さて、やりとりの終了後にFAXが送られてきた。当然、当日の案内であり、一つも読み飛ばすことができない。レギュレーション変更に伴う勝ち抜けの条件や賞金システムなど、目新しいことは数々あったのだが、何よりももっともたまげたのは
「最終予選 500問マークシート試験(1時間)」
コレですよコレ!今までにこんなことやらかしてくれた番組なんて他にそうないでしょ?(ウルトラクイズの初期機内試験は500問と800問があったそうですが)。さすがにこれを見た瞬間には打ち震える自分がそこにあった。
さて、収録まで時間がわずかに3日しかない。本来なら時間をかけて対策とかしたかったのだが、あいにくこの時期はかなり多忙。原稿の締切も近いし(2日後)、明日は打ち合わせ2件で半日は家を空けざるをえない。
結局、手っ取り早い方法として時事問題の対策をすることにした。また地元の友人から電話があったので、かれの持っていた問題を一気に解かせてもらった。しかし、対策と呼ぶには十分かはやはり疑問である。
また、前々日、前日と続けてスタッフの方から「プロフィールの詳細を聞きたい」と電話があり、忙しくても心底喜んで答えさせてもらった。やはり仕事と貧乏話に集中。映ったときの扱いがこの段階でもう見当はついたが・・・。
しかし、困ったことが一つ。「知識をひけらかせるようなネタはないか?」という点。これはさすがに答えを窮した。もともと広く浅くな自分は、こういうときに強く押せるネタを持ち合わせていないのだ。
悩んだあげく「そういえば…」と思い出し、ある話を提案したところ「それでいきましょう」という話になった。
当日。恥ずかしい話ではあるが電話の日からまいあがってしまい、しかも仕事が押しまくっていて寝たのが朝6時。しかも仕事が完了していないというありさま。駆け出しのライターがこんなことでいいのだろうか。
ともあれ11時過ぎに起床。シャワーを浴びて眠気も覚まし、番組からフォーマルな服装を指示されているのでグレーのスーツを用意。しかしここで一大事発生!腕時計が見つからない!最終予選でもこれが無いと大変なことになりそうなので、必死になって探したのだが・・・さすがに廃墟の我が家、時間までには出てきてくれなかった。
あきらめて出発。かなり時間がかかったものの収録が行われる東陽町に到着。まだ何も食べていなかったのでコンビニで買い物をしていたところ、クイズ大会でよくお会いする中村先生(高校教師)に遭遇。しかもスーツ姿。まさか…?
やはりそのまさかである。ライバルが増えたことを嘆きつつもテレビ朝日へ。門のところで受付が行われ、財布や時計を除いた手荷物は全て一旦回収されるとのこと。しまった!まだ何も食っていない!しかしここで一気に食べるわけにもいかず、手荷物は回収されていった。
さて受付の際に、気になっていたことを確かめるためにこっそりと名簿をのぞき見る。というのも、先日のオーディションで50人を決めるのはどうあがいても無茶なので、どうしているのかを確かめたかった。そして簡単に判明。オーディションからは10人が呼ばれ、さらに「過去の出場者・過去の予選高得点者・過去の予選受験者」からも呼ばれていた。過去はもちろん団体戦の時のことであるが、これでようやく納得。ちなみにオーディションは2日間で100人少々が集まっていた模様。
受付後は最終予選会場の入り口前で並ぶのだが、スーツ姿が50人前後も並ぶとかなり異様なものである。ここで他にも面識のある方がいたので、軽く談笑を交わす。
いよいよ入場。どうやらここから撮影は始まっているようで、スタッフからもそのことを意識したような指示が入る。で、部屋にはいるとまず入り口が電飾ゲートでお出迎え。いきなり「はっ!?」という感じである。
指定の席に着席して緊張しつつ開始を待つ。後ほど芸能人参加者としてくりいむしちゅーのご両名も入ってきた。先に上田から「失礼します」と入ってきたが、後から入ってきた有田とは参加者の反応が雲泥の差だった、と言うことをここでは書いておこう。
アナウンサーの方が入ってきて、本格的に収録開始。最終予選の説明が行われる。マークシートの確認後、問題用紙が配布される。その枚数、実に25枚。あまりの厚さに本当にびびってしまった。
アナウンサーの方の「タイムショック!」のかけ声で、ついに最終予選スタート。1時間の長い長い戦いが幕を切った!
さて、既に書いたとおりでもあるが、今回は時計を持ち合わせていない。悩んだあげく、時計を気にせずに問題を解くことに集中した。幸い、10分ごとにコールを入れてくれることが知らされていたので、それを頼りつついこうと決めた。
問題は至って簡単。クイズ番組では頻出のいわゆる「ベタ」と呼ばれるものばかりであり、自分が得意な領域。周囲を見て上位10人に残れるか微妙なラインだとは思っていたが、これをみて「手が届かない」ということは無いだろうと確信。
そして、ちょうど90問を解答したところで「10分経過」のかけ声。よし、これならイケる!!
対策法
*睡眠、食事はしっかりと取ったうえで臨むこと。1時間も集中力を持続させるのは大学入試並で本当に大変。
*筆記具の消しゴム・シャープは番組から用意される。芯の心配はないと考えて良い。(現にそれでスタッフを呼んだ人はいなかった)。
*難易度はやはり易しめ。選択肢を見なくても7割以上は正解できないと厳しいのではないだろうか。
*オール4択。ただし、仮に分からないものがあったとしても絶対に後で解こうとしないこと。この問題数ではあとから探すだけで大幅な時間ロス。さっさと勘でどれかをマークすベし。
*数えれば分かりそうな問題も混ざっているが、それなら思い切って数えろ。時間は食うが確実に1点を取れるし、これだけ問題が有ればハイペースで続きを解けば十分にカバーできる。また、意外と1点の重みは大きいので取れる問題は確実に。
*先に問題用紙の選択肢にチェックを入れて、それからマークするという人もいるだろうが、それはオススメできない。解答そのものとマークの作業を分離すると時間のバランスがつかめないし、何より問題は回収されてしまう。1問ずつマークしていって、着実にペースを掴むように。
*時計はやはり必需品。かと言っても常時見ているようでは問題に集中できないので、50問刻みぐらいでチェックするのが良さそう。時間以内に終わらせる正しいペースを計算すること。
*マークシートの記入ミスには注意。気づくのが遅れてしまうと、かなりの大ダメージとなってしまう。
*終了時点で時間を余さないぐらいがベスト。早めに終わっても問題を見返す必要はない。むしろ、マークの甘さや塗りミスがないかをチェックすることに専念すべし。
終了のかけ声とともに、ふうと大きく息をつく。400点はとれないと、と最初に直感する。で、手応えもかなり良い。400点を超えた自信はあった。
しばしして集計も終わり、ようやく通過者10名が発表。ここになって、緊張がピークに達してきた。これを抜けられないと意味がないし、なんとしても抜けたい。机の上で両手を握り合わせ、いかにも祈るような気持ちだった。
発表はテープに吹き込まれた音声で行われる(天の声と同じ人のようだ)。順位がコールされ、ドラムロールの後に名前が発表。
「予選1位(ドラムロール)岡山県吉備郡、石貫能和さん!」
やはりこの人か、と思った。面識こそ無いが、実力のほどは昔からよく存じ上げている。名簿にこの方の名前を見たときにはやや血の気も引いたものだった。さらに驚かされたのが、筆記の点数。アナウンサーの方が簡単なプロフィールとともに発表するのだが、何と460点をオーバー!これは全参加者が驚嘆の声を上げていた。
続いて2位で呼ばれたのは東京都の宮坂さん。実はオーディションの時にファミレスでお話をさせていただいた方のお一人で、名前こそそれまで存じ上げていなかったのだが力のあるベテランの方だった。
ドラムロールの後の「溜め」が長くなったような気がして、イヤに緊張感を高める。そうして3位に慶応大の片岡君、4位にミリオネアとアタックでパーフェクトを達成した今尾さんが呼ばれる。2位から4位のお三方、420点台でほぼ一点差の争いである。かなりのハイレベル。
正直、そろそろ呼ばれないとキツイ。自分より上に行きそうな人は既に呼ばれているが、他にも知らない強豪がいるかも、と思うと気が気でない。口から心臓が出そうな思いで順位の発表を聞く。
「予選5位(ドラムロール)…………東京都練馬区、」
き、来たっ!?
「佐々木康彦さん!」
よっしゃぁーーーーーーーーーー!!!!
おそらく、いままででどこでも見せたことがないような派手なリアクションだっただろう。今まででもっともいっぱいいっぱいの心境だっただけに、演技一切抜きで思いっきり立ち上がってしまった(オンエアでは見事にカット)。
そのままカメラに追われながらゆっくりとゲートを出る。アナウンサーの方による紹介もロクに耳に入らなかったが、どうやら414点のようだ。ともあれゲートをくぐり、スタッフの方に案内されて控え室へとはいる。すでに通過を果たした4人が「おめでとうございます」と迎えてくれて、緊張が解けたためか本当にその場にへたりこむところだった。
その後も発表はすすみ、聞こえてくる声に控え室でそば耳を立てる。私の後に続いた6位はコンビニから一緒だった中村先生。7位は埼玉大院生の中村さん、8位は現役東大生の中村君(中村三連コンボ)、9位には宮城の高橋さんが入る。そして10位の福元君、プロフィール発表で高校生と明かされて会場も、そして控え室も驚嘆の声を上げる。高校生でもここまでやれるとは・・・気を引き締めなければ。