Antihypertensive drugs

高血圧の80-90%が、原因のはっきりしない本態性高血圧である。多因子疾患と考えられている。
また、高血圧は、血管の障害以外に、多くの合併症を引き起こす。高血圧の治療は、薬物療法が主流となっている。
薬物は長期投与が必要であるので、(1)単独薬でよく効くこと、(2)作用発現が緩徐で、服用回数が少ないこと、
(3)副作用が少ないなどが大切である。

我が国のガイドライン(2004)では、降圧目標を、若・中年では130/85mmHg未満に、65 歳以上は140/90mmHg未満に、
糖尿病では130/80mmHg未満に設定している。また、望ましい1日の食塩摂取量も6グラム未満に下げた。
第一次薬として、利尿薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、α1遮断薬の6薬が
挙げられている。
最近の米国合同委員会の第7次報告(JNC7、JAMA, 289, 2560, 2003)では、正常血圧が120/80mmHg未満へと
変更され、またα1遮断薬が第一選択薬から除外された。



血圧調節機構の模式図
血圧は、4つの調節機構により維持されている。すなわち、1)細動脈による末梢抵抗、2)静脈血液量、3)心拍出量、
4)循環血液量を調節する腎臓である。
高血圧患者では、心拍出量と循環血液量は正常人と大差ないので、血圧の上昇は、血管抵抗の増加と考えられる。
血管抵抗は、細動脈の半径の4乗に反比例するので、細動脈の収縮が大きく血圧に影響することが理解できる。
これには、交感神経系とrenin-angiotensin-aldosterone系を介する血管収縮が重要である。



1、抗高血圧薬

a.血管拡張薬
  Ca拮抗薬は、高血圧の第1選択薬として広く用いられている。
  ニトロ化合物と動脈拡張薬は第2次選択薬である。

分類

薬物

作用機序など

副作用および禁忌

Ca拮抗薬

ジヒドロピリジン系
・nifedipine(第一
 世代
、T1/2=1-2hr)
felodipine(第二
 世代、
T1/2=2-3hr)
・amlodipine(第三
 世代、
T1/2=30ー40hr)

心臓および血管のL型Caチャネルを
阻害し、末梢抵抗を下げ降圧作用
を示す。降圧作用は強い。
徐放型nifedipineでは、T1/2=
3-4hrとなる。

末梢血管拡張により低血圧、頭痛、目眩、動悸、
顔面紅潮、下肢の浮腫などが生じる。
禁忌:妊娠、心原性ショック、
   急性心筋梗塞

diltiazem

L型Caチャネルを阻害し、末梢抵抗
を下げ降圧作用を示す。
降圧および心抑制作用は、ジヒド
ロピリジン系薬とverapamilの
中間である。

低血圧、目眩、顔面紅潮、徐脈
禁忌:妊娠、うっ血性心不全、
   II度以上の房室ブロック

verapamil

L型Caチャネルを阻害し、末梢抵抗
を下げ降圧作用を示す。心抑制
作用が強く、抗不整脈作用と
して用いられる。

低血圧、心抑制、便秘、浮腫
禁忌:妊娠、うっ血性心不全、
   II度以上の房室ブロック

ニトロ化合物

nitroprusside

NOを放出し、直接血管平滑筋を
弛緩させる。持続静注で用いる。

過度の低血圧が生じる。投与を中止したとき、
血圧のリバウンド現象が見られる。

 

動脈拡張薬

 

 

hydralazine

 

末梢細動脈平滑筋に直接作用し
血管を拡張させる。cGMP産生を
増加させる。重症の高血圧に
用いる。

狭心症発作
発熱、関節痛などのSLE様症状



b.交換神経遮断薬
  
β遮断薬は第1次選択薬である。α遮断薬は第2次選択薬である。
  
交感神経末端抑制薬と中枢性交感神経遮断薬は第2次選択薬である。神経節遮断薬は高血圧緊急症のみに用いられる。

分類

薬物

作用機序など

副作用および禁忌

アドレナリン
受容体遮断薬

αアドレナリン遮断薬
 prazosin

α1遮断による末梢血管抵抗
の減少による降圧作用。
血清コレステロール値やトリグリセリド値
の減少を引き起こす。
糖代謝には影響を与えない。

副作用は少ないが、
起立性低血圧を生じる。

βアドレナリン遮断薬
 propranolol

β遮断薬は、末梢血管を収縮して血圧
を上げると考えられるが、実際は、降圧
に働く。心拍数の減少、心収縮力の
低下をきたす。
その他、末梢交感神経のシナプス前受
容体刺激によるNorepiの遊離抑制。
中枢での血管運動中枢の抑制が考え
られる。
レニン分泌抑制作用がある。
軽度の高血圧に用いる。第一次選択薬
である。

うっ血性心不全、末梢動脈血行不全、
洞性徐脈、AVブロック、起立性低血圧、
喘息発作誘発
禁忌:喘息、心ブロック、末梢循環不全

α・βアドレナリン
遮断薬
 labetalol

β遮断と選択的α1遮断により、
心拍出量の変化なしに血圧を
降下させる。

うっ血性心不全、肝障害、目眩

 

交感神経末端
抑制薬

reserpine


α-methyldopa




中枢および末梢の生体アミンを枯渇
させ、血圧を下げる。

代謝物のα-methylnoradrenaline
による中枢α2刺激と、末梢での
false transmitter 作用、
および血漿レニン活性低下作用に
よる。

うつ状態、胃潰瘍


嗜眠
Coombs試験陽性溶血性貧血


神経節遮断薬

trimethaphan

自律神経節を遮断し、降圧作用を
示す。

呼吸停止、麻痺性イレウス

中枢性交感
神経遮断薬

clonidine
α-methyldopa

脳幹部のα2アドレナリン受容体を
刺激し、交感神経活性を抑制する
ために、心拍出量と末梢血管抵抗を
低下させる。
少量で血圧を低下させる。重症の
高血圧に用いる。

口渇や眠気がある。
薬物中断により強い昇圧がみられる。



c.利尿薬
 
チアジド系薬は第1選択薬である。最近では、使用量を少量にし、他薬との併用 が行われている。
  ループ利尿薬は、利尿作用は強いが、降圧作用が比較的弱い。
アルドステロン拮抗薬は作用が
  弱いので、他の降圧薬の補助薬として使用される。
  投与初期では、利尿作用による循環血液量の減少により血圧低下をきたす。しかし、1-2ヶ月後
  には血液量は元に戻るが、末梢血管抵抗の減少が生じる。Na+はNa-Ca交換反応により血管
  平滑筋を収縮させる。利尿薬はNa+の減少と血管への直接作用により血管抵抗を下げると考え
  られている。

分類

薬物

作用機序など

副作用および禁忌

チアジド系

hydrochlorothiazide
chlorthalidone
(chlortalidone)

高血圧症の第一選択薬である。
遠位尿細管のNa-Cl共輸送体を抑制
することにより、NaClの再吸収を
抑制し、尿量を増加させる。

再生不良性貧血、糖尿病、痛風を
引き起こす。低K血症、低Na血症
禁忌:痛風、高尿酸血症

ループ利尿薬

furosemide

ヘンレ上行脚膨大部で、Na-K-2Cl共
輸送体を抑制することにより、NaClの
再吸収を抑制し、尿量を増加させる。
high-ceiling利尿薬とも呼ばれる。

低K血症、低Na血症、耐糖能低下

アルドステロン拮抗薬
(Aldosterone antagonists)

spironolactone
eplerenone

aldosterone受容体を遮断し、Na+の再吸収を抑制する。
eplerenoneは選択的アルドステロンブロッカー(SAB)である。

高K血症、低Na血症、女性化乳房
eplerenoneは、aldosterone受容体への親和性が強いので、女性化乳房や月経異常などを引き起こさない。


d.ACE阻害薬およびAngiotensin II受容体拮抗薬
  
第1次選択薬である。副作用が少ない。

分類

薬物

作用機序など

副作用および禁忌

ACE阻害薬

 

captopril
enalapril
alacepril
lisinopril

 

angiotensin Iから angiotensin II への
変換酵素を阻害するために、angiotensinII
が減少し、降圧作用がでる。また、bradykinin
の分解酵素である kininase IIも阻害するの
で、bradykinin が増加し、降圧作用がでる。
さらに、血管拡張作用を持つprostacyclinesの
産生を増加させる。
angiotensin II は、血圧調節や血管壁の肥厚や
心肥大などに関与している(リモデリングと
言う)ので、ACE阻害薬は、これらの反応を
阻止し、臓器保護作用がある。

血管神経性浮腫、汎血球減少、
薬疹、空咳(頻度5-10%、bradykinin
の増加による)、腎機能障害
禁忌:妊娠、高カリウム血症、
   両側腎動脈狭窄

Angiotensin II
受容体拮抗薬
(ARB)

losartan
valsartan
olmesartan
candesartan
telmisartan
irbesartan

血管平滑筋のAT1受容体を抑制し、
降圧作用を示す。臓器保護作用がある。

アナフィラキシー様症状、血管浮腫、
肝炎
禁忌:妊娠、高カリウム血症、
   両側腎動脈狭窄

2006年12月に、ARB(losartan)と利尿薬(hydrochlorothiazide)の合剤が発売された。





   nifedipine


 
    captopril


2、抗高血圧薬の積極的な適応

種類

積極的な適応

禁忌

Ca拮抗薬

高齢者、狭心症、脳血管疾患後、糖尿病

房室ブロック
(2度以上、diltiazem)

ACE阻害薬

糖尿病、心不全、心筋梗塞後、左室肥大、軽度の腎障害、
脳血管疾患後、
腎障害、高齢者

妊娠、高カリウム血症、
両側腎動脈狭窄

AII受容体拮抗薬
(ARB)

糖尿病、心不全、心筋梗塞後、左室肥大、軽度の腎障害、
脳血管疾患後、
腎障害、高齢者

妊娠、高カリウム血症、
両側腎動脈狭窄

利尿薬

脳血管疾患後、高齢者、心不全
腎不全(ループ利尿薬)

痛風、高尿酸血症

β遮断薬

心筋梗塞後、狭心症、頻脈、心不全

喘息、
房室ブロック(2度以上)

α遮断薬

高脂血症、前立腺肥大、

起立性低血圧


3、話題

米国において、1994年から2002年にわたり、55歳以上で、収縮期血圧140mmHg以上あるいは拡張期血圧90mmHg
以上の約4万2千人の高血圧患者へ、3種類の薬物を4-8年間投与し、その効果を比較した。
用いた薬物は、利尿薬のchlorthalidone、Ca拮抗薬のamlodipine、ACE阻害薬のlisinoprilである。
一次評価項目である致死性冠動脈疾患あるいは非致死性心筋梗塞の発症抑制効果には、3薬間で有意差はみられ
なかった。しかし、二次評価項目の疾患については、chlorthalidoneと比較して、脳卒中および全心血管疾患の発症率で、
lisinoprilが10-19%高く、心不全発症率では、amlodipineが38%高かった。従って、安価なチアジド系利尿薬が、高血圧
治療の第一選択薬として最も優れていると結論された。 (JAMA, 288, 2981-3044, 2002)

Angiotensin II受容体拮抗薬(ARB)は、臓器保護作用があると考えられるので、Ca拮抗薬よりも優れているとの
仮説で、VALUE(Valsartan Antihypertensive Long-term Use Evaluation)が行われた。
50歳以上の高血圧患者約15,000人について、約4年間、amlodipineとvalsartanを投与して、心疾患と脳卒中の
発生率を比較したところ、両者に差はなかった。むしろ血圧のコントロールが重要であると報告されている。
(Lancet, 363, 2022-2031, 2004)

正常血圧の冠動脈疾患者約2000人にamlodipineあるいはenalaprilを2年間投与して、心血管系イベント抑制効果が
比較された。その結果、冠血管疾患発生の抑制および冠動脈硬化病変の抑制は、enalaprilに比べて、amlodipineが
有意に優れていることが報告された。これは、1日1回投与の場合、enalaprilに比べて、amlodipineの方が作用時間が
長いためと考えられる。 (Nissen, S.E. et al, JAMA, 292, 2217, 2004)

スエーデンのグループは、βブロッカーについての多くの論文データをメタ解析し、βブロッカーは、他の降圧薬に
比べて、脳卒中の予防効果が16%低いことを明らかにした。そしてβブロッカーを降圧薬の第一選択薬に
すべきではないとしている。 (Lindholm.L.H. et al, Lancet, 366, 1545, 2005)

Trinity College Dublinで、4種類の降圧剤を1/4づつ併用する方が、単独投与よりも降圧作用が強いかどうかの
試験が行われた。110人の高血圧患者(平均血圧:160mmHg)を5グループに分け、amlodipine(AML, 5mg)、
atenolol(ATE, 50mg)、bendroflumethiazide(BEN, 2.5mg)、captopril(CAP, 50mg)と、上記4種類の各薬物の1/4量を
含んだ併用カプセルを投与し、4週間後に血圧を測定した。平均血圧は、併用剤では19mmHg、AMLでは10mmHg、
ATEでは10mmHg、BENでは6mmHg、CAPでは11mmHg 降下した。低濃度の降圧薬を併用する方が、単独投与より
強い効果があることが示された。 (A.Mahmud et al, Hypertension, 49, 272, 2007)

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(2008/5/30)