スモン(病)とは

 SMON ( Subacute Myelo-Optico-Neuropathy )。亜急性脊髄視神経症。

腹痛・下痢ののち、下肢に始まって上行する痛みを伴う異常感覚、運動障害、

さらに視力障害などを起こす病気。一九五五年頃から日本各地に発生。

原因はキノホルム投薬による中毒でキノホルム禁止後減少した。

(広辞苑第五版より)

 

 発生当時、特定の地区で集団発生し、家族の発症も多かったことから、

伝染病として恐れられた。また、多発地域の名前から「釧路病」「戸田の奇病」

などと呼ばれることもあった。

 キノホルムは、元来殺菌剤であり、アメーバ赤痢などに適応があるとされていたが、

戦後、下痢などの症状にも適応拡大され、市販もされていたため、被害が拡大した。

 患者の多くは下痢や腹痛などの症状でキノホルムを投薬されるが、症状は悪化していく。

全身を焼かれるようなとか、胸をぎりぎり締め付けられるようなといった苦痛の末、

寝たきりとなり、死亡者さえ現れた。

 原因が不明であり、伝染病説が早くから流布したことや凄惨な症状に患者たちは周囲から疎外され、

自殺者も多発した。それに追い討ちをかけたのが、朝日新聞の「スモンウィルス発見」のスクープであった。

 それから約半年後、スモン調査研究協議会(スモン協)のメンバーの一人、新潟大学の椿忠雄教授は

疫学調査の結果からキノホルムが原因であることを突き止め、

新潟県衛生部を通じて厚生省に報告すると同時に、新聞社に通知した。

研究者生命を賭したこの行動について、のちに椿教授は

「1ヶ月警告が遅れると新しい患者が60人増える」と語ったという。

 それからわずか1ヵ月後、スモン協はキノホルムの販売中止を答申。

 翌日、厚生省から都道府県知事宛てに通達を出した。

 

 この後、被害者たちには、裁判をはじめ、幾多の苦難が待ち受けているが、

それは項を改めたい。ただ、一つだけ、その裁判中の悲劇を記しておく。