知ってるといいかも?間違い言葉集


その1『知ると良い間違い言葉集』

<第一集>書き間違いやすい語

★『こぞう(小僧⇔子僧)』
智子:
 正しくは小僧ですね。年若き僧なんですが、子供の僧じゃなくって、小さい僧ってことで
霜月:
 小さい僧ねえ…まぁ智子ちゃんがそういうんならいいけど。
智子:
 うっ、何か間違えてますか?
霜月:
 いや、いいよ。ちょっとした、という意味合いも含まれてる方がいいんじゃねーかと思ってな。
智子:
 ああなるほど…。それにしても結構詳しいですね?
霜月:
 いんや、詳しくねーよ。
智子:
 もしかして過去に経験おありだとか?
霜月:
 おっ、探ってくるねえ。なんでえ?
智子:
 寺にこもって修行したはいいけどきつくって途中で魚屋に転向したとか。
霜月:
 おい智子ちゃんよぉ、俺をなんだと思ってんだい…。
智子:
 あれっ?違うんですか?
霜月:
 違うっ!単に知り合いに寺関連の知り合いが居るってだけだよ。
智子:
 あっ、そうですか。

★『ごたぶん(御多分⇔御他聞)』
智子:
 正しくは御多分ですね。大部分、です。ご他聞というのは、他人に聞かれるという事ですけどね。
如月:
 あらあら、じゃあどっちも正しいというわけなのね。そうよねぇ、長くたくさんの言葉をやっていると、そういうことだってあるわよねぇ。いつだったかしら、たしか商店街で智子ちゃんの偽者と名乗る子が現れてね、本物を名乗る智子ちゃんとどっちが本物だーっての随分もめたわねぇ。結局あの時は偽者を名乗ってる方がそりゃあ偽者じゃないの、ってことでおちついたけど、あれは本当は誰だったのかしら。きっと智子ちゃんになって智子ちゃんっぽく振舞って智子ちゃんみたいな苦労を背負ってみたかったんでしょうね。このご時勢に律儀な人だわぁ。
智子:
 …そんな事ありましたっけ?
如月:
 あったわよぉ、あったあった。その時はね、智子ちゃんがそれはもう奮闘して…あ、そうじゃなかったわね、奮闘したのは智子ちゃんと名前の良く似た…誰だっけ?ああそうそう、悟君だっけ。お姉ちゃんは僕が取り戻す!って張り切ってたわねぇ。かわいそうに、智子ちゃん誘拐されちゃったのよね。それで悟君が勇者となってパーティーを組んで…。その時私は加えてもらえなかったの、残念だったわぁ。
智子:
 …もう終わりますよ?
如月:
 あらあら智子ちゃん、これが終わりじゃないのよ?これは始まり、そう、壮大な冒険の始まりにすぎないの。なんてったってこれから…
智子:
 終わりったら終わりにしますよ!

★『こっぱみじん(木っ端微塵⇔木っ葉微塵)』
智子:
 正しくは木っ端微塵ですね。木や葉っぱというわけではなく、木っ端、です。
睦月:
 その木っ端はどういう意味だい?
智子:
 木の削りくずや切れ端、ですね。
睦月:
 で、木は堅いから…。
智子:
 その堅いものが粉々に砕ける、というのが木っ端微塵ですね。
睦月:
 という繋げ方でいいかな、うん。
智子:
 はい、十分です!ばっちりです!最高です!言う事なしです!
睦月:
 …それは言いすぎだろ?
智子:
 いえいえ、そんなぁ。
睦月:
 ははは…。

★『こどく(孤独⇔弧独)』
智子:
 正しくは孤独ですね。孤が、他から切り離されて存在すること、なので。
卯月:
 つまりは…いや、つまりもなにもそういうことのようだね。
智子:
 ええ、そうですね。あと、みなしご、という意味もあるそうです。
卯月:
 なるほど、ならば認識はただ一つのようだね。
智子:
 え、ええ。…って、認識ってどういう事ですか?
卯月:
 いや、なんでもない。…時に智子ちゃんは、寂しくないのかね?
智子:
 へ?あ、ああ…でも、商店街の皆さんがよくしてくださっていますし。
卯月:
 そうか。殊勝な心がけだな。困ったことがあったら遠慮なく言ってくれたまえよ。
智子:
 あ、は、はいっ。…って、何も今改まらなくても(照)

★『ごはさん(ご破算⇔ご破産)』
智子:
 正しくはご破算ですね。そろばんで計算をもとの返して零にすることですから。
水無月:
 算数が重要ってことだな。
智子:
 算数っていうか、算術ですね。要するには、算、です。
水無月:
 ところで智子ちゃんよぉ。俺の行動は計算づくなんだ。知ってたかい?
智子:
 さあ、知りませんでした。
水無月:
 …つれない返事だなぁ。もちっとイカしてほしいもんだ。
智子:
 そのイカしてってのはどういうことなんですか。
水無月:
 …秘密だっ。
智子:
 …はぁ、そうですか。

★『こぶ(鼓舞⇔呼舞)』
智子:
 正しくは鼓舞ですね。鼓を打って舞いを舞うのです。
師走:
 そうか!つまりは歌って踊れる駄菓子屋さんだね!
智子:
 いや、歌うとは言ってませんけど…。
師走:
 いやぁ、さすが智子ちゃん。新感覚駄菓子屋?
智子:
 べつに駄菓子屋がある意味はないと思いますけど。
師走:
 しかしそれは副業で、実はスーパー探偵さん!
智子:
 いや、探偵が副業ですから。
師走:
 いやぁ、歌って踊れる探偵さんとはこれまたいいねぇ。
智子:
 だから歌いませんってば!

★『こべつほうもん(戸別訪問⇔個別訪問)』
智子:
 正しくは戸別訪問ですね。一人一人じゃなくって、一軒一軒の訪問ですからね。
極月:
 それで、智子ちゃんはいつも戸別訪問してるのかい?
智子:
 はい?何の戸別訪問ですか?
極月:
 事件調査のさ。いひひひひ。
智子:
 うーん…必要と思えばしますけど…。
極月:
 だいたい何軒くらいまわってるんだい?
智子:
 え?えーっと…100以上は確実ですねぇ…。
極月:
 おやおや…さすがだねぇ、いひひひひ。あたしも見習うべきかねぇ。
智子:
 極月さんが戸別訪問…何をするんですか?
極月:
 押し売り占いさ。いひひひひ。
智子:
 いや、それはやめましょうよ…。
極月:
 冗談だよ、いひひひひ。
智子:
 は、はあ。

★『こもん(顧問⇔顧門)』
智子:
 正しくは顧問ですね。相談を受けて意見を述べる役目、ですから…。
菊月:
 なるほど、質問の問と繋げて覚えればよいというわけですね。
智子:
 はい、そういう事ですね。
菊月:
 ふむふむ、となると…。
智子:
 はい?
菊月:
 智子さんは駄菓子の顧問、私は薬の顧問ということになりますか。
智子:
 そんな大げさなものでもないですけど。
菊月:
 いえいえ、薬のことで相談にくれば私には答える義務がありますからね。智子さんもそうでしょう?
智子:
 そう、かも、しれないですけど…きょうび駄菓子で相談に来る人っているんでしょうか…。

★『こゆうめいし(固有名詞⇔個有名詞)』
智子:
 正しくは固有名詞ですね。固というのは、元からという意味があるのです。
葉月:
 そのもの、っていうのに名づけるものだったりするからねぇ、そういうことかい。
智子:
 うん。なんか言っててややこしくなるけどね。
葉月:
 ところで智子ちゃんの主張したい固有はなんだい?
智子:
 え?どういうこと?
葉月:
 そうだねぇ…たとえばうちなら、恐竜南瓜なんてものがあるんだけど…。
智子:
 ええっ!?おばさんちそんなのあるの!?
葉月:
 とまあそんな感じにさ。あ、今のはたとえだからね、本気にしちゃ…。
智子:
 うわぁ、どんな大きさなんだろ。いや、大きいだけじゃなくてなんか迫力ありそう〜。
葉月:
 聞いてるかい?

★『こりつむえん(孤立無援⇔孤立無縁)』
智子:
 正しくは孤立無援ですね。頼りになるものがいない…つまり、援助無し、ということで。
弥生:
 そうですわね。援助無い生活は大変なものですわ。
智子:
 今回の言葉と意味は違ってきますけど…そうですね、大変ですね。
弥生:
 智子ちゃんは偉いですわね。ご両親が居ないのに。
智子:
 うーん、その分皆さんにお世話になってますし。
弥生:
 そうですけれどね…ううん、なんでもありませんわ。さ、私も頑張らないといけませんわ。
智子:
 …?

★『ごりむちゅう(五里霧中⇔五里夢中)』
智子:
 正しくは五里霧中ですね。濃い霧が五里四方に渡って立ち込めて…という類の意味なので、霧です。
如月:
 そうそう、霧、霧よねぇ。この言葉自体よく聞いてるから間違えるってことはあまりないと思うけど、この霧が問題よね。 そもそも、そんなに霧が立ち込めた現場に遭遇したことがないんだけど、どこから出てくるのかしら、霧って。 水滴が煙のように立ち込めて、とはいうけど、そうなる原因って何かしら。あ、もしかして…
智子:
 いやいや、そうそう、そういう事ですよ。じゃあそういうことで。
如月:
 あらあらあら、そうなのかしら?でも違うかもしれないわね、そうよ早とちりはいけないわ。だって…
智子:
 ああっと、もうこんな時間。そろそろお暇しなければ。あたしも迷ってる場合じゃないですしね、ははは。
如月:
 迷う前に、迷うなりの原因があるはずなのよ。だから…
智子:
 はいはい! 終わりったら終わりです!
如月:
 あのね…
智子:
 はいもうお終い!

★『ころう(古老⇔故老)』
智子:
 正しくは古老ですね。と、言いたいのですが…故老でも間違いではなさそうで…。
極月:
 いひひひ、そうなのかい。じゃあ今回は諦めて違う話でもしようかね。いひひひひひ。
智子:
 う、は、はあ…。で、何の話を?
極月:
 智子ちゃんはどうやって老いて慕われていくか。老婆になった智子ちゃんについて、いひひひひひひひ。
智子:
 絶対やめてください。
極月:
 おやそうかい?智子ちゃんなら絶対に昔語りをする、いいお婆さんになると思うんだけどねぇ、いひひひひひひひ。
智子:
 どういうことですか、それ…。

★『ごんごどうだん(言語道断⇔言語同断)』
智子:
 正しくは言語道断ですね。話にならないほど正道から外れていること、ですので…。
葉月:
 なるほど、道がポイントってわけだね。簡単でいいねぇ。
智子:
 うんそう。
葉月:
 智子ちゃんも道を踏み外しちゃだめだよ…なんて、智子ちゃんは心配ないか。
智子:
 うーん、でも先に何があるかってわからないし。
葉月:
 それでも、智子ちゃんは大丈夫。きっとそんな気がするよ。
智子:
 え、えへへへ…。

★『こんじょう(根性⇔根情)』
智子:
 正しくは根性ですね。その人の根本的な性質、という事で。
霜月:
 うん、だったら今回はすぱっとそれでおしまいだ!
智子:
 …どうしたんですか?
霜月:
 たまには俺の豪快なところも見せないとな。はっはっは!
智子:
 は、はあ…(って、進行役はあたしのはずなんだけど)

★『こんすい(昏睡⇔混酔)』
智子:
 正しくは昏睡ですね。昏という字には、精神がはっきりしない、という意味があります。
葉月:
 意識を失ってなかなか目覚めない…そんな状態だからねぇ、昏睡は。
智子:
 うん。酔ってつぶれるだけが昏睡じゃないもんね。
葉月:
 そうそう。薬だったり事故だったり…智子ちゃんも気をつけてね。
智子:
 あたしは大丈夫だよ。それよりおばさんこそ気をつけようね?
葉月:
 何をだい?
智子:
 お酒。飲みすぎて倒れたりしないようにね?おばさん酔うと見境なくなるって。
葉月:
 いや、あたしは大丈夫だよ。…っていうか誰から聞いたんだい、そんな事。
智子:
 おばさんの…。
葉月:
 ああいい。見当ついたから。そうかい、まったくあの人は智子ちゃんに余計な事を…。
智子:
 あ、あの、おばさん…?(やぶへびだったかなぁ)

★『こんたん(魂胆⇔根胆)』
智子:
 正しくは魂胆ですね。きもだま、っていう意味があります。心中密かに考える計画。ですから…。
菊月:
 なるほど、きもだまとは肝と魂のことですよね。
智子:
 はい、そういうつながりで覚えればわかりやすいですよね。
菊月:
 ところで、私の魂胆は分かりますか?
智子:
 はい?何ですか、やぶからぼうに。
菊月:
 大した事ではないのですがね。…いえ、やめておきます。魂胆は人に話すものじゃありません。
智子:
 はあ。まあそうですね。
菊月:
 しかしながら、智子さんは分かるのではないかと。そう思った次第でして。
智子:
 いや、いくらなんでもヒントも無しには無理だと思いますが…。

★『こんてい(根底⇔根低)』
智子:
 正しくは根底ですね。物事の土台…つまりは、根の底、と覚えてみましょう。
長月:
 …問題ない。
智子:
 そうですか、それは何より。
長月:
 …底なし沼は?
智子:
 は?
長月:
 …無し。
智子:
 底なし…でも、それは根底じゃないですよね?
長月:
 なるほど。
智子:
 はい、そういうことです。
長月:
 さすが。
智子:
 は、はあ、どうも…(そういや長月さんの言うさすがの根拠って?)。

★『こんりんざい(金輪際⇔今輪際)』
智子:
 正しくは金輪際ですね。実はこれ、仏教用語なんです。
睦月:
 仏教とはまた大それたものが出てきたね。
智子:
 たまにあるんですよ。で、金輪というのは大地の上層のことです。
睦月:
 ほうほう。
智子:
 絶対に…ない、という意の強調表現が、金輪際、というわけです。
睦月:
 …どうしてそういう意に?
智子:
 それは、あたしには金輪際わかりません。
睦月:
 素直に、知らないってだけ言いなよ。
智子:
 すいません…。

★『こんわく(困惑⇔混惑)』
智子:
 正しくは困惑ですね。とにかく、困る!困るんです!
卯月:
 シンプルだがもうちょっと他の説明は無いものかね。
智子:
 えーっと、そういわれてもあたし困ってしまいます。
卯月:
 …なるほど。今回は困るという事に重点を置いた解説、ということだね?
智子:
 ええそうです。ああ困った困った。
卯月:
 困ったついでに智子ちゃんにいいものをあげよう。ほらこれだ。
智子:
 これは…ええっ!?む、睦月さんのサイン入りレコード!
卯月:
 いや、彼女の母君のサインだがね。貴重な一枚だ。もはや睦月さんの店でも入手は不可能だろう。
智子:
 え、ええっと、こ、こんな貴重なものをもらっても困ってしまいますねぇ。でも…。
卯月:
 そう、困るだろう。だからあげないことにする。いやあげるというのも冗談だがね。
智子:
 え、えええっ!?じょ、冗談なんてそんな、あたし困ります!
卯月:
 残念だがもうおしまいだ。ではまたな。
智子:
 あああっ、ま、待ってください〜。

★『さいおうがうま(塞翁が馬⇔才翁が馬)』
智子:
 正しくは塞翁が馬ですね。塞翁とは、昔中国北方に住んでいた老人の名前なんです。
極月:
 老人といえばあたしの出番かね、いひひひひ。
智子:
 はあ。でも、極月さんがいらしても、何がどうってないと思いますけど。
極月:
 おやおやつれないねぇ。最近馬を買ったというのに、いひひひ。
智子:
 え、ええっ!?本当ですか!」
極月:
 いひひひ。冗談だよ。飼い始めたのは鼠さ。天井裏に住んでるよ。
智子:
 なぁんだあ…って、その鼠は飼ってるっていうより住み着いてるだけなんじゃ…。
極月:
 ところがさ、お使いをよくしてくれるんだよ。貴重な薬草を持ってきたりしてくれる。
智子:
 へ、へえ!?それまたお利口な鼠ですね。
極月:
 それも、先月猫に食べられちまったけどね。いやぁ、残念だったよいひひひ。
智子:
 ありゃ…。可哀想ですけど、仕方ないですね…。
極月:
 と、この辺でいいかね。
智子:
 はい?
極月:
 意味合いは違うけど、驚いたり憂いたりの智子ちゃんが見られて面白かったよ。いひひひ。
智子:
 へっ…あ、あーっ!やられた…。

★『さいきかんぱつ(才気煥発⇔才気喚発)』
智子:
 正しくは才気煥発ですね。そもそも煥発とは…。
如月:
 煥発っていうのは、その人の発言や文章で、他の人にはみられないようなきらめきやひらめきが表れることよね。つまりは赤々とそこに表れて周囲を照らす、火のようなもの。だから口だけじゃない人間だってことを表すように火を使ってるのよね。
智子:
 え、えーと…そ、そうですね、そのとおりです。ひへんがポイントですね。
如月:
 よかったわ、正解なのね。よしよし、第一歩は達成ね。なんていっても智子ちゃんからOKが出たんですもの。これほど頼りになる証拠は存在しないわ。記念写真にとっておこうかしら。あ、でも発言は記念写真になんてとれないわよね。どうしましょう、困ったわ…。そうだ、智子ちゃんに毛筆で半紙に書いてもらってそれをとりましょう、うん、そうしましょう。たとえば書初めで…あらあら、でも書初めだと年に一回しか書けないわよねぇ、これはまた困ったわ。そうだわ、いいこと思いついちゃった。書初めを智子ちゃんに、年一回じゃなくて日一回に改めてもらえばいいのよ。そうすれば一年に一回だけの証拠じゃなくって、毎日毎日…でも、一日一回だとそれも限度があるわよねぇ。どうしましょう?
智子:
 …あのう、どうもしませんからね。とりあえず今回はもうおしまいにします。
如月:
 ええっ、書いてくれないの?折角私が智子ちゃんみたいに物知りおしゃべりさんになるきっかけだったのに。智子ちゃんが是非にそうしてくださいって勧めてくれたお墨付きっていう証拠がないと、誰も信じてくれないわ。これでますますお喋りに磨きがかかるって楽しみにしてたのに…。
智子:
 ってぇ!これ以上みがきなんてかけないでくださいっ!

★『さいくつ(採掘⇔採堀)』
智子:
 正しくは採掘ですね。土のお堀じゃないです、手で掘るんですよー。
葉月:
 あぁ、土じゃなくって手ってことかい。
智子:
 そうそう、そういうこと。
葉月:
 …って、これで終わってしまうねぇ。
智子:
 別にいいと思うよ。
葉月:
 ん、まぁそうだね。
智子:
 うん。

★『さいくん(細君⇔妻君)』
智子:
 正しくは細君ですね。妻君は借字だそうです。
師走:
 借字かあ…へええ、ほおお…。
智子:
 …わかってます?
師走:
 いや、納得したふりをすれば智子ちゃんが更に詳しい説明を…。
智子:
 しませんよ。
師走:
 いやいや、ちょっと待ってよ智子ちゃん。
智子:
 待ちません。
師走:
 せめてヒントだけでも!
智子:
 そもそも、納得したふりなんてしないでください!

★『さいげん(際限⇔最限)』
智子:
 正しくは際限ですね。かぎりということで、際が、意味として近いですね。
長月:
 …ああ。
智子:
 えーっと…多分これ以上言うことはないので、おしまいにします。
長月:
 …あ。
智子:
 あ?
長月:
 …いや。
智子:
 …思えば長月さんって無口の限りを貫いてますよね。
長月:
 …いや。
智子:
 そこで否定されてもどうかと…。

★『ざいげん(財源⇔財原)』
智子:
 正しくは財源ですね。財の源、だからです!
葉月:
 ところでこの商店街で金持ちといえば誰になるのかねぇ。
智子:
 一番儲けてるってこと?
葉月:
 ああ、まぁそれでもいいけど。…卯月さんとこなんかそうじゃないかい?
智子:
 こぎれいにはしてるけど大豪邸ってわけでも…。
葉月:
 わかった、霧塚さんとこだ。いや、正確にはその実家?きっと白亜の豪邸なんだろうねぇ…。
智子:
 おばさん、それなんか違う。それに、弥生さんはそんな事一言も言ってないよ?
葉月:
 むやみにひけらかすものじゃないからさ。いやみがなくていいことだよ、うん。
智子:
 そういう理由なのかなぁ…。

★『さいこうちょう(最高潮⇔最高調)』
智子:
 正しくは最高潮ですね。高潮というのは物事の極点です。
師走:
 つまり!勢いが最も高まるところ!調子がよいことではないんだよね。
智子:
 そうですね。…にしても、随分テンション高いですね?
師走:
 そりゃあもちろん!智子ちゃんにお願いが…。
智子:
 さあーて、店じまい店じまい。
師走:
 いやいや智子ちゃん。ここは店じゃないだろう?
智子:
 いいんです、あたしは店じまいです。さあてかえろうっと…。
師走:
 今からそんな逃げ腰じゃだめだ!お天道様が笑ってるぞ!
智子:
 笑ってません!

★『さいじき(歳時記⇔歳事記)』
智子:
 正しくは歳時記ですね。一年中の行事と それに纏わる生活などを書いた本の事です。
睦月:
 おや?それだと、歳事記の方が合ってないかい?
智子:
 くっはぁ!やられちゃいました、やられました!そうですねぇ、そうですよね!
睦月:
 …智子ちゃん、普通にやってくれないかな。
智子:
 すいません…。えーとですね、一年という時を見てるので、歳時記、ですよ。
睦月:
 ほうほう。時間に着目しろってことだね?
智子:
 そうです!そのとっおーり!
睦月:
 だから、普通にやってよ。やれやれ、こりゃあ歳時記に追加しないとな。
智子:
 へ?何をです?
睦月:
 この時期の風物として、智子ちゃんがハイテンションになる、と。
智子:
 わわわわっ!ち、違いますよっ!時期限定じゃないですからっ!
睦月:
 時期限定じゃないって…。

★『さいしょうげん(最小限⇔最少限)』
智子:
 正しくは最小限ですね。最も小さい限度、と覚えましょう。
皐月:
 単純にばらせばいいのね、納得だわ〜。
智子:
 はい。でも、最も少ない限度、じゃあないですよ?
皐月:
 うーん、そういうこと言うと迷っちゃうじゃないの〜。
智子:
 あ、すいません。もう一度言いますね。最も小さい限度、ですよ。
皐月:
 最も〜小さい〜限度〜…。うん、ばっちり覚えたわ〜がと子ちゃん〜。
智子:
 ………。
皐月:
 どうしたの〜?
智子:
 それよりも先に名前をばっちり覚えるべきなんじゃ…。

★『さいしょくけんび(才色兼備⇔才色健美)』
智子:
 正しくは才色兼備ですね。才色を兼ね備える、です!
弥生:
 才色って何ですの?
智子:
 わざと聞いてませんよね?…まぁいいです。才色っていうのは…
弥生:
 女性の才知と美貌、ということですわよね?
智子:
 …ってやっぱりわざとだし!はぁ、弥生さんはそういう事しない人だと思ったのになぁ。
弥生:
 あらあら、ごめんなさいね智子ちゃん。つい…。
智子:
 まぁいいですけど。弥生さんは多分才色兼備ですしね。
弥生:
 そんなことありませんわ。それを言うなら智子ちゃんの方が、ですわ。
智子:
 そんなぁ。あたしなんてまだまだですよ。子供ですし。
弥生:
 いいえ、子供だ大人だは関係ありませんわ。智子ちゃんは十分…うふふ、これくらいにしておきますわね。
智子:
 え…え?

★『さいてい(最低⇔最底)』
智子:
 正しくは最低ですね。最も低い…ということで。
長月:
 …うん。
智子:
 えっと、以上で納得、でいいですよね?
長月:
 …ああ。
智子:
 では、これにて。
長月:
 ………。
智子:
 (うーん、何か足りない気がするけど、気のせい…だよね?)

★『さいばい(栽培⇔栽倍)』
智子:
 正しくは栽培ですね。培うんです!はいっ!
如月:
 あらあらあら、そうよねぇ、やっぱり植物は培ってなんぼのもんよねぇ、それでこそ智子ちゃんだわぁ。なんといっても、育てるには愛情が大事、そう培うのが大事。あ、ところでね、培うって言うけど、土を買うってことと似てない?似てるわよね。そう、植物は土が大切なの、そうなのよ。病院のお見舞いに植木鉢なんて持っていくと縁起が悪いって嫌われるけど、やっぱり植物はね、大地に根をおろしたいのよ。あら、でも植木鉢だと大地じゃないわよね。あ、でも鉢の隙間から根をぐんぐんと伸ばして大地まで侵食かしら?あらあらそうなったら、植木鉢を高い所に置いていると大変よね。途中の部分が根っこに侵食されちゃうわ。絞め殺しの木なんてあるくらいだもの、用心しないとね。気をつけなきゃだめよ、智子ちゃん。
智子:
 …は、はぁ、えーっと、それでは…。
如月:
 気をつけるっていえばね、最近うちの庭の木に鳥が巣を作ったのよ。それも木の枝で、どこから拾ってきたのかしらねえ。これぞ、木に木をつけて、それこそ気をつけたのよね。あー色々と重なって大変だわぁ。鳥さんたちもそこを狙ったのかしらね。もう私をこんなことで困らせられると思ったら大間違いよ。だって智子ちゃんい色々と教えてもらってるからね。智子ちゃんも、木と気の区別くらいつくでしょ?つくわよね。そう、だからこそ私も動じないのよ。ありがとう智子ちゃん。
智子:
 …もう終わりますからね?
如月:
 終わりがあるからには始まりがあるの。そういえば今回の始まりはなんだったかしら…そう、木に根っこをはらせて育てようって話だったわね。智子ちゃんって木を育ててる?そう、沢山の飴がなる木とか…でもそんなの聞いたことないわねぇ。もしかして新種かしら?ねえ、今度それ見せてくれるかしら?きっと甘い甘い香りでいっぱいなんでしょうね。そっか、だから智子ちゃんの家に行くといっつも甘い香りが漂ってくるのね。もう、一本とられたわ。これは景品として木の枝を一本もって行って…。
智子:
 はいはいはいはい!本当にもうおしまいです!

★『さいりょう(裁量⇔栽量)』
智子:
 正しくは裁量ですね。裁きを量る、とで覚えることにしましょうか。
菊月:
 裁きとはまた物騒ですね…。
智子:
 いやいや、これは言葉の解説ですから。
菊月:
 断っておきますが、私は断じて違法な調合などしてませんよ?
智子:
 誰もそんなこと思ってませんよ。
菊月:
 決して、惚れ薬とか洗脳薬とか魔法約とか白い粉とか…。
智子:
 …してるんですか?
菊月:
 い、いえっ!だ、だから、し、してませんよ!失敬だな、智子くんは!
智子:
 口調と呼び方と変わってますけど…。

★『さぎ(詐欺⇔詐偽)』
智子:
 正しくは詐欺ですね。でも、詐偽も正しいそうですよ。
葉月:
 そうなのかい?
智子:
 さぁ…。
葉月:
 いや、さぁ、って…。
智子:
 これぞ詐欺!?なんてなんてー!
葉月:
 …じゃ、終わっておくれ。
智子:
 はぁい。

★『ささぶね(笹舟⇔笹船)』
智子:
 正しくは笹舟ですね。笹で作った小さな舟ですから…船という大きなものではないのです。
皐月:
 ねえねえ、それじゃあおっきな船を笹で作ったら、笹船ってなるのかしら〜?
智子:
 かもしれませんけど、相当大きいものを作らないといけませんよ?
皐月:
 大きいってどれくらい〜?
智子:
 えっと…こぉ――――――――――――――――――――んなくらいの大きさです!
皐月:
 分かったわまさこちゃん。こぉ――――――――――――――――――――――――んなくらいね?
智子:
 ええそうです…って、あたしはまさこじゃありませ――――――――――――――――――――――――――――――――――――ん!!
皐月:
 …(今の、船よりも大きかった気がするわぁ〜)

★『さしょう(些少⇔些小)』
智子:
 正しくは些少ですね。わずか、すくない、という事なので、少なのです。
水無月:
 少ない、か…。
智子:
 どうしたんですか?
水無月:
 最近思うんだが、どうも世の中にはイカしてるものが少ないと思うんだ。
智子:
 は、はあ。
水無月:
 こうなったら、俺が自ら創るしかない!…と思うんだが。
智子:
 はあ、いいんじゃないでしょうか。
水無月:
 しかし、俺は一介の本屋の店主に過ぎない。そこで頼みがあるんだが…。
智子:
 あたしも一介の駄菓子屋店主に過ぎませんからだめですよ。
水無月:
 智子ちゃん、それはケチってもんじゃないかい?
智子:
 そう言われても困るんですが…。

★『ざせつ(挫折⇔坐折)』
智子:
 正しくは挫折ですね。途中で失敗して挫ける…だからです。
葉月:
 ところで智子ちゃん、挫折せずに解説続いてるねぇ。
智子:
 うん、そりゃあもう。こういうのは続けるのが肝心だしね。
葉月:
 ちゃんと最後までいくかな?
智子:
 もっちろん!おばさん、最後まで見守っててよ?
葉月:
 はっはっは、その意気だよ。
智子:
 ちなみに、坐っていうのはすわるって事だからね。
葉月:
 座る、とは違うのかい?
智子:
 常用漢字表では、坐を座って書くらしいよ。
葉月:
 へえ、なるほどねぇ。

★『さっとう(殺到⇔殺倒)』
智子:
 正しくは殺到ですね。殺人的に到達!ということで。
神無月:
 智子ちゃん、それって一体どういう事?
智子:
 ああつまりはですねぇ、一人の人がさばききれないほどに。つまり…。
神無月:
 つまり?
智子:
 これ以上こられると死んでしまうー!つまり殺人的だー!というくらいに人が到達する。
神無月:
 到達…。
智子:
 ま、それだけ繁盛してるってことですよ。
神無月:
 そうか…。僕の手品でも人が殺到するかな?
智子:
 それはして十分だと思いますけど…。
神無月:
 そうかい?けどねぇ、なかなか上手くいかないんだよ。この前だってペンが包丁に変わって失敗しちゃってね。
智子:
 っていうかそれはすでに手品の域を超えてると思いますから!

★『ざんぎゃく(残虐⇔惨虐)』
智子:
 正しくは残虐ですね。虐げが残るほどに…なんて感じでいかがですか?
霜月:
 いかがですかなんて言われても困っちまうな。
智子:
 はあ、すみません。
霜月:
 いや、謝るもんでもないけどな。ふーん、何がいいかな…。
智子:
 何がですか?
霜月:
 決めた!悔いが残るくらいに俺は虐げられてきた…ってのはどうだ?
智子:
 …ああ、覚え方ですか。
霜月:
 他に何があるってんでい。
智子:
 いえ…(むぅ、無理にやり直ししなくても…)

★『さんごくし(三国志⇔三国史)』
智子:
 正しくは三国志ですね。三国の歴史じゃありません。三国の志なのです!
師走:
 志すものがそこにあるからこそ探偵業が強くなる!
智子:
 はい、それじゃあ単純な覚え方も言ったのでここまでにしましょう。
師走:
 いやいやいや、ちょっと待ってよ智子ちゃん。
智子:
 おじさん、あたしはもうやりませんよ?商店街の三国志なんて…。
師走:
 何を言ってるんだ。鳥と豚と牛の派閥が何故生まれるかっていうのは重要で…。
智子:
 それじゃあおしまいでーす。
師走:
 ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ!電気屋の沽券に関わるんだ!
智子:
 肉の話は関係ないじゃないですか!

★『さんさく(散策⇔散索)』
智子:
 正しくは散策ですね。散歩の意味の漢語的表現でして…以上!
葉月:
 なんだか誤魔化してないかい?
智子:
 索ってロープってことなの。引っ張られて散策するわけじゃないぞー!みたいな。
葉月:
 やっぱり誤魔化してないかい?
智子:
 ないない、おばさんの気のせいだって。
葉月:
 そうかねぇ…。
智子:
 そんなことより散歩行こ?散策しよ?
葉月:
 絶対誤魔化してるよ。何かあったのかい?
智子:
 いやぁ…そんなことは…。

★『さんざん(散々⇔惨々)』
智子:
 正しくは散々ですね。ちりぢりです、ちりぢりっ!
菊月:
 はぁ、で、そのちりぢりと散々がどう繋がるので…。
智子:
 もう、すぐわかるじゃないですか。ちりぢりは散り散りって書きますよね?だから散々です!
菊月:
 漢字が同じなのは分かりましたが、意味は…
智子:
 ですから!同じ漢字のものとひっつけて覚えようって魂胆です!散り散りで散々〜なんて!
菊月:
 はぁ、なるほど。
智子:
 はいはい、よくわかってくださいましたよね?
菊月:
 いや、しかしですねぇ…
智子:
 はいっ!もうおしまいです!
菊月:
 …散々な解説ですね、これは。

★『さんじょ(賛助⇔参助)』
智子:
 正しくは賛助ですね。会や事業に、賛成して協力することですので。
師走:
 参加して助けること、ではないんだね。
智子:
 そういう事になりますね。
師走:
 さて、ばっちり捉えたところで一つ智子ちゃんから賛助を得たい。
智子:
 無駄ですよ。
師走:
 まだ何も話してないんだけど…。
智子:
 言わなくても分かります。探偵同盟を作って事務所を構えるとかなんとか…。
師走:
 実は睦月のだね…。
智子:
 はいっ!賛助します!
師走:
 …手がけている曲を弾きたいとかつて名乗り出た人の奥さんのご友人が推理もの好きでね、是非…。
智子:
 いいえっ!賛助しません!
師走:
 …智子ちゃん、人の話は最後まで聞かないとだめだよ?
智子:
 うう、すいません。っていうかそんなフェイントずるいです…。
師走:
 ずるいような事を俺言ったっけかなぁ…。

★『さんだんとび(三段跳び⇔三段飛び)』
智子:
 正しくは三段跳びですね。ほっぷすてっぷじゃんぷ、って跳ねるんですよっ。
卯月:
 ふむ、ここは早速実践してみねばなるまいな。
智子:
 はい?
卯月:
 任せてくれたまえ。これでも若い頃は陸上の選手だったんだよ。
智子:
 ええっ、そうなんですか!?
卯月:
 さあいくぞ。ホップ!ステップ!じゃー…(ぐきっ)
智子:
 ぐきっ?
卯月:
 ぐあっ!こ、腰が、足が、筋肉痛がああ!
智子:
 わわわっ、た、大変!って、そんなにすぐには筋肉痛にはなりませんよ?
卯月:
 お、落ち着いてそんな事を言ってないで…。
智子:
 そ、そうでした。たいへんたいへーん!卯月さんがぎっくり腰にー!
卯月:
 そんな事を大声で言いふらさないでくれたまえ…あいたたた!

★『ざんてい(暫定⇔斬定)』
智子:
 正しくは暫定ですね。一時的にしばらく定める、という事で暫定なのです。
神無月:
 ひらめいたよ、智子ちゃん。
智子:
 何がですか?
神無月:
 暫定的にフォークをスプーンにしてみます、ならウケるんじゃないだろうか?
智子:
 いやぁ、なんかそれはもう手品じゃないっていうか…。
神無月:
 だめかな…そうだろうな。この前はナイフが割り箸になってしまってどうしようか困り果てたし…。
智子:
 そこ!それが絶対問題ですよ!
神無月:
 ああそうだね。割り箸は木を無駄に伐採して作られてるっていうしね。
智子:
 そういうことじゃなくて!
神無月:
 でも違うんだよ智子ちゃん。あれは余り木であって、決して割り箸用に伐採しているわけじゃ…。
智子:
 だーかーらー!人の話を聞いてくださいー!

★『さんはんきかん(三半規管⇔三半器官)』
智子:
 正しくは三半規管ですね。三本の管が、えー、互いに直行してる平面内に位置してるのです。
皐月:
 うーん、あんまりよくわからないわ〜、がば子ちゃん。
智子:
 が…。…いやね、説明難しいんですよ。
皐月:
 規律を守っている管でいいじゃないの〜。
智子:
 どういう管ですか…。
皐月:
 だって、平衡感覚を司るんでしょう?
智子:
 ええ、そうですね。
皐月:
 平衡感覚の規律をまもっている、でいいじゃないの〜。
智子:
 な、なんか強引な気がしますが…。
皐月:
 細かいこと気にしてちゃだめよ、がが子ちゃん〜。
智子:
 が…がが子じゃありません!

★『さんび(酸鼻⇔惨鼻)』
智子:
 正しくは酸鼻ですね。しかあし、惨鼻とも書くそうです!
葉月:
 はぁ、それはあまり威張って言う事じゃないよ?
智子:
 はあ、そうだね。あ、ちなみに酸鼻ってのは、むごたらしくて見てられない事だよ。
葉月:
 まったく、そんな智子ちゃんがむごたらしくて、あたしゃ見てられないよ。
智子:
 おばさん、それどういう意味?

★『さんぴりょうろん(賛否両論⇔賛非両論)』
智子:
 正しくは賛否両論ですね。賛成か否定か!という事です。
長月:
 …だめ。
智子:
 え、ええっ!?この解説じゃいけませんか?
長月:
 …いい。
智子:
 …だったら、だめなんていわないでくださいよ。
長月:
 …どっちも。
智子:
 はい?
長月:
 …言う。
智子:
 …まさか、賛否両論をばらして言ってみたりってことですか?
長月:
 …ああ。
智子:
 そんなことしないでください…(紛らわしいなぁ)

★『さんまん(散漫⇔散慢)』
智子:
 正しくは散漫ですね。気持ちが集中しない…というわけで漫です。
葉月:
 おごるじゃなくって、目的や主題が無い、ってことだね。
智子:
 そうそう、ふらふら〜って感じのね。
葉月:
 智子ちゃんはしっかりしてるからいいよねぇ。
智子:
 そんなことないよ。駄菓子屋は趣味でいいんだ。もっとしっかり稼げるようにならないと!
葉月:
 ……。
智子:
 どしたの?おばさん。
葉月:
 そんな若いうちから稼ぎの事を考えてるなんて、って思ってね…。
智子:
 え…。

★『さんみいったい(三位一体⇔三身一体)』
智子:
 正しくは三位一体ですね。単純に三つの身がということじゃなくて、三位という言葉には特別な意味が…。
睦月:
 その心は?
智子:
 父と子と聖霊と…でもありますし、正三位・従三位の称でもあります。
睦月:
 な、なるほど、なかなか難しいね。
智子:
 まぁとにかく、三つのものが一つになることが三位一体と言うのですよ。
睦月:
 そういうことだね。
智子:
 …睦月さん、こういう話は苦手だったりします?
睦月:
 あー、いや…たしかにね、宗教が少しでも絡むと拒否反応が出るんだけど。
智子:
 どうしてですか?
睦月:
 宗教ってあるだけで考えが前提ありきになるじゃない?私は嫌いなんだよ、そういうの。
智子:
 けど、そういうのが無いのもあったりしませんか?
睦月:
 本当に宗教やってると、厳密にはそういう考えは振りなだけになるんだ。ま、ややこしいからここまでね。
智子:
 はあ…。

★『じがじさん(自画自賛⇔自我自賛)』
智子:
 正しくは自画自賛ですね。自分で書いた絵をほめるところからきているんです。
葉月:
 はぁはぁ、なるほどねぇ。画、ってことかい。
智子:
 おばさんは絵をかいたりする?
葉月:
 たまにね。ほら、野菜が上手く仕入れられなくて…。
智子:
 うん。
葉月:
 代わりに、その絵を描いて置いていたりするのさ。今回はごめん、ってね。
智子:
 え…あ、もしかしてあの玉ねぎとか!?
葉月:
 ああ、そういや智子ちゃん一度買い損ねたのがあったねぇ。カレーするんだーとかって日に。
智子:
 うそ、あれおばさんが描いたの!?本物みたいだった!
葉月:
 まさか。描いたものだから食べられないよ?
智子:
 いや、そういう事を言ってるんじゃなくて…。

★『じきしょうそう(時期尚早⇔時機尚早)』
智子:
 正しくは時期尚早ですね。区別が難しいですが、尚早とは時期が熟していない事ですので。
水無月:
 ふむ、その説明で片付けるつもりだな?なかなかイカすじゃねえか。
智子:
 あ、いえ、まだ続きが…。
水無月:
 端的に述べて即解決!やるねぇ、こいつあ見習うべきかもな。
智子:
 …まぁ、いいですそれで。
水無月:
 ところで、時期と時機って何が違うんだ?
智子:
 あのね…。時期は、長い時間の流れのうち、選ぶべき短い一区分です。
水無月:
 ほうほう?
智子:
 時機は、何かをするのに、早くも遅くもなく丁度良い時です。
水無月:
 ほうほう?
智子:
 つまりは、一区分の時期にまだ熟してないってこと…幅があるんですね。
水無月:
 ほほう、なるほどな。
智子:
 わかりましたか?
水無月:
 つまりだ、折り紙手裏剣を投げるにはまだ早いんだってことだな?
智子:
 …違います。

★『しこうさくご(試行錯誤⇔思考錯誤)』
智子:
 正しくは試行錯誤ですね。試して行って間違ってまた試して…という事で。
葉月:
 なるほど、試すってことだね。
智子:
 そうそう。あたしの駄菓子作りみたいなもんだなぁ。
葉月:
 そういや智子ちゃんは研究家だったね。
智子:
 そ、そんな、大げさなもんじゃないよ、えへへ。
葉月:
 おやまぁ、すっかり照れちゃって。
智子:
 よ、よーし、早速研究始めるぞっ。誰もが虜になって行列のできる駄菓子屋を目指す!
葉月:
 それは無理じゃないかい?

★『しこうひん(嗜好品⇔趣向品)』
智子:
 正しくは嗜好品ですね。しゅこうじゃありません、しこうですよ。
睦月:
 ああ、これは最初っから漢字の読みが違うってことだね。
智子:
 ええそうです。ま、ちゃんと読めれば間違えませんよね。
睦月:
 いやいや、そうはいかないものだ。同じ漢字でも違う読みがあったりするからね。
智子:
 はあ、なるほど。
睦月:
 たとえば智子ちゃんだ。さとこ、が正しいけど、ともこ、とも読めるしね。
智子:
 はっ、そういえば…。うう、昔間違われたんですよー。皐月さんがあたしの名前をちゃんと呼んだーって話で…。
睦月:
 皐月さんが?
智子:
 ええ。その人は、皐月さんが“ともこ”って呼んでたよと嬉々として言ってるんですけど…。
睦月:
 ああそりゃ違うもんなぁ。さとこちゃんじゃないし。
智子:
 そう!もう、あったまきちゃいますよね。あたしの名前を間違って堂々と呼んでるなんて、失礼です!
睦月:
 えーと、皐月さんはあたまにこないの?
智子:
 あの人の場合は、そういう次元じゃないので。
睦月:
 ああ、それもそうだね…。

★『しさい(仔細⇔思細)』
智子:
 正しくは仔細ですね。子細と書きますので、細かいとこまで…小さいとこまで…です!
水無月:
 文月さんよぉ、細かいことなんだけど…。
智子:
 わーわーわー!
水無月:
 まだ何も言って無いんだけど…。
智子:
 わーわーわー!
水無月:
 …しょうがねーな。俺の負けだ。後で詳しいこと聞かせてくれよな!
智子:
 ほっ…って、ええっ!?(それやると結局あたしの負けのような…)

★『じさん(持参⇔自参)』
智子:
 正しくは持参ですね。持って参上する!と覚えましょう。
霜月:
 どこに何をだい?智子ちゃん。
智子:
 はい?あ、いえ、これは、そう覚えましょうってことですから。
霜月:
 なんだい、そうかい。今日は気分がいいから荷物持ちを買って出ようと思ったんだが…。
智子:
 じゃあ、またの機会にお願いしますね。
霜月:
 いやぁ、別の日には気分がのらねえかもなあ、なんつって。がはははは。
智子:
 大丈夫です、今から荷物運び券を作りますので、それを後日使用することにします。
霜月:
 へ?
智子:
 さあてと、たしか師走さんが新しい冷蔵庫と洗濯機をくれるって言ってたから…。
霜月:
 お、おいおいおい、ちょっと待ったー!

★『しせい(姿勢⇔姿正)』
智子:
 正しくは姿勢ですね。からだの構えや心持なので…。
弥生:
 なので?
智子:
 勢いをもって姿を持ちましょう!なんて…。
弥生:
 うふふふ、面白い覚え方ですわね。
智子:
 はあ、すみません。
弥生:
 何故謝るんですか?
智子:
 ああ、いえ、ちょっとおかしかったかな、って。
弥生:
 別に構いませんわ。大事なのは覚えるという事。他に案が無いのでは仕方ありませんわ。
智子:
 え…ちょ、ちょっと待ってください、今からもっといいの考えますから!
弥生:
 あら、そうですの?
智子:
 はい。
弥生:
 うふふふ、智子ちゃんのそういう姿勢は立派だと思いますわ。勢いがあってよろしいですし。
智子:
 いえいえ、どうも…はれっ?

★『しそうけんご(志操堅固⇔思想堅固)』
智子:
 正しくは志操堅固ですね。固く守って変えない気持ち…志や操を守るんです!ってことで。
葉月:
 智子ちゃんは何かそういうものは持ってるかい?
智子:
 えっ、と…平凡で楽しく、ってとこかなぁ。
葉月:
 ふうむ…それまたどうしてだい?
智子:
 大きなことじゃないけど、皆が毎日笑って楽しく暮らせる事が一番大切かなって…。
葉月:
 えらい!
智子:
 えっ、えっ?
葉月:
 こりゃあ、次の町会長さんは智子ちゃんで決まりだねぇ。
智子:
 いや、おばさんさすがにそこまではムリ。

★『したい(姿態⇔姿体)』
智子:
 正しくは姿態ですね。動作したときの姿なので、態勢、と合わせてみてはどうでしょう。
霜月:
 えーと、態勢があれだ、身構えや対応ってことで…。
智子:
 ええそうですよ。
霜月:
 でもって体勢は、体の構えや姿勢…。
智子:
 はいそうですね。
霜月:
 ん?動作した時の姿なら、姿勢とかって意味の体勢の方が合ってねえか?
智子:
 気のせいですよ。
霜月:
 いやぁ、しかし俺としてはだね…。
智子:
 おっと、そろそろおしまいの時間です。では!
霜月:
 あ、ちょっと智子ちゃん!…おしまいの時間なんてあったっけ?

★『しっしん(失神⇔失心)』
智子:
 正しくは失神ですね。意識を失う、つまり精神を失う、という事です!
皐月:
 でも、失心っていう言葉もあるのよね〜?
智子:
 はい。こちらは正気を失う、という事みたいですが。
皐月:
 しかも、失心は失神とも書くのよね〜?
智子:
 は、はい。
皐月:
 じゃあ結局どう正しいの〜?どっちでも一緒じゃないのぉ〜?
智子:
 えーと……あ、急に目眩が! ……ぱたん。
皐月:
 自分で音出して失神なんてしないでしょ〜。ねぇ、しっし子ちゃん〜
智子:
 (がばっ)だーれがしっし子ですかー!
皐月:
 ほらほら〜、気を失った振りなんてしないで、ちゃんと教えて〜?
智子:
 ううー、もう勘弁してくださいー!

★『しっぷうじんらい(疾風迅雷⇔疾風迅来)』
智子:
 正しくは疾風迅雷ですね。疾風や雷鳴のように!勢いが激しく行動が素早い、ですね。
如月:
 あらあら、なるほどねぇ。疾風や雷鳴ということはつまり……。
智子:
 はい!もうおしまいですー!!

★『してき(指摘⇔指適)』
智子:
 正しくは指摘ですね。指でさし示す意味なので、てへんを意識しましょう。
卯月:
 ほうほう、なるほどね。
智子:
 卯月さんとしては、このコーナーに指摘することってありますか?
卯月:
 あーうんそうだねぇ…たまに、どっちがどっちかわからない言葉があるじゃないか。
智子:
 はい。
卯月:
 誤魔化したりするんじゃなくって、最後までちゃんとしたらどうかね?
智子:
 え、えーと、そう、ですね…善処します。
卯月:
 努力します、と言ってくれる方が私としては納得がいくのだがね。
智子:
 あ、は、はい。
卯月:
 頑張ってくれたまえ。
智子:
 努力します…。

★『しなん(指南⇔示南)』
智子:
 正しくは指南ですね。何故指南と書くのかと言いますと…。
師走:
 ふんふん。
智子:
 古代中国にですね、指南車というのがありました。
師走:
 ふんふん。
智子:
 これは、霧の中で方角を失った軍勢に南を教えた人形仕掛けの車なんです。
師走:
 ふんふん。
智子:
 人形が南を指した。だから指南です!
師走:
 なるほど、由来はそこだっていう事だね?
智子:
 ええ、まあそうじゃないかと。
師走:
 えらいっ!さすが智子ちゃん。
智子:
 い、いえいえ、そんな。
師走:
 そんな智子ちゃんに是非指南してもらいたい事があってだね、町外れにある古い屋敷の事なんだけど…。
智子:
 おじさんに、そういう事はいいかげん慎むように指南します。
師走:
 え?

★『じひ(慈悲⇔滋悲)』
智子:
 正しくは慈悲ですね。衆生に楽を与える「慈」とその苦を取り除く「悲」です。
神無月:
 これはこれは、負けていられませんね。
智子:
 はい?
神無月:
 いえ、僕も手品で人々の心を慈しもうと奮闘中なんだよ。
智子:
 …どう慈しむんですか?
神無月:
 たとえばだね、ここに一枚のコインがあります。
智子:
 なるほど、百円玉ですね。
神無月:
 これを見事一杯のかけそばに変えましてですね、心を暖かく…。
智子:
 なんかそれ、違いません?

★『しまつ(始末⇔仕末)』
智子:
 正しくは始末ですね。始めから末まで、きっちり始末をつけましょう。なんてね。
師走:
 早速だが智子ちゃん、一つ話を聞いてくれないか。頼みごとじゃないから。
智子:
 話を聞いてって時点で頼んでる気がしなくもないですけど、いいですよ。
師走:
 よかった。つい先日の事なんだけど、発売したばっかりの新製品をさ、取り寄せたんだ。
智子:
 はあ。
師走:
 超豪華な洗濯機でねぇ、一品50万もする代物なんだが…。
智子:
 ご、ごじゅうまんですか!?
師走:
 ああ。でね、その先日に来たお客さんが一目見るなり気に入ったのか即購入してくださったんだ。
智子:
 すごい売上じゃないですか。
師走:
 けれどね、即金じゃなくて、ローンにしてくれと。
智子:
 うーん、まぁしょうがないんじゃないですか。
師走:
 でもねぇ、50年ローンなんだよ。つまり1年につき1万円…どうしたらいいと思う?
智子:
 いや、どうもこうも、どうしようもないんじゃ…。
師走:
 ああ、承諾するんじゃなかったなぁと悔やんで仕方ないよ…。
智子:
 っていうか、そもそも承諾したのが間違いなんじゃ…。

★『しめい(指名⇔使名)』
智子:
 正しくは指名ですね。名前を指定するから、です。
皐月:
 はぁ、なるほどねぇ〜。素直でいい覚え方ね。
智子:
 まぁそうですね。
皐月:
 それじゃあ早速誰かを指名しようかしら〜。
智子:
 皐月さんには難しいんじゃないですか?
皐月:
 どうしてぇ〜?
智子:
 それは暗黙の了解ってやつで…。

★『しめいかん(使命感⇔使命観)』
智子:
 正しくは使命感ですね。使命は観るんじゃなくて感じるものです!ということで。
如月:
 熱い、熱いわ智子ちゃん。さすがいくつもの使命に燃える乙女よね。そのうちの一つが駄菓子。 ああでも飴に限ってるんだっけ。家に工場まであって、オート管理システムが充実してるのよね。 でも従業員は少ないのよね。お昼休みって食堂はどう利用してるのかしら。 そういえば毎日のお献立って考えるの大変なのよねぇ。私は花屋らしく、花に因んだものをよく作るんだけどね。 色は工夫できても味はなかなか工夫できないわぁ。そこでよく相談するのが、卯月さんよ。 あの人、料理が得意なのよ。しっかり見習って私も一人前のコックになって料理店を経営しなきゃね。 …あら?私花屋さんだから燃やす使命感の方向が違うわね。卯月さんは趣味らしいからいいけど、 どうしよう…こうなったら転職かしら。転換期ね。でもお花が私は好きだから…。 ねえ智子ちゃん、どうしたらいいと思う?
智子:
 え!?あ、えーと、花屋さんのままでいいんじゃないでしょうか?
如月:
 あらあらやっぱり?そうよね、私の使命は花と共に生き、花と共に死ぬ…素敵な言葉。 だけどね、花って沢山あるからね、一緒に何度も死ぬなんてできるわけないわね。 うふふふ、実は私はいくつもの命を宿してるのよ。かしこいひとの…なんだっけ、宝石かな? それを知ってるかしら。それに関係があるのよ。…なんてうそうそ。私は普通のお花屋さんの店主よ。 ヒートアップしてる智子ちゃんにクールダウンをかける私こそ、花屋にふさわしいのね。 でも、どうして智子ちゃんってそんなに熱いのかしら。毎日お湯を沸騰させてるのかしら? 吹き零れすぎないように沸騰石は必要ね。そうそう、なんで沸騰石が沸騰を抑えるかっていうと…
智子:
 うわー!わー!わー!もうおしまいですー!!

★『しめんそか(四面楚歌⇔四面疎歌)』
智子:
 正しくは四面楚歌ですね。語源を調べてみればよくわかりますよ。
極月:
 その、語源については解説しないのかい?
智子:
 話すと長くなるので…。
極月:
 そうかい、それじゃあ仕方ないねぇ。
智子:
 そう言ってくださると助かります。
極月:
 おやそうかい。それじゃあ遠慮なく解説するとしようかねぇ、いひひひひ。
智子:
 へ?何をですか?
極月:
 何って、語源についての話さ。あたしが解説すると助かるんだろう?いひひひひ。
智子:
 わ、わーっ、そういう意味じゃなくて!

★『じゃくしょう(弱小⇔弱少)』
智子:
 正しくは弱小ですね。弱く小さい、ですよ。弱く少ないじゃないですからねー。
水無月:
 そのとおりだ!
智子:
 うわっ! と…ど、どうしたんですか?
水無月:
 霜月さんがさ、俺の折り紙を、小さくて弱そうだなぁってな。まったくなんてこと言いやがる!
智子:
 今回の話と関係無いと思いますが…。それに、折り紙ってそういうものでは?
水無月:
 いいや、一メートル以上の紙で折ってみな。そりゃあ圧巻だぜ。
智子:
 はあ、まあたしかに大きいでしょうけど…。
水無月:
 こうなったら次は弱小と呼ばれないような折り紙を作らなけりゃな。きっとイカすぜー。
智子:
 …いえ、多分やめてほしいかも。

★『じゃっかん(若干⇔弱干)』
智子:
 正しくは若干ですね。若は未定、干は箇。むやみに多くはないけどある程度の数量はあるって事です。
葉月:
 まぁ、弱いってのだと違うねえ確かに。
智子:
 うん、そうだよね。
葉月:
 さてと、それじゃあわずかばかりのお小遣いを智子ちゃんにあげよう。
智子:
 ええっ、い、いいよおばさん。あたし、お金に困って無いもん。
葉月:
 そう謙虚にならなくても。智子ちゃんだって、お金もって好きなことやりたいだろ?
智子:
 そりゃそうだけど、それだったら好きなことやる時間がもっとほしいな。
葉月:
 …なんだか切実だねぇ。
智子:
 ご、ごめんなさい。
葉月:
 いや、謝らなくていいんだけどね。将来はもっと時間ができるといいねえ。
智子:
 うん。…うー、あたしって今何歳だっけ?

★『じゃっかん(弱冠⇔若冠)』
智子:
 正しくは弱冠ですね。二十歳くらいの若さ、若い人、という事です。
睦月:
 あれっ?じゃあ、若冠でいいんじゃないの?
智子:
 ふっふっふ、弱、とは二十歳という意味があるんですよ。若冠と書くのは誤りなんです!
睦月:
 へえ、そいつはしてやられたね。
智子:
 えへへ、睦月さんでも引っかかるものなんですね。
睦月:
 まぁ私も人間だしね。じゃあ…智子ちゃんは弱冠13歳とか言ったりしないんだ?
智子:
 へ!?え、えーと…あ、そ、そうだと思います。
睦月:
 どうしたんだい、急に慌てて。もしかして自信ない?
智子:
 い、いえ、そんなこと、ない、かと…。
睦月:
 やれやれ。

★『じゅうおうむじん(縦横無尽⇔縦横無人)』
智子:
 正しくは縦横無人ですね。無人じゃないんです、尽きることの無い、という事が重要です。
師走:
 智子ちゃんが担当すべき事件も尽きることが無いよねぇ。
智子:
 いえ、そんなことありません。
師走:
 趣味で続けてゆくのは多分一生だよ。頑張ろうね。
智子:
 いやそこまでは…。
師走:
 大丈夫だって。たとえ尽きても、俺がちゃんと事件を用意するから。
智子:
 ちょ、そんなことしなくていいですってば!
師走:
 そう、正義のヒーローを成り立たせるための悪の秘密結社にだって俺はなってやる…。
智子:
 …だめだこりゃ。

★『しゅうかく(収穫⇔収獲)』
智子:
 正しくは収穫ですね。でも、収獲もあります!以上っ!
長月:
 ……?
智子:
 あ、えっと、二つの違いは……農作物と狩りの獲物の違いってことで。
長月:
 ……ああ。
智子:
 そう、そうなんです、納得いただけました?
長月:
 …………(こくり)
智子:
 それはよかったです。
長月:
 ……。
智子:
 どうしたんですか?
長月:
 ……オチは?
智子:
 ……ありませんよ、そんなの。
長月:
 ……残念。
智子:
 いや、残念がられても……。

★『しゅうかんし(週刊誌⇔週刊紙)』
智子:
 正しくは週刊誌ですね。ただの紙じゃありません、雑誌なんです!
水無月:
 おっ、イカす解説してくれるねぇ、さすが文月さんだ。
智子:
 いえいえ、そんなことは。
水無月:
 しかも本屋の店主である俺を呼ぶとは、ちゃんとわきまえてるねぇ。
智子:
 いえいえ、そんなことは。
水無月:
 ところで、月刊があれば週刊もある、そして日刊もある。
智子:
 はあ。
水無月:
 ならば、時刊とか分刊なんてのはどうだい!?
智子:
 えっ、と……発刊できるんですか?
水無月:
 紙一枚ならなんとかなるぜ。俺の折り紙つきのな!
智子:
 あっ、上手い。
水無月:
 ん?
智子:
 いえ、水無月さんが得意の折り紙なのと、普通に折り紙つきってのがかかってるからです、はい。
水無月:
 おっ、なあるほどね。さっすが文月さんだ。いいとこに気付くねえ!
智子:
 えへへ。

★『しゅうぎ(祝儀⇔祝義)』
智子:
 正しくは祝儀ですね。祝いの儀式であり、義とは違うのですよ。
師走:
 はい智子ちゃん、お祝儀だよ。
智子:
 へ?あ、あの、何の祝儀ですか?
師走:
 もちろん、智子ちゃんが事件解決100回記念さ。
智子:
 あたし、そんなに事件とかに関わってきましたっけ?
師走:
 なあにこれからどんどん関わるんだ。いつやったって一緒だよ。
智子:
 いや、それは違うのでは……。
師走:
 早速なんだけど、魚屋の裏に水族館ができそうでね。それで……
智子:
 そんな根も葉もないようなのには関わりません!

★『じゆうきょうそう(自由競争⇔自由競走)』
智子:
 正しくは自由競走ですね。競走のように走って争うだけでなく、優劣を争うんです!
霜月:
 この時を待ってたぜ。さあ智子ちゃん、俺と一緒に競走しようじゃないか。
智子:
 競走じゃなくて競争だって言ってるのに……で、何で競争するんですか?
霜月:
 力勝負じゃあ俺が全部勝つに決ってるからな。智子ちゃんが是非挑戦してみてくれ。
智子:
 挑戦ってのも変ですけど、いいですよ。じゃあ英語で。
霜月:
 え、英語?
智子:
 はい。単語でしりとりをしましょう。じゃああたしからいきますよ〜……MYSTERY!
霜月:
 へ?え、えーと……い、一本釣り?
智子:
 ……英語って言ったじゃないですか。
霜月:
 くうう、そうくるとは思わなかった。俺の負けでいいよ。
智子:
 あ、あはは、まさかこうもあっさり終わっちゃうなんて……。
霜月:
 今度は魚の古今東西にしよう。次の挑戦待ってるぜ!
智子:
 は、はあ。

★『しゅうしゅう(収拾⇔収捨)』
智子:
 正しくは収拾ですね。捨てちゃいけません、拾って収拾をつけましょう!
師走:
 えらいっ!そんな前向きな智子ちゃんに、事件の紹介だ!
智子:
 い、嫌な予感……。
師走:
 実は三丁目にあるタバコ屋さんでね、おつりの紛失事件が……
智子:
 さあってと、収拾つかなくなる前に終わりますよっ!
師走:
 何を言ってるんだい、これから始まりだってのに。いいかい、その日のうちに買い物をした
智子:
 それでは!
師走:
 ちょっと智子ちゃんってば!

★『しゅうしゅう(収集⇔集収)』
智子:
 正しくは収集ですね。回収して集める、と覚えましょう。
皐月:
 つまりはコレクターってことね〜。
智子:
 コレクター……あ、まぁ、そんな感じですね。
皐月:
 なぁに〜?コレクターは関係あるわよね〜?
智子:
 ええ、ありますよ。つまり、って事にはならないと思いますけど。
皐月:
 ところで、はえこちゃん〜、何か集めてるものとかあるのぉ〜?
智子:
 (はえって……)……えっと、特には。
皐月:
 あのね〜、あたしは〜、珍しいものが好きなのぉ〜。
智子:
 へえ、たとえばどんなものですか?
皐月:
 滑車付きの西瓜とか〜、取っ手つきの林檎とか〜、スイッチ付きのパイナップルとか〜。
智子:
 ……たしかに、珍しいですね(っていうか、もはや果物じゃないような)
皐月:
 そうでしょお〜。むえのちゃんも、宝石つき駄菓子とか売ってみたら〜?通常価格で。
智子:
 (むえのって……)そんなことしたら思いっきり赤字じゃないですか。
皐月:
 損して得とれって言うでしょ〜?
智子:
 駄菓子でそんな事やってもしょうがないですっ!

★『しゅうじんかんし(衆人環視⇔衆人監視)』
智子:
 正しくは衆人環視ですね。周りを取り巻いて見るってことで、環を想像してください。
睦月:
 智子ちゃんは、そういう人前に出るのは得意そうだね。
智子:
 ええっ!?そ、そんなこと全然ありませんよぉ。
睦月:
 そうなんだ?
智子:
 はいっ。もう、睦月さんの前に出ただけで緊張して上がっちゃって緊張しちゃうんですから。
睦月:
 ははは、なるほど相当のようだね。
智子:
 はいっ。ですから、人前に出るのは睦月さんまでで勘弁してください。
睦月:
 ああ、わかったよ。……ん?何かおかしくないかい?
智子:
 いいえ、おかしくありませんよ。
睦月:
 うーん、そうかなぁ?
智子:
 ええ、間違いありません。断じて。
睦月:
 そ、そう……。

★『しゅうぜん(修繕⇔修善)』
智子:
 正しくは修繕ですね。繕う、って覚えればいいですね。
葉月:
 智子ちゃんのそのエプロンも随分解れてきたねえ。
智子:
 大丈夫大丈夫、またすぐに修繕するから。
葉月:
 智子ちゃんは器用だからねぇ。
智子:
 けど、元々修繕の仕方もおばさんから教えてもらったんだよ。
葉月:
 ふふ、そうだったねぇ。ところで……。
智子:
 ん?
葉月:
 エプロン、なんて智子ちゃんつけてたんだよねぇ、今まで記述がなかったと思うけど。
智子:
 お、おばさんっ!しーっ!!

★『じゅうたい(渋滞⇔渋帯)』
智子:
 正しくは渋滞ですね。滞る、ですよー。
弥生:
 渋滞ですか……ここでは縁の無い言葉ですわね。
智子:
 そうですねぇ。車がひっきりなしに通ってるわけでもなし、人でごったがえしてるわけでもなし。
弥生:
 静かな田舎の商店街ですものね。ある程度のお客さんで賑わえば十分ですわ。
智子:
 ……それはそれで平和でいいと思うんですが……。
弥生:
 何か問題でも?
智子:
 いえ、商売の方とか、そんな事とか……。
弥生:
 あらあら、智子ちゃんが気にすることではありませんわ。一店長である以前に学生さんですもの。
智子:
 学生だって商売は気にしますよ。
弥生:
 ……そういえば、智子ちゃんは学生さんだったんですわね。まったく意識に無かった事をお許しくださいませ。
智子:
 いえ、今更そう言われてもどうなるものでも……。

★『しゅうとう(周到⇔周倒)』
智子:
 正しくは周到ですね。倒れてはいけませんよ、到るんです!
卯月:
 ふむ、確かに倒れてはいけないことだな。
智子:
 え、ええ、はい。
卯月:
 智子ちゃんも、仕事のしすぎで倒れてはいけないよ?
智子:
 は、はあ。
卯月:
 いやそれ以前に、智子ちゃんは働いててよかったのだろうか、と
智子:
 はあ……って、えええっ!?
卯月:
 驚くところではないだろう。そもそも法律的にだね……
智子:
 あっ、え、えーっと、たしか駄菓子屋の店長は趣味です!探偵業も同じくです!
卯月:
 ん?そうか、趣味ならば気にするところではないな。
智子:
 はい、その通りです。
卯月:
 はっはっは。
智子:
 あははは。
卯月:
 ……と、そのようなごまかしが通ると思うかね?
智子:
 ……やっぱり、だめですか?
卯月:
 まぁ、通るから今日があるのだと思うのだがね、私は。だから気にしないでいてくれたまえ。
智子:
 は……?あ、はあ……。

★『しゅうは(秋波⇔愁波)』
智子:
 正しくは秋波ですね。愁いじゃなくて秋ですよー。
弥生:
 どうして秋なんですの?
智子:
 女心と秋の空……なんて言葉があるじゃないですか。
弥生:
 ええ。
智子:
 それほどに秋は移ろいやすく様々な色を持っている……。
弥生:
 ええ。
智子:
 そこで、色目を表現するために秋を用いた、というのはどうでしょう?
弥生:
 まぁ、今は智子ちゃんがお考えになったんですのね。
智子:
 あ、いえ、まぁ……はい。
弥生:
 素晴らしいですわ。私もただ受け応えするだけじゃなく、早速実践してみますわ。
智子:
 へ? 何をですか?
弥生:
 うっふん。
智子:
 ……(うわぁ……)
弥生:
 どうですか? ちゃんと色目になってましたか?
智子:
 ええと、まぁ、はい(他ではさせちゃだめだなぁ……色んな意味で)

★『しゅうび(愁眉⇔秋眉)』
智子:
 正しくは愁眉ですね。心配そうな顔つきってことで、愁いとしましょう。
卯月:
 智子ちゃんは何か心配事を抱えているのかね?
智子:
 そういうわけではないですけど……どうしてですか?
卯月:
 その若さで複雑な表情を浮かべていれば、気になるというものだよ。
智子:
 複雑……ですか?
卯月:
 時折垣間見えるのだよ。自分という存在に疑問を感じているような……。
智子:
 そ、そんなことは……。
卯月:
 隠さなくていいんだよ。さあ、遠慮なく話してくれたまえ。相談に乗るよ?
智子:
 なんか積極的ですね。何かあったんですか?
卯月:
 少し思うところがあってね。さあ、智子ちゃん。
智子:
 えっ、と……。

★『しゅくさつ(縮刷⇔縮冊)』
智子:
 正しくは縮刷ですね。縮小して印刷なので、縮刷です。
水無月:
 見事だなこりゃ、これ以上説明はいらねえな。
智子:
 そう言っていただけると嬉しいですね。
水無月:
 ところで最近コピーサービスを始めたんだ。
智子:
 へえ……売ってる本の中身ですか?
水無月:
 ああ。一部5円だ。100ページなら500円。
智子:
 微妙に割高ですね……まぁ買った方が早いですか。
水無月:
 いやいや、薄くて高い本ならコピーの方が得だってことよ。
智子:
 あれっ?いいんですか、損しちゃいませんか?
水無月:
 そこは枚数を多くするように調節してある。
智子:
 へ?
水無月:
 すべてA6サイズだ。
智子:
 ……そのサービス、意味あるんですか?
水無月:
 いや、まだ頭の中にあるサービスだからな。これから改善していこうと思うんだ。
智子:
 頭の中って……。
水無月:
 というわけでイカした案を募集してるぜ。気軽に言ってくんな。
智子:
 はあ……。

★『しゅくじょ(淑女⇔叔女)』
智子:
 正しくは淑女ですね。淑やか、ですよ。叔父叔母ではありませんっ。
弥生:
 しとやか、と読むのですわね。
智子:
 はい。それにしても淑女なんて言葉、弥生さんのためにあるようなもんですよね。
弥生:
 まあ、そんなことありませんわ。これこそ智子ちゃんのためにあるようなものですわ。
智子:
 へ? あたしですか?
弥生:
 ええ。言動が落ち着いていて好ましい……ぴったりですわ。
智子:
 そんなに、落ち着いてます?
弥生:
 それはもう。人生を達観した方みたいに。
智子:
 ……なんか複雑な気分。
弥生:
 どうされましたの?
智子:
 うーん、落ち着いてるとは違うと思うんですけど。
弥生:
 あら。では、貫禄があるとかですの?
智子:
 そ、それも違うかと……って、それは淑やかではないですし。
弥生:
 そう、残念ですわ。
智子:
 残念がられても困るんですけど……。

★『しゅくしょう(縮小⇔縮少)』
智子:
 正しくは縮小ですね。規模が小さくなるようにすることですので縮小です!
葉月:
 規模縮小か……。
智子:
 どしたの?おばさん。
葉月:
 いやね、うちも取り扱いの品をもっと減らすべきかねえって。
智子:
 ええーっ?おばさんちって八百屋だよね?何を減らすの?
葉月:
 ……実はここだけの話、皐月さんが店を譲るなんて言い出してね。
智子:
 へ?
葉月:
 そりゃあまぁうちも多少の果物は扱ってるけど、なんでもかんでもってわけにはねぇ……。
智子:
 ふ、ふーん……。

★『しゅこう(趣向⇔趣好)』
智子:
 正しくは趣向ですね。趣味の方向、にしましょうか。
師走:
 智子ちゃんなら探偵業だね。
智子:
 違います。
師走:
 ……趣味じゃないってのかい?
智子:
 あ……言われてみれば、趣味、ですよね。すみません。
師走:
 いいんだよ。じゃあ話もまとまったところで……。
智子:
 はいはい、事件の調査か何かですか?
師走:
 察しがいいね。実は町会長さんとこの蔵から暗号文が見つかってね。
智子:
 そんなのは専門家に頼んでくださいよ。あたしそういうの苦手なんですから。
師走:
 いやいや、解くんじゃなくて暗号の意志を……。
智子:
 意志?
師走:
 そう。この暗号文は何を思っているのか、その気持ちを……。
智子:
 そんなのもっと無理です!

★『しゅし(趣旨⇔主昏)』
智子:
 正しくは主旨ですね。えっと、昏、は字が違いますよ。ひっかからないでくださいね。
水無月:
 おっとよく見れば!なるほど、そいつあイカしたひっかけだなぁ。
智子:
 はぁ、そうでしょうか。
水無月:
 けど実は誤字だってオチじゃあねーよな?
智子:
 え、ええ、多分……。
水無月:
 よーし、そんならいいや。まぁ、ここじゃあそういうのが主旨じゃねーもんな。
智子:
 あ、そうそう。その主旨っていうのは正しいですね。
水無月:
 おっと、そうだったのかい?だっはっはっは。
智子:
 あ、あはははは(何がおかしいんだろう……?)

★『じゅじゅ(授受⇔受授)』
智子:
 正しくは授受ですね。漢字の順番に気をつけてください。
霜月:
 なぁ、なんで授受なんだ?
智子:
 授けて受けとるから、じゃないですか。
霜月:
 それまたどうしてだ?
智子:
 だって変じゃないですか。授けてもないのに受けとるなんて。
霜月:
 おっ!……そうかそうか、それは気付かなかったなぁ。
智子:
 納得しましたか。
霜月:
 ああ、スッキリしたぜ!代わりといっちゃなんだが、鰹一匹プレゼントだ。がっはっは!
智子:
 お、お気持ちはありがたいんですけど、さすがに処理できるものでは……。
霜月:
 じゃあタタキにして後で届けるからな。是非食ってくれ!
智子:
 は、はい、ありがとうございます(後でおばさんにわけようかな)

★『じゅそ(呪詛⇔呪咀)』
智子:
 正しくは呪詛ですね。咀嚼じゃなくって、言う方です。
葉月:
 たしかに、呪詛の言葉とかって言うしねぇ。
智子:
 けど、呪咀とも書いたなんてあったんだよ。ですからどっちも当たりだろうね。
葉月:
 なんだいそりゃ、まったく困ったことだねぇ。
智子:
 うん、そうなんだよ。。
葉月:
 けどね智子ちゃん、“書いた”だろ?つまりは過去の表現じゃないのかい?
智子:
 あ、そっか。
葉月:
 だから、やっぱり正しいのは呪詛ってすべきなんじゃないかな。
智子:
 うんうん、そうだねおばさん。ありがとう。
葉月:
 それにしても……呪詛なんて言葉についてあんまりあれこれ口にしたくないねえ。
智子:
 あははは、それもそうだね。

★『しゅっしょしんたい(出処進退⇔出所進退)』
智子:
 正しくは出処進退ですね。出処とは人の進退を表すのです。
長月:
 …………。
智子:
 えっと、ご理解いただけました?
長月:
 ……ああ。
智子:
 ならよかったです。ええと、他に質問とかりますか?
長月:
 …………。
智子:
 あの……。
長月:
 ……いや。
智子:
 そ、そうですか。
長月:
 …………。
智子:
 ……(相変わらず点々が多いなぁ)

★『しゅと(首都⇔主都)』
智子:
 正しくは首都ですね。
如月:
 主要な都市、とはまた違う位置づけだって言いたいのね。でも首ってどういうことかしら。 もしかして重要な首の皮一枚で国が支えられて……あらあら大変、そうなるとそこを攻撃されて 殲滅でもさせられたらもうその国はお終いってわけよね。そうならないためにも……一体何ができるかしら。 やっぱり特殊防御装置発動よね。スイッチ一つでポン。まるで全自動食器洗い機みたいに。 そうなると私達ったら洗われちゃう?綺麗になるんだったらいいんだけど、 考え方まで洗われちゃうとそれは困るわよねぇ。ああでも進んだ国ってそういうことかもしれないわね。 すべての民衆を先導していくためには考えを一つに。世界を一つにって言うけど、 ということは地球をすっぽり覆う巨大なバリアがあって、皆一心に日々何か影響を受けさせられているのかしら。 大変!智子ちゃん、いつの間にか私達とんでもないことに巻き込まれているわ!
智子:
 ……えーと、トンデモ妄想はいいですから。おほん。元首がそこにいるから首都、と覚えましょう。
如月:
 落ち着いてる場合じゃないわ。まずは準備運動……そうそう、深呼吸よ深呼吸。 でも、空気中にウイルスなんて散らばっているとそれこそ思う壺にはまっちゃうわね。 なんてこと、八方塞ってこのことを言うのね。所詮私達は支配者の掌で踊る人形。 そう、操り人形なのよ。何度も操り主を殺したいと思っても、愛しちゃってるから殺せない。 哀しいは、とても哀しいの。ああ、誰か私達を救ってくれないかしら……。
智子:
 さ、さあてと、それじゃあこの辺で終わりに……。
如月:
 そうだわ!いた、いたじゃない。こんな身近に。ねえ智子ちゃん?
智子:
 はい?あたし、ですか?
如月:
 ええ、ええ、そうよ、そう。智子ちゃんさえいればどんな力だって恐く無いわ。 だって智子ちゃんは商店街で唯一の地球を救うために生まれたヒーロー……いえ、女の子だからヒロインね。 魔法とか使っちゃったりして。呪文を唱える姿とか可愛いいんでしょうね、きっと。 ねえねえ智子ちゃん、ちょっと使ってみせてよ。愛のマジカルダンス。日頃隠れて練習してるのよね?ね?
智子:
 してません!それにあたしは魔法も使えませんしヒロインでもありません!

★『しゅのうかいだん(首脳会談⇔主脳会談)』
智子:
 正しくは首脳会談ですね。中心人物、首脳さんの会談ですから。
師走:
 そのまんまじゃないか智子ちゃん。
智子:
 ええ、そのまんまですけど。
師走:
 なんかこう、ひねりとかないのかい?
智子:
 あってもどうもなりませんよ。
師走:
 ううーん……。
智子:
 うなってもどうもなりませんからね。

★『しゅはん(主犯⇔首犯)』
智子:
 正しくは主犯ですね。犯罪の主たる実行者、ということです。
睦月:
 なるほど、こりゃ納得だね。
智子:
 うわあい、ありがとうございます。
睦月:
 ……。
智子:
 ……? どうしたんですか?
睦月:
 いや、あまりにあっさりで終わっちゃってよさそうだから、ちょっと言葉に詰まってね。
智子:
 そ、そうなんですか。でも……。
睦月:
 でも?
智子:
 そんな無言の睦月さんも素敵です♪
睦月:
 は、はは……ありがと。

★『じゅよう(需要⇔需用)』
智子:
 正しくは需要ですね。必要なんですよ、っていうことです。
皐月:
 これはわかりやすいわね〜。
智子:
 でも需用っていうのもあるんですよ。
皐月:
 あら?そうなのぉ〜?
智子:
 こちらは、用途に応じている……っていう類の言葉ですけどね。
皐月:
 なるほどぉ、こっちは用途なんですよ、っていうことなのね〜。
智子:
 はい、そうです。
皐月:
 うーん、どっちも正解だったらどうして並べて紹介したのぉ〜?
智子:
 まぁ、そこはお約束ってことで。
皐月:
 お約束ぅ〜?
智子:
 はい、はい、そうなんです。あまり、気にしないでくださいね。
皐月:
 分かったわぁ〜、さばとちゃん〜。
智子:
 う、え、ええ……(こっちも気にしない……っと……)

★『じゅれい(樹齢⇔樹令)』
智子:
 正しくは樹齢ですね。齢(よわい)、ってことです。
極月:
 いひひひひ、なるほどねぇ。
智子:
 ところで……。
極月:
 あたしの年は企業秘密だよ? いひひひひ。
智子:
 やっぱり、そうですか。
極月:
 そうだよ。逆に、智子ちゃんの年を尋ねても答えられないだろう?
智子:
 はい? あたしは13歳ですけど?
極月:
 いひひひひ、果たしてそうなのかねぇ?
智子:
 え? それってどういう……。
極月:
 いひひひひ。
智子:
 ……。

★『じゅわき(受話器⇔受話機)』
智子:
 正しくは受話器ですね。器械、つまり道具、小物の部分です。
霜月:
 ほうほうほう、そういう事かい。
智子:
 納得していただけました?
霜月:
 全体じゃなく一部、だから器ってわけだな。
智子:
 まぁそんなところです。
霜月:
 そういう智子ちゃんの器に乾杯だな。
智子:
 か、乾杯?
霜月:
 とりあえず受話器型の……
智子:
 いえ、いいです。
霜月:
 冗談だよ。がっはっは。
智子:
 はあ。

★『しゅんえい(俊英⇔俊鋭)』
智子:
 正しくは俊英ですね。能力や才能などが優れている人です。
卯月:
 うん? つまり?
智子:
 というわけで、英、才能がほかよりすぐれている人、というわけです。
卯月:
 おおなるほど、そうだね、うんうん。
智子:
 卯月さんも優れてるんですよね?
卯月:
 何をもって優れているかは相対的に考えるべきだと思うがね。実質私は妻より優れている所などほとんど無いのだよ。
智子:
 はあ。えっと、それじゃあ奥さんと比べてこれは勝っている、という点はあったりします?
卯月:
 服のセンス、とでも言っておこうかね。ただこれも個人で決めるべきものだがね。
智子:
 随分と奥ゆかしいですね。
卯月:
 そういう智子ちゃんも奥ゆかしいのではないのかね? 探偵業で勝る者は居るまいよ。
智子:
 せめて駄菓子作りの腕と言ってほしいものですけど……。
卯月:
 もしくは苦労する才能かもしれないがね。
智子:
 え……。

★『じゅんかんき(循環器⇔循還器)』
智子:
 正しくは循環器ですね。循環ですから……環、を思い浮かべてください。
水無月:
 環?
智子:
 わ、です。わ。
水無月:
 なるほどな、わ、の折り紙を要求してるわけだな?
智子:
 いえ、そういうわけでは……。
水無月:
 けどなぁ、七夕でいくらでも作ってるから新鮮味がねえなあ。
智子:
 はあ。
水無月:
 そうか! 循環器の折り紙だな!
智子:
 違いますって!

★『じゅんしん(純真⇔純心)』
智子:
 正しくは純真ですね。……って、純心って変換もされちゃいますね。
弥生:
 あら、純真の意味を考えればよろしいのではなくて?
智子:
 えっと、そうですね。純真とは、うそを言ったり 人を疑ったりする気持が全く無い様子です。
弥生:
 つまりは、真なる気持ちという事ですわね。
智子:
 そういうことですね。
弥生:
 だったら、心と表すのではなく、純真なる心、という表現と繋げるのがいいと思いますわ。
智子:
 あ、はい、そうですね、そうです。
弥生:
 真、を忘れてはいけませんわよ、ま・こ・と。
智子:
 ありがとうございます。
弥生:
 うふふふ、純真な智子ちゃんからお礼を言われるとくすぐったいですわ。
智子:
 そんな、あたしは純真だなんて……。
弥生:
 いいえ。真っ正直に苦労と解説に立ち向かうその姿は、純真そのものですわ。
智子:
 はいっ(……って、褒められてるのかな、これ……)

戻る