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  Leaf


#02 「ホットウォータージャグ」は必要か?(硬水と軟水_その2)



まずお断りですが、今回のコラムはいわゆる紅茶専門店など、「おいしい紅茶」
を出すことを商売としているお店などを対象として書いています。

家で飲む場合、自分に合う濃度・渋さに薄めることをなんら批判するつもりは
ありません。

「ホットウォータージャグ」という名前の道具をご存知でしょうか?

ポットに茶葉とお茶を入れたまま時間が経過して、濃くなったり渋くなったり
した紅茶を薄めるためのお湯さしのことです。普段はあまり見ることはありま
せんが、(特にヨーロピアンスタイルの)紅茶専門店なんかに行くと、たまに
出てきます。

今回のコラムは、日本においては、「ホットウォータージャグは必要ない
のではないか」
ということに考えてみたいと思います。

以前、何処かの掲示板で「ちゃんとした紅茶専門店なら、客が要求すれば
ホットウォータージャグを出すのはあたりまえだ」というような意見を、見かけた
ことがあります。

確かにそうです。お店側が「これで美味しい」として提供した紅茶を自分の
嗜好に合わせるため、消費者が差し湯を要求した場合、それを可能な限りで
実現し提供するのはサービス業の基本でしょう。これを否定するつもりは
ありません。

しかし、RINが問題にしたいことはちょっと違います。
「ポットから茶葉を抜かずにお茶を提供して、濃くなった場合のために
ホットウォータージャグを出す」
という行為についてお話したいのです。


紅茶がポットでサーブされるお店は最近増えてきましたが、ポットにはたいてい
2杯分以上はお茶が入っています。なんらかの方法で前もって茶葉が抜かれ
ていない限り、お茶はどんどん濃く、渋くなっていきます。

紅茶専門店で、1杯目をゆっくりと歓談しながら飲んだ後に2杯目をポットに
注いだらとんでもなく濃くなっていて、とてもストレートで飲めるものでは
なくなっていた。そこで、置いてあった(もしくはもってくるよう頼んだ)ホット
ウォータージャグからお湯を差して薄めたが、どうしても1杯目ほどに美味しい
紅茶にはならなかった。

こんな経験はありませんでしょうか?

RINはこういう経験をするたび、「ああ、このお店は、美味しい紅茶を飲んで
寛いで行って欲しい、っていう気持ちが全くないんだな」と思ってしまいます。

日本では、蒸らしすぎたお茶は、いくら薄めても、元の美味しさには
戻りません。


この点に関する誤解が、上のようなことが起きる原因だと思います。
(普遍的に、元の美味しさに戻すのは無理だけれども、とくに日本では、
元の美味しさに近づけるのがより困難、とするほうが正確な表現ですが)


RINの持っている本の紅茶のQ&Aにもこんな記述がありました。

Q6 蒸らしすぎた紅茶はどうすればいい?
A. 蒸らしすぎた紅茶でも、ミルクを多めに入れたり、好みの濃さになるまでお湯を加えれば、おいしく飲むことが出来ます。
紅茶にさし湯は禁物と思うかもしれませんが、これは本場イギリスでもごくあたり前のこと。テーブルには、常時「ホットウォータージャグ」という専用のお湯さしが置かれ、好みの濃さに調節して楽しまれています。
(『おいしく飲みたい紅茶の本』成美堂出版、2002年、182ページ)

本場(?)イギリスでは、確かにそうかも知れません。しかし、「イギリスで
やってるから」というだけでその慣習・ルールの意味や背景を考えず、日本
でもそれが妥当すると考えるのは短慮か、ナンセンス、もしくは無責任
しか思えないです(ポットのための1杯とかいうやつも同じですね)

日本では、蒸らしすぎた紅茶は、薄めても美味しく飲むのは難しいです
ミルクを多めに入れる……というのは、もともとミルクティー向けの最適な
蒸らし時間が、ストレートよりも長いだけでしょう。
(というより、ミルクで紅茶の味をごまかしてるだけ)

この違いは、もうお分かりのことと思いますが、軟水と硬水の違いのためです。

軟水で入れた紅茶に差し湯をして、元の美味しさにあまり近づかないのは、
軟水で淹れた紅茶は時間が経過すると、味のバランスが、硬水と比較して
相対的に大きく損なわれるから
です。

下の2つの図で説明しましょう。
(前回同様、あくまで概念図です。茶葉の種類も無視してますし、
実証もしてませんのであしからず。自分の経験に基づく仮説です)


1. 軟水の場合


軟水で紅茶をいれた場合、時間経過とともに「うまみ」よりも「渋み」が
多く抽出されるようになります
(もちろん、限界はありますが)

そのため、渋みとうまみのバランスが既に最適な状態ではなくなっている
お茶にお湯を差しても(図の矢印部分)、味のバランスはどうにもならないと
思われます(図は、最初の渋さまで薄めるという想定ですが、これによってうまみは最初の
半分以下になっています)


一方、硬水の場合はどうでしょうか。
2. 硬水の場合


硬水で淹れた場合は、紅茶を淹れた時点から、渋みもうまみも増えますが、
そのバランスは大きくは変わらないので(全く、ではありません)、お湯を差しても
薄くなるだけで、飲めなくなる、というようなことにはならないのです。

イギリスで「ホットウォータージャグ」による差し湯があたり前なのはこのため
ですね。


というわけで、日本で「おいしい」紅茶を売りにしているお店には、たとえそれが
イギリスのスタイルを忠実に採用しているお店でも、茶葉をポットに入れっぱな
しのまま、濃くなった時用に「ホットウォータージャグ」を出しておく、というのは
止めていただきたいのです。

軟水で淹れた紅茶をポットサーブする場合には、必ず茶葉を抜くか、それ以上
抽出されない工夫をして欲しい、こういうことですね。

そうしないと、何のためのポットサーブか誤解されます。少なくともストレート派
のRINの中では、茶葉を抜かないポットサーブは「飲めなくなる前に、早く飲ん
で出て行ってくれ」とほぼ同義です。

RINは、もっと自由に、もっと気楽に、もっと美味しくお茶を楽しんでくれる人が
増えると嬉しいです。

そのためにも、お店側のちょっとした手間と心遣いが欲しいです。
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Last Update: 2002/03/31


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