動作説明

受信部(検波器まで)
 M形同軸コネクターからの受信信号は、TVI防止フィルター、送受切り替えリレーを通して高周波増幅管に加えられます。
高周波増幅にはニュービスタV1(6CW4)を使用され低雑音・高感度を得ており規格ではS/N10dBで入力1μV以下となっていますが、実測では受信周波数全域で0.4μVを得ています。
又入力段、出力同調回路とも、半固定同調ですが、感度の実測結果より可変する必要はないようです。
V1で高周波増幅された信号はV2に加えられる。第1周波数変換にはV2(6GH8)を使用し、三極管のカソードタップド・ハートレーで、第1局発の
44.255〜46.255MHzを発振し、五極部でグリッドインジェクション混合器を構成しています。
局発同調回路は、温度補償をしてあり、高安定度を得ています。
第1中間周波数は5,745KHzで実測イメージ比55dB以上を得ています。
第2周波数変換はV3(6AN8)で三極部の無調整発振器で6.2MHzを発振させ五極部のグリッドインジェクション混合器で455KHzの第2中間周波数に変換します。
455Kzに変換された信号は、V4(6AN8)の5極幹部とV5(6BA6)の2段の第二中間周波増幅器で増幅された後、検波段に入る。
検波段は、D1(1N60)のダイオード検波です。検波出力はANLを通して、低周波増幅段に加えられます。

送信部(高周波部分)
 発振段は6GH8の五極部を使用しVFOと水晶を切り替えて使用しています.VFOは発振周波数12.5〜13MHzのクラップ回路で、同調回路は温度補償され良好な安定度を得ています。
水晶発振はグリッド−プレート回路で、水晶は8MHz帯を使用し、前面パネルにFT−243のソケットがあります。
非同調で取り出した発振出力は、V10発振段の残りの三極部のバッファーに入り非同調で次段に加えます。
 逓倍にはV8(6AW8A)の三極部と五極を用いており.ます三極で2逓倍(VFO)または3逓倍(水晶)して、プレート側の固定同調負荷で25〜26MHzを取り出し、残りの五極部で2逓倍したのち50−52MHzで終段を励振します。この段のプレート同調回路はVFOの同調バリコンと連動のバリコンで同調をとり、QSY時に励振不足が起きないよう考慮されています。
したがって、水晶で送信する場合にもVFOダイヤルを送信周波数に合わせる必要があります。
 終段はV9(2E26)で励振状態をチェックするため、グリッドリークと直列に1KΩの抵抗を接続してテストポインを設けてあり、テスタの直流電圧レンジで対アース電圧を測り、その読みの電圧を電流値(mA)とすれはグリッド電流が判ります。
プレートとスクリーングリッドには、B電圧に変調器出力が加わりプレート・スクリーングリッド同時変調がかけられています。
出力はπマッチで送受切り替えSW、TVI防止フィルタを通して空中線端子に供給されます。
プレート電圧は240Vで、変調のピークでプレート電圧がマイナスになるのを防ぐため、ダイオードを電源側に入っています。
終段の能率は実測では50%前後で、10W出力を得るには入力20Wで充分です。

低周波部
 低周波部分は送信時のマイクアンプを除いて、すペて送受兼用で送信時には変調器となります。
受信時の検波出力は音量調整VRを経て、また送信時のマイク出力は第1中間周波数増幅初段の
V4(6AN8)の残りの三極部を使った低周波増幅器で増幅され、一方のV6(6GW8)の三極部に加えらます。ここで1段増幅された信号は、他方のV7(6GW8)の三極部で位相反転した後、V6,V7(6GW8)の五極部2本のプッシュプル出力増幅器を励振します。この出力は受信時には出力トランスを等してスピーカーへ、送信時には同じトランスの変調出力巻線で終段に供給されます。
出力増幅器へのバイアスは固定バイアスとして、−9Vが加えられており、その上、受信時にはカソード抵抗によるバイアスが加わって−14V程度になって、受信時の出力が過大になることを防いると共に。後述するようにこのカソードバイアス電圧をDAVCのババイアスとして利用しています。
このカソード抵抗は送信時にはショートされ、固定バイアスのみになります。

付属回路
<AVC>
 検波出力からR 、C78のフィルタと通して収り出されたAVC電圧は高周波増幅器.第2混合器と2段の第2中間周波増幅器の各グリッドに加えられて利得を調整しています。また、ここには低周波出力管のカソードバイアスを利用してバイアスし.DAVC(遅延AVC)として働くようになっています。
実測データによると、入力電圧の0〜80dBまでの変化に対して出力端子では、約3dBの変化となっており良好なAVC特性を示しています。

<ANL>
 50MHz帯の受信では車載ノイズの影響が大の為、車載用途も充分考慮してIS72、R16〜R19およびC39で構成されるANL(自動雑音制御回路)は、常時検波段と低周波増幅段の間に挿入されて雑音軽減をはかっています。

<Sメ一夕・出力計>
 パネル面のツマミの数を減らす為、一般に見られるSWによるメータ切り替えをせず、回路を工夫して1個のメータが受信時にSメータ、送信時にには出力計として自動的に働きが切り替えられるようになっています。
 Sメータは、AVCをかけた第2中間周波増幅器の2段目SG電圧とR61、R62、VR2で分割されたB電圧の差によって電流を振らせる仕組みになっていて、メータ保護用ダイオードを直列に接続してあります。
出力計はC41によって取り出した送信出力の一部を、1S31で整流してメータを振らせ相対的な出力を指示します。
 出力計は、終段出力回路のプレート同調バリコン(PLATE TUME)と負荷整合バリコン(ANT.LOAD)の調整で最大になるまで両方のバリコンを交互に調整します。
メーター値は相対値となる。
メータの目盛りはS1〜S9と+10〜30dBのSメータ用と0〜10までの等分目盛を施してあります。

<TVI防止フィルタ>
 ハム最大の敵であるTVI防止のため、送受切り替えSWと空中線端子間に高調波発射を抑えるLPFが入っている。まるでGONSET(G−50)の物まねである。

<SPOT>
 相手局周波数に時局周波数をゼロイン(キャリブレ)する為、メータ右側のシーソーSWをONすると送信部の発振段とバッファーが動作状態となるので、VFOを回わしてゼロビートを取る。

SPOT−ONの状態で送信すると終段管への励振不足となり終段管を破壊する恐れがある為、連動SWで終段管B電源を切ってある。SPOT−OFFにしない限り送信できない。

電源部
 DC12Vでの使用のため、ヒータは12Vで点灯しています。
B電源は電源トランスB巻線より単相倍電圧整流で高圧をとりV2、V6(P)、V7〜V10に供給し、中点より低圧をとってV1、V3〜V5及びV6(T)に供給しています。
C電源としては、B巻線から一部をとり出して半端整流しV6、V7の各五極部のバイアスを得ています。
DC12V動作のため本機の特徴の一つであるDC−ACコンバーターを4個のパワートランジヅター2SB425で構成し、出力を電源トランスに供給します。
電池の接地極性が正負いずれの自動車にも適合するように極性切り替え用のスライドSWがケース背面にあり、逆極性に接続した場合トランジスターを損傷しないよう、DC入力に並列に保護用整流器を入れてあります。


各真空管の電圧

真空管 操作 ピ    ン    番    号
10 11 12
V1 6CW4 受信 80  *  −  H  H
V2 6GH8 受信 92 85  H  H 110 1.9  −  −
V3 6AN8 受信 48  H  H 115 116 2.7  −  −
V4 6AN8 受信  H  H 115 80 1.25  −  −
送信 10
V5 6BA6 受信 0.55  H 55 57 0.55  −  −
V6 6GW8 受信 0.5 295  H  H 292 −9.5 56  −  −
送信 0.55 245 240 −9 65
V7 6GW8 受信 25 62 295  H  H 292 −9.5 205  −  −
送信 25 63 245 240 −9 172
V8 6AW8A 送信 240  H  H 185 240  −  −
V9 2E26 送信 155  0  * トッププレート240
V10 6GH8 送信 175 175  H  H 235 0.2  −  −  −

     *:測定不能