和菓子・煎餅

西荻の和菓子は素晴らしい。特に生菓子においては西荻は日本のトップレヴェルといっても過言でない。元々おはぎ、草餅・柏餅などは家庭で小豆を煮て春夏秋冬季節に応じ装いを変えて作るのが当たり前であった。早くから勤め人(サラリーマン・核家族)の多かった中央線沿線には生菓子を「買って食べる」という習慣が早くから根付いたようである。阿佐ヶ谷、高円寺なども名店が多く大正から始まる中央線文化のなした技だったのだろう。ただコンビニのヨモギの香りのしない草餅、米粉の香りのしない柏餅などに慣らされてしまっている我々の味覚を見透かしたような”コンビニ和菓子”を作っている和菓子店が存在するのも事実。

草餅の食べ比べ

西荻の何店かで買って5人で食べてみました。どれもビニールに包まれていたので開いて撮影しました。ダントツで5人全員が神月堂を支持しましたが、解説にもあるように、個人の好きずきで何れもレベルの高い逸品でした。2位は青進堂喜田屋が票を分けました。中むらは、味も見た目も、上品この上ない高級和菓子で技術的にも、材料的にも一番優れているのでしょうが、よそゆき・来客・進物用で、春を味わうには物足りないと言ったところです。喜田屋の野性味溢れる作りとは正反対でした。神月堂が人気なのは塩加減がいいのと、ヨモギを細かく練り込みすぎていないのでヨモギ自体を噛んだときの香りと食感が感じられるからでしょう。2004.3.5

喜田屋¥130 ヨモギが色も味も一番強烈。ヨモギの練り込みの量が多いのか。食べ終わったあとヨモギの香りがのこる。餅がとてもべたべたしてゆるく食感が良くない。あんこの甘みがすっきりしているが、ヨモギに負けている。 青進堂¥120 あんこの味がしっかりして美味しい。餅が適度に軟らかいので餅の食感が心地よく餡の食感とマッチしていてバランス良い。ヨモギは少な目でありヨモギの香りと味は適度であるが、物足りないと感じる人もいる。 
神月堂¥120 堅いがしっかりした味わいのある餅で食感・歯ごたえも良い。あんこの塩あたり(塩加減)が程良く美味しい。ヨモギも味わい香り感触素晴らしく、草餅を食べたという喜びが味わえる。 中むら¥157 お餅の食感はしっかりして美味しいが少々水っぽいか。色は喜多屋と同じほど濃いが、肝心のヨモギの香りと味が弱いというか上品というか。草餅の野性味をとって上品な高級和菓子にするとこうなるのでしょうか。

南口

なか村

2005年11月閉店・中むら(和菓子)(***)

南口駅真ん前にある老舗。「石葉中むら」と言うのが正しいようだ。菊最中90円(***)は絶品。小豆と白あんの2種類、餡の艶のある滑らかなネットリさと甘さ、最中の皮の香ばしさとの調和。鳩饅頭100円(***)の山芋の上品で優雅な味わい。。いずれもそれぞれの和菓子が発揮せねばならない味わい・食感をはっきり認識して作られている。制作意図が明確に伝わってくるのである。特に季節の生菓子に於いて顕著であり、柏餅150円の上新粉の確かさと節句の追憶。道明寺桜餅150円の皮の餅米の感触と甘い桜色の粒々の喜び。草餅の蓬の青臭い草いきれと餡の対照。笹の葉で包んだつるつる・ぬるぬるした麩饅頭のはかなさ・あやうさを伝えてくる。又、上生菓子はそれぞれの個性をより上品に高度に発現しているもので食の芸術と言うべきものであろう。日頃何気なく食べている和菓子がかくも個性豊かで日本の伝統の食文化を体現しているとは...私は50を過ぎて中村に教えられました。99.2.27 99.4.21. 99.4.25 新宿のデパートの名店街で名だたる老舗4軒の最中を買って食べ比べました。ひどい!!と絶句。なんと味に鈍感だったのか。なんとまずい物を老舗が売りつけていたのか。なんと身近にあるこんなに素晴らしい物の本当の価値に無頓着だったのか。99.5.12 羊羹900円(**)は小豆の味が生きている−新鮮な羊羹。季節の生菓子名前は覚えなかったが、栗と薩摩芋に肉桂の粉をかけた生菓子160円も秀逸。

kiyomasa

2004年閉店・清正(和菓子・タバコ)(*)

南口富士銀行前30秒。50年以上の老舗。従業員も老人力を発揮。算盤を使っても計算に困難を来すのでこちらで計算してやっている、が何か心和むお店なのである。柏餅、豆大福などの生菓子は130円くらいの中庸な価格でいずれも素朴な味・昔母親が作ってくれた味。柏も大福も一日おくと堅くなる。冬季のみの酒蒸し饅頭(**)は遠くから買いにくるほどの人気だが確かに美味い。タバコは種類が豊富。99.5.5





越後鶴屋(和菓子)

南口松寿司先右手に移転(南口富士銀行荻窪方向左側3分)。デパートの実演販売さながら店先で大福、草餅等を作っていて繁盛している。田舎風と言えばいいのか。99.4.30

かた岡(和菓子・煎餅)(*)

南口神明通り荻窪方向4分右側。常に季節のディスプレイをしていて楽しい店。贈答向きの体裁の良い箱物が多いが生菓子もいける。柏餅。豆大福。桜餅はいずれもレベルは高く微妙な程良い堅さと甘さを保っている。サイズも大きめなので和菓子を十分堪能できる。99.4.18 99.6.13

近江屋(煎餅)

果物や入って5分左側。戦前から続く老舗。西荻土産として最適。99.5.27

大判(煎餅)(***)

神明通り荻窪方向7分左側。
間口1間半程の見過ごしてしまうような小さな店。
主人は20年修行し現在の地で20年、ナント40有余年修行のベテラン職人。
なんと毎日餅米を蒸かし餅をつき、のして乾かす。干し場は店先で朝日が上がると直射日光にあてて干している。毎日店の奧(夏場は暑いので店内で)で炭火を起こし、煎餅をのして焼いては醤油をつけている...香りが流れてくる。毎日この繰り返しを続けているのである。
まごうかたなき正真正銘の「炭火手焼き煎餅」の店である。ぼちぼちこの店のファンもついてきたようだ。こういった店は大事にしたい。99.5.27
すぐのご近所なので気軽にというか、つい見過ごしていたが、看板の「今時珍しい炭火で焼いている....」のとおりです。米の味が素晴らしい美味しさ。均一で、程良い噛み心地。上品で素直な醤油の味。どうしてどうして手焼きの味はなかなか、というよりナチュラルな伝統的な味です。勿論醤油にも調味料など入っていません。日本の伝統の味の良さを再認識しました。12.7.20

高橋菓子店(***)

南口中央通り下って五日市街道交差点10分。
昭和初年からの何とはない街のお菓子屋さん。どちらかというと駄菓子が主力。

奥のガラスケースの和菓子・おもち・お赤飯を食べてみてください。

まっとうに作られた、まっとうな味を判っていただけるでしょうか。

まっとうに作り、まっとうに売ると1個90円になるのでしょう。最中は60円です。14.2.14

いおり庵(煎餅)(**)

水道道路(井の頭通り)の宮前4丁目交差点角。富士見ヶ丘駅に近い。私は煎餅の味は分からないが、米の味、程良い堅さ・歯ごたえ、醤油・海苔の香り・味などを採って見てもここの美味さはぬきんでていると思っている。霰には霰の歯ごたえ、堅焼きには堅焼きの微妙な食感を日本人は幼い頃から覚えてしまっているのであろう。種類はそれほどはないがどれを食べても、それぞれに個性が感じられる。茨城が本拠らしく2店舗あり、千葉県柏に1軒。インターネットもやっています(http://www.ias.biglobe.ne.jp/iorian/) 99.7.20

北口

三原堂(和菓子)(*)

北口大通り下って1分左側。ここも開店50年以上の老舗。上生菓子、贈答品中心の店であり見栄えも良いが実際食べてみると味も良い、新しい感覚を取り入れた箱入り贈答用和菓子が多い。価格的には他店より高く桜、柏、草餅など180円の生菓子は同じ並びの「喜田屋」でと言うことになる。99.2.25  99.5.1

喜田屋(和菓子)(**)

北口大通り下って2分左側。ここも開店50年以上の老舗、坂本屋と並んで北口の古株。昔はキャンデーなども売っていて幼なじみの店。生菓子中心で価格的にも安く110円から120円でよく売れている。豆大福(**)鹿の子(**)黄味時雨(**)等が特にいける。ここの生菓子は食べる時間を考えてか、作りたては水っぽいので(柏、桜、草餅など)私は作りたてよりも、時間をおいてから食べて居る。上生菓子は180円。中村を気軽に毎日食べるわけにはと言うことでとても人気のある店。11.2.28 12.4.12 個人的には、せっかく、素直な良い餡を使っているのだから、それにあったレベルのモノを使ってほしい(例えば、桜餅の皮、桜の葉、草餅の皮、ヨモギ等)14.3.16

杉森(和菓子)(*)

北口大通り下って3分右。開店50年以上の老舗。130円均一。柏餅(*)。道明寺桜餅(*)が美味しい。黄身時雨、どらやきもいける。奧で喫茶もやっている。田舎汁粉450円(*)は和菓子屋さんだけあって小豆の味が生きていて香りあり。お餅も美味しい。ホットコーヒー350円(*)は今時珍しいノスタルジックな酸味でいける。99.4.26

ふじみ煎餅(12年秋閉店)

北口大通り下って右側4分。西荻では比較的新しい店だが種類は多い。草加の親戚筋の煎餅も多いそうだ。駄菓子類も色々置いてある。99.5.30

高円(和菓子)(*)−閉店12.3

北口大通り下って5分左側に出来たしゃれた感覚の店。きれいに陳列している。草餅(*)はヨモギの香り一杯であった。生菓子から上用、贈答まで幅広い品揃え。11.2.15

神月堂(和菓子)(**)

北口女子大通り。ラーメン一圓の角左折れる。駅から10分の生菓子だけの小さな店だけに味に掛ける意気込みが伝わってくる。草餅(**)は草の香り、柏餅(**)は米粉の味、豆大福(**)の皮は塩味と塩豆、鹿の子(**)は小豆の旨味が。今では和菓子の持つそれぞれの個性が味わえる店が少なくなった。全体に塩味の効いた田舎風であるが美味しい。但し本物である代償として?出来立て・・それも3時間が限度であろう・・米粉は硬化するのである。99.4.17 みたらし団子もしっかり米の味がして居る。99.5.23 作りたての海苔を巻いた磯辺団子は海苔としょうゆと米粉の三位一体の桃源郷。季節の水ようかんも上出来。99.8.11 12.4.7

青柳(和菓子)

北口大通り下って7分右側。最中100円。柏餅は170円と他店よりかなり高価。99.4.29

岡埜栄泉

青梅街道八丁交差点先右側。35年たつという老舗。大福。水ようかん。抹茶羊羹。くず桜いずれも水準以上の味。柏の葉が無いので桜餅用の桜の葉を巻いたものなども面白い。昔ながらの安心できる味でさすが岡埜栄泉の看板を背負っているだけのことはあると思った。99.6.5

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