Antiinfective drugs (2)(抗感染薬(2))

7、蛋白質合成を阻害する薬物

細菌のリボソームは、70Sで、50Sと30Sからなり、動物のものとは異なる。
streptomycin、tetracycline、chloramphenicol、erythromycin、
lincomycinなどが代表的なものある。マイコプラズマ、緑膿菌、クラミジア、
結核菌などペニシリンが効かない微生物に対しても有効なものがある。

1)aminoglycosides
streptomycin
が代表薬である。1944年に、Selman A. Waksmanは、結核菌が
土の中で急速に死滅することに着目し、土中微生物(Actinomyces)から、
streptomycinを発見した。
グラム陽性菌やグラム陰性菌にも有効で、広域スペクトルの抗生物質の第1号である。
経口投与ではほとんど吸収されない。
続いて、
kanamycinneomycingentamicin などが開発され、抗菌力が
グラム陰性桿菌や緑膿菌にも有効となる。聴器障害と腎毒性の副作用がある。

    
  streptomycin


streptomycin は、30Sに結合し、30Sと50Sリボソームからなる複合体を固定
するので、1)蛋白合成の開始を阻害、2)A位からP位へのtransloactionの阻害と、
premature termination、3)誤ったアミノ酸の取り込み(立方体)を引き起こす。


副作用
代謝されずに腎臓で排泄されること、極性分子であるので組織移行性は悪いが内耳には
移行するために、腎障害と第8脳神経障害(聴力および平衡障害)がでる。
神経筋遮断作用もある。


2)tetracyclines(TC)
tetracycline
が代表薬で、広い抗菌スペクトルを持つ。現在では、グラム陽性球菌やグラム陰性桿菌
の多くが耐性を示す。しかし、リケッチャ、マイコプラズマ、クラミジア、コレラ、ブルセラには
第一選択薬である。
minocyclineは、脂溶性が高く、腸管から吸収されやすく、菌交代症を生じにくい。

  
   tetracycline

tetracyclineは、リボソームの30Sに結合し、aminoacyl-tRNAのA siteへの
結合を阻害する。

副作用
カルシウムと親和性があり、若年者の歯の着色と歯の破壊をおこす。菌交代症により、下痢や腸炎
などの胃腸障害。新生児での頭蓋内圧の上昇。肝障害。

3)chloramphenicol
tetracyclineと並ぶ広い抗菌スペクトルを示す。耐性菌も多く出ている。
高頻度に再生不良性貧血を引き起こすので、限られた感染症に用いられている。
すなわち、サルモネラ症(腸チフス、パラチフス)の第一選択薬。その他、リケッチヤ、
クラミジアにのみ用いられる。

  
    chloramphenicol


chloramphenicol は、50S の peptidyltransferase に結合し、A-siteの新しいアミノ酸を利用できない。


副作用
再生不良性貧血、小児肝臓では、グルクロン酸抱合が未発達なので、多量のCP投与により、
Gray baby syndrome(灰白症候群)を生じる。

4) macrolides
erythromycin(EM)
が代表薬である。グラム陽性菌に有効で、ペニシリンの代用として用いられる。
多くの耐性菌が出現している。マイコプラズマやクラミジアに有効である。肺への移行がよいので、
マイコプラズマ肺炎や新生児クラミジア肺炎の第一選択薬である。
50Sに結合し、ペプチドの延長阻害をする。

  
    erythromycin

副作用
長期使用で、肝障害をひきおこす。

clarithromycin
ニューマクロライド系と呼ばれ、抗菌力、酸抵抗性、組織への移行性が優れている。
マイコプラズマ肺炎やレジオネラ感染に有効。Helicobacter pyloriの除菌にも用いられる。

azithromycin
15員環マクロライド系抗生物質で、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌などに有効。
500mgを1日1回、3日間投与で、組織内有効濃度が7日間維持できる。azithromycinは、食細胞に取り
込まれ運ばれるので肺炎などの感染組織で濃度が高くなる。インフルエンザ菌などのグラム陰性菌に対して
抗菌力が強い。

5)lincomycin
macrolide系に近縁の抗生物質である。主として、グラム陽性菌に有効である。嫌気性菌にも
有効である。副作用として、重篤な下痢(偽膜性大腸炎)を引き起こす。


8、Antimycobacteria drugs(抗結核薬)
a)抗生物質
 1) streptomycin (SM)
 2) kanamycin
 3) rifampicin (RFP)
   DNA dependent RNA polymerase 活性を阻害する。
   副作用として、血小板減少がある。

  
  
rifampicin


b)合成化合物
 1)p-aminosalicylic acid (PAS)
   
PABAの類似構造で、葉酸の合成を阻害する。
 2)isoniazid (INH)
   
結核菌に特有のミコール酸の合成阻害。休止菌には作用しない。殺菌的作用。
       
    副作用として、末梢神経炎(pyridoxineと拮抗するため)がある。

 3)ethambutol (EB)
   
ミコール酸の合成と結核菌細胞壁へのミコール酸の取り込みを阻害する。
    副作用として、視神経障害と重篤な肝障害がある。


c)結核の治療
 
上記薬物が併用される。
   PAS + INH + SM
   RFP + INH
   RFP + INH + SM/EB


II.Antiviral agents(抗ウイルス薬)
ウイルスの増殖は、宿主細胞の細胞内代謝に大きく依存しているために、ウイルスの増殖のみを
抑え、宿主細胞に毒性を持たない薬物の開発が困難であり、現在のところ抗ウイルス薬の種類は少ない。
最近、HIVやインフルエンザウイルス感染の治療薬の要請があり、ウイルス増殖に特異的な過程である、
1)ウイルスの吸着と侵入、2)脱殻、3)ウイルス構成成分の合成、4)ウイルス粒子の形成(組み立て)、
5)ウイルスの放出(出芽)を特異的に阻害する薬物の開発が進められている。

感染症

薬物

作用機作および副作用

ヘルペスウイルス

acyclovir
(aciclovir)

Herpes simpex virusに有効。ウイルスのthymidine kinase
によりリン酸化され、acyclovir triphosphate(ACV-TP)と
なり、ウイルスのDNA polymeraseを阻害する。
副作用:錯乱、気管支痙攣、痙攣など

idoxuridine

Herpes simpex virusによる角膜炎に用いる。ウイルスDNA
合成を阻害する。

ganciclovir

 

Cytomegalovirusに有効である。ウイルスのdeoxyguanosine
kinaseによりリン酸化され、ウイルスのDNA polymeraseを
阻害する。

インフルエンザウイルス

amantadine

Influenza A ウイルスの侵入初期の脱殻(uncoating)を阻害
する。

zanamivir
oseltamivir

Influenza virusの複製と出芽に必須であるneuramidaseを
阻害する。 A と B型感染に有効である。
oseltamivirには、幻覚や異常行動が見られることがある。

HIV
(ヒト免疫不全ウイルス)

zidovudine
(AZT)

HIV感染細胞内で、リン酸化され、三リン酸体(AZTTP)とな
り、HIVの逆転写酵素を阻害する。AZTTPは、細胞のDNA
polymeraseより、ウイルスの逆転写酵素に100倍親和性が
強いので、Tリンパ球を傷害しない濃度でウイルスの増殖を
抑制する。
副作用:重篤な血液障害(汎血球減少)

didanosine

三リン酸体になり、HIVの逆転写酵素を阻害する。

lamivudine

リン酸化され、逆転写酵素によりウイルスDNAに取り込まれ、DNA鎖の伸長を停止する。

indinavir

HIV-1およびHIV-2 由来のプロテアーゼ活性を選択的に阻害
する。

肝炎ウイルス

interferon-α
  +ribavirin,
peginterferon α-2a
  +ribavirin,
interferon-β

B型およびC型慢性活動性肝炎に有効。C型慢性肝炎への治療
効果(ウイルス消失)は30%である。Interferonは protein
kinase, oligoisoadenylate synthase, phosphodiesterase
などの酵素を誘導し、ウイルスRNAを分解したり、蛋白合成を
阻害する。Ribavirinと併用して用いられる。
Peginterferonは、polyethyleneglycolを付加し、分解を
遅くしたものである。Ribavirinと併用することにより、interferonに
効きにくいC型のgenotype 1bにも約半数が有効である。
副作用:発熱、頭痛、悪心などのインフルエンザ様
症状、白血球減少、血小板減少、傾眠、錯乱、痙攣、うつ症状
などがでる。

entecavir 逆転写酵素阻害作用をもち、DNAウイルスの増殖を阻害する。抗ウイルス作用は強く、lamivudineを1とするとentecavirは約1,500。耐性株の出現も少ない。B型慢性肝炎の治療に用いられる。

  
   acyclovir


III.Antifungal agents(抗真菌薬)
真菌は、真核細胞であり動物細胞に近いので、抗真菌薬の全身投与では、一般的に副作用が強い。
抗癌剤や放射線療法による免疫力が低下した癌患者、HIV感染による免疫不全患者、高齢者などに
重篤な深在性真菌症が増加している。

真菌感染部位と
投与
薬物名 作用機作 臨床適応と副作用
深部臓器感染症の全身投与治療薬 amphotericinB
amphotericinB-liposome
ergosterolと結合し、細胞に穴を形成し、細胞膜の透過性亢進する。 アスペルギルス症とムコール症の第一選択薬。毒性が強く、静注で戦慄、発熱などの急性副作用と、遅れて出てくる強い腎毒性や
血液障害などがある。
micafungin 細胞壁1,3- β-D-glucan
合成酵素阻害
アスペルギルス症、カンジダ症に有効。


h

miconazole
fluconazole
fosfluconazole
itraconazole
voriconazole
真菌のP450を阻害することによりergosterol合成を抑制する fluconazoleおよびitraconazole:クリプトコックス症とカンジダ症。
voriconazole:アスペルギルス症
比較的副作用が少ない。
flucytosine 核酸合成阻害 耐性ができやすく、
amphotericinBと併用
皮膚・粘膜感染症の全身投与治療薬 griseofulvin
皮膚などのケラチンを含む細胞に蓄積し、白癬菌の侵入防止と菌の分裂を阻害する。 爪白癬症の経口治療薬
副作用:肝機能障害の頻度が高い。
terbinafine 膜ergosterol合成阻害 皮膚真菌症に有効
局所真菌症の治療薬 nystatin 細胞膜透過性亢進 カンジダ症
tolnaftate
liranaftate
膜ergosterol合成阻害 皮膚白癬症


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(2008/2/27)