Parkinson病治療薬(Antiparkinsonian agents)

1、Parkinson病について

 中脳(VTA)のドパミン作動性ニューロンの変性がある。
 その結果、相対的にコリン作動性ニューロンの活動の上昇が見られる。
 1000人に1〜1.5人の罹患。50〜65才に発病し、ゆっくり進行する。
 3主症状:akinesia(運動減少)、rigidity(筋緊張)、resting tremor(静止時振戦)

 大部分の原因は不明であるが、二次的には、ウイルス、外傷、中毒、血管障害、薬物の副作用などでも起こる。
 遺伝性のものとして、若年性Parkinson病(AR-JP)と家族性の優性遺伝型Parkinson病が解析されている。
 前者は、比較的症状が軽度で、黒質DAの変性は見られるが、Lewy小体はない。この原因遺伝子(parkin)は
 第6染色体上にあり、ubiquitin ligase活性を持つ。
 後者の原因遺伝子は、4番染色体上のα-synuclein遺伝子で、それに変異があると報告されている。

2、Parkinson病のにおける各種ニューロンの相互作用 


運動制御の主経路は、1)大脳皮質->線条体->淡蒼球->視床->皮質である。
副経路は、2)黒質<->線条体(運動の進行作用)と、3)淡蒼球<->視床下核(運動の制止作用)である。
線条体のAchニューロン(促進系)は、DAニューロン(抑制系)と機能的にバランスを取っている。

赤太線
はParkinson病で活性化されている回路
破線
はParkinson病で減弱している回路
GABA:GABA作動性ニューロン、Glu:Glutamate作動性ニューロン、Ach:コリン作動性ニューロン、
M:内側淡蒼球、L:外側淡蒼球

 

3、MPTP中毒説について

アメリカで、自分で合成した合成ヘロイン(pethidine)を注射した学生がParkinson病になった。
合成ヘロインのby-productである methy-phenyl-tetrahydopyridine(MPTP) がParkinson病を引き起こすことが
分かった。MPTPは、グリア細胞のミトコンドリア外膜にあるMAO-Bにより酸化されMPP
+となりDA transporterにより、
ドーパミン神経に特異的に取り込まれて、ラジカルとして作用し、ミトコンドリア呼吸鎖阻害、膜電位消失、
各種酵素の活性化などにより、ドーパミンニューロンの変性を引き起こす。

         

pethidine (meperidine)      グリア細胞ミトコンドリア外膜のMAO-Bで酸化

 

4、治療薬

DAの補充をするか、相対的に強くなったAch作用を抑える。

分類

作用別

薬物

解説

ドパミン作動薬

生合成促進

levodopa

DAの前駆体で、dopa decarboxylaseによりDAとなる。

levodopa +carbidopa

carbidopaは、dopa decarboxylaseを阻害するために、
末梢でのlevodopaの利用を減少させる。またBBBを通らない。
従って、carbidopaとの併用により、levodopaの量が1/5になる。

遊離促進

amantadine

DAを遊離させる。NMDA受容体阻害作用あり。振戦の初期には有効。

受容体刺激

bromocriptine
pergolide
cabergoline

ergotamine誘導体である。DA受容体を直接刺激する。pergolideとcabergolineは心弁膜障害と心肺後腹膜繊維症の副作用が報告されており、第一選択薬としない。

pramipexole
ropinirole

non-ergotamine系で、DA受容体を直接刺激する。ドパミン作動性神経に保護的に作用し、病態の進行を抑制。 突発的睡眠や傾眠がある。

MAO阻害

selegiline

MAO-Bを選択的に阻害する。levodopaで効果不十分な時に用いる。
固縮や無動の改善がある。三環性抗うつ薬との併用は禁忌。

COMT阻害 entacapone COMTを阻害することにより、levodopaの半減期を延長する。levodopa・carbidopaと併用すると、効果発現時間が長くなり、wearing-off現象を改善する。

抗コリン薬 

ムスカリン
受容体阻害

trihexyphenidyl

末梢作用が弱い。振戦に有効。

biperiden

上記に同じ。



   
    levodopa   

   
 trihexyphenidyl

 

a.levodopa

 Dopamineは、BBBを通過できないので、前駆体でDOPAを用いる。
 DOPAはdopa decarboxylaseの作用でDAになる。
 dopa decarboxylase阻害薬の
carbidopaと併用することにより、L-Dopaの使用量を減らすことができる。

 経口投与で、DOPAの10-20%が血中に入り、脳内へは1%が入る。末梢でもdopa decarboxylaseにより
 DAができるので、低血圧、頻脈、不整脈が生じる。
 5年間の治療で、半数は効かなくなる。
  up and down:症状の改善と増悪が日内変動する。
  wearing off (end-of-dose akinesia):突然薬効がなくなり、akinesiaがでる。
  on and off:突然効かなくなり、症状が悪化する。

 副作用
 1) 悪心、嘔吐、食欲不振:嘔吐中枢の刺激による。
 2) 起立性低血圧
 3) 精神症状として、焦燥感、抑鬱、錯乱、幻覚がでる。
 4) 異常不随運動

 禁忌:MAO阻害薬との併用は禁忌。VB6と併用しない(dopa decarboxylaseを活性化する)。 


b.ドパミンアゴニスト(dopamine agonists)

 
第二世代のドパミンアゴニスト(pramipexoleなど)が開発され、L-Dopaに比して効果は
 弱いが、持続時間が長く安定している。これを使用することにより、L-dopaの運動合併症の
 発症を遅らせることができる。しかし、最近、pergolideとcabergolineには心弁膜逆流障害と
 心肺後腹膜繊維症の副作用があることが報告され、第1選択薬から外された。

  ドパミンアゴニストの効果が不十分になれば、L-Dopaを追加する。
  副作用として、突発的睡眠、妄想、せん妄などがある。

c.trihexyphenidyl

 末梢作用の弱い中枢性抗コリン薬である。振戦に効くが、筋緊張や運動減少には効かない。 
 副作用として、中枢作用では:錯乱、妄想、幻覚、せん妄など。
 末梢作用:口渇、散瞳、悪心、動悸、排尿困難


5、話題

Parkinson病におけるLewy body(レビ小体)について
α-synucleinは、Torpedo(電気なまず)の発電器官を支配するコリン作動性神経のシナプス小胞
から単離されたもので、核にも分布しているので、synucleinと命名された(1988)。
1993年にAlzheimer病のamyloid斑から単離されたNACと同じものであった。α-synucleinは、Lewy小体に
ubiquitinと共に多く含まれている。1997年に、遺伝性Parkinson病の原因遺伝子がα-synucleinであり、
点変異がA53Tにあることが明らかにされた。さらに、α-synucleinをマウス脳に過剰発現させると、
黒質や皮質でLewy小体の蓄積が見られ、運動障害も生じた(2000)。

α-synuclein(αSp16)は、synphilin-1(synph1)と強く結合しており、糖鎖付加を受け
αSp22-synph1となる。parkinは、synph1をubiquitin化し、αSp16-synph1-Ubnとなり、proteosomeにより分解される。Parkinson病(PD)では、α-synucleinに異常があるためにubiquitin化されたαSp22-synph1が分解されずに蓄積し、Lewy小体を形成する。
一方、若年性Parkinson病(AR-JPでは、parkinに異常があるために、αSp22-synph1のubiquitin化が起こらず、αSp22-synph1が蓄積するが、Lewy小体は形成されない。Science, 293,263 (2001)、Nature Med., 7, 1144 (2001).
parkinの他の基質として、Pael-Rが見出された。Parkinに異常があるとPael-Rが蓄積し、細胞死を引き起こす。細胞死は、ミトコンドリアの膨張からチトクロームCの遊離をへて引き起こされる。Neuron, 38, 13, 2003.


α-synuclein(αsyn)の細胞毒のメカニズムを調べた。αsynは小胞体(ER)-Golgiの蛋白輸送を
阻害することが分かった。このステップで、αsynの細胞毒性と関連している蛋白としてRab GTPase
を同定した。Rab GTPaseを、αsynを発現させたニューロンに導入すると、細胞死が抑制された。
以上より、αsynとER-Golgiの結合による細胞障害作用をRab GTPaseが抑制することが示された。
(Cooper, A.A. et al., Science 313, 324, 2006)

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(2008/3/10)