<第一集>書き間違いやすい語
★『かいわい(界隈⇔界猥)』
智子:
正しくは界隈ですね。卑猥じゃないですよ!
極月:
いひひひひ、なるほどねぇ。…ところで、解説と関係ないんだけどさ。
智子:
なんですか?
極月:
某所みたく鍵カッコつきにしないのかい?いひひひひ。
智子:
いや、あたしに言われても困るんですけど…。
★『かえだま(替え玉⇔代え玉)』
智子:
正しくは替え玉ですね。代えと違うってのは、代理じゃないってことです。
皐月:
どういうことなのぉ〜?
智子:
替え玉ってのは、その人ずばりじゃないんです。微妙に誤魔化している代わりの人とは違うのです。
皐月:
うう〜ん、よくわかんないわぁ〜…。
智子:
…じゃあ、直に覚えるってことで。
皐月:
えええ〜?さぼっちゃだめよさいこちゃん。
智子:
だぁ〜れがサイコですかー!
皐月:
だからさいこちゃんが〜。
智子:
ええーん、二度言わないでくださいー!
★『がかい(瓦解⇔瓦壊)』
智子:
正しくは瓦解ですね。壊れるんじゃなくて、解けるとイメージしてください。
菊月:
意味が、瓦(カワラ)が一枚落ちた勢いで、ほかの物もがらがらと落ちるという事からですね。
智子:
ええ。全体の組織がめちゃくちゃに壊れること、なんてあるから紛らわしいんですが。
菊月:
だからイメージ、なのですね。
智子:
そうですね。それに変換すればすぐに出るし!
菊月:
そういうことは言ってはならないと思いますが…。
智子:
…すいません。
★『かくう(架空⇔仮空)』
智子:
正しくは架空ですね。空中に架け渡すことという意味を考えれば、間違えないかと。
卯月:
しかしなかなかこれは正確には覚えきれないかもしれないな。
智子:
そう、ですねぇ。“仮”って漢字の影響は大きいですよね。
卯月:
だからこそ、架け渡す、というものをイメージしなければいけないね。
智子:
ええ、そうですとも。
卯月:
架空となるものが現実へ繋がる、というイメージに…。
智子:
は、あ…えっ、と…。
卯月:
ん?どうしたのかね?
智子:
い、いえ(卯月さんって結構ロマンチストなのかな)
★『かくさ(格差⇔各差)』
智子:
正しくは格差ですね。格付けの差、なのでこういう字なのです。
如月:
なるほどねぇ、格付けねぇ。つまりはランキングね。そういう番組が最近はやってるみたいだけど、
どうして皆順序をなんでも付けたがるのかしらねえ。私が商売の元にしているお花って、
そりゃあ綺麗とかってあるけれども、どれが一番なんてのはその人の好みにもよるものなのにね。
スポーツとかで数字の結果として表れるものはたしかに一番とかつけやすいけれども、
そうじゃないのに一番二番なんて意味あるのかしら。だいたい一番二番ってその時点で数字使ってるじゃない?
数字で一番二番が決められないものに数字を使って一番二番を表そうなんて少しおかしいと思うのよね。
そういえば智子ちゃんのところは飴がメインだけれどもどうかしら?やっぱり一番二番ってあるのかしら?
智子:
そう、ですねぇ。たしかにそれは…
如月:
無いと私は信じたいのよね。あってもそりゃいいかもしれないけどね。当店の一押しです!ってね。
そうねぇ、飴業界も近頃は厳しいと思うからそれくらいのカチカチが必要なのかもしれないわね。
大変な世の中だわぁ。だいたい、なんでもかんでも順番付けようって感覚が間違ってるのよ。
順序をつけられないものでも順序をつける。一番にはそれなりの評価。最下位にはそれなりの罰、なんて、
人間的にあまりにも心が狭くない?曖昧には曖昧で済ませるべきよさっていうものがあるんだから、
そこも評価してほしいのよねぇ。ところで私はたしか商店街で何かの一番だったと思うんだけど…なんだったかしら?
でもその一番もあてにならないと思うのよねえ。ただの噂でしかなかったし…。
智子:
…喋り度、ですよ。
如月:
え?でも…
智子:
間違いありません!
★『かくさく(画策⇔画作)』
智子:
正しくは画策ですね。策を画く、ということでどうでしょう。
睦月:
うんうん、いいんじゃないかな。直接でわかりやすい。
智子:
えへへ、ありがとうございます。
睦月:
智子ちゃんは最近画策なんてしたことあるかな?
智子:
え〜?そんなことありませんよぉ。睦月さんの前ですから。
睦月:
…どういうこと?
智子:
そのままの意味です!えへへ…。
睦月:
そ、そう…。
★『かくしん(確信⇔確心)』
智子:
正しくは確信ですね。確固たる信念、これっきゃないですよ。
長月:
………。
智子:
あの、長月さん?
長月:
………。
智子:
…いいですよね?
長月:
…ああ。
智子:
そ、それではこれにて〜。
★『かくせい(覚醒⇔覚生)』
智子:
正しくは覚醒ですね。覚める、醒める。この辺がポイントかと思われます。
皐月:
なるほどね〜。私も覚醒してみたいわ〜。
智子:
皐月さんが覚醒したら…ちゃんと普通の名前で呼んでくれるようになるかしら…?
皐月:
ん?どうしたの〜?
智子:
い、いえ、なんでもありません。
皐月:
そ〜お?思いつめすぎるのはよくないわよ、ととこちゃん〜。
智子:
…皐月さん、やっぱり覚醒しましょう!何がなんでも!!
皐月:
い、いきなりどうしたの〜?
★『がくふ(楽譜⇔楽符)』
智子:
正しくは楽譜ですね。符号ではなくて、譜面ですから。
神無月:
そういえば、この商店街には音楽に長けてる人をあまり見かけない気がするけど…。
智子:
ちょっと神無月さん、なんて失礼なことを!睦月さんを忘れてませんか!?む・つ・き、さんを!
神無月:
あ、そうだったね。たしか智子ちゃんは以前彼女が作曲したものを聴いたとか言ってたっけ。
智子:
そうです!なのにそんな睦月さんを忘れるなんて…商店街の風上にも置けない人ですね!
神無月:
そ、そんなに怒らなくても…。そ、そうだ、実は楽器に関する手品があってね、それで…
智子:
結構です!しばらく手品なんて見たくありません!!
神無月:
そ、そんなあ…。
★『かごうぶつ(化合物⇔加合物)』
智子:
正しくは化合物ですね。化学の話を思い出してください。
菊月:
これはこれは、私にぴったりの内容ですね。
智子:
そうですね。菊月さんは薬剤師さんでしたし。
菊月:
そうです。日々危険な…いやいや、不思議な…いやいや、神秘的な薬と暮らしています。
智子:
…あの、なんですって?
菊月:
日々よき薬を作ろうと努力しているのですよ。
智子:
怪しいとかいかがわしいって意味合いの言葉出てきませんでしたか?
菊月:
これは意外ですね。薬は百薬の長なのですよ?
智子:
い、いや、それは言葉が違いますよ…。
菊月:
そうですね。百薬といわずとも薬は薬でした。
智子:
は、はあ…。
★『かこん(禍根⇔禍恨)』
智子:
正しくは禍根ですね。災いの起こる元、つまりは根なのです!
師走:
うん、さすがだね!智子ちゃんはいつ見ても貫禄があるなあ。
智子:
あ、ああ、どうも(来たわね。ある意味災いの元…)
師走:
ひどいなあ智子ちゃん。実は僕を災いだとか思ってるでしょ?
智子:
ぎくっ…。な、なんのことでしょう?
師走:
ぎくってなんなのさ。ぎくって。
智子:
そ、それは、その…ぎ、ぎっくり腰が…なんつって…。
師走:
ああそうか。智子ちゃんも歳だってことだよねぇ。気をつけてよ。
智子:
そ、そうですそう。あはははは。
師走:
ははははは。
智子:
…って!あたしはまだ13歳です!!
師走:
自分で言ったくせに…。
★『かじ(鍛冶⇔鍛治)』
智子:
正しくは鍛冶ですね。冶という漢字には、金属をとかして鋳物を作ったり吹き分けたりするという意味があるんです。
弥生:
あら?どこが違うのかしら?
智子:
よおく見てください。さんずいじゃあないでしょう?
弥生:
あらまあ!へええ〜、こんな違いがあったなんて気付きませんでしたわ。
智子:
えへへ、そうでしょうそうでしょう。
弥生:
こんな所に着目するなんてさすが智子ちゃんですわ。将来はよいお姑さんになるでしょうね。
智子:
いえいえそんな…って、なんでお姑さんなんですか?
弥生:
細かいところによく気が付くじゃありませんか。
智子:
それならそれでお嫁さんとかって言ってほしく思いますけど…。
★『かしゃく(呵責⇔可責)』
智子:
正しくは呵責ですね。責め苦しむ…厳しく咎める…口へんがポイントですよ。
水無月:
へえなるほどな。口、か…。
智子:
そうです。
水無月:
ところで文月さんは今まで良心の呵責にさいなまれたことは?
智子:
あまりそういう難しいのは…。
水無月:
話すことで楽になることもあるんだぜ。たとえば先祖代々の貴重な飴を独り占めしちまったとか。
智子:
あたしはそんなことしません。
水無月:
くぅーっ、そんな飴があったら是非俺も欲しかったもんだがなあ。まあ食べちまったもんはしょうがないやな。
智子:
だからあたしはそんなことしませんってば!
★『かしょくのてん(華燭の典⇔華飾の典)』
智子:
正しくは華燭の典ですね。華やかなともしびという意味ですので。
睦月:
これは他人の結婚式を祝って言う言葉なんだよね。
智子:
ええそうです。睦月さんが結婚される時には、それはもう盛大にお祝いしますね。
睦月:
ははは。私みたいなのを好いてくれる男性はなかなかいないと思うよ。
智子:
そんなことないと思いますけどねえ…。
睦月:
ま、本当にそんな時がきたら祝ってくれたら嬉しいよ。
智子:
そりゃあもう…はっ!?
睦月:
どうしたの?
智子:
あ、あの、あたしが祝うってことはあたしが結婚するんじゃなくって、その…。
睦月:
いや、そりゃそうだろ。私の結婚式なんだし。おかしな事言うなあ。
智子:
い、いえ、それはそうなんですが…うああああー!
睦月:
さ、智子ちゃん?
★『がしんしょうたん(臥薪嘗胆⇔臥新嘗胆)』
智子:
正しくは臥薪嘗胆ですね。故事成語です。薪、が重要なんですよ。
皐月:
どうして薪なのぉ〜?
智子:
それは、昔々ですね…
皐月:
あっ、そうか。わかったわ〜。
智子:
はい?
皐月:
薪の上で寝て、心を忘れないようにっていうあれね〜?
智子:
え、ええ、そうだと思いますが…。
皐月:
あ、でも…。
智子:
はい?
皐月:
あたしが言うあれ、って何かしら〜?
智子:
………。
★『かたがみ(型紙⇔形紙)』
智子:
正しくは型紙ですね。形じゃなくって、型をとるための紙ということで。
水無月:
おおっと待った待った文月さん。折り紙が趣味の俺に任せてくれー!
智子:
は、はあ…。でももう解説終わりましたけど?
水無月:
なんだってー?駄目だ駄目だそんな一言で終わっちゃあ。ちっともイカしてないぜ?
智子:
そういわれても…。
水無月:
終わったというのならしょうがねえ。だがそこをあえて!俺が折り紙で華を添えよう!!
智子:
は、はあ…。
水無月:
まずはいくぜ。某忍者が得意とした冷蔵庫…!!
智子:
…終わりましょう。
水無月:
は?何言ってんだ、まだまだこれから…
智子:
だから終わりです!!
★『かちく(家畜⇔家蓄)』
智子:
正しくは家畜ですね。蓄えじゃなくって畜産ですよー。
葉月:
うーん、それはそうなんだけど、他にたとえはないかねえ?
智子:
蓄えるっていう意味合いと、動物を飼うっていう意味合いですから、これより他は無いかと。
葉月:
ふうむ…。けどそのまんまだよねぇ。
智子:
はあ、まあ…。
葉月:
それはそれとして…この商店街って肉屋さんが無いよねぇ…。
智子:
は、はあ…。
葉月:
…なんてね、実はあるんだけどね。
智子:
はい?
★『かっこ(括弧⇔括孤)』
智子:
正しくは括弧ですね。円弧の弧、ですからね。孤独の孤、じゃありませんよ。
極月:
円弧かい…。これまた数学的でいいねえ。
智子:
以前算数で習ったんですよ。円周率は3.141592…。
極月:
おやおや、そんな話はまた今度で構わないよ。あたしはついていけないからねえ、いひひひひ。
智子:
またまたあ、そんなそぶりしながらも実は極月さんってば頭がいいんでしょ?
極月:
なぜそう思うんだい?
智子:
妖しい雰囲気の人は、えてしてそういう頭をもっているもんですからね。
極月:
…そうかねえ、そういうもんかねえ…うーん…。
智子:
あ、あれっ、悩んじゃった?
★『がっしゅうこく(合衆国⇔合州国)』
智子:
正しくは合衆国ですね。意味からして間違えやすいかもしれませんが…。
皐月:
ねえねえととこちゃん。合衆国ってどういう意味なのぉ〜?
智子:
…えっとですね、自治権を持ったいくつかの州の連合体として構成されている国家の称、です。
皐月:
えぇ〜?州の連合体なのに、合州国じゃないのぉ〜?
智子:
はいそうなんですよ。だから間違えないように覚えてくださいね。
皐月:
でもそれまたどうしてなのぉ〜?
智子:
えーっと、それは…。
皐月:
わかった、何か言えない事情があるとかなのね〜?
智子:
そうではないでしょうけど…。
皐月:
そしてそれをみとこちゃんが握っているとか?さっすがね〜。
智子:
…うう、握ってません。っていうかみとこでもととこでもありません〜!
皐月:
なんで〜?
智子:
なんででもです!
★『かつぼう(渇望⇔喝望)』
智子:
正しくは渇望ですね。喝!じゃありませんよ、渇くという字がポイントなのです。
如月:
わかったわ、喉の渇きから水を求めてやまない様子からきてるということなのね。そりゃそうよねぇ、沙漠を彷徨ってる時なんか
オアシスの待ち遠しいことといったらないわよねー。私はお花やさんだから花も求めてやまないけどね。
そう、お花も渇きを癒すために水を欲するものなのよ。でも自然に生えてる場合って人が水をあげることなんて
ないわよねぇー。となると、自然に降ってくるのは雨、そう雨よねー。雨といえば智子ちゃんちは飴やさんだったわね。
あらあら、お花は雨を求めるって、これって私が智子ちゃんを求めて訪ねてゆくなんていうたとえになってないかしら?
うんきっとそうだわ。最近智子ちゃんを恋しく思ってた気がするのよねー。だから遠慮なく遊びにゆくわね〜。
とはいえ遊びに行ったところで何をすればいいのかしら…智子ちゃんの年齢だと私の趣味と合うものなんて
限られてるかもしれないし…となればやっぱりおしゃべりよね。たくさん喋ってたくさん一緒にいれば、
共通点もたくさん見つかってあれやこれやと遊べるものね。ごめんね智子ちゃん、気付かなくて。
私これからもっともっとお喋りしにゆくわね。
智子:
…結構です。
如月:
結構なの〜?だったら遠慮なく行くしかないわね。ああ、智子ちゃんがそこまで渇望していたなんて…
あらあら、偶然にも今回の言葉が出てきちゃったわー。やっぱり智子ちゃんてお話上手よね、私にそういう言葉を
気付かせるなんて、なかなか出来ることじゃないわー。こうなったら色んな人にこれを試して…いえいえ、試して
るんだったわね。みなの反応はどうかしら?きっと唸ってる人とか多いんでしょうねぇ。
それで智子ちゃんの何気ない術中にはまってることに後で気付かされて…あらあら、そうしたら智子ちゃん、
ちょっとねたまれたりしないかしら?嫉妬されると商売もしにくくなるでしょうねえ。
そのうち商売敵も現れて…まあ大変。そんなことになったら皆で応援しないとね。
あらあら、そうなったらますます智子ちゃんの味方がたくさんよねぇ。さっすが智子ちゃんだわー。
智子:
も、もう終わりましょう、ね?
如月:
何を終わるのー?だめよ、まだ解説するべき言葉はたくさん残ってるんだから。こんな途中で弱音はいちゃだめよ。
なんといってもこの間違い言葉ってまだか行に入ったばかりだしね。どんどんやらないと、いつまで経っても終わらないわー。
でもさすがに智子ちゃんも疲れちゃうわよねぇ、ずうっとやってると。そうだわ、いつか私が司会を替わってあげるわね。
私だけじゃなく色んな人にやってもらいましょ。うん、そうしましょう。まず誰がいいかしら?
智子:
と、とりあえず今回はこの辺で終わりです…。
★『かひ(可否⇔可非)』
智子:
正しくは可否ですね。可決、否決、この二つを思い浮かべれば分かりやすいですよ。
卯月:
それはすなわち、審判を下すという意味かね?
智子:
まあ…そうですね。
卯月:
なるほど、いい解説だ。今後もきっちりと頼むよ。
智子:
は、はあ…(何がきっちり?)
★『かふちょう(家父長⇔家夫長)』
智子:
正しくは家父長ですね。夫じゃなくって、父!これがポイントです。
卯月:
ちなみに私の家には子供が居ない。それでも家父長となるかね?
智子:
えっと…うーんと…。
卯月:
いや、いい。変なことを聞いてしまったね。忘れてくれたまえ。
智子:
は、はあ…。
卯月:
しかしだ、実は私では妻の方が立場が上なのだよ。料理では右に出るものはいまい。
智子:
そうなんですか?
卯月:
そういえば智子ちゃんはまだ口にしたことはなかったのだったな。よし、いつか招待するとしよう。
智子:
はあ、ありがとうございます。
卯月:
ふふふ、妻の作る料理は最高だぞ。楽しみにしていたまえ。
智子:
どうも…(うー、ひょっとして奥さん自慢されただけ?)
★『かへい(貨幣⇔貨弊)』
智子:
正しくは貨幣ですね。疲弊の方じゃありませんからねー。
水無月:
………(ぽんっ)
智子:
あ、納得していただけましたか?
水無月:
………(こくこく)
智子:
…あのぅ、何か喋ってくれます?人まねしてないで…。
水無月:
………(ふるふる)
智子:
別にいいですけど…。商店街内じゃないと通用しないと思いますよ。
水無月:
………(もちろんそのつもりだ、と頷く)
智子:
しかも誰でもできそうなそのモノマネ。ちっともイカしてないと思います。
水無月:
!!(ぐさぁ、何かが刺さり、ずずーんと落ち込む)
智子:
………(やれやれ)
★『かほう(果報⇔佳報)』
智子:
正しくは果報ですね。結果の“果”を思ってくださいね。
弥生:
因果、でもよろしいんじゃありませんの?
智子:
ええ、もちろんそれでもいいですよ。
弥生:
ところで、どうして佳という字と間違えるんですの?
智子:
佳、という字には、“よい”という意味が含まれてますからね。
弥生:
なるほど。果報は寝て待て、という事と混同しやすいという事ですのね。
智子:
そうです、そういう事です。
弥生:
最近智子ちゃんは果報はありまして?
智子:
いえ、これと言っては…。
弥生:
そうですの…。いつかいいことがあるといいですわね。
智子:
そ、そうですね…(何、なんの話?)
★『がまん(我慢⇔我漫)』
智子:
正しくは我慢ですね。人の心に関わってるため、りっしんべんがポイントです!
睦月:
一発にまとめちゃったなあ、智子ちゃんには敵わないよ。
智子:
ああっすいません!睦月さんの出番を作っておくべきでした!
睦月:
いいよ、別に。私はただ相手として来ているだけだしね。
智子:
そんな、我慢は良くないですよ?ほら、何かこう…。
睦月:
いや、いいって…。
智子:
そ、そうですか、そうですよね。ああ、ううう…。
睦月:
…我慢してるのは智子ちゃんの方じゃ?
★『がりょうてんせい(画竜点睛⇔画竜点晴)』
智子:
正しくは画竜点睛ですね。晴れじゃありません、睛。すなわち…
神無月:
目、という事だね。竜を描いて最後に瞳を書き加えたらその竜が…
智子:
天に昇ってしまった。そんな故事から成った語なんですよね、これは。だから…
神無月:
画竜点睛を欠く、というのは、大事な最後の仕上げが欠けているという事。つまり…
智子:
…って、つまりも何もそういう事ですってば。
神無月:
ああそうだね。ごめんごめん、失敗しちゃったよ。
智子:
いえ。たまにはこんな解説も面白いですよね。
神無月:
ちゃんと会話できてこそ成り立つものだけどね。手品が加わればもっといいんだけどなあ。
智子:
神無月さんってほんとそればっかりですね…。
神無月:
しょうがないよ。手品好きなんだから。
智子:
好きって限度を超えてる気がしなくもないですけど…。
★『かんがい(感慨⇔感概)』
智子:
正しくは感慨ですね。きへんじゃなくてりっしんべんです!
霜月:
似たようなことをつい最近やってなかったかい?
智子:
いいじゃないですか。分かりやすいんですから。
霜月:
ま、ずばり見た目がそれだけの違いだけどな。
智子:
そうそう。
霜月:
じゃあ…他に言い方をつけるとしたら何だ?
智子:
概ねじゃなくって…って事ですか?
霜月:
ああ、まあそういう風になるかなあ。
智子:
でもやっぱりずばりの違いだけでもいいと思いますよ。
霜月:
それもそうだな…。
★『かんき(喚起⇔換起)』
智子:
正しくは喚起ですね。呼び起こす、すなわち声ですからくちへん、です。
長月:
…なるほど。
智子:
さて、他にコメントはありますか?
長月:
…ああ。
智子:
そうですか。…では、何と?
長月:
………。
智子:
………。
長月:
………。
智子:
………。
長月:
…いや、
智子:
は?
長月:
ない。
智子:
………。
★『かんきょう(環境⇔還境)』
智子:
正しくは環境ですね。周囲を取り巻く“環”をイメージしてください。
皐月:
なるほどなるほど〜。つまりわっかということなのね〜。
智子:
ええ、そういう事です。…どういう事ですか?
皐月:
ええ〜?今わわこちゃんが言ったじゃないの〜。
智子:
…そ、そうですね。…ところで、皐月さんってどういう環境で育ったんですか?
皐月:
ええ〜?果物屋だけど〜?
智子:
なんかこう、別世界を味わったとかあるんじゃないんですか?
皐月:
まさか〜。あたしはあたしよ〜。
智子:
はあ、まあそうなんですが…。
皐月:
も〜う、くわわちゃんって変ね〜。
智子:
………(変なのは皐月さんだと物凄く思いますけど…)
皐月:
どうしたの〜?
智子:
なんでもありません!
★『かんげい(歓迎⇔勧迎)』
智子:
正しくは歓迎ですね。歓び、と覚えておきましょう。
師走:
人を迎えることを喜ぶ、ってことだね!さすが智子ちゃんだ。
智子:
うーん…どっちかって言えば、歓んで迎える、って事ですけどね。
師走:
…違うの?
智子:
違うとまでは言いませんけどね。
師走:
そうかぁ、奥が深いなあ…探偵の為せる技…。
智子:
いえ、違いますから。
師走:
うっ、やっぱり違ったのか…がーん…。
智子:
あのぅ…もしもしぃ?
★『かんげん(還元⇔環元)』
智子:
正しくは還元ですね。つい最近言ったかもしれませんが、“環”です。
極月:
環、なんて一文字で果たして片付くかねえ…いひひひひ。
智子:
…大丈夫ですよ、多分。
極月:
ま、漢字ってのは人が作ったもんだ。だからイメージは大事だね。
智子:
そうですそう。
極月:
果たして智子ちゃんのイメージはどこまでくらいつけるかね?いひひひひ。
智子:
………。
★『かんこ(歓呼⇔歓乎)』
智子:
正しくは歓呼ですね。声を出して呼ぶ、のですよ。
師走:
さーとーこーちゃーん!
智子:
うわっ!…な、なんですか…。
師走:
さーとーこーちゃーん!
智子:
だから、なんですか!
師走:
…つれないなあ、呼ぶっていうから呼んでみたのに。
智子:
あ、ああ、そういう事ですか…。…って、少しは前振りしてくださいよ。
師走:
ああごめんごめん。じゃあ呼ぶよ。さーとーこーちゃーん!
智子:
ってえ!そういうことじゃなくってー!!
★『かんこつだったい(換骨奪胎⇔換骨脱体)』
智子:
正しくは換骨奪胎ですね。うわ、難しそう…とりあえず、奪うってのがポイントでしょうか。
弥生:
これはある種作品ものに触れていないとなかなか聞く事はありませんわね。
智子:
そ、そうですね。
弥生:
奪う、がポイント…うーん、胎の字を考えてもよろしかったんじゃありません?
智子:
どういうことでしょう?
弥生:
換骨奪胎の元は…新たな可能性が宿っているものを持っている…のような。
智子:
は、はあ…?
弥生:
でもちょっと強引かもしれませんわね。やっぱり奪取を見るのがわかりやすいですわね。
智子:
で、ですよね。
弥生:
ところで、この字から医学的物象を想像なされた方、お気をつけあそばせ。
智子:
………。
弥生:
どうなさいましたの?
智子:
なんでも…ないです…。
弥生:
えーと…もちろん智子ちゃんはご存知ですわよね?換骨奪胎。解説なさってるんですもの。
智子:
は、はい。焼き直しのことですよね?
弥生:
うーん、そういうわけではないんですけど…。勘違いなさってません?
智子:
あ、はは、は…。
★『かんしょうちたい(緩衝地帯⇔干渉地帯)』
智子:
正しくは緩衝地帯ですね。二つの対立するものの衝突を和らげる…という意味合いです。
霜月:
ほうほう、なかなかダイナミックな言葉だな。さぞかし大変だろう…。
智子:
何がですか?
霜月:
対立するものの衝突なんて…うーん、こりゃ重荷だなあ。
智子:
(よくわかんないけど…)えっと、たとえば商店街にそんな存在はいますか?
霜月:
そりゃあ智子ちゃんを置いて他にいないだろうよ。
智子:
そ、そうですか?
霜月:
おしゃべりと無口の二人を同時に相手できるのはスゴイと思うぜ。
智子:
それは何か違ってると思いますが…。
霜月:
それになんつったって、智子ちゃんは苦労人だしな。
智子:
…ほっといてください。
★『かんじょがくしょう(緩徐楽章⇔緩除楽章)』
智子:
正しくは緩徐楽章ですね。ゆるやかな様子、というわけで…除いちゃだめです!
卯月:
つまりは、例外を投げてはならないというわけだね?
智子:
れ、例外?
卯月:
おっと、違ったか。そうだな…取り除いてはならない…ふむ、そういうことか。
智子:
あ、あの…。
卯月:
いや失敬。どうも勘違いをしていたようでね、見逃してくれたまえ。
智子:
は、はあ、それは構いませんけど。
卯月:
しかし…楽章というのならば音楽がらみだから…睦月さんに来てもらえばよかったんじゃないのかね?
智子:
え!?あ、いえ、あ、でも、うー…。
卯月:
智子ちゃんは睦月さんのこととなると目の色が変わるね。
智子:
は、はあ、すいません。
卯月:
まあ、構わないのだけどね。若いのはいいことだ。
智子:
…?
★『かんせい(歓声⇔観声)』
智子:
正しくは歓声ですね。観てる声ではありません…歓びの声なのです。
菊月:
なるほど…観客の声と混同しがちですが、言われてみればその通りですね。
智子:
あ、納得されました?
菊月:
それはもう。
智子:
それは何よりです。
菊月:
折角なので歓声でも上げてみましょうか?
智子:
え?
菊月:
い、いえ何でもありません。
智子:
はあ、そうですか。
菊月:
ふう、慣れないことは口にするべきではありませんね…。
智子:
はい?
★『かんせん(汗腺⇔汗線)』
智子:
正しくは汗腺ですね。身体に関することなので、にくづき、なのです。
霜月:
ほうほう、なるほどな。
智子:
霜月さんは汗をよくかいてるのですぐ分かるんじゃないんですか?
霜月:
それとこれとは別だが…まあなんだ、実際に汗線ってどんな線だって思うわな、普通。
智子:
そうですよね。
霜月:
汗をたどってできた一本線…なんてな。
智子:
どんな線ですか…。まぁ、だからこそ、どんな線だって思うわけですよね。
★『かんぜんちょうあく(勧善懲悪⇔完全懲悪)』
智子:
正しくは勧善懲悪ですね。良い行いを勧め、悪いことを懲らしめる。だからです。
水無月:
おおおおおっと!痛烈にイカしてるねえ!!
智子:
水無月さん…それは使い方おかしくないですか?
水無月:
いいねいいねえ。俺はこういうの大好きだねえ。
智子:
あの、聞いてます?
水無月:
智子ちゃんも悪い奴らを懲らしめるんだろうねえ。まさにニューヒロイン!
智子:
あの…。
水無月:
いや、ニューってわけじゃねえよな。前から居るし…となると、オールドヒロイン?
智子:
ちょっと!オールドなんて言葉使わないでください!
水無月:
だよなあ。じゃあヤングヒロインでどうだい。
智子:
…まあそれなら。
水無月:
ところで、さっき俺にたいして何か呼んでなかったっけか?
智子:
…もぅいいです。
★『かんだかい(甲高い⇔感高い)』
智子:
正しくは甲高いですね。声の調子がいいってことですが…これは悩むなあ…。
葉月:
どうしたんだい、智子ちゃんが珍しいねえ。
智子:
おばさん、あたしだって悩むことくらいあるよ。
葉月:
そりゃそうだね、ごめんね。さて…まず甲の意味を見てみようか。
智子:
うん。…ああそっか、邦楽で甲って1オクターブ高いって意味なんだね。
葉月:
そうみたいだね…だから、甲高い、ってことなんだろうね。
智子:
なるほどなるほど、おばさんありがとう。
★『かんちがい(勘違い⇔感違い)』
智子:
正しくは勘違いですね。思い違いなのですが…勘、です、勘。
皐月:
う〜ん、もうちょっと他に言い方はないかしら〜?
智子:
いいじゃないですか、勘で。ねえ。
皐月:
そうねえ〜。あたしって勘違い多いからこれで丁度いいのかもね〜。
智子:
…何がですか?
皐月:
さむこちゃんの事をしととちゃんって言ったりするしね〜。
智子:
…自覚してるならきっちりしましょうよ。
皐月:
でもねえ〜。しょうがないのよね〜…どうしてかしらね〜…。ねえかぼすちゃん?
智子:
知りません!
★『がんちく(含蓄⇔含畜)』
智子:
正しくは含蓄ですね。蓄え、を意識しましょう。
極月:
奥深いということはそういうことだからねえ、いひひひひ。
智子:
ところで、極月さんのその笑いには何か深い意味があったりしますか?
極月:
おやおやおやおや、そんなわけないじゃないか。いひひひひ。
智子:
では、しょっちゅう出してるそれはただの癖なんですよね?
極月:
まあそういうことだよ。でも智子ちゃんだってね…。
智子:
…あたしが何か?
極月:
いや…やめておくよいひひひひ…。
智子:
気になるじゃないですか…。
★『かんちょう(間諜⇔間牒)』
智子:
正しくは間諜ですね。これはスパイのことです。だから、謀を行うってことで…。
如月:
あらあらあらあら!驚きだわ、この商店街にスパイがいたなんて…。一体何を探りにきたのかしらねえ?
なんて、実は既に心当たりがあるのよ。聞きたい?ねえ聞きたい?そうよねえ、聞きたいに決まってるわねえ。
でも実はそうやって話している事柄をスパイに知られたら命が危うくなっちゃうわねえ。
どうしましょう、やっぱりやめにしようかしら。ううん、大丈夫よね。だってここは空の下。
屋根裏部屋に潜んでいる人物とかいたりしないわよね。あ、でも床下に居たりするかもしれないわね。
でもこの下は床じゃなくって道路だから、道路下ってことになるのかしら?
あらあら大変、スパイってアスファルトの中で機会をうかがってたりするのかしら。苦労するわねえ、スパイも。
いくらなんでも道路の下でスパイなんて、衣食住を考えると全然割に合わないわよねえ。
第一息ができないわ。あ、でも下水道とかあったわね。地下世界は実は広かったりして…ああー、やっぱり心配だわ。
そうか、謎が解けたわ。地底人ね。きっとそうよ。地下に住んでるんだから地底人に間違いなし!
あ、でもそんな地底人が智子ちゃんの何をスパイするのかしら…ああっ!喋ってしまったわね…。
そう、実はそうなの。智子ちゃんのことをきっと探りにきたスパイ…。
何を探りにきたかは…ああ、さすがにこれ以上は危険ね。やめておくわ。
ああごめんね智子ちゃん。私がついうっかり口を滑らせてしまったために命を狙われる羽目に…。
智子:
…あの、別にそう気にしてませんから、はい。
如月:
あらあらあら、ダメよそんな強気なこと言ってちゃあ。智子ちゃんは命を狙われてしまうの。
でもそこへ救世主が…あ、でも智子ちゃんって今恋人さん居たかしら?うーん私の記憶では居なかったような…。
智子:
はい!!もういいから終わってください!!
如月:
あれっ?ひょっとしてスパイが探りにきた目的って…
智子:
違います!それ以前にスパイなんてこの街には居ません!!
★『かんてつ(貫徹⇔完徹)』
智子:
正しくは貫徹ですね。完全に徹夜するんじゃなくって、徹底的に貫き通す!ですからね。
睦月:
初志貫徹という言葉があるからな…。うんいい言葉だ。
智子:
ですよね〜。
睦月:
途中で意志を曲げる奴は私は嫌いだからね。でも智子ちゃんはしっかりやってる、偉いよ。
智子:
いえいえ、そんなそんな。
睦月:
今後も頑張って、解説もね。
智子:
う、は、はい…。
★『かんにんぶくろ(堪忍袋⇔勘忍袋)』
智子:
正しくは堪忍袋ですね。勘じゃなくって、堪えるんですから。
師走:
同じ“かん”と読む中でのわずかな違いってわけだね?
智子:
わずかかどうかは判断しかねますけど…そういうことですね。
師走:
ところで智子ちゃんは堪忍袋が相当大きいんだろうね。
智子:
そんな事ありませんよ。それにあたしはまだまだ子供ですから。
師走:
子供がどうこうってのは関係ないよ。でも…大きくってのはなかなか難しいだろうねえ。
智子:
ええそうですね…(色々悩みの種もありますし…)
師走:
ん?どうしたの?
智子:
いえ、何でもないです。
★『かんねん(観念⇔感念)』
智子:
正しくは観念ですね。固定観念、という言葉を考えるといいでしょう。
菊月:
意味としては…長い間経験して積もってきた事柄が観点を固定してしまう…という類ですか。
智子:
そうですね。要はものを観るという事をイメージすればいいですね。
菊月:
ふむふむ。智子さんはまだまだ観念が固まってませんからね、羨ましい限りです。
智子:
菊月さんもまだまだ柔軟じゃないんですか?
菊月:
いえ、私はもう凝り固まってます。だから薬屋なんです。
智子:
はい?
菊月:
いえ、今の発言は忘れてください…。
智子:
は、はぁ…(何を言おうとしたんだろ…)
★『かんのう(官能⇔感能)』
智子:
正しくは官能ですね。感覚機能の働きによって得られる充足感なのですが…。
皐月:
あら〜?だったら感能の方が正しくないかしら〜?
智子:
器官、の官からきてると認識すればよろしいのではないかと。
皐月:
あっ、なるほどぉ〜。さすがかかしちゃんね〜。
智子:
は?
皐月:
だからぁ、さすがかかそちゃんね〜、って。褒めてるのよ〜?
智子:
は、はぁ…(もういいや)
★『かんぺき(完璧⇔完壁)』
智子:
正しくは完璧ですね。壁じゃないですよ、璧です。
睦月:
たしかこれは故事成語からきてるんだったよね。
智子:
そう、そうです!
睦月:
昔中国で、璧を完全な形で無事持ち帰ったとかなんとか…。
智子:
はい、まさにその通りです!さっすが睦月さんですね〜。
睦月:
うろ覚えだからそう大したものでも…。
智子:
いえ!これは語源を知ってればまず間違えることは無いといういい例なのです!
睦月:
あ、そうだね。…それにしても今回はやけに元気だね?
智子:
完璧!ですからね。そして睦月さん!張り切らないわけはないですよ〜。
睦月:
………。
★『かんべん(勘弁⇔堪弁)』
智子:
正しくは勘弁ですね。我慢して耐える事につながるんじゃなくって、高所から…
師走:
うーん、そういう難しいことは勘弁してもらえないかな。もっと分かりやすいの無い?
智子:
いえ、あのう、そういわれましても…。
師走:
罪をただす、ってな事が勘という字にあったりするんだからそういうことか、とか…。
智子:
………。
師走:
どうしたの?
智子:
いえ、なんか珍しいなって。師走さんがそういう事言い出すなんて。
師走:
はっはっは、探偵たるものこれくらいは知ってなくちゃ!
智子:
探偵…?
★『かんぼう(感冒⇔寒冒)』
智子:
正しくは感冒ですね。流行性感冒、の感冒なんですよ。
菊月:
しかし、寒さなどに起因する風邪は寒冒とも書くそうですよ。
智子:
ありゃ、そうなんですか?
菊月:
ええ、そうですねぇ。さて、どうしますか?
智子:
どうしますかって…どうしたらいいと思いますか?
菊月:
字から覚えやすいと思うので特に気をつける必要も無いと私は思いますが…。
智子:
ああそうですね、ではそういうことで…(ほっ)
★『かんぽうやく(漢方薬⇔漢法薬)』
智子:
正しくは漢方薬ですね。漢土の処方の意味だそうで…だからです。
菊月:
処方箋の方ですか、ならば覚えやすいですね。
智子:
薬屋さんですから菊月さんにとっては間違えようがないですよね。
菊月:
ところがですね、智子さん…。
智子:
え…もしかして間違えることが?
菊月:
…いえ、秘密にしておきましょう。
智子:
ええっ!?ちょ、ちょっと、何かまずいことがあったんですか?
菊月:
ではそういうことで…。
智子:
うあー!気になるから教えてくださいー!
★『かんまん(緩慢⇔緩漫)』
智子:
正しくは緩慢ですね。動作が遅い、っていう事ですので…
水無月:
怠慢の慢ってことだな。漫画の漫じゃあなくて。
智子:
そうです、そういう事です。
水無月:
………。
智子:
どうしたんですか?
水無月:
何か話題につまっちまったなあ。ダメだ。
智子:
いや、まぁ、もう解説も終わりですから別に気にしなくてもいいかと。
水無月:
なにぃ?ダメだダメだそんなんじゃあ!ちっとも…
智子:
イカしてない、ですか?たまには平穏に終わりましょうよ。
水無月:
平穏!?そりゃどういう意味だ!?
★『かんもん(喚問⇔換問)』
智子:
正しくは喚問ですね。質問するって事ですから…口へんを考えてください。
如月:
それはつまりおしゃべ…
智子:
そうです!いやあ分かりやすいって、ほんっとうにいいですね。
如月:
あの、智…
智子:
それじゃあまたの機会に!では!!
★『かんゆう(勧誘⇔歓誘)』
智子:
正しくは勧誘ですね。歓迎じゃなくって…勧めるんですよ。ですから。
霜月:
それってつまりどういうことだい?
智子:
どうぞどうぞと勧めて…どうですかどうですかと誘う。はいそういうことです。
霜月:
…智子ちゃん、なんか嫌なことでもあったのかい?
智子:
どうしてですか?
霜月:
なんか解説がおざなりに思えたんだよ。
智子:
お話しましょうか?だったら是非うちへ。色々聞いてくださいよぉ。ね?ね?
霜月:
そして最後にしっかり勧誘してるし…。
★『かんれき(還暦⇔還歴)』
智子:
正しくは還暦ですね。歴史じゃなくって暦です。
極月:
ところで智子ちゃんはいつ還暦を迎えるのかねぇ?
智子:
あたしはそれにかなり遠いじゃないですか…。それより極月さんは?
極月:
あたしかい?あたしはねぇ…いひひひひ。
智子:
………。
極月:
女性に歳を聞いちゃいけないよ、いひひひひ。
智子:
自分だって聞いたくせに…。
極月:
おっと、こりゃあ一本とられたねぇ。いひひひひ。
智子:
なんだかなぁ…。
★『かんろく(貫禄⇔貫緑)』
智子:
正しくは貫禄ですね。禄っていうのが武士の給与って意味みたいですから…
卯月:
ふむ、そこからきた、という事かね。
智子:
ええ、そうだと思います。
卯月:
漢字の違いは…しめすへんといとへんだな…。
智子:
はい、そうですね。
卯月:
智子ちゃんならここで更にどういう区別をつけるかね?
智子:
え?ええっと…
卯月:
いやいや、やっぱりいい。ふむ、これくらい解説しているから貫禄があるのだな、智子ちゃんは。
智子:
どこからそういう発想に繋がるんですか…。
卯月:
それは、その悩める態度であると私は捉えるがね。
智子:
………。
★『きおうしょう(既往症⇔既応症)』
智子:
正しくは既往症ですね。過去にかかった病気という事で…
神無月:
なるほど、過ぎ去ったという事だから“往”なんだね。
智子:
その通りです。
神無月:
ところで、この商店街には医者がいないよね…。
智子:
またそういう事をおっしゃる…。
神無月:
でも心配要らないよ。まずは菊月さんがいるしね。それに僕の手品もある!
智子:
菊月さんはともかくとして、神無月さんの手品で病気が治るんですか?
神無月:
病は気から、って言うじゃない。僕の手品で、気を上げるんだ!
智子:
上げる…?
★『きおく(記憶⇔気憶)』
智子:
正しくは記憶ですね。記す、と重ねれば大丈夫でしょう。
皐月:
自分の気とごっちゃにしちゃいけないってことね〜。
智子:
ええ、そうです。
皐月:
えっとぉ、わたしの〜気が〜、たしかなら〜…。
智子:
皐月さん、それを言うなら“私の記憶が確かなら”でしょう?
皐月:
ううん〜、これはある人の真似なの〜。
智子:
へえ?
皐月:
あたしがやると〜かぶるんだって〜。えっとね〜、名前が〜…
智子:
いや、名前はいいです。
皐月:
食道経路さんだったかしら〜?珍しい名前よね〜?
智子:
は、はあ…(もうどうでもいいや)
★『きおくれ(気後れ⇔気遅れ)』
智子:
正しくは気後れですね。圧倒されて後になっちゃう…ってことで。
師走:
後になっちゃう…つまりは後をついていっちゃう…ってとこだね?
智子:
えーと、まあそんな感じです。
師走:
そうだなあ…智子ちゃんに気後れしちゃだめだよなあ…。
智子:
はい?
師走:
いやねえ、事件のことを伝える時にさ、もっとこう智子ちゃんを引っ張ってゆけるようにさ。
智子:
今も十分積極的だと思いますけど。
★『きがい(気概⇔気慨)』
智子:
正しくは気概ですね。概ね気を楽に持って困難を〜ってことで。
葉月:
気、だからといって、慨するわけじゃない、ってことだね。
智子:
ええ、はい、そうです。
葉月:
智子ちゃんも頑張って、この先の困難を乗り越えてね。
智子:
うん。おばさん、あたし頑張るからね。それにしても…。
葉月:
なんだい?
智子:
おばさん相手だと素直に終わってくれていいなーって思うよ。
葉月:
へえ…(相変わらず苦労してるのかねえ)
★『きかいたいそう(器械体操⇔機械体操)』
智子:
正しくは器械体操ですね。機械そのものの事じゃなくて、指定どおりの動き、の意です。
水無月:
なんだか区別が分かりにくいなあ。具体的にはどういう事なんだい?
智子:
具体的に、と言いますと?
水無月:
文月さんがイカした体操を見せてくれれば!
智子:
いえいえ、それこそ水無月さんがどうぞ。
水無月:
おっ、俺にやらせようってのかい?よしきた、イカした機械を見せてやるぜ!
智子:
いや、あの、機械じゃなくて体操ですけど…。
水無月:
任せな。とびっきりのメカニックな折り紙があるんだ。それを是非…
智子:
ってえ!だからそれは違いますってば!
★『きかがく(幾何学⇔幾可学)』
智子:
正しくは幾何学ですね。…頑張って覚えてください!
葉月:
ちょっと、智子ちゃん…。
智子:
うー、だってだってー…。
葉月:
難しそうだからって逃げてちゃダメだよ。幾何、から何か思い浮かばないかい?
智子:
えっと…何、って文字があるから何かの紋様は幾何学文様、とか?
葉月:
そうそう、そんな感じだよ。でも…ちょっと強引だけど…。
智子:
うー、だからやりたくなかったのにー。
★『きかん(器官⇔器管)』
智子:
正しくは器官ですね。重要なのは官という文字の意味です
長月:
…?
智子:
生物体の一定の働き、という意味なんですね。だから器官なんです。
長月:
…なるほど。
智子:
納得いただけましたか?
長月:
ああ。それから…。
智子:
はい?
長月:
酒は百薬の長。
智子:
………
長月:
…うむ。
智子:
いや、うむ、じゃなくて…。
★『ききいっぱつ(危機一髪⇔危機一発)』
智子:
正しくは危機一髪ですね。髪です、髪。
卯月:
では智子ちゃん、なぜ髪なのかね?
智子:
そもそもこの言葉が、一本の髪の毛で千鈞(キン)の重さをつり上げるような危険のたとえだからです。
卯月:
なるほど…。これは綺麗にきまったようだね。
智子:
えへへ、ありがとうございます。
卯月:
ついでと言ってはなんだが…。
智子:
あ、何か相談ですか?髪の毛のこととか?
卯月:
いや、いい…。
智子:
あれっ?
★『きぐ(危惧⇔危具)』
智子:
正しくは危惧ですね。危惧ってのが、心配するっていう意味を含んでますので…。
睦月:
なるほど、心を表すからりっしんべんを忘れないように、ということだね。
智子:
はいっ、そうです!
睦月:
わかりやすくていいね。
智子:
ええ、そりゃあもうなんたって危惧ですよ、心ですよ、はい!
睦月:
…あのさ、智子ちゃん。
智子:
はいっ!なんでしょう?
睦月:
…いや、いいよ。
智子:
はい?
★『きぐう(奇遇⇔奇偶)』
智子:
正しくは奇遇ですね。思いがけず回り逢うってことですから…。
皐月:
しんにょう、を使うってことなのよね〜。
智子:
え、ええ、そうです。
皐月:
偶像崇拝の偶じゃないってことなのよね〜。
智子:
はい、そうです。
皐月:
奇遇といえば、こうやってぴっかり子ちゃんとお話してるのも不思議な運命かもしれないわ〜。
智子:
…それ誰?
★『きけつ(帰結⇔帰決)』
智子:
正しくは帰結ですね。結論に達するってことで、結、なのです。
師走:
なるほどぉ。ところで智子ちゃん、最近俺はある事の結論に達したよ。
智子:
はあ、なんですか?
師走:
智子ちゃんの将来は探偵か刑事かどっちかだってことさ。事件解決とかって現実的な数から言って刑事の範疇だが…
智子:
あたしはどっちにもなりません!
師走:
しかし、文月探偵事務所を構えるってことで、探偵かなあと。
智子:
だから!なりませんってば!
師走:
その頃にはおじさんは助手になれるかなあ…いや、助手は悟君が適任かな?
智子:
ちょっと!勝手に結論付けないでくださいって!
★『きげん(機嫌⇔気嫌)』
智子:
正しくは機嫌ですね。機というのが人の心の働きをさしますので。
弥生:
まあ。ならどうして気ではいけないんですの?
智子:
いけないっていうかなんていうか…。
弥生:
?
智子:
えーっと、譏嫌、という言葉の変化なんだそうです。
弥生:
あらあらまあまあ、漢字がよく似てらっしゃるんですのね。
智子:
ええそうです、そうなんです。だから機なんです!
弥生:
…強調されたということは、そちらが真の理由なんですか?
智子:
…いえ、あの、そういうわけでも…。
弥生:
まぁそうなんですか…大変ですわね…。
智子:
ははは、はい…(ほんと大変だわ…)
★『きこう(紀行⇔記行)』
智子:
正しくは紀行ですね。紀行というものがそもそも旅行記という意味なので…。
如月:
あら、でもそれじゃあ説得力に欠けるんじゃないかしら?紀行という言葉そのものじゃなくて、
やっぱりここは紀という漢字そのものに焦点を当てるのがもっともな線だと思うわ。
すじみち、とし、きまり、紀元、しるす…そう、しるす、しるすね。
あらでも、しるすだと記すってのと同じになっちゃうわねえ、これは困ったわ。
となれば更に別の方向から攻めてみるべきよね。紀が使われている他の熟語を参考にして…
たとえば紀柳とか…あら、紀柳なんて単語あったかしら…これ人の名前だったわよねえたしか。
あらあら失敗失敗。でも失敗は成功のもとっていうし、次は大丈夫のはずよね。
よし智子ちゃんの番よ。私が失敗したから智子ちゃんは必ず成功するわ。
成功した暁には私は一応陰の功労者として何かお祝いがもらえるのかしら。
陰の功労者一等賞、なんちゃって。あらあらそうしたらどうしましょう。お祝いしないといけないかしら。
でもお祝いもらってお祝いをするなんて変な話よねえ。困っちゃうわ。
智子:
えっと、もういいですね?紀はとにかくそういう意味で…。
如月:
妥協しちゃうの?それはよくないわ、人生途中で諦めたら今まで何のために生きてきたか分からないじゃない。
くじけちゃダメよ智子ちゃん。私が一生懸命に応援してあげるから。
旗も振るし扇子だって持ち出しちゃうわよ。こう見えても私昔は色んな人の応援をしてきたのよ。
試合に向かう野球部の人たちに花束を渡したりして…あらっ、違うわね。優勝おめでとうだったわ。
そういや誰かの表彰をする時も私決まって花束贈呈の役目を担ってたのよねえ。懐かしいわあ。
だから今の私があるんだけどね。花って美しいものね。賞されて美しいものを手元に受け取れば、
見た目だけで心が豊かになれることうけあいよ。智子ちゃんもいつも心豊かでいてね。
そうだわ、つい先日新しい花を入荷しちゃったのよ。食虫花なんだけど、とっても綺麗な花を咲かせるの。
見てびっくり行動を観察してびっくり。きっと気に入るわ。
今後の駄菓子屋家業や探偵家業のヒントにできること間違いなし。早速持ってくるわね。
智子:
ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってください!
如月:
ああ楽しみだわ。智子ちゃんの作った駄菓子の甘い匂いにひかれてやってきた虫を捕縛する食虫花…
って、ちょっと残酷だわね。こんなことを楽しみにしちゃいけないわ。虫を捕らえる場面を愛でるんじゃなくて、
その花の姿を愛でないとね。でも、それも花の姿の一つなのよねえ。となったら平等に見ないといけないわ。
じゃないとお花がすねちゃう。花にだって心はあるのよね。いやだわ私ったら、反省反省。
さて、そんなわけだから智子ちゃんも差別なく花を愛で…
智子:
だああああ!!もういいかげん終わりにしてくださいー!!
★『きこう(気候⇔気侯)』
智子:
正しくは気候ですね。にんべんではないのです。
睦月:
そっちの侯だとどんな意味になるのかな?
智子:
侯は大名や小名ってことになっちゃうので、気候とは意味的に関係ありませんね。
睦月:
なるほど…。じゃあ候の方は?
智子:
えっとですね…「候」は五日、「気」は三候。すなわち十五日ということだそうです。
睦月:
…それが気象…みたいな意味になるんだ?
智子:
気候というのは、“ある土地の長期間にわたる気温・晴雨などの状態”だそうですので。
睦月:
へえ…。という事は気象とはまた違うの?
智子:
えっと、そうなりますね。気象というのは大気の総合的な現象なので。
睦月:
へええ…混同しちゃダメってことか…。よし、何かにつかわせてもらうよ。
智子:
えへへ、ありがとうございます。…何に使うんですか?
睦月:
音は天気をも変える!とかってね。
智子:
えっ!?
★『ぎじ(擬似⇔偽似)』
智子:
正しくは擬似ですね。にせる、まねる、っていう意味で擬なんです。
葉月:
あたしにゃどっちも同じように思えるんだけど…違うのかい?
智子:
いつわるのとにせるのとでは、なんか違わないかな?
葉月:
結果は一緒だけどね…目的が違うってことかな…。
智子:
そうです、そう、そんな感じ…だと思う…。
葉月:
…ま、厳密には難しいかもしれないね。
智子:
うう、ごめんなさいおばさん…。
葉月:
なんで謝るんだい。
智子:
なんとなく…。
★『ぎしょう(偽証⇔欺証)』
智子:
正しくは偽証ですね。偽りの証言と覚えましょう!
霜月:
ほおほおほお。で、欺きの証言ってどうして書いちゃいけないんだ?
智子:
…偽りの証言です!
霜月:
智子ちゃん?
智子:
偽りの証言です!
霜月:
…えっと、多分欺くってのは騙した後の話で、証言そのものは後に欺くからってことじゃないのか?
智子:
偽りの証言です!
霜月:
おーい智子ちゃーん。
智子:
…うぅ、そうですよねえ、多分そうです…。
霜月:
いや、何も泣かなくても…。
智子:
ごめんなさい…。
★『きしょうかち(希少価値⇔希小価値)』
智子:
正しくは希少価値ですね。少なくて珍しいのです!
極月:
そうそう、少ないといえばねえ…いひひひ。
智子:
な、なんですか?
極月:
世にも珍しいトカゲの尻尾が手に入ってねえ…。
智子:
珍しいんですか?それにトカゲの尻尾なんて何に使うんですか…。
極月:
何に使うかは企業秘密として、どう珍しいかっていうと…。
智子:
は、はあ…(あんまり聞きたくないけど)
極月:
対智子ちゃん用のホレ薬の原料にできる唯一のトカゲなのさ。いひひひひ。
智子:
………。
極月:
おや、その顔は信じてないねえ?いいよいいよ、後で睦月さんに使って…いひひひ。
智子:
ちょ、ちょっと、変なことはやめてくださいよ!?
★『きしょくまんめん(喜色満面⇔気色満面)』
智子:
正しくは喜色満面ですね。嬉しい気持ちを表すものですから。
神無月:
智子ちゃんは今嬉しい?
智子:
えっと…いきなり言われると戸惑いますね。
神無月:
じゃあ手品を!そう、見るだけで嬉しくなる手品を開発したんだ!
智子:
そ、そうですか…(それが本当ならすごいことですね)
神無月:
おや、その目は疑ってるね?ようし、だったら見せてあげよう。智子ちゃんでも嬉しくなる手品!
智子:
でも?
神無月:
いくよ!ここあるヒモに釣り下がった五円玉を見つめて…。
智子:
はい。…もしかして一万円札に変わるとか?
神無月:
あなたは嬉しくなーる嬉しくなーる…。
智子:
って催眠術ですか!
神無月:
五円を見つめてご縁ができる…なんてね。
智子:
…はあ、もういいです。なんでシャレなんですか?
神無月:
いやあ、この前僕の手品を見てくれた観客のうちの男女がその後結ばれたって葉書がきてさ、それで…
智子:
ほ、本当ですか!?
★『ぎせい(犠牲⇔犠性)』
智子:
正しくは犠牲ですね。へん、を合わせればいいですよ。
睦月:
へん、と言えば…。
智子:
はい、なんでしょう。
睦月:
私の名字の漢字は…いや日へんじゃなかったよな、忘れてくれ。
智子:
そんな!あたし睦月さんのこと忘れるなんてできません!
睦月:
いや、そういう意味じゃなくてね…。
智子:
絶対に覚えてます!未来永劫続く限り!
睦月:
いや、あの…聞いてる?
★『きせいひん(既製品⇔既成品)』
智子:
正しくは既製品ですね。前もって作られた品、つまりは既に製造された、ってことです。
師走:
どうして既に成った、じゃあダメなのかな。
智子:
品は成るっていうよりは作るものですから。
師走:
ローマは一日にして成らず、というものとは意味合いが違うってこと?
智子:
ええそうですね。実際の品物と…目標と…ということでしょうか。
師走:
なるほど!納得したよ。
智子:
それは何よりです。
師走:
納得したついでに、一つ何事件があってね…。
智子:
はい、今回はもうお終いですからね。またいらしてください。
師走:
いや智子ちゃん、ここは店じゃないだろう?
智子:
…とにかく、また今度です!
★『きせん(機先⇔気先)』
智子:
正しくは機先ですね。機会を先んじる、ということで機先です。
如月:
えっと、つまりそれは…
智子:
事の始まり、やさき。そう、機先を制することは先手をとること!
如月:
そうね、だから…
智子:
素早く行動することによって物事の主導権を握ることができます!重要なことです!
如月:
…なんだか智子ちゃんに先手をとられてばっかりだわ〜。だって…
智子:
はい!もう終わりです!
★『きたい(奇態⇔奇体)』
智子:
正しくは奇態ですね。格好、も指しますが…様子、という事で。
極月:
つまりは、状態ってことなんだね。いひひひひ。
智子:
そういうことですね。ところで…。
極月:
なんだい?いひひひひ。
智子:
極月さんのその奇妙な笑い方ってどこからきたんですか?
極月:
おやおやおやおや、そんなことを探っちゃいけないよ?いひひひひ。
智子:
そ、そうですよね、あはははは。
極月:
いひひひひひ。
智子:
あはははは…。
★『きち(機知⇔気智)』
智子:
正しくは機知ですね。その場で咄嗟にはたらく知恵ということで…
弥生:
分かりましたわ。機転をきかせた知恵、という解釈ですわね?
智子:
そう、そうですよ。
弥生:
さすが智子ちゃん。智の名を冠するだけのことはありますわね。
智子:
いや、それはあんまり関係が無いような…。
弥生:
あら、名は体を現すと言いますのよ?だから智子ちゃんは知恵たっぷりなんですわ。
智子:
いやあ、そうですか?えへへ、照れますね…。
弥生:
そんな智子ちゃんに折り入ってお願いがございますの。
智子:
は、はい?
弥生:
実は、私の大切なペンダントがなくなってしまって…是非探していただきたく…。
智子:
…それと知恵とどう関係が?
弥生:
探偵業を営んでらっしゃる智子ちゃんならですわ。
智子:
そ、そう、です、か…はは…。
★『きちょうめん(几帳面⇔几張面)』
智子:
正しくは几帳面ですね。張るじゃなくって、帳、の方です。
霜月:
お、これは帳面にきちんと書くって類のことなのかな?
智子:
えっと、几帳面とは、“器具などのかどを削り、刻み目を入れたもの”という意味だそうです。
霜月:
…どういうこった?
智子:
えっと…。
霜月:
ああ、いいや。後でまた調べておくから。
智子:
そうはいきません。えーと…そうそう、決まりに合う、ってことだからです。
霜月:
刻み目を入れてるから合うってか?…それにしても智子ちゃんは几帳面だねえ。
智子:
どうしてですか?
霜月:
わざわざ思い出そうとしてるからさ。後で調べるって言ったのに。
智子:
そうしないと解説の意味がありませんから。ひいては、このコーナーの意味が…。
霜月:
いや、まあそらそうなんだが…。
★『きてん(機転⇔気転)』
智子:
正しくは機転ですね。機敏な心の働きですから。
水無月:
けど、気転とも本当は書くそうじゃねえか。そこんとこはどうなんだい?文月さん。
智子:
はい。なので、どちらでもよいということで。
水無月:
なんだいそりゃあ…。なにかこう、イカした解決法はないのかい?
智子:
なんですかそれ…。
水無月:
たとえば、その時の気分ならば気転、そうじゃなければ機転とか。
智子:
どうイカしてるんですか、それって…。
★『きとく(奇特⇔寄篤)』
智子:
正しくは奇特ですね。特別、を意識してください。
皐月:
ねえねえ、どうしてかたっぽは寄篤なんて書かれ方してるのぉ〜?
智子:
多分、危篤とごっちゃになってしまいそうだ、ってことなんでしょうね。
皐月:
ふぅ〜ん。
智子:
ところで皐月さん。
皐月:
何かしら〜?
智子:
奇特と聞いて何を思い浮かべます?
皐月:
普通の人には行いがたいってことよね〜…だから…すわこちゃんかしら〜?
智子:
はい?
皐月:
だって、探偵業と駄菓子屋やってる女の子なんてそうそういないわよ〜?
智子:
…あ、は、はあ…(すわこってあたしのことなのね…はあ…)
★『ぎまん(欺瞞⇔偽満)』
智子:
正しくは欺瞞ですね。嘘をついて騙すってことで…
卯月:
詐欺および瞞着をイメージしろということだね。ふむふむ。
智子:
…そ、そうです、そうです、はい。
卯月:
または、偽物に満足してはいけない、ということかもしれないね。
智子:
あ、は、はあ、なるほど。
卯月:
ん?どうしたのかね、智子ちゃん。
智子:
い、いえ、なんでもないです…(あたしには難しいな…)
★『きもいり(肝煎り⇔肝入り)』
智子:
正しくは肝煎りですね。肝煎りというのが、仲間の人間関係をまとめるために骨を折ることなので…
菊月:
単に入るのではなく、煎じて、煎って…つまりは煮詰められた存在、ということですね。
智子:
えーっと…イメージ、ですけどね。
菊月:
イメージというので覚えるのもどうでしょうかね。
智子:
そりゃあたしかに、イメージで漢字が出てくれば苦労はないですけど…でも…。
菊月:
でも?
智子:
名は体をあらわすと言いますし、それと似たようなものじゃないかとあたしは思うんです。
菊月:
そうですね、そう思うのがいいのでしょうね。
★『ぎゃくたい(虐待⇔虐対)』
智子:
正しくは虐待ですね。虐げられた待遇、と考えてください。
葉月:
虐待って嫌な言葉だよねえ…。
智子:
そうだよね、おばさん。
葉月:
智子ちゃんは大丈夫かい?いじめにあったりしてないかい?
智子:
学校の話?大丈夫だよ、あたしは。
葉月:
ならいいけど…。そうだね、智子ちゃんの場合はそんな立場の人を救ってそうだね。
智子:
そんな、大袈裟だよ。それくらい強くありたいとは思うけど。
★『ぎゃくてん(逆転⇔逆点)』
智子:
正しくは逆転ですね。点がひっくりかえるじゃなくって…
霜月:
野球やなんかでよく使われてっからな。たしかに点と間違えやすいよなあ。
智子:
はい。進んだり回転する方向が反対、つまり逆になるから逆転なんです。
霜月:
おうおう、なるほどなあ。ところで智子ちゃんは逆転の発想ってやるかい?
智子:
えっと、たとえばどんなのでしょうか?
霜月:
そうだなあ…探偵業とは逆の、探偵され業ってのは?
智子:
なんですか?それ。
霜月:
つまりだ、誰かが探偵やってて、それによって調査される、ってなもんだ。
智子:
それって業って言うんですかねえ…。
★『きやすめ(気休め⇔気安め)』
智子:
正しくは気休めですね。はい、気を休めましょう。
皐月:
ねえねえ、どうして気安めと間違えるのかしら〜?
智子:
その時だけ気持ちを安心させること、が気休めですから、はい。
皐月:
ああ、なるほどそうなのねぇ〜。
智子:
はい。
皐月:
じゃあ納得したところでほけーっとしましょ〜。…ほけーっ。
智子:
ほけーっ…(って、あたしまで何やってんだろ…まあいっかあ…)
★『きゅうえん(救援⇔急援)』
智子:
正しくは救援ですね。救いの援助、ですよ〜。
弥生:
ああ、私も助けてほしいですわ。
智子:
え?何か困りごとですか?
弥生:
白馬に乗った王子様がわたくしを…。
智子:
………。
弥生:
うふふ、さすがに冗談ですわ。
智子:
は、はあ。…弥生さんって結構夢見がちなんですね?
弥生:
いえいえ、そんな事はありませんわよ。ちょっと智子ちゃんを真似てみただけですわ。
智子:
ええ〜!?あたしそんな夢見る少女じゃありませんよ?
弥生:
睦月さんを見てらっしゃる瞳はまさにそれだと思うんですけれど?
智子:
う…。あ、あれは憧れの眼差しです!
★『きゅうきゅう(救急⇔急救)』
智子:
正しくは救急ですね。救いが急ぎ足でやってくる、なーんて。
師走:
そんなところに急で悪いけど智子ちゃん、事件だ!
智子:
また誰かがものを失くしたとかじゃないですかぁ?
師走:
紛失も立派な事件だよ?そんな嫌そうな声しなくても…。
智子:
しょっちゅうそれで呼ばれて、行ってみた時にはもう見つかったなんてのがいくつあったんですか!
師走:
そ、それは、そうだけど…。
智子:
今回はあたし行きませんからね。
師走:
そうか…。じゃあしょうがない、睦月にことわってくるよ。
智子:
は?今何て言いました?睦月さんが当事者なんですか?
師走:
ん、ああ。睦月が全12巻セットのベストオペラ曲集を倉庫のどこかにしまい忘れたとかで…
智子:
どうしてそれを先に言わないんですか!ああ、こんな時のためにあたしがいるのに!!
師走:
さっき智子ちゃんなくしものの事件は嫌だって…
智子:
まさに救急隊となって文月智子参ります!ええ、参らなければなりませんとも!!さあ!!
師走:
う、うん…。
★『きゅうきょ(急遽⇔急拠)』
智子:
正しくは急遽ですね。遽しく急ぐさま、という事で急遽、なのです。
水無月:
大変だ大変だ、智子ちゃん!
智子:
言ってるそばから急いでるふりしなくてもいいんですが…。
水無月:
…だめだなあ、文月さん。とりあえずノって、どうしたんですか?くらい聞かなきゃあ。
智子:
そう言われましても…。
水無月:
まあいいや、本当に大変だしな。
智子:
はい?
水無月:
実はさっきそこで如月さんが通り魔に襲われそうなとこを、神無月さんが手品で追い払ったんだ。
智子:
ええええっ!?
水無月:
いやあ、あれは凄かった。イカした手品だったぜ!!
智子:
ちょ、ちょっと、二人とも大丈夫だったんですか!?
水無月:
ああ、ぴんぴんしてるよ。いつものとおりお喋り&手品合戦に戻ったから俺は逃げてきたんだけどな。
智子:
あ、そ、そうですか…。
★『きゅうきょう(窮境⇔窮況)』
智子:
正しくは窮境ですね。苦しい立場…つまり境遇です。
極月:
境遇かい。実に興味深いねえ、いひひひひ。
智子:
どう興味深いんですか?
極月:
窮境とはいかないまでも、智子ちゃんの境遇がさ。
智子:
…別にいいじゃないですか、気にしないでください。
極月:
いやいや、両親がいなくてこうしてやってけてるってのはなかなかないよ?一目置く境遇さ、いひひひひ。
智子:
別に…あたしは望んでそうなったわけじゃありませんし。
極月:
望んで?いひひひ、そんな言葉は使っちゃいけないよ。何故なら…いや、これ以上はやめておくよ、いひひひ。
智子:
…?
★『きゅうきょく(究極⇔究局)』
智子:
正しくは究極ですね。この言葉が、余分なものや非本質的なものを段段除いて行って最後に残る本質的なもの、です。
師走:
だから?
智子:
だから、求めて求めて…その極み、ということで。
師走:
ふんふん、なるほどねえ。さすが智子ちゃんだ。
智子:
師走さんも負けてられませんよ。
師走:
何が?
智子:
極月さんと同月の名を冠している以上は、極みに含まれなくっちゃ。
師走:
はあ、そう…。でも、名前でどうこう言われてもなあ…。
★『きゅうしゅう(吸収⇔吸集)』
智子:
正しくは吸収ですね。外部から内部に収める、なのです。
皐月:
すってすって〜体内に収めるのよ〜、なのね〜?
智子:
は、はい…(って、誰の真似なんだろ?)
皐月:
さんぽちゃんは普段どんな吸収してるのぉ〜?
智子:
………。…えっと、学生ですから普段の勉強の知識とかを。
皐月:
探偵業関連はどうしてるのぉ〜?
智子:
別に勉強とかは…。
皐月:
すっごぉ〜い!じゃあどうして毎日探偵業にいそしんでられるのぉ〜?
智子:
別に…探しものくらいしかやってませんし…。
★『きゅうたいいぜん(旧態依然⇔旧体依然)』
智子:
正しくは旧態依然ですね。旧態というのが昔の状態なので、はい。
極月:
そうだねえ、昔はなかなかいいものがあったねぇ…。
智子:
極月さんって、あたしが知る限り一番年上の方ですよね?
極月:
うーん、どうかねえ…世の中見た目だけじゃないからねぇ、いひひひひ。
智子:
でも、おばあさんでしょ?
極月:
おやおや、智子ちゃんにそんな事言われたらあたしゃ立ち直れないよ。
智子:
喋り方からしてそうだと思ったんですけど…実はおばさんクラスですか?
極月:
なんだいクラスって…あたしゃ普通の占い師さ、いひひひひ。
智子:
そういうのって年齢偽証にならないと思いますが。
極月:
今回の智子ちゃんはえらく手厳しいねえ…。
★『きゅうやくせいしょ(旧約聖書⇔旧訳聖書)』
智子:
正しくは旧約聖書ですね。訳されたものってことじゃなくて、契約の約と結んでください。
弥生:
または、約束の約ですわね。
智子:
そうですね。
弥生:
ちなみに旧約聖書は、キリスト降誕以前からユダヤ教の教えを集めた聖典ですわね。
智子:
ええ、そうですね。
弥生:
そこでは、キリストすなわち救世主の出現を約束しています。
智子:
ふむふむ、だから約、と。
弥生:
そして新約聖書には、キリストを通してなされた、神の新しい契約を記されています。
智子:
ふむふむ、だから約、と。
弥生:
以上ですわ。
智子:
なるほどお…って、これじゃあ立場が逆だあ!
★『きょうあく(凶悪⇔狂悪)』
智子:
正しくは凶悪ですね。凶ってのが悪いって意味を持ってますので。
長月:
………。
智子:
納得されましたか?
長月:
…ああ。
智子:
なら結構です。
長月:
…気をつけないとね。
智子:
何にですか?…ああ、凶悪犯罪とかですか?
長月:
………。(こくり)
智子:
そうですね…でもまぁ、この町は平和ですよ。
長月:
………。
智子:
駐在さんもいらっしゃいますし。いざとなったら力持ちの長月さんが!
長月:
無理。
智子:
いや、まあ、少し冗談でしたけど、そんな即答しなくても…。
★『きょうい(脅威⇔脅異)』
智子:
正しくは脅威ですね。驚異と混同しやすいですが、威力ある者に脅かされると…
睦月:
ふんふん、なるほどね。ところで、驚異と脅威とはどう違うんだい?
智子:
前者は驚くべき素晴らしいこと、っていうやや肯定的な意味ですね。
睦月:
ふんふん。
智子:
後者は圧力によって脅かされる…やや否定的な意味ですね。
睦月:
ふんふん。
智子:
こんなところじゃないでしょうか。…覚え方としてはこういう方がいいのでは、と。
睦月:
そうだろうね、その方がいいだろうね。ふう…。
智子:
どうしたんですか?お疲れのご様子ですが。
睦月:
いやぁ、この前超人気歌手のアルバム発売があってね。あの人ごみは驚異的だったよ…。
智子:
あ、驚異…。…肯定的…っぽく…ない、ですよね…うーん…。
睦月:
智子ちゃんそこまで気にしなくても…。
★『きょうい(驚異⇔驚威)』
智子:
正しくは驚異ですね。…前回と似た感じですけど、異質なものに驚くと覚えてください。
師走:
なんだか声が投げやりに聞こえるんだけど…。
智子:
あれっ?睦月さんはどうしたんですか?
師走:
いや、今回は俺なんだけど…。
智子:
はあああああ…。がっかりです。
師走:
ちょ、ちょっと智子ちゃん、それあんまりじゃない?
智子:
だって…睦月さんじゃないし…あたしにとってそれだけで驚異です。師走さんだし…。
師走:
………。
★『きょうか(強化⇔強加)』
智子:
正しくは強化ですね。強く化ける、です。
霜月:
自慢じゃないが、俺は腕っ節が強いぜ。
智子:
霜月さんは力持ちですもんね。
霜月:
おうよ。毎日鍛えてるからな。けど…。
智子:
けど?
霜月:
重さ争いなら師走の方が重いもの扱ってるはずなのに…なんであんなに強くないんだろうな。
智子:
別に、普段から電気製品を持ち歩いてるわけじゃないのでは…。
★『ぎょうかく(仰角⇔迎角)』
智子:
正しくは仰角ですね。仰いで見る事によりできる角度、だからです。
葉月:
はあはあ、なるほどねぇ。
智子:
おばさんはあんまり仰ぎ見ることってない?
葉月:
なんだいやぶから棒に。休憩の時はしょっちゅう空を見てるよ。
智子:
空?
葉月:
ああ。今日もいい天気だなーって。
智子:
雨の日も?
葉月:
雨は雨で作物を育てる源を降らせてくれるじゃないか。いい天気だよ。
智子:
へええ…たしかにそうだよね。
★『きょうぐう(境遇⇔境寓)』
智子:
正しくは境遇ですね。環境に遇するってことで。
師走:
遇する?
智子:
えっとですね、境遇っていうのは、その人の将来を決定づけるかに見える総合的な生活状況です。
師走:
遇ってのは、出会うとか接するっていう意味だよね?
智子:
はい、そうですね。
師走:
そうか、環境に接するっていう捉え方か。
智子:
ええ、それでいいと思います。
師走:
なるほど!これでテストもばっちりだね智子ちゃん!
智子:
何のテストですか…。