Apr. '03
4/20 ワールドピース・コンサート at 日比谷公園野外音楽堂
正式なタイトルは、「NO WAR WORLD PEACE NOW CONCERT 〜イラクの子供たちに医療援助を〜」ってことで、「入場料の内¥1000をイラクの子供たちの医療援助に寄付いたします」という題目付きのコンサートである。出演者サイドからの開催発表があったのは、たしか3/31だったはずだ。
参考までに米軍によるイラク攻撃の時間的経過についておさらいしておくと、まず3月20日にアメリカ軍は空爆を開始、22日に地上軍の進攻開始、その後、同月末までにバスラを包囲。イベントの開催が発表されたのが、ちょうどこの頃だった。4月1日頃よりバグダッドへの攻撃を開始。4日、バグダッド全域で停電、米軍の関与が噂される。戦後復興の枠組みについての論議が出始める。7日、英軍バスラを制圧。8日、誤爆報道相次ぐ。米軍、バグダッド中心部を制圧。11日〜14日、地方都市の占領相次ぐ。15日、米政府、シリアを批判、戦争拡大の懸念。16日、ブッシュ大統領、フセイン政権の崩壊を宣言。
つーわけで、お題目も出演者も首尾一貫していたのだが、観客の立場からすると、砲声が轟き、硝煙が漂い、銃弾が飛び交うイメージが、「戦争が終わってよかったね、怪我が早く治るように医療品を送るからね」というライブへと移っていったのだ。もっとも、「戦争が終わって…」も、時が経つにつれて徐々に雲行きが怪しくなってきたのだが、それはもっと時間が経ってからの話…。
さて、事前に発表された出演者は以下の通り。
頭脳警察、外道、深空(木暮シャケ武彦+三国義貴)、ソウル・フラワー・ユニオン、
佐藤タイジ(シアター・ブルック)、百怪の行列!、ニューロティカ、
VELVET PAW、制服向上委員会、漁港
ちょっと困ったのが、発表では主催者がホットスタッフ・プロモーションになっていたのだが、ホットスタッフのHPではなかなか情報が公開されなかったこと。急ごしらえでいろいろあったんだろうが、チャリティって、やっぱり「心意気」でしょ。巧遅よりは拙速でしょ、とか思うオレではあった。
さて、当日は、朝から雨模様。オレの住まいの近辺では、徐々に天候が回復しつつあったのだが、多摩川の岸辺に住む友人は、朝から雨が降り続いているという。とりあえず、出来る限りの雨支度をして出かけることにする。
で、野音に着いてみると、やっぱり雨。全席自由席だけど、この天気では客足も鈍る。前のほう三分の一くらいは埋まっているが、真ん中からうしろは広大なスペースが広がっている。幸い無風状態だが、風が吹いたら寒いだろうな、というわけで、遭難予防のためにアルコール飲料を確保することにした。まずはビールから。
ところで、16:00スタートの今日のライブに、オレが到着したのは16:30を少し回っている頃。ちょうどセット変えをしている最中で、缶ビールを半分ほど空けたところに出てきたのがVELVET PAW。PANTAや頭脳警察の曲をア・カペラで歌うグループだ。噂は聞いているが、見るのははじめて。ステージ前面に五人が真正面を向いて仁王立ちで並ぶと、む、こいつらやるな、という感じ。闘ってやる、という気負いが露になっているのが気持ちいいくらいだ。
「銃を取れ」ではじめたのかな?ア・カペラなんつーと、つい癒し系だの山下達郎だのという連想になってしまう。オレもVELVET PAWを自分の目で見るまでは、「まろやか〜になるんでしょうな」と思っていたのだが、いえいえ、そんな事はありませぬ。アカペラ・パーカッションやらアカペラ・ベースがアグレッシブに鳴り響き、おそらくステージ上は唾だらけじゃないかと…(<やめなさいって、若いおねーちゃんもいるバンドに)、まぁとにかく「ロックしてんじゃん」と、けっこう気に入ったオレではあったのだ。
しかしやっぱし、お次の登場の「百怪の行列!」の印象が強烈すぎた!とにかく彼らのHPを見てほしい。なかなか凝り倒して見事なもんだが、当のバンドはこれに胡散臭さやいかがわしさをたっぷりと加えて、そのインパクトはリヒター・スケールでマグニチュード7.5は行ってる。マイクが悪いのか、元々そうなのか、Vo.がバンドの音に隠れてしまってるのは戴けないが、見た目の面白さだけでじゅうぶんお買い得なバンドだ。
笑い転げた後は、深空(木暮シャケ武彦+三国義貴)だ。木暮シャケ武彦を知らない、という可哀相な人に軽〜く説明しよう。と思ったけど、このページを見たほうが早いや。三国義貴は、オレはぜんぜん知らない名前だったのだけど、うちのCDやLPを全部ひっくり返したら、3回くらいは名前が出てきそうな感じ。さすがに三ヶ月も経ってしまうと、音の方はぜんぜん憶えていないが、なんかとっても楽しいセッションを聴かせてもらったという記憶が残っている。
制服向上委員会が出てきたのはここいらへんだったかな?。
ボブ・ディランの曲をバックに寺山修司の詩を朗読し、その後、二曲歌った。彼女らはイベント全体の司会進行役みたいな存在で、各バンドの合間に交代でMCを勤めていたんだが、なかなか微妙な位置での登場だ。クセのあるバンドの合間に一服の清涼剤かと思ったが、なんだか凝った演出で強くアピールしていたのだがしかし…。う〜ん…。
続いては外道。
その昔、後に「せんきゅうひゃくななじゅうねんだい」と呼ばれた時代、日本では、和製なんとかでしかなかったグループ・サウンズに対して、日本語をバンド名にするのが、ロックバンドのひとつのステータスとなっていた。日本語で、ロックを、日本人の、ロックを。それらのバンドは、安直に海外の楽曲をパクり、骨抜きの音を作り捲くる事にも怒りと軽蔑を露わにしていた。そうしたバンドの代表と言える存在が、頭脳警察、村八分、外道であった。と、見てきたようなことを書いているが、当時のオレは洋楽小僧で、「にほんごろっくだぁ?馬鹿こいてんじゃねぇよ」とアタマから無視していたので、外道を見るのはこれが生まれてはじめてなのである。
カッコイイ。
カッコイイよぉ〜!なんで中学生だったオレは、外道を知らなかったのか?外道が解散した'76年頃は、同級生と一緒にタモリの「お〜るないとにっぽ〜ん」を聞いていたのだった、嗚呼。
そして出ました、ソウルフラワー・ユニオン!
この人たちを見るのはこれが二回目で、前に見たときは「CDを買うしかないな」と決意したのだがばってん、いざとなると忘れつづけてまだ買ってない。最近、CD屋さんに行っても邦楽コーナーはあんまり近づかないからなぁ。だれか、これはいいぞ買え買え買ってしまえ、というのがあったらこちらまで教えてやってください。
う〜ん、やっぱしイイなぁ。演奏は非常にタイト、かつルーズ。実に気分がイイ。こういうレゲエノリ(しかもルーツ系)の音は、体が勝手に反応する。とか言いながら、へらへらくねくねと踊っていたら、「次は、クラッシュの”バンクローバー”です」うぎゃああああ!日本語詞もイイ!。
「佐藤タイジ(シアター・ブルック)」ってのは、オレは知らない人で、おぼろな記憶では、なんかとってもギタリストらしいギタタリストを見たような気がした。どうしておぼろな記憶になっちまったかというと、たぶん缶ビールが空いたので缶チューハイを飲んで、そいつも空けてやっぱりだんだん寒くなってきたからワンカップを飲んで、アルコールが脳に回ったタイミングだったのだろう。と、酒のせいにしておいて。
トリは当然、頭脳警察。
野音の宿命と言ったらそれまでなんだが、終わりが早いので、トリといっても四曲くらいしかできん。ぐわあ、不満じゃ、欲求不満じゃ、はじまってもいないうちに終わっちゃった気分。
「ワールドピースなんだから、あんまり過激なやつはできないよな」とかPANTAは言っていたが、あんたこの前のインタビューで「”銃を取れ”は、心の銃の意味だ」って言ってたじゃんか。
ああ、なんか、中途半端に終わられたことを思いだし、壊れ気味のオレだったりする…。
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