「ジェリー・ルイスが大好きで、入浴にはまったく無縁の連中が、なんでミラージュみたいな美しい戦闘機をつくれるんだ?それにひきかえ、イギリスときたら、ビートルズやマリーナ・サーティスを世界に送り出してるってのに、まともな戦術戦闘機一機、自分じゃ生産できないときてる。いや、それをいうなら、ポルシェだのブラウプンクトだのをつくってるドイツも、ほかのものはなんだってつくってる日本も、同じことか」
「それはいいところをついてるかもしれんぞ」ドンの口調が熱っぽくなる。「たぶん、よき戦闘機の設計というやつには、どっちかといえば機械工学よりも性的エネルギーのほうが関係が深いんだ。性的に抑圧された社会はよき戦闘機をつくれない。つまりその、スウェーデンですら、ヴィゲンだとかドラケンだとかグリッペンとかいったやつをつくりだしているし、スウェーデンの女たちがどんなものかは周知のとおりだろう。戦闘機設計と性的エネルギーの関連性は、完璧であると同時に無意味なものを求める崇高な研究心にある。活力のある国ぐには、戦闘機づくりに時間を浪費する。抑圧された国ぐには金儲けに走るというわけだ」
「しかし、それならイタリア人はどうなんだ?」ボビーはあえてたずねた。「彼らはのべつあれに精を出しているが、あのちっちゃくてキュートなジーナ以来、役に立つ戦闘機はまったくつくっていないぞ。あきれたことに、いまだにF−104スターファイターを飛ばしているんだからな」
「例外があるのは規則がある証拠」けろりとウォーリーがいってのける。「F−104ほど堂々と男根の象徴性を押し出した航空機をほかに見たことがあるかい?あれをイタリア人が改良できるはずがないだろう。どのみち、彼らにゃ時間がないね。ファックするのに忙しすぎて。ことの秘訣は、イタリア人みたいにのべつセックスをするんじゃなく、それを考えることにありだな」
「そいつは納得がいく」ドンがうなずいた。「アメリカじゃ、もうだれもセックスをしなくなった。やってるふりをしているだけでね。かくして、われわれはステルス爆撃機をものにしたというあんばいだ」
マイケル・スキナー著「ファースト・エア2」より抜粋
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