<第一集>書き間違いやすい語
★『しょうい(少尉⇔小尉)』
智子:
正しくは少尉ですね。尉官の最下級です。
皐月:
なんで少なの〜?
智子:
少、と直に覚えるしか……。
皐月:
しょうがないわねぇ〜、じゃあ覚えたわ〜。
智子:
はい、お願いします(って、皐月さんだとあんまり信用できないな……)
皐月:
どうかした〜?まだこちゃん〜。
智子:
……いえ、別に(やっぱり信用できないー!)
★『しょうかい(照会⇔紹会)』
智子:
正しくは照会ですね。照らしあわせるってことで。
睦月:
そのあわせるは合わせるじゃないか?
智子:
そうなんですけど、他の言い方でってことで。
睦月:
なるほどね。確かに照が違いなわけだし。
智子:
ええ、そうですそう。
睦月:
照会といえば、うちの店に置いてある音楽CDなんだけど。
智子:
はい。
睦月:
何が置いてあるかわからんから照会システムを入れてくれとか言われたよ。必要ないのにねぇ。
智子:
えーっと、種類が多いとあった方が便利なのでは?
睦月:
私が全部覚えてるんだよ。だから必要ない。ほしいものは私に聞けばいいんだから。
智子:
へええ……って、ええっ!? 全部覚えてるんですか!?
睦月:
たかだか数万枚だよ。簡単簡単。
智子:
いや、十分多いのでは……。
★『しょうかん(召喚⇔招喚)』
智子:
正しくは召喚ですね。頼んできてもらうのではなく、呼び寄せるのです。
菊月:
つまり?
智子:
来てもらうのが目下なので、召喚なんですよ。
菊月:
なるほど、呼びつけて用事をさせる、というわけですね。
智子:
はいそうです。
菊月:
上か下かでこうも違うものなんですね。
智子:
まぁ、そうですね。
菊月:
智子さんは……いえ、そういえば智子さんには12人の部下がいるんでしたね。
智子:
はい!? 誰から聞いたか知りませんが、絶対にデマですよ。
菊月:
いやいやこれは……ああ、いえ、なんでもありません。
智子:
あのう、何か隠してません?
菊月:
いいえ。
智子:
うー……。
★『じょうき(常軌⇔常気)』
智子:
正しくは常軌ですね。常軌とはふつうの遣り方……そうですね、軌道から外れる、と。
神無月:
軌道の軌、という事ですね、なるほど。
智子:
思えば、神無月さんの手品も常軌を逸してますよね。
神無月:
そうかなぁ? それは偏見じゃないかな。
智子:
だって、普通手品でフォークがナイフに変わったりしませんよ。
神無月:
いやいや、僕の手品はスプーンをフォークに変えるんだよ。
智子:
同じことです。
神無月:
それは違うよ。いいかい、スプーンを構成している物質とフォークを構成している物質は……
智子:
そんなことを言い出してる時点で手品じゃないです!
★『じょうき(蒸気⇔蒸汽)』
智子:
正しくは蒸気ですね。気体の気です。
神無月:
分かりやすいね、これは。汽車の汽とは違うんだね。
智子:
えっとお、そっちは……。
神無月:
ああそんなことより手品見てよ手品。今回のは自信作なんだ。
智子:
……いつも自信が無いんですか?
神無月:
ははは、そういうことじゃないよ。さてといいかい、ここに取り出したるは……。
智子:
一升瓶?
神無月:
そう、この一升瓶の中にボールが入っていてね、見事外に出し……あれ?
智子:
どうしたんですか?
神無月:
ボールがハトに変わってるよ。おかしいなぁ、いつの間に入ったんだろう……。
智子:
っていうか入れるわけないと思うんですが。
神無月:
だよねぇ。おかしいなぁ……。
智子:
……失敗、かな?
★『じょうじょうしゃくりょう(情状酌量⇔状情酌量)』
智子:
正しくは情状酌量ですね。そういう事情になった状態ということです。
水無月:
おりょ? そういう状態になった事情、だよな?
智子:
間違えないためにこういう覚え方で。
水無月:
しかし意味が違ってきてねえかい?
智子:
それは……情状酌量の余地アリってことでなんとかご容赦を……。
水無月:
なるほど、こいつあやられたな。
智子:
どうもすいません。
水無月:
そういや……tarのエラーで、ご容赦願います、なんてメッセージが出るらしいぜ。
智子:
……はい? tar?
水無月:
おっと! こいつは聞かなかった事にしてくれ、な? な?
智子:
は、はあ、まぁ……。
水無月:
よっしゃ! ふう、情状酌量の余地はしておくもんだな。
智子:
いや、それ使い方間違ってますよ……。
★『しょうしんしょうめい(正真正銘⇔正真証明)』
智子:
正しくは正真正銘ですね。証明するんじゃなくって正銘です。
水無月:
ふむふむ、してその心は?
智子:
それは……カッコイイからです!
水無月:
何っ!? うおおおお、きたきたきたー! 最高にイカすぜ文月さーん!!
智子:
……じゃあこの辺で。
水無月:
待て待て、このままじゃ興奮がおさらまらねえ。
智子:
とはいっても、これ以上は……。
水無月:
何かイカす正真正銘ってものを見せてくれ。
智子:
えーと、じゃあこれを……。
水無月:
……これは?
智子:
正真正銘、文月智子謹製の飴細工『龍』です! ありきたりですけ……
水無月:
うおおおおお、きたきたきたー!!
智子:
って、余計に興奮してるじゃないですかー!
★『しょうど(焦土⇔焼土)』
智子:
正しくは焦土ですね。焼け野原ですけど、焦げ野原〜、なんちて。
卯月:
それはひっかけということかね?
智子:
あ、いえ、その……実は、焼土と書くのもあります。農地の表面を焼く、とか。
卯月:
ほうほう、ならばどちらが正しいというのは言えなくはないかね?
智子:
そうですね……残念です。
卯月:
下手に誤魔化そうとしていないかね?
智子:
下手は余計です。でも、そうです、はい。
卯月:
もっと普通にこういう意味もありますという事でいいと思うがねぇ。
智子:
は、はい、すいません……。
★『じょうとうしゅだん(常套手段⇔常当手段)』
智子:
正しくは常套手段ですね。同じように決った場合に用いられるやり方です。
如月:
どうしてそういう字になるのかしら〜? そもそも常套っていうのが
智子:
はい、常套の套とは古くさいという意味があります。
如月:
古くさいっていうことは……
智子:
はい、陳腐さを批判した言い方が常套手段です。古臭いけど昔から決って取られるやり方、という認識で。
如月:
なるほどぉ、だったら……
智子:
はい、そういう事ですね。ではこの辺でお終いにしましょう。
如月:
智子ちゃん、そんなにはっきり途中で区切らなくても。
智子:
はい、これぞ常套手段です。問答無用で!
如月:
うう〜ん、でもね
智子:
はい、これにて!
★『しょうばん(相伴⇔招伴)』
智子:
正しくは相伴ですね。相手をして共に接待を受ける、という事で相手、です。
師走:
なるほどね、これは趣深いよ。
智子:
使い方間違ってません?
師走:
そんな事はないよ。いつも智子ちゃんの相伴にあずかってるからね。
智子:
何の関係が……って、あたしの、ですか?
師走:
そう。謎解きの味わいというものにね。
智子:
相伴しようとする人から持ってきているものにあずかってるっていうのは……。
師走:
さて、早速だがここに本日の依頼が。
智子:
本日ってどういう事ですか!? また今度にしてくださいっ!
★『しょうひざい(消費財⇔消費材)』
智子:
正しくは消費財ですね。食料品や消耗品などのような品物を指します。
皐月:
それがどうして財ってなるのぉ〜?
智子:
財産の財って覚えておけばいいと思いますよ。
皐月:
ああそっかぁ〜。さすがざいこちゃんね〜。
智子:
はあ……。えっと、皐月さんの財産はたとえば何ですか?
皐月:
実はねぇ、海外に農園があるのぉ。
智子:
ほんとですか!?
皐月:
だったらいいわねぇ〜。
智子:
は?
皐月:
そしたら、仕入れしなくても自分で刈り取って売るのにねぇ〜。
智子:
そういう事ですか……。って、せめて収穫って言ってくださいよ。
皐月:
どうしてぇ? 鉈で刈ったりするのは楽しいのよぉ〜。
智子:
……。
★『しょうみ(正味⇔正身)』
智子:
正しくは正味ですね。中身……の正しい部分、って感じで。
長月:
……。
智子:
長月さん?
長月:
……あぁ。
智子:
えっと、いいですよね?
長月:
……あぁ。
智子:
(実際長月さんの言葉は正味どのくらいの意味があるんだろう……)
長月:
……?
智子:
な、なんでもないですよっ。
★『しょぐう(処遇⇔所遇)』
智子:
正しくは処遇ですね。処置の処、を思ってください。
菊月:
なんらかの処置を受ける、施す、といったところですか。
智子:
ええそうですね。
菊月:
……以上ですか?
智子:
はい、以上です。
菊月:
シンプルですね。
智子:
ええ、シンプルです。
菊月:
もう少し何か無いんですか?
智子:
そういうものですから。
菊月:
なるほど、そういう処遇ですか。仕方ないですね……。
智子:
は、はあ。
★『じょこう(徐行⇔除行)』
智子:
正しくは徐行ですね。ゆっくり、という意味で徐行なのです。
皐月:
いいわね〜、徐行。行くを除いたら止まっちゃうわよね。
智子:
ゆっくりって、皐月さんによく当てはまりますね。
皐月:
そうかしら〜?
智子:
ええ、それはもう。
皐月:
なるほどね〜。聡子ちゃんの場合は重いって気がするけどね〜。
智子:
はっ!? い、今さとこって言いましたよね?
皐月:
ええっ? そうかしら〜?
智子:
って、漢字が違うんですね……ん? 重いって何ですか、重いって!
皐月:
あら〜、今認識するなんて、徐行は徐行なのね〜。
智子:
っていうか徐行の使い方がどんどん違っていってるような……。
★『しょさい(書斎⇔書済)』
智子:
正しくは書斎ですね。斎には、心静かに読書などする部屋という意味があるんですよ。
卯月:
うむ、心を落ち着ける場所は必要だね。
智子:
卯月さんは読書はよくされるんですか?
卯月:
そうだね。週に2、3冊は間違いなく読んでいるね。
智子:
へええ。たとえばどんな本を?
卯月:
季節、気分により様々だ。それより智子ちゃん。
智子:
はい? あたしももちろん読書はしていますよ。
卯月:
そうではなくて。読書の話題になるのならば水無月さんが適役だったのではないかね?
智子:
いえいえ、卯月さんがよかったんですよ。
卯月:
ふむ、そうかね。
智子:
水無月さんだと話がそれてしまいそうなので……
卯月:
……。
★『じょせいがっしょう(女声合唱⇔女性合唱)』
智子:
正しくは女声合唱ですね。まぁ、女の人の声だから間違いないです。
睦月:
これは分かりやすくていいね。
智子:
はい、ばっちりです!
睦月:
まぁ、あまり間違えてほしくないものでもあるけど。
智子:
どうしてですか?
睦月:
……いや、いい。ちょっと難しい領域だからね。
智子:
はあ、そうなんですか。
睦月:
ところで智子ちゃんは……って、まだそんな細かい区分けもしないか。
智子:
声ですか? もちろんしますよ。あたしはテノールです。
睦月:
いや、それ男声だから。
智子:
あ、い、いやそうじゃなくってですね! メゾソプラノ……ちがう、アルトだったかな……。
睦月:
なんで迷うの? 覚えてないの?
智子:
実はあちらこちらで引っ張りまわされていて……。
睦月:
それはまた随分と大変そうだね。
智子:
あはははは。はあ……。
★『しょせいじゅつ(処世術⇔処生術)』
智子:
正しくは処世術ですね。世渡りの世、を重視すればいいですよ。
如月:
ああ、世渡りなんて、智子ちゃんはそんな知識ばっかりが身についているのねきっと。
だってそうですもの、こんな世の中。一人で店長やってるし探偵業とかもやってるし……
そういえば探偵業で色んな店を廻り廻って……ああ、それでまた処世術を身に付けているのね。
なんという甲斐甲斐しい、いえ涙ぐましい努力なのかしら。私には絶対真似できないわ。
どうやってそんな術を身に付けるようになったのか、是非聞きたいところだわ。
でも聞いても何も出来ないわね。そう、何も出来ないから私は……
智子:
えーっと、お気になさらず。
如月:
お気になさらず、なんて気遣いまでどんどん覚えちゃって。もうある意味頼もしいんだけど、
そこは喜んでおくべきか喜ぶべきじゃないのかどうしていいやらわからないわ。
だって喜ぶってのは顔に笑みが浮かんでつまりは笑って、それが福を呼ぶから……
あら、じゃあ喜ぶべきなのかしら。マメをついでに撒いて呼ぶなんてことをしなくてもいいし。
そうそう、そうすれば智子ちゃんちの経済事情も少しは足しになるわね。
なんて素敵なことかしら。智子ちゃん、豆まきを今年はしなくても大丈夫よ!
智子:
……あー、もう終わりましょうね。
如月:
え? 終わり? もしかして豆まきもできないほどに終わりなの?
ああ、なんてことかしら。こんなことなら探偵業の報酬にもっと何かあげておくべきだったわ。
そう、たとえば私の店は花屋だから……でもごめんね、金の成る木なんて都合のいいのは無いの。
だいたい、金が成ったとしても、海外のお金が成られても困るわよね。
あ、金そのものならいいのよね。換金すれば十分お金が手に入るってものだし。
ああでもごめんなさい。やっぱりうちにはそんなものはないわ。だから諦めて頂戴。
世を渡るために必要だって言いたい気持ちはわかるんだけど、だめよそんなの。
智子ちゃん、お金はね、堅実に稼いでいくのが一番……
智子:
だあああ! もういいかげんにしてくださいーっ!
★『しょせつふんぷん(諸説紛々⇔所説紛々)』
智子:
正しくは諸説紛々ですね。諸々の説、と思えばよいかと。
師走:
なぜ智子ちゃんは駄菓子屋になったのか。
智子:
それは親から引き継いだだけで……。
師走:
それは諸説紛々。そう、実は重大な真実を隠すための仮の姿。
智子:
そんな裏設定はありませんから。
師走:
え、本当!?
智子:
何をそんなに驚いてるんですか……。
師走:
おかしいなぁ、あれは俺が見た夢だったのかなぁ……。
智子:
夢ですね。
師走:
いやいや、そんなきっぱり言わないでくれよ。誰かから聞いたかもしれないだろ?
智子:
師走さん以外にそんな事言う人知りませんから。
師走:
むー……。
★『しょばつ(処罰⇔所罰)』
智子:
正しくは処罰ですね。罰を処する、という事です。
弥生:
所により罰……そんなわけありませんわね。
智子:
何が言いたいかよくわかりませんが、ええその通りです。
弥生:
智子ちゃんは、罰を与えたりとかはしたことあるんですの?
智子:
い、いえいえそんなとんでもない。
弥生:
それは何故?
智子:
そりゃあ、あたしはまだまだそんな立場でもないですし。これから先もならないと思います。
弥生:
どうして? 裁判官になったりしないの?
智子:
裁判官が罰を与えるわけではないでしょう。でも、どうしてそう思うんですか?
弥生:
智子ちゃんは洞察力があるから、真実の判断は得意そうだなって思いまして。
智子:
それはありがとうございます。……って、それでも処罰を与える人ではないですからね。
弥生:
うふふふ、そうですわね。
智子:
あはは……はぁ。
★『しょほう(処方⇔処法)』
智子:
正しくは処方ですね。やり方、という事で。
菊月:
そうですね。主に薬の処方、という事で私は馴染み深いです。
智子:
菊月さんのところは薬局ですものね。
菊月:
そうです。智子さんはあまり来られていないもよう。いいことです。
智子:
……そういうもんですか?
菊月:
ええ。健康でいることが何よりですから。
智子:
でもあたし、アレルギー持ちなんですよ。
菊月:
それくらいしか来ていない、という事ですよ。本当はなくなるのがいいかもしれませんが……。
智子:
難しいですよね……。
★『しょようじかん(所要時間⇔所用時間)』
智子:
正しくは所要時間ですね。要する、という事です。
葉月:
思うに、この言葉解説って終了までどのくらいの時間を要するんだろうねぇ。
智子:
きっとそれは計り知れない時間ではないかと……。
葉月:
智子ちゃんは最後まで頑張るのかい?
智子:
うん。そのつもり。
葉月:
終わりきらなかったらどうするんだい?
智子:
どうするって……どうもできないんじゃないかな。
葉月:
子供に引き継ぐとかしないのかい?
智子:
言葉解説を引き継ぐって、どんな親なのあたしって……。
葉月:
ははは、ちょっと想像が過ぎちまったかね。まぁ気にしないでおくれ。
智子:
う、うん……。
★『じらい(爾来⇔自来)』
智子:
正しくは爾来ですね。爾、には、それ、そのという意味がありますので……。
水無月:
爾来ってのはたしか……。
智子:
過去のある出来事をきっかけとして今に至るまで、同じ事情が続いていることを表しますね。
水無月:
ほ〜う。文月さんは難しい言葉や漢字をよく知ってるなぁ。
智子:
まぁ解説している身ですしね。
水無月:
爾来彼女は解説を続けているのでした、まる。という事かな?
智子:
はぁ、まぁ、そうでしょうね。
水無月:
伝記としてうちの本屋に置いておく〜。
智子:
や、やめてくださいよ。
水無月:
そうだな。まだ文月さんは亡くなってねえし。
智子:
そういう問題では……
★『しりめつれつ(支離滅裂⇔死離滅裂)』
智子:
正しくは支離滅裂ですね。支えが離れ滅び避け……まぁそんなイメージで。
卯月:
なかなかいいアプローチだね。
智子:
漢字そのままでもあるんですけどね。
卯月:
いやいや、元来そうして覚えていくのがいいと思うよ。
智子:
はあ。
卯月:
変にひねって連想ゲームを飛び越えてはいけないと私は考えるわけだ、うむ。
智子:
何かあったんですか?
卯月:
智子ちゃんも思い当たる人がいるだろう。支離滅裂という意味で。
智子:
えっと……。
卯月:
おしゃべりとかね。
智子:
あ……は、はい、そうですね。
★『しれいかん(司令官⇔指令官)』
智子:
正しくは司令官ですね。指令を出すだけではなく、指揮・監督が必要なのです。
師走:
なるほど、こりゃ上手いっ!
智子:
上手いですか?
師走:
そんな上手い智子ちゃんに是非お願いしたいことがあるんだよ。
智子:
話を飛ばさないでください。
師走:
司令の言うことを聞いておくれよ。
智子:
いつからおじさんが司令に……。
師走:
今からだ。いいだろう?
智子:
よくありませんっ!
★『じろん(持論⇔自論)』
智子:
正しくは持論ですね。その人が持っている考え、という事で。
卯月:
うん、わかりやすいね。自ずからくるものではない、持たれるものだ。
智子:
卯月さんは持論を沢山持っていそうですね。
卯月:
どういう意味かね?
智子:
い、いえ、深い意味は……。
卯月:
妻にもよく言われるんだよ。貴方はなんて頑固なの、こうと決めたらてこでも動かないんだから!とね。
智子:
はあ。
卯月:
しかし、頑固と持論ありきというのは違うと思うんだが……。
智子:
そうですね。考えがあっても、柔軟な人は……。
卯月:
やっぱり智子ちゃんもそう思うかね、私は頑固だと。
智子:
い、いいえっ!?
卯月:
そうかしこまる事はない。そうか、やはり頑固か……。
智子:
いや、あのう……。
★『しんがい(侵害⇔浸害)』
智子:
正しくは侵害ですね。侵し、害を与えるのです。
葉月:
浸し(ひたし)じゃあないもんねえ。
智子:
うん。これは読みというか意味的なものかな。
葉月:
ところで智子ちゃん。前々から気になってたんだけど。
智子:
何おばさん。著作権の侵害、という話ならまた今度にしようよ。
葉月:
……ふうむ。
智子:
って、それだったんだ。
葉月:
そりゃあねえ……まぁ、他で、というのならしょうがないか。
智子:
そうそう。
葉月:
いいのかねぇ……。
智子:
い、いいの! 多分……だけど……。
★『しんかん(震撼⇔震感)』
智子:
正しくは震撼ですね。感情を手で動かす、と覚えましょう。
睦月:
そうだね。外的干渉によるものが大きいからね。
智子:
ええ、そうですよね。まったくもう、睦月さんはいつもあたしを震撼させてますよ。
睦月:
え? 私、智子ちゃんに何かしたっけ?
智子:
ええーっ? もう、あたしの口から言うなんてとてもじゃないですができませんよぉ。
睦月:
う、うん、それならそれで別にいいけど……。
智子:
あーでもどうしよう、言った方がいいかなぁ、言わない方がいいのかなぁ、どうしようー!
睦月:
……そういう智子ちゃんこそ十分私を震撼させてるよ。
★『しんぎ(真偽⇔真疑)』
智子:
正しくは真偽ですね。
皐月:
どうしてそっちなのぉ〜?
智子:
真実と偽りです。真実を疑うわけではないのです。
皐月:
じゃあ……。
智子:
じゃあ?
皐月:
さとこ子ちゃんが誰かって疑うんじゃなくて、ニセモノかホンモノかってことよね〜。
智子:
……イマイチ言ってる意味がわからないんですが。
皐月:
つまりね、今目の前に居るさとここ子ちゃんがね……
智子:
その前に! あたしは智子です!
★『しんきいってん(心機一転⇔心気一転)』
智子:
正しくは心機一転ですね。気持ちではなく、心の動きですから。
神無月:
では早速。心機一転、解説から手品に移りましょう。
智子:
移りません。
神無月:
え、いやいや智子ちゃん。冗談がきついよ。
智子:
冗談じゃないですって。なんでもかんでも手品するのやめましょうよ。
神無月:
披露して反応を見て、それでこそ成長するのが僕の手品なんだよ。
智子:
そう言われましても……。
神無月:
……わかった、心機一転。手品を披露しないようにするよ。
智子:
あのう、さっきから心機一転という言葉を使いたいだけなのでは?
神無月:
まさか。心機一転、聞くに徹しているだけだよ。
智子:
……。
★『しんきょう(心境⇔心況)』
智子:
正しくは心境ですね。状況ではなく、状態なんです。
霜月:
うーん、いまいち境がわかんねえなあ。
智子:
はあ、すみません。
霜月:
ここはいっちょ、智子ちゃんが決めたらどうだい。
智子:
わわ、あたしが決めるんですか?
霜月:
そうだ。そうすりゃ俺も覚えられるってもんだよ。
智子:
う、うーん……そうだ、境をわかるために心境……。
霜月:
???
智子:
すみませんっ、やっぱナシ、無しで!
★『しんく(辛苦⇔心苦)』
智子:
正しくは辛苦ですね。辛い目にあって苦しい思いをするので。
極月:
いひひひひ、智子ちゃんは十分それを味わってるよねぇ。
智子:
そんなことありません。苦労はしてるかもしれませんけど、辛いわけでも、ないですよ?
極月:
いひひひひ、そう思えてるなら結構結構。変な事言って悪かったねぇ。
智子:
い、いえいえ。極月さんは辛苦とか無いんですか?
極月:
そうさねぇ。忠言を忠言としてとらずに中傷としてとられるのは辛苦だねぇ。
智子:
ああ、そういえば占い屋さんですしね。
極月:
占い屋じゃなくてまじない屋だよ。まぁ占いもするがね。いひひひ、智子ちゃんのそういうところ好きだよ。
智子:
あ、ありがとうございます??