3:難関を抜けても新たな緊張、そして遂にあの時計盤と対面(4/30)

 控え室に10人が揃い、軽く談笑を交わす。やはりここでも自分は貧乏トーク。ちなみに6位までは全員、最低でも名前は存じ上げている方々(初対面は2人)。「強い人は残るんだ」と一旦は感じたが、話の中で脱落者にかつてクイズ王番組での活躍歴がある方がいたということを知る。勝負は本当に水物、わからないものだ。
 そうして談笑中に最終面接が行われることが知らされる。別にここで脱落はないのだが、本収録の際に個人のネタをどう扱うかということだ。
 早速予選1位の石貫さんから呼ばれていく。帰ってきたので聞くと、やはりプロフィールの話しに終始しているとのこと。そうしているうちに私の番。先に受けている今尾さんの話をとなりで聞きつつ、真面目な話の多さに感心させられる。で、私の番。担当の方はどうやら偉い立場の構成作家さんのようだ(推測)。
「年収104万ですか!」
 いきなりそれか!今尾さんとのテンションが明らかに違うので思わず私も笑ってしまったが、これは自分も気楽にやりやすい。やはりというか、ここでも貧乏話がメイン。
「パーフェクト(100万円)取ったら、一分で年収稼いだことになりますね」
 そう言われたが、これは私の中でも大ヒットだった。貧乏がこれだけ明るくネタになるなんて、本当に有りがたい(いや、貧乏はイヤだけど)。この辺の話が一通り終わった後、
「古い芸能詳しいんですってね。ピンクレディーのシングルが全曲言えるんですか?」
 これである。前日の電話で知識を披露する話で悩んだ際に、たまたまこの辺を覚えていたのを思い出した。
 で、結局は全曲暗唱を披露。ちなみに「ペッパー警部、SOS、カルメン’77、渚のシンドバッド、WANTED、UFO、サウスポー、モンスター、透明人間、カメレオンアーミー、ジパング、ピンクタイフーン、(面倒なんで以下9曲略)、OH!」の全22曲。なお、飛ばしたのはあくまで面倒なだけ。文句があるなら私に会える人は直接どうぞ。その場で暗唱いたしましょう(ただしジパング以降はかなり知られていないけどね)


 全員の面接が一通り終わった後、先ほどのお偉い構成作家さん(名前を存じない…)が控え室に入り、ご挨拶といろいろなお話をいただく。ほぼ予想していたとはいえ、今回のレギュレーション変更はかなりの大鉈だったようだ。さらに今までの雰囲気も、大幅に変えて勝負を意識したものにするという。(わかりやすく例えると、5人一組だった今まではレクリエーションのノリだったが、これからは緊迫した勝負モノで映すということだ)
 このお話は大きな感銘を受けた。テレビ番組に憧れがあった自分にとって、それを作る中心にいる一人であろう(推測)方から番組を盛り上げるための考えを少しでも聞けるのは本当に嬉しいこと。中でも「勝負にスポットを照らす」というのは本当に思い切ったことであり、私の周囲でもそれを望んでいる人は多かった(大衆の絶対多数かは不明)ことから、この大英断に心から拍手を送りたい。
 番組の視聴率はいままで苦戦気味だが(意外とこの時間は数字が割れているので実はタイムショックの10%弱でも決定的に悪くはないらしい)、リューアルで盛り上がってくれることを切に願うばかりだ(ちなみに、直前にウィーケストリンクもできているのでその流れから視聴者を集められそうと思うのだが、どうだろうか。向こうも苦戦してはいるが…)。
 ちなみにここで賞金の話(回らなければ全員獲得できる)も出たが、その際にやはり私が突っ込まれていた。よっぽどキャラが扱いやすいのか。だとするとこの上ない幸せである(素人はテレビに出ても所詮ピエロ、どうであれいじられるのが本望というのが私の考え)。


去り際にネタ半分・マジ半分で「お弁当でないんですか?」と聞いた。その場の全員苦笑。とはいえもう夜の6時を過ぎているし、なにせ今日一日何も食べていない。「んー、わからないですねぇ」とは言われたが、出ないとキツイってマジ。
その後、預かられていた荷物が一旦返される。助かった。やっとコンビニで買ったパンと水にありつける。しかし収録が迫るという緊張のためか、たった1個の菓子パンがのどを通らなくて半分残す。そこで宮坂さんからのツッコミと私のやりとり(記憶による)。
「あれ?残ったパン捨てないよね?」
「当然後で食べますよ」

また室内の面々が笑う。宮坂さんはオーディションの時でもファミレスで似たやりとりを交わしたが、ベテランの方らしくタイミングが絶妙。本当に、学びたいぐらいである。
このあと、待望の弁当が来た。二段重ねという豪華版!店の名前も地元で聞いたことがあったようなもので、本当に美味しくいただけた。冗談抜きで「一週間ぶりのまともな飯」だった。とはいえやはり緊張で、他のどなたよりも食が全然進まない。
そうこうしているうちにADさん(多分)がこれからの説明にやってきた。説明後はスタジオ入りするので、残して後でいただくことにする。


まずはホワイトボードでスタジオ内部を簡単に図示し、それをもとに流れを説明。ここで一つの大きな点が発覚。
「タレントと会えない」
 ミーハーな私にはかなり手痛い。ただ、最終的にトップを取れればチャンスもあるようなので、改めて勝ち抜きへの執念が出る。ちなみにこの会えないのはというと、挑戦者が話のやりとりをするのは天の声だけになるため。緊張感をほぐすのではなく、むしろ高めるためにあるようだ(この辺から、スタッフが参加者を緊張させようという意図がだんだんはっきりとしてくる)。
 で、ポジション的に司会&参加者席があった部分がリーダーズシート(トップ者が座る椅子)となり、その上に鹿賀丈士が立ち、バックに時計塔があるという構図。で、司会はと言うと、ほぼ完全に別ブースで参加者のプロフィール紹介や問題の解説などをするという。つまり、
「タレントをナマで拝むことすらゆるされない」
 わけだ。ますます打撃(鹿賀さんのみ例外)。
 さらに、参加者もスタジオ内で出番を待つのではなく、一人ずつ扉が開いて登場という形式になった(ちなみに、登場まではミリオネアの補欠ルームのような場所でモニターを見ながら待機)。しかも扉の周囲は観客席(100人近く)ときて、ますます「闘技場」という趣がでてきた(ちなみにタレント達は観客席の裏手にあるブースにいる)。
 ここでもっとどぎつい一発。敗退が確定すると、その時点でスタジオから追い出される。時計盤の真下、ゴンドラの乗り口にゲートができ、負けが確定した時点でゴンドラが降りると同時にガッシャン。そのままセットの裏から退場となる。当然、もう戻れない。トップ入れ替わりの際もシート裏の出口から退場という形だ。
 今までとは全く違う演出、ひょっとすると田宮次郎・山口崇時代のタイムショックよりも重々しいかもしれない… そう思うと、これからの大きな変貌を予感、そして期待せずにはいれなくなった。


 一通りの説明後、スタジオにやっと入れるとのことなので、移動することに。移動の直前に先ほどの作家さんに呼び止められ、天の声とのやりとりの内容が決まったので具体的に答えられるようにしてほしいとのこと。もちろん貧乏話関連だが、二つ返事で快く了承した。
 別棟のスタジオへ。最初に参加者が待つウェイティングルームへと通される。ここでは常時カメラが回り、クイズを見ながらライバル意識をむき出しにする出番待ちの参加者を撮るとのこと。で、スタッフから強く言われる。
「なごまないで下さい」
 この徹底ぶり。すごい。
 その後、いよいよスタジオへ。扉が開くところから説明がまず始まり、ついにあの時計盤を拝むこととなる。やはり声をあげずにはいられなかった。セットが増えたためやや窮屈な感じも否めないのだが、やはり存在感は抜群。大磯で見た出張セットとは全然違う(あれって今どうしているの?)
 扉とゴンドラまでは一本道で、派手な電飾の上を歩く。ここから先は本番では、全て天の声の指示に従う形になるとのこと。スタッフも(ベルト装着以外)絶対に関与しないようだ。
 変わったことは他にもあった。問題の選択だ。今までは口答だったが、これからは参加者の前にボタンが登場して、自分で選ぶことになる。で、ゴンドラのヨコにボタンのセットが待機しているのだが、ややマヌケに見えなくもない。まあ、正解数と解答の表示で隠れるからいいのだろうが。
 一通りの流れが説明された後、最終チャレンジャーとなる1位の石貫さんだけに違う演出があることが告げられる。なんと、扉が開いた向こうで鹿賀さんが握手で出迎えてくれるというのだ。どっかで見た絵だが、参加者から「いいなぁ」という声が。私も同感。


 退場するルート(時計盤の裏)から回って、再びウェイティングルームへ。ここまではまだ笑顔もあり、スタッフの方と多少は会話も交わしていたのだが、モニターはいよいよ収録開始となりそうな様子。そうなると参加者も、そしてスタッフも雰囲気が変わる。
 これから本当の勝負が始まるだけに、緊張しないわけがない。しかも、その気持ちをほぐしたくても、スタッフが許してくれない。目の前では2台のカメラが回り、緊張するようにスタッフも雰囲気を作ってくる。隣に座っていた片岡君はかなり緊張がピークに達しかかっていたようだ。
 そしてついに、幕は開いた。


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