翔子と紀柳のパラレルワールド日記(小休止)

翔子と紀柳の質問コーナー

一体いくつの扉をくぐっただろうか。
翔子と紀柳の2人は、少し今までのことをまとめてみようではないかと思い立ち、
しばらくの間、その広間で休むことにした。
休憩所らしきものがある。ご丁寧にも、ふかふかのソファー、
美しい花が飾られてあるテーブル、さらにはケーキセットまで用意されていた。
しかも驚いたことに、
『ここは翔子さんと紀柳さんの貸切です。ごゆっくりどうぞ。』
という札が置かれてあった。
「なんでいきなりこんなもんが用意されてるわけ?」
そう言いながらも、翔子はソファーに腰を下ろした。
そしてコーヒーカップを手に取り、中のものを飲み始める。
「へえ、美味い紅茶だな。どっからしいれてきたんだろ。」
そんな翔子の行動に、紀柳は唖然としていった。
「翔子殿、もう少し用心というものを・・・。」
「へーきへーき。多分あのルザミスさんが用意してくれたんだよ。気にしないで紀柳も座れって。」
用心がないというのも正しいかもしれない。
しかし、貸切という事に紀柳は納得し、翔子に従うことにした。
それでも、全てを納得したというわけではなかったが。
「どうしたんだよ紀柳、そんなに難しい顔をしちゃってさ。」
「まるで行動を読まれているようでな。あまりにもでき過ぎではないのか?」
確かにそうだった。2人が休憩をしようと考えるまで、こんな休憩所は無かったのだから。
しかも、ケーキも紅茶も、新鮮というにふさわしい。入れたて、作りたてといったふうであった。
「うーん・・・。でもなあ、しゃべらないって約束したから、あたしはしゃべるわけには・・・。」
「ん?翔子殿、何か言ったか?」
「い、いや、別に。」
あわてて紅茶をすすり出す翔子。
実は、ソファーに座ってほんの少し考え事をしている間に、これらのからくりが全て分かってしまったのだ。
分かったからいってもそんなに感動できる内容ではなかったが。
「ま、細かいことは置いといて、紀柳にいろいろ訊きたいことがあるんだ。いいかな。」
「なんだ翔子殿もか。私もたくさんある。ちょうどよいから、質問時間としようか。」
「おっ、いいねそれ。それじゃああたしからいくぜ。」
かくして、2人の質問合戦が開始された。

「それじゃあいくぜ、1つ目の質問。初対面の人への照れは直ったのか?」
「いきなり何を質問するかと思えば・・・。直るわけが無いだろう。あれは私の性格だしな。」
「でもさあ、結構平気で話したりするようになったじゃん。」
「気のせいではないのか?状況にもよるし・・・。」
「そうか、まあいいや。2つ目、裏技ってなんだ?」
「裏技?」
「そう。ほら、カラーレンジャーとかいうやつと戦ったときのことだよ。」
「おお、あの時のか。秘密だ。」
「紀柳、それじゃ答えになってないよ。言っとくけど、あたしは引き下がるつもりは無いからな。」
「わ、分かった。種明かしをすると、空間に万象大乱をかけたのだ。」
「く、空間?」
「そうだ。あの時は、どうせこんな作戦で来るだろうと、予測できていたのでな。
まず、空までの距離を一瞬にして縮め、飛び上がる。そして元に戻す。地面に下りるときも同じ要領だ。」
「それって瞬間移動なんじゃないの?」
「そういう言い方があるのか?ならそう呼ぶことにしよう。」
「・・・まったく、とんでもないな・・・。えーと、次は試練について。
いくつ試練がたまったんだ?」
「そんなものは数えていない。もう一度考え直すかもしれぬし。」
「いいじゃんか。とりあえず全部教えてくれよ、どんな内容なのかを。」
「それを聞いてどうするつもりなのだ?」
「あたしが一緒に、試練にふさわしいかどうかアドバイスしてやろうというわけだよ。」
「・・・まあいい。えーと、『茶都美殿が考えたお茶(唐辛子茶、あんこ茶等々)を入れた湯のみを巨大化し、
その日1日の飲み物はそれ以外を飲まずに過ごす。』。」
「そんな事やったら、七梨のやつ死んじまうんじゃ・・・。」
「主殿なら大丈夫だろう。次は、『ジャイアン殿の歌を1時間以上、気絶せずに聞きつづける。』。
これは、途中に私が音を大きくしたりしようと思う。」
「紀柳は気絶してたのに?」
「一応言っておくが、これは翔子殿の提案だぞ。」
「ああそうだっけか。でもなあ・・・。」
「心配無用だ。私にとどく音を小さくすれば問題は無いはずだ。
次は、『パソコンを買う』・・・と、これは違ったな。
えーと、『100桁の足し算を1分以内に暗算。』。」
「なんつー試練だ。無理に決まってるだろ、没にしろ。」
「・・・せっかく考えたのに。えーと、『花織殿が行うしゃっふるげえむを10回連続で当てる。』。
当然私が速くする。」
「あれか・・・。まあいいんじゃないの?」
「次は、『麻雀で・・・』とと、これは違う。『期待せずに待つ。』。」
「・・・いまいち良くわかんないなあ。それって試練なのか?」
「なんとなく良い感じがしたのだが・・・。だめかな・・・。」
「自信が無いんだったらやめとけって。次は?」
「えーと、『離珠殿が何と言ったかを正確に当てる。』。」
「はあ?それってあたしが紀柳にふったやつじゃないか。著作権法に引っかかるな。
というわけでなんかくれよ。」
「・・・よく分からぬが、私が翔子殿に何かしろという事なのか?」
「そういうこと。そうだな・・・今度あたしんちに泊まりに来てさ、いろいろとやってくれよ。」
「・・・まあいい。えーと、『上から降ってくる巨大な岩の下敷きになって、10分間耐える。』。」
「それこそ死んじまうって。もう少し穏やかにしろよ。」
「なあに、主殿なら大丈夫だ。次は、『自然との一体化。』いや、これは無理だな。
えーと、『陽天心のかけられた物と友達になる。』。」
「ああ、教えてくれたやつか。はっきり言っとくぞ、絶対に無理だ。」
「やってみなければわからんではないか。憶測で物事を決めるのはよくないぞ。」
「でもなあ、陽天心かけたルーアン先生ですら完全に操りきれてない事があるのに、
どうやって仲良くするんだよ。」
「・・・主殿ならきっと成し遂げるはずだ。」
「はいはい、分かったよ。次は?」
「『岩を100個連続壊す。制限時間一時間。』うむ、なかなかよいな。」
「なにがいいんだよ。普通の人にそんなもんできるわけないだろ。却下だ却下。」
「しかし翔子殿、これには続きがあるのだ。『その壊した物を元通りにする。』というものが。」
「あのなあ、常識で考えろよ。キリュウはそれができるのか?」
「・・・無理だ。しかし主殿なら・・・」
「無理だ!たく、せめてもっと別な物にしろよ。簡単な道具とか。」
「そうだな、ではそうしようか。机を100個壊し、そして・・・」
「待った!それのどこが簡単な道具なんだ?」
「ダメなのか?それでは・・・鉛筆にしようか。」
「・・・ずいぶんとちっちゃくなったな。まあとりあえずそんなもんからだな。次は?」
「えーと、『ダーツで百発百中。』これは誰かに教えてもらわないと。」
「あのなあ、どうしてそう極端なものばっかり・・・。
あの七梨が百発百中なんて出来るわけないだろ。」
「翔子殿、そんな事を言ってばかりでは試練にならん。主殿ならやり遂げるはずだ!」
「はいはい、頑張って百発百中目指してくれ。次は?」
「『シグナル殿と遊ぶ。』なんだこれは?遊んでいて試練になるのか?」
「自分で書いといて忘れるなって。シグナルって多分あのちびの方だろ。
あたしが思うに、十分試練になると思うぞ。」
「・・・そういえばそんな事を言っていたような。ふむ、今度主殿を連れて行かねばな。」
「うーん、結構大変そうだな。七梨達ともう一度同じ所をまわんなきゃなんない。で、次は?」
「『小さくなったり大きくなったりしながら一日を過ごす。』うむむ、これは大変そうだな。」
「大変も何もむちゃくちゃだな。どんな風に過ごすんだ?」
「例えば一時間二倍の大きさで過ごし、次の一時間十分の一の大きさで過ごすとか。
いろいろやり方はあるだろうな。しかしそれだと私が一日中傍に居ないと・・・。」
「という事はお風呂一緒に入ったり、一緒の布団で寝たり。なるほどねえ。」
「そうか・・・。!!な、ななな、何を馬鹿な事を!!!う―む、やめにするべきかな・・・。」
「冗談だって。無理に付きっきりじゃなくってもある程度時間が経ったら探しに行けばいいじゃん。」
「しかし小さい主殿を探すのは骨が折れそうな気が・・・。」
「それも試練だよ。なんて、ルーアン先生のコンパクト使えばいっぱつじゃん。」
「おおそうか、その手があったな。よく相談して実行するとしよう。」
「しっかしなあ、ちっちゃいのはいいとして、巨人になった七梨なんて見たくないなあ・・・。」
「ふうむ、それもそうか。まあ、無理に大きくせずとも良いかもな。」
「そうそう、小さくしたりもとに戻したり。で、次は?」
「『ある物を主殿が持って逃げ、一日つかまらないようにする。』。単純そうだが難しいはずだ。」
「・・・紀柳、どうせだったら物じゃなくて者、つまり人にしよう。
シャオなんか適任だとあたしは思うんだよな。もちろん支天輪無しで。」
「そうか?ではそうするとしようか。
次は、『いつ終わるとも果てない空間をただひたすら歩く。』。もちろん時間は限りなく・・・。」
「ノイローゼで倒れそうだな。でも、あの世界ってもう行けなくなったよな。どうすんだ?」
「なに、主殿を小さくして、広い空間を歩いてもらえれば大丈夫だ。
では次。『羽林軍殿に負けぬような家を建てる。』。」
「・・・無理なんじゃないのか?羽林軍は建築のプロなんだろ?七梨が勝てると思えないけどなあ。」
「だからこそ立派な試練になる。主殿ならきっとやり遂げるはずだ。」
「それに、守護月天より優れてる主じゃ、守護月天に守ってもらう必要がなくなっちゃうし。
という事でシャオが落ち込んじゃったりしないかなあ・・・。」
「・・・手間がかかるな。別になにも、羽林軍殿の仕事をすべて主殿がするわけではあるまい?」
「そうか、あたしの取り越し苦労だよな。で、次は?」
「これはかなり難しそうだ。『支天輪より出た星神たちに町中へ散らばってもらい、
それを主殿が全て見つける。』。・・・止めるべきかな。」
「いきなり弱気になってんじゃね―って。要は人探しって事だろ。
簡単だよ。七梨ならそれくらいは出来るって。」
「しかし全ての星神たちだからな。その名のとおり、星の数ほど居るに違いない。
ルーアン殿のコンパクトを使ったとしても、並大抵の時間では達成できないだろう。」
「なるほどねえ・・・。でもまあ、試すつもりでやるだけやってみたら?」
「それもそうか。どちらにしてもシャオ殿とよく相談せねば。」
「そうそう。それで次は?」
「『千葉市幕張の大学生達と交流。』。」
「・・・頑張ってやりな。あたしは行かないからな。」
「なぜ?」
「なぜもへちまも無いだろ。あたしは疲れるのは嫌なの。多分七梨も嫌がりそうだな・・・。」
「しかし、人と人との交流は・・・」
「だったらキリュウが率先して、七梨に手本を見せてやりな。」
「・・・没にしよう。」
「あっさり引き下がったか。で、次は?」
「『マルテレビ見学。ついでにそれぞれの仕事を体験。』。」
「・・・頑張れよ。」
「どうしてそう消極的なんだ翔子殿は。」
「それって関係あるのか?さっきも言ったようにあたしは疲れるのは嫌いなんだよ。」
「しかしだな・・・まあいい。やるのは主殿だからな。」
「可哀相な七梨。万難地天がこんなに厳しいなんてな。でもくじけるな。ちゃんと手本を見せてくれるから。」
「・・・没。」
「おいキリュウ、自分こそ消極的じゃないか。」
「前言撤回する。消極的とかそういう事は関係無い。」
「あ、そ。それで次は?」
「『置き手紙をして居なくなったシャオ殿を探す。』これなら難易度はそう高く無い。」
「・・・それは良いんだけどさ、なんの意味があるわけ?」
「いわばシャオ殿を探す練習だ。もし離れ離れに成った時でも・・・。」
「要はかくれんぼ?」
「そうだ。」
「星神全部を探す方に比べれば全然簡単じゃんか。」
「いや、まだ続きがある。他の皆の妨害をかいくぐって・・・とな。」
「それっていっつもやってると思うんだけど。」
「そうなのか?だったら必要無いのかもな・・・。」
「そうそう。普段の行動でばっちりだって。で、他には?」
「以上で終わりだ。今度は私から質問して良いか?」
「終わり?まあ、これだけ有れば当分試練のネタには困らないだろうな。
それじゃあいいぜ。一応答えるからなんでも聞いてくれ。」
「一応か・・・。まあよい。まず一つ目。
ポルターガイストについて聞きたい。」
「ポルターガイスト・・・。前に説明したじゃんか。あれで納得しろよ。」
「納得できぬからこうして聞いているのだが・・・。」
「紀柳、試練だ、納得されよ。」
「あのな、翔子殿・・・。まあ良い、試練なら仕方ないかな。」
「よしよし、そのいきそのいき。次は?」
「それとなしに気になっていたことだ。
エミリー殿を見つけたということで連絡はしたのか?」
「エミリー殿?・・・ああ、あのマネキンの。・・・連絡ってなんだ?」
「その様子だとしてないみたいだな。最初に洋服店で出会った男が居ただろう。
その男に翔子殿が言ったではないか。“もし見つけたら連絡する”と。」
「ああ、そういえばそんなことを言ったような・・・。
大丈夫だって。その人はあたし達が見つけたなんて知らないだろうから。
“やっぱり見つからなかったのか”ってあきらめてるよ、きっと。」
「聞くべきではなかったな・・・。もう一つ。
エミリー殿と、交殿の声が聞こえる原因を考えたい。という訳で一緒に今から考えてくれ。」
「それって質問なのかなあ・・・。まあいいや。
とりあえずあたしが思うに、偶然だな、うん。」
「・・・そんないい加減な。偶然で互い違いに聞こえるようになるはずが無かろう。
絶対に何か原因があるはずなのだ。なんでも良いから気になった事を・・・。」
「うーん、ひょっとしてエミリーが着てたのと同じ服を着てたから聞こえたとか?」
「なるほど!!さすがは翔子殿だな。」
「納得するのは早いって。あたしに交さんの声が聞こえた原因が分からないだろ。」
「それもそうか。翔子殿は作業服など着ていなかったしな・・・。」
「でも、交さんが以前着てた服を、たまたまあたしが着てたんならつじつまが合うけど・・・。」
「また今度それを聞いてみるとするか。ありがとう、翔子殿。いい参考になった。」
「そりゃどうも。ほかに質問は無いの?」
「これはぜひとも聞いておきたい。シグナル殿に与えようとした試練はなんだ?」
「・・・それはちょっと教えられないな。」
「そんな言葉で私が引き下がると思うか?絶対に教えてもらう。」
「教えられないってのも試練だよ。」
「そこを無理に聞くのも試練。さあ、答えられよ。」
「うーん、別に大した事じゃないよ。ピクニックって事。」
「・・・いまいち分からぬ。ちゃんと説明されよ。」
「だから・・・その・・・言っていいのかな・・・。」
「言っていいのかだと?まったく・・・さあ、早く説明するのだ!」
「分かった分かった。とりあえず計画的には、シグナルと紀柳が闘ってみて・・・」
「私とシグナル殿が闘うだと!?なんという事だ・・・。」
「話を最後まで聞けって。途中でキリュウに立って言ってもらった、
“死んでしまうかも知れぬが”というのでそれは却下にしたんだ。
いくらなんでも殺人罪と器物破損罪で捕まりたくは無いからな。」
「・・・酷い言われようだな。」
「それでさ、趣向を変えたんだ。シグナルと紀柳に競争してもらおうと思って。
負けた方が罰ゲームをする、っていう寸法だったんだ。
競争の内容は、塔のてっぺんにどっちが早く登れるか、とか。とにかくいろいろだよ。」
「なぜ私がシグナル殿と競争をせねばならんのだ。」
「二人とも試練になるから丁度いいだろ。おまけに罰ゲームがかかってんだ。
必死になる事間違い無し!というわけで結構楽しみにしてたのになあ・・・。」
「念のために聞いておこう。その罰ゲームとはどんなものだ?」
「聞きたい?やめた方がいいと思うけどなあ・・・。」
「いいから言ってみてくれ。」
「分かった。十日間音井家の家事を全て、負けた方がやるって事。
食事はもちろん、洗濯、掃除、資料整理、等々・・・。
もしキリュウが負けちゃったら、あの世界に長時間滞在しなくちゃいけないとこだったよ。」
「・・・寝過ごして正解だったようだな。とんでもない話だ。
どうして私がそういう話に巻き込まれるのやら・・・。」
「試練じゃないの?し・れ・ん。」
「こればっかりは試練で片付けて良くないような・・・。」
「とにかくそういう訳だから、もう一度あの世界に行って・・・ああ、確か行くんだったよな。
七梨に試練を与えないといけないもんな。こりゃあ楽しみだ。」
「・・・ひょっとして出来なかったそれをやろうと言うのか?」
「当たり前じゃん。そうでなくっちゃ面白くないよ。」
「面白いとかそういう問題ではないと思うが・・・。」
「まあまあ。他に聞きたいことは?」
「どうでも良いかも知れぬが、翔子殿は・・・」
「どうでもいいんなら却下。次は?」
「・・・どうでもよくないと思うのだが。」
「そうなの?だったら最初っからそう言えよ。」
「分かった・・・。翔子殿はしゃれが嫌いなのか?」
「は?なんの事?ああ、布団が吹っ飛んだってやつか。あれで100点もらったんだよな。」
「その話ではないのだが・・・。」
「あれって確か野村が20点で紀柳が5点だったんだよな。一体どんなしゃれを入力したんだ?」
「・・・答えねばならぬのか?」
「もちろん。とりあえず野村のは?」
「『太助、助けてくれー』だった。」
「・・・最悪だな。人の名前でしゃれを作るなんて。それで20点?嘘だろお?」
「い、いや、嘘ではない。・・・で、私のも言わねばならぬのか?」
「もちろんってさっき言っただろ。なんて入力したんだ?」
「『試練はつらいかもしれん』だ。」
「紀柳らしいな・・・。それが5点かあ。あたしだったら10点つけるのになあ。」
「・・・それでも野村殿の2分の1だな。」
「機械の点数と比べてんじゃないって。野村のはあたしから言わせれば0点だ。」
「なるほど、それなら合点がいくな。」
「で、しゃれが嫌いってなんの事だ?」
「いや、その話はもう・・・」
「いいから答えるの!」
「わ、わかった。以前言った、翔子殿が証拠を・・・というやつだが。」
「ああ、あれか。一人で言って笑ってやがったやつが居たな。すぐにあたしが突っ込んでやったけど。」
「・・・もういい。この話は止めにしよう。」
「ん?もう止めるの?もっと言ってみなよ。」
「いや、手前に翔子殿が言ったではないか。『人の名前でしゃれを作るのは最悪だ』と。
それで私は納得した。もう十分だ。」
「そっか。それじゃあ次は?」
「単語の意味を。まずは、“あいでんてぃてぃ”。」
「知らないよ、そんなもん。・・・紀柳はなんだと思うんだ?」
「うーむ、まず“てぃてぃ”をのけて“あいでん”。」
「あのな・・・。それで?」
「で、あいは愛、でんは伝。ティーは確かお茶だったから、愛を伝えるお茶だと思うのだ。」
「・・・全然訳が分からないなあ。強引にもほどがあるんじゃないのか?
愛を伝えるお茶ってなんなんだよ。」
「シャオ殿の入れるお茶は愛情がこもっているではないか。そういう事だと思うのだ。」
「・・・もういいや。で、他には?」
「“もっとー”。もっとと言われても困るのだ。なあ、翔子殿。」
「あたしにそんなもんふるな。モットーってのは慣習とかそういう類のもんだよ。
いろんな世界に出かけるときにさ、あたしは楽しむために、紀柳は試練を探すために。
ちょっと意味合い的に違うけどそういう事だよ。」
「なるほど、そういう意味があったのか。では、“すりいさいず”。」
「・・・前にも言っただろ。そんなもん知らなくていいの。」
「いや、知りたいからこうして聞いてるのだが・・・。」
「そんなに知りたいか?実際に・・・やめた。試練だ、我慢されよ。」
「なんだか意味深だな。ぜひ教えてくれ。」
「・・・しょうがないな。三つの大きさ。以上!」
「翔子殿、何か隠してないか?」
「うう、つまりだな〜・・・。やめやめ!次いこ、次。」
「気になって次に行けぬのだが。」
「なんでこんな時に限ってそんなにしつこいのさ。少しは遠慮しろよ。」
「翔子殿が気になる言い方をするからだ。こうなったら意地でも教えてもらう。」
「よーし、こうなったら・・・!」
「・・・?立ちあがれば説明できるのか?」
「よーく見てろよ。ここと・・・ここと・・・ここの大きさ。これをスリーサイズって言うんだよ。」
「???なぜだ?そんなに特別なものなのか?」
「うるさいな。もういいだろ。いいかげん次行けって。」
「ふーむ、ここと・・・ここと・・・」
「紀柳!!おとなしく次行けよ。」
「わ、分かった。えーと、“らっきいせぶん”。」
「やっとまともになったな。・・・なんでラッキーセブン?」
「翔子殿が言ったものだぞ。私にはなんだか腹立たしかったが。」
「ああ、確か七回目で起きたんだよな。でも結局良い事なんて無かったな。くっそう、紀柳の所為だ。」
「・・・翔子殿、私の所為になるのか?」
「ああ、面倒くさいからそういう事にする。」
「それはあんまりでは・・・。」
「冗談だよ。ラッキーセブンていうのは、七の数字を特別に縁起が良い数字って見てることなんだ。
起源なんてもんは知らないけど、とにかく縁起が良いって事。」
「ふうむ、そうなのか。では次、“ゆにいく”。」
「ユニーク?聞いたまんまじゃん。それで納得してくれよ。」
「納得できないから聞いているのだが。」
「ええとだな・・・。珍しいとか、独特な、って意味、だったと思う。」
「なるほど、珍しい・・・だな。では次、“あんてぃいく”。」
「難しいもん聞いてくるな。古い、とかそういう類の意味だよ。」
「古い・・・。それはけなしているととって良いのか?」
「うーん、そうじゃなくって。わざと古めかしく作ってたりしてるのをアンティークって言ったり。
とにかく、芸術関係の言葉だと思うよ。古風・・・。うん、古風、だな。」
「古風・・・か。まあ良いだろう。それにしてもよく知っているな。さすがだ。」
「まあな。だてに色々勉強してるわけじゃないよ。他に聞きたいことは?」