essay 27

一本のビデオテープ 〜淡路仁茂vs.羽生善治〜

ここに一本のビデオテープがあります。
わたしのよく観るNHKテレビ将棋を録画したものです。2時間テープに3倍速で3週分が入っているのですが、今回はその中のひとつを紹介します。

第45回NHK杯テレビ将棋トーナメント2回戦第9局。放映日時は1995年秋の某日。
対戦するのは、当時の六冠王羽生善治vs.淡路仁茂八段。翌年には史上初めて七冠を制覇することになる羽生善治と、その羽生に勝ち越している数少ない(ひょっとして唯一の?)棋士である淡路仁茂八段の対戦は、思いのほか不思議な将棋となりました。その不思議な印象は解説の小林健二八段と聞き手である山田久美女流二段に負うところが大きいのですが、お二人の名解説とともにそのあたりを味わっていただけたら、と思います。

 

<第45回NHK杯テレビ将棋トーナメント2回戦第9局>

先手 淡路仁茂 八段     昭和25年3月21日生まれ 兵庫県神戸市出身 昭和41年5級で故藤内金吾八段門下 昭和49年4段 棋士番号113

後手 羽生善治 名人・竜王  昭和45年9月27日生まれ 埼玉県所沢市出身 昭和57年6級で二上達也九段門下 昭和60年4段 棋士番号175

解説 小林健二 八段
聞き手 山田久美 女流二段

読み上げ 藤森奈津子 女流二段
記録係 野月浩貴 三段

 

初手〜12手

図は△7一玉まで

初手から

▲7六歩 △3四歩
▲2六歩 △4四歩
▲4八銀 △4二飛
▲5六歩 △6二玉
▲6八玉 △7二銀
▲7八玉 △7一玉

山田
「小林先生、四間飛車になりましたね」
小林
「ぼくは二人の対局だから矢倉になると思っていたんですが。これから楽しみです」
 
・・・
山田
「ここで対戦成績を御覧頂きます。過去2戦して淡路先生が2勝ですけども」
小林
「淡路先生2勝ですか。すごいですね」

13手〜18手

図は△8二玉まで

前図△7一玉から

▲5八金 △5二金
▲3七歩 △3二銀
▲6八銀 △8二玉

山田
「淡路八段はどちらかというとこう、持久戦模様の方が多いんですよねえ」
小林
「多いんですよ。急戦というのは比較的短手数になりますから。淡路さんのタイプというのはゆっくりと駒を進めていく、そしてまあ、どちらかというとその、中盤から終盤が長いタイプですよね」
山田
「今回は急戦作を選びましたけれども・・」
小林
「そうそう、今ちらと淡路さんが睨んだでしょう?羽生さんの羽生睨みとかありましたけど。田中寅彦九段の寅睨みとかいろいろありますけども、元祖は淡路さんですね」
山田
「あ、淡路先生の大きい目でギロと」
小林
「そうそう、ギロと睨まれるとね、怖かったんですよ。最近あまり睨まなくなったんですけどね」

19手〜20手

図は△9四歩まで

前図△8二玉から

▲9六歩 △9四歩

山田
「外見はこう、すごく怖そうなんですけどけれども、本当にお話しするとやさしい先生ですよね」
小林
「本当にいい先輩ですよ。今回あの、大地震で淡路先生も大変だったんですけど」
山田
「やはり阪神大震災では、関西の方にお住まいの方は大変だったですよね」
小林
「そう、大変でしたけれども、それでも道場の方をですね、続けられてますね」
山田
「あ、道場といいますと、あの、お弟子さんに、淡路八段は、久保五段がいらっしゃいますけど」
小林
「そう。久保五段は本当に」
山田
「幼稚園の頃から」
小林
「ええ、王様一枚で将棋を教えてきましたからね」
山田
「そこから教えた子が棋士になられると、本当に感無量ですよね」
小林
「そう、そうしてその久保五段も四間飛車の使い手なんです。そしてぼくは彼に教わってる。ぼくが居飛車の方持って彼に四間飛車いろいろ教わってるんです」

21手〜23手

図は▲1六歩まで

前図△9四歩から

▲5七銀左△4三銀
▲1六歩

小林
「(▲1六歩とは)一番不思議なところ突きましたね」
山田
「うふふ」
小林
「様子見というかですね。これはですね深いんですよ。受けましたね」

24手〜27手

図は▲4六歩まで

前図▲1六歩から

▲5七銀 △1四歩
▲2五歩 △3三角
▲4六歩

小林
「そうですね。1六歩、1四歩の交換をしたので、4六歩と突く感じだと思いますね、はい。これで、羽生さんが5四銀と出るのか、出ずに5四歩、6四歩と突くのか、全然違った展開に進むと思います」
山田
「羽生名人の、羽生ファンの方には少しショックだったかもしれませんけどね、今年の夏に畠田理恵さんと婚約されまして」
小林
「畠田さんもとってもいい方ですよね。この間ぼくはあの、『吉宗』に出演させていただいて、そのとき畠田さんにお会いしたんですけども、とても感じのいい方ですよね」
山田
「ふうんふん。さきほど羽生名人にお伺いしたんですけども、ファンの方が他の棋士に流れたんですけどもどうですか?とお伺いしたんですけども、いいことだと思いますよ、と仰ってましたけどね」
小林
「羽生ファンは減らないと思いますよ」

28手

図は△5四銀まで

前図▲4六歩から

▲5七銀 △5四銀

小林
「やはり出ましたね」
 
(解説)
小林
「羽生さんの将棋ってこう、わかりやすくていいですね」
山田
「そうですね。で、速いですよね」
小林
「そう。決断がね」
山田
「ええ」
小林
「プロ棋士でもね、羽生さんの将棋のファン、変な言い方ですけど、羽生ファンって多いんですよね」
山田
「ええ。著書にも『羽生の頭脳』という本がありますけど、ずいぶんあれを読んだ棋士も多い」
小林
「多い」
山田
「わたしも読みました。勉強になりましたよね」

29手

図は▲6六銀まで

前図△5四銀から

▲6六銀

小林
「さてこれがやっぱし淡路さんですよね」
山田
「はい。こう上がる」
小林
「これはあのう、寝技の得意な淡路八段らしい。要するに、一直線に進めないでね、相手の狙いを封じて長手数に持ち込もうという、いかにも淡路流」

30手〜31手

図は▲5五歩まで

前図▲6六銀から

▲5七銀 △6四歩
▲5五歩

小林
「さてこの銀をどっちに引くかですね」
山田
「あ、出ないんですか」
小林
「ちょっと無理だと思います」

32手

図は△6三銀引くまで

前図▲5五歩から

▲5七銀 △6三銀引く

小林
「大山15世名人が、守りの駒は美しいと言いましたけど、やはりこの美濃囲いって非常にきれいですよね」
山田
「はい」

33手〜34手

図は△7四銀まで

前図△6三銀引くから

▲5七銀引く △7四銀

山田
「羽生名人は昨年度の王将戦ではフル・セットまで戦って、最後の最後に」
小林
「はい。しかしあれは盛り上がりましたね〜」
山田
「そうですね」
小林
「正直言いましてね、羽生さんの七冠を見たいという気持ちと、谷川さんに防衛して欲しいという気持ちと、もう、みなさん半分半分だったでしょう」
山田
「そうです。あそこまでいくと、もう、どちらも応援したいという。で、羽生名人はまだ王将位というのは、他のタイトルは全部獲っているんですけど、王将だけはまだ過去にも獲ったことがないんですよ」
小林
「ということはなんとか」
山田
「なんとか」
小林
「もう一度挑戦して」
山田
「ええ。また夢の七冠に向けて」

35手〜38手

図は△4五歩まで

前図△7四銀から

▲3五歩 △3五同歩
▲3八飛 △4五歩

小林
「ああ、△4五歩行きましたね。▲3五飛車と走るのか、▲4五歩と取るのか。まあ淡路さんだからこういった手(▲4七銀)も考えられますね。淡路さんだからってのも変な言い方ですけども。じっくり指そうという手です」

39手〜44手

図は△2四同歩まで

前図△4五歩から

▲3五飛 △4六歩
▲3七桂 △6五銀
▲2四歩 △2四同歩

小林
「一番自然な手ですね」
山田
「そうすると先ほどの▲4五桂が」
小林
「▲4五桂がまあ一番。でも△7六銀が見せられているだけにね、桂馬を渡すと怖いんですよ」
 
・・・
小林
「これはね、▲4五桂はねるつもりで読んでるんですが、もう桂馬はねちゃうとこう後戻りはききませんよね。ですからはねてしまえば一気に行きたいんですよ。そういうつもりで読んでるんですよ」
 
・・・
小林
「▲4五歩と打つのが淡路さんらしいんですよ。本当は」
山田
「じっと打っておくのが」
小林
「ええ。4六の歩を銀で取ってですね、ゆっくり行こうということを考えるかもしれませんよ」

45手

図は▲4五桂まで

前図△2四同歩から

▲4五桂

小林
「ああ、行きました」
山田
「はい」
小林
「男らしい。すごい、この方が」
山田
「じっと▲4五歩と打つより」

46手

図は△2二角まで

前図▲4五桂から

▲5七銀 △2二角

小林
「行った以上は▲2三歩打つと思いますよ」

47手

図は▲4六銀まで

前図△2二角から

▲4六銀

小林
「あれ?」
山田
「あら、▲4六銀と」
小林
「ええ、守ったんですね」
山田
「振り飛車もこんなこと(△4四歩)はしないですよね」
小林
「△4四歩?」
山田
「はい」
小林
「いや・・・それ・・・それ困る。山田さんそれいい手かもしれませんよ。すごく・・・」
山田
「なんとなく飛車道も角道も止めるのでいやな気は・・・」
小林
「それいい手ですね。きっとそうします。きっと打ちますよ、これ。強いね」
山田
「え?ただ歩を(▲2三に)打たれて。でも(かまわず△4五桂と)取っちゃうんですか?」
小林
「そのつもりでしょ?」
山田
「ええ、そのつもりで。そのつもりなんですけど。逃げちゃうと(▲3三桂成りと)成られちゃうから」
小林
「山田先生の一着を。こう(△4四歩)でしょ。こう(▲2三歩打つ)でしょ。こう(△4五歩)でしょ。こう(▲2三歩成る)でしょ。こう(△4六歩と銀を)取るのが大きいですよ」
山田
「これが大きいですか」
 
・・・
小林
「これじゃ長手数にならないので、淡路先生も」
山田
「がんばって」
小林
「いや△4四歩いい手ですよ」
 
・・・
山田
「羽生名人も、3年ぐらい前よりもずいぶん、こう、大人っぽくなったって言うと失礼ですけれども」
小林
「そうですね、山田さんはもうずいぶん羽生さんは。小学生ぐらいの時から」
山田
「いえ、そんな小さい時は」
小林
「中学生ぐらいの時?」
山田
「そうですね。四段に成り立ての頃、ご一緒に仕事させていただいたことがあるんですけれども」
小林
「いい顔してますよね」
山田
「そうですよね。だんだんあの、顔つきが、良くなって。良くなってというか、変な言い方ですけど。元がいいんですけどね。将棋指してるときの顔なんか、ほんとに」
小林
「そうね。とてもいい。勝負師らしいというかね」
山田
「特にタイトル戦などで和服を着られたときなんかは、ほんとに、だんだんサマになってきたっていう」
小林
「確かにそうですね」

48手

図は△4四歩打まで

前図▲4六銀から

▲5七銀 △4四歩打

小林
「お。山田さんの第一感が当たりましたね」
山田
「不思議と」
小林
「やっぱり羽生名人が自分の第一感の手を指すと」
山田
「うれしい♪」
小林
「うれしいでしょ」

49手〜50手

図は△3四歩打まで

前図△4四歩打から

▲2三歩 △3四歩打

小林
「なるほどね〜。これは気づかなかったですね。これはいい手ですね」
山田
「これは?」
小林
「なるほど〜。これはなるほど〜っていう手ですよ。同飛車に」
山田
「同飛車に?」
小林
「同飛車に、もう一回3三歩と打つんですよ」
山田
「へえ〜」
小林
「2四飛車ならここで1三角がぴったりでしょ?」
山田
「そうですね」
小林
「飛車が引けば、桂馬を取りに行ったときに、3三歩がいるのでいきなり飛車が成れないという」
山田
「ああ〜、はい」
小林
「これは細かい技でしたね」
山田
「そうですね」

51手〜58手

図は△4七銀打まで

前図△3四歩打から

▲3四同飛△3三歩
▲3九飛 △4五歩
▲2二歩成△4六歩
▲5四歩 △4七銀打

小林
「へえ。(▲4三歩と)止められてもいいの。金で取るつもりなのかな?」
山田
「ああ、叩いたら同金ですか」

59手

図は▲4三歩打まで

前図△4七銀打から

▲4三歩打

小林
「当然叩きますねこれは。」
山田
「これは」
小林
「ここで羽生名人はどういう・・・金で取るのかな?」

60手

図は△5八銀不成まで

前図▲4三歩打から

▲5七銀 △5八銀不成

小林
「違う。すごい」

61手〜62手

図は△6九銀不成まで

前図△5八銀不成から

▲4二歩成 △6九銀不成

小林
「なんか一直線になっちゃったですね」

63手

図は▲6九同飛まで

前図△6九銀不成から

▲6九同飛

小林
「すごい展開になりましたね、これは。思いもつかない」

64手

図は△4二金まで

前図▲6九同飛から

▲5七銀 △4二金

小林
「あれ?これ、なんか羽生さんの方がおかしかったですね」
山田
「う〜ん」
小林
「そうでもないんですかねえ?」

65手

図は▲4四角まで

前図△4二金から

▲4四角

小林
「これは王様を広くしながら、次に5三歩成りを見て厳しいですね」
山田
「ええ」
小林
「ちょっとどうでしたかねえ・・・今の手順。羽生さんの方がなんか勘違いしてたような気がしますよ」

66手

図は△5八金打まで

前図▲4四角から

▲5七銀 △5八金打

小林
「うわあ、すごいなあ」
山田
「ここで金ですか」
小林
「さあ飛車が逃げるか、歩が成って責め合いか」

67手

図は▲2九飛まで

前図△5八金打から

▲2九飛

小林
「ああ、でも1回逃げましたね」
小林
「1回△4三金上がるじゃないですか。上がると思いますが。ちょっとすごいですね。びっくりしてますが。これじゃあ長手数になる気がしませんね。う〜ん、すごいな」
小林
「△7六銀、▲5三歩成りは羽生さんが勝ちそうなんですが、7七歩と打つ手がありますからね。ちょっと届かないような気がしますね。1回△4三金だと思うんですけど」

68手

図は△7六銀まで

前図▲2九飛から

▲5七銀 △7六銀

小林
「違う。▲7七歩なら△8六桂と打つんでしょうか、それとも、△8七銀、▲同玉、△7五桂と決めるんでしょうか」

69手

図は▲7七歩まで

前図△7六銀から

▲7七歩

小林
「これは当然打ちますね」
山田
「このときに、△8六桂か△8七銀でしょうか」
 
・・・
小林
「羽生さんの方に何か誤算があったとしか思えないです。というのは、要するに、△5八銀と金を取った手に対して、▲4二の歩は歩で飛車を取ったでしょう?」
山田
「そうですね」
小林
「その▲4二歩なりを手抜きして一手勝ちならわかるんですけど、手を戻した(△4二同金とした)ということは、明らかに損な気がしますからね」

70手

図は△4三金まで

前図▲7七歩から

▲5七銀 △4三金

小林
「これはどこかで1回やると思いました」

71手

図は▲1七角まで

前図△4三金から

▲1七角

小林
「でも終盤に入ると、羽生マジックっていうのがありますからねえ」
山田
「ありますねえ」

72手

図は△8六桂打まで

前図▲1七角から

▲5七銀 △8六桂打

小林
「わあっ、来たっ。▲同歩は△8七金と打たれて、それはダメです。ですから寄る一手ですね」

73手〜74手

図は△6八金まで

前図△8六桂打から

▲8八玉 △6八金

小林
「これでいいんですかねえ」

75手

図は▲7六歩まで

前図△6八金から

▲7六歩

小林
「これは銀取りますよ」
山田
「(淡路八段の)扇子の音がずいぶん元気よくなってきましたけど」
小林
「羽生さんの方が変調なんですよね。どうしたんでしょう。勘違いしたのかなあ」

76手

図は△7八成桂まで

前図▲7六歩から

▲5七銀 △7八成桂

小林
「これでいけると読んでるんでしょうか」
山田
「これで・・」

77手

図は▲9七玉まで

前図△7八成桂から

▲9七玉

小林
「たぶん成桂で桂馬を取ると思うんですよね」
山田
「ここで?」
小林
「ええ」

78手

図は△5四金まで

前図▲9七玉から

▲5四金 △5四金

小林
「違う」
山田
「これは?」
小林
「これはずいぶん損してますよねえ」
山田
「駒が」
小林
「そうか、でもこれ、9五歩狙ってるんだ」

79手

図は▲4一飛打まで

前図△5四金から

▲4一飛打

小林
「これ△9五歩突けば詰めろなんですよ」
山田
「突いた手が?」
小林
「△9五歩突きますよね、これは」

80手

図は△5四金まで

前図▲4一飛打から

▲5四金 △8四歩

小林
「あ、違う。違うとこだ・・・あ、なるほど。これはねえ、美濃囲いを崩す手筋は▲6二銀、△同金、▲7一角があるでしょ?そのときに△8三玉と逃げれる手をつくったと同時に、もし▲6二銀なら、△8八銀、▲8六玉、△8五金で詰ましちゃおうと」
山田
「一枚駒が入れば詰み、銀、斜めの駒が入れば」

81手

図は▲8六歩まで

前図△8四歩から

▲8六歩

小林
「そこで逃げ道を開けました。(△6五金と)金が出れば角が成る手と、4三に角を打つ手とふたつありますからね」

82手〜83手

図は▲9五同歩まで

前図▲8六歩から

▲5四金 △9五歩
▲9五同歩

小林
「迫力ありますねえ」
山田
「そうですねえ」

84手

図は△9四歩まで

前図▲9五同歩から

▲5四金 △9四歩

小林
「これは次の9五歩の取り込みが詰めろになります。しかしこうやって、指し切りというか、さすが〜って感じですね。淡路さん自信あると思いますけどねえ。ただこの局面は確かに気持ち悪いというか、焦りますねえ」

85手

図は▲9四同歩まで

前図△9四歩から

▲9四同歩

小林
「じっと9五に打っとくのか、それとももう一回王手するのか、あるいは9八歩という手が好手になるのか悪手になるのかちょっと分からないですけど」

86手

図は△9五歩まで

前図▲9四同歩から

▲5四金 △9五歩

小林
「打ちましたね」
山田
「これで香車が走れば詰めろですか」

87手

図は▲6六角打まで

前図△9五歩から

▲6六角打

小林
「金出てきますね」
山田
「△6五金?」
小林
「ええ。それとも歩を突くかな?」

88手

図は△6五金まで

前図▲6六角打から

▲5四金 △6五金

小林
「逆転しちゃったんじゃないかなあ・・・。それともずっと羽生さんがいいの?不思議な感じですねえ」
山田
「不思議な手順でしたねえ」
小林
「淡路さんが勝ったと思ったんですけどねえ。羽生マジックですねえ」
山田
「淡路八段、自然でしたよねえ」

89手

図は▲8四角まで

前図△6五金から

▲8四角

小林
「これは9四香と走りますよ」

90手

図は△9六金打まで

前図▲8四角から

▲5四金 △9六金打

小林
「1回抑えます」

91手〜92手

図は△7六金まで

前図△9六金打から

▲9八玉 △7六金

小林
「いやすごいなあ」
山田
「どこでマジックがかかったんでしょうねえ」
小林
「たぶん淡路さんが4一飛車打ったあたりじゃないですかねえ。これはダメですねえ。受けがないですねえ。驚きました」
藤森奈津子
「92手で羽生名人・竜王の勝ちでございます」

 

いかがでしたでしょう?
羽生善治はこの第45回NHK杯を結局優勝するのですが、決勝戦前のいつものインタビューで、この年度で最も印象深い一局を尋ねられてこの一番を挙げています。

画像が重くて見づらいですが、当時の棋界を風靡した羽生将棋の一端でも再現できていればと思います。

2005.6.29

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