくはイソブテンとブテンの3量体の水素化物と思われる。LPGを使用したスプレー系の製品なんかと相性がいいと思われる。