≪り≫でし!
「理外の理」でし
これまた難しいんでしよ。一体何で説明するか・・・。
「離珠ちゃん、悩む必要なんて無いよ。ルーアン先生たちの能力、これでいいんじゃないかな?」
乎一郎しゃん、それはそれでまた意味が違うんでしよ。
「そう?でもさあ、命が無い物が命を持つ事が出来る、なんて正にそれじゃないかなあ?」
陽天心の事でしか。そうは言っても・・・。
「今の科学じゃあ証明できない事、となってる時点ですでにそうじゃ無い?」
まあ確かにそうでしね。あんな一瞬で命を与える事が出来るなんて正にそうでしね。
『普通の道理や常識では判断する事が難しい道理』という事でし。
「もっとも、ルーアン先生の場合それを常識的に捉えてる、という点でまた違うかも・・・。」
ちょっと乎一郎しゃん、例えを申し出たのは乎一郎しゃんじゃないでしか。
というわけで、これは難しいんでし。
「李下の冠」でし
昔々のそのまた昔。
乎一郎しゃんという多分君子なんであろう立派な人がいたでし。
立派な冠に立派な服に立派な靴に・・・立派な身なりだったでし。
その乎一郎しゃんは、瓜畑の近くを歩いていたでし。
「あっ、靴紐が・・・。」
歩いている途中で靴紐が解けてしまったので、乎一郎しゃんはかがんで直してたでし。
ごそごそごそごそ・・・
と、そこへやってきたのは瓜畑の主、シャオしゃまでし。
「はっ!あ、あれは・・・!」
瓜畑でごそごそやってる影が見えたので・・・。
「瓜どろぼうさんですね・・・許せません!来々、天陰!」
支天輪から天陰しゃんを呼び出して、乎一郎しゃんに襲わせたでし。
「うわああ!?」
天陰しゃんが向かってきてるのに気付いた乎一郎しゃんは、
大慌てで畑から逃げ出したでし。
・・・そして、なんとか逃げ切った乎一郎しゃん。息がとっても荒いでし。
「ふう、ふう、びっくりした・・・。ただ靴紐を直してただけなんだけどなあ・・・。」
やれやれ、と思いながら乎一郎しゃんが歩いていたのはとある桃の木の下だったでし。
それはそれは見事な桃の実がなっていたんでしが・・・。
こつん
「おっと、冠が・・・。」
低い枝に乎一郎しゃんが被っていた冠がぶつかってしまったでし。
いけないいけない、と乎一郎しゃんは両手を頭に伸ばして直そうとしてたんでしが・・・。
「むっ!あの者は・・・桃泥棒だな!」
桃の木の持ち主であったキリュウしゃんがその姿を発見し、短天扇を構えたでし。
「万象大乱!」
ずももももっ
道端にあった小石が大きくなり・・・。
ごろごろごろっ!
転がり出したでしー!?
「へ?・・・ええええーっ!?」
石は乎一郎しゃんを追いかけるようにどんどんどんどん・・・。
「わあああーっ!!」
もちろん乎一郎しゃんは必死に逃げ出したでし・・・。
・・・とまあ以上のように、
『他人から疑われる事はしない方がよい』という事でし。
「うう、僕何もしてないのに・・・。」
君子たるもの、こういう風に嘆く前に気をつけるべきなんでし!
「理が非になる」でし
『道理は正しくても、説明が下手だと正しい事が通用せず間違ったこととされる』という事でし。
これは離珠がよく身に染みている事なんでし・・・。
「そうかそうか。離珠、おめーもやっと自分の解説の下手さを・・・」
違うんでし!離珠の説明をきっちり納得しない皆しゃんが居るんでし!
「へ!?」
離珠は、離珠はより一層解説に力を入れると!この言葉をくり返さないためにも誓ったんでし!
「おめーなあ・・・いいかげんにしろっての・・・。」
「力んだ腕の拍子抜け」でし
これは普段からよく見かけるでしね。
とある劇の配役にて・・・。
「うおおおっしゃあああー!シャオちゃんがヒロインだあああ!!
そして俺がその相手役だあああ!!」
と、拳を勢いよく振り上げたたかししゃんだったでしが、
後々聞いてみれば、それは没になってしまったとかで・・・
たかししゃんの意気込みはどこへ行ってしまったんでしか?なんて事でし。
『折角意気込んだのに何事もなくて腕のやり場に困る』という事でし。
「抽象的だなあそれ・・・。離珠ちゃん、もっとちゃんとしたたとえはないの?」
たかししゃんにそう言われては離珠も立つ瀬が無いでしね。
ここはどーんと一発!星神王国の姫であるシャオしゃまのもとに嫁ぐたかししゃんでどうでしか?
「おおおっ!す、すごい、すごいよ!・・・けど、姫のもとに嫁ぐってなんだ?」
あれっ?違ったでしか?
「てゆーか、姫が嫁ぐんならわかるけどさ!俺は男だぜ!?」
じゃあ女装すれば問題ないでし。
「大有りだっての!・・・はあ、今のこそ本当に力まされて拍子抜けだったぜ・・・。」
ちょ、ちょっとたかししゃん、離珠は結構自信満々だったでしよ?
「はいはい、よかったね。」
たかししゃーん!
「理屈と膏薬はどこへでもつく」でし
『人をやっつけようと思えば言いがかりはどうにでもつく』という事でし。
理屈はつけようで、なんにでももっともらしい理屈がつくものでし。
・・・いいたとえが思い浮かばないので、これにておしまいとするでし。
「いやいや離珠、おめーはちっとも考えようとしねーな。」
虎賁しゃん!考えようとしないってのは随分な言い方でしね・・・どういう事でしか?
「要するに今回のは理屈を考えればいいんだろ?離珠のことわざ解説がいかに向いてないかってのを。」
むっ、それは聞き捨てならないでしね・・・。
「まず、解説っていうからにはちゃんとした説明ってのが必要だ。」
離珠が喋れないってのに文句があるんでしか?それは関係ないでしよ。
「ふふん、おいらが言いたいのはそれじゃなくて、ちゃんと説明が無いってことだ。」
ちゃんと説明が無い、でしか?そんなことあるはずがないでし。
「そうか?ただ人任せにしたり、とりあえずこういう事でこの意味だー、とか。
つまりは、屁理屈が多すぎるってことだ!」
・・・あれはあれで仕方ないんでしよ。
「なんだと?仕方ないで済ませていいと思ってんのか?絶対伝わって無いのが分かっていながら?」
それでも大丈夫なんでし!離珠がそう解説してるからには大丈夫なんでし!
「おめーそれこそ屁理屈じゃねーか。」
虎賁しゃんの文句も屁理屈でしよ。
「なにをー?」
なんでしかー?
「・・・そうやって二人してやりとりしてるのこそ屁理屈、でシュよねー、軒轅しゃん。」
こくこく
「おおっ!?長沙に軒轅!?」
いつの間に!?でし。
「利巧は馬鹿の使い者」でし
しょれは、とあるところにあるとある会社でのお話でし・・・。
「あああーっ!この書類明日までじゃないですか!どうしてまだそういうものが今出てくるんですか!」
「はあ、すみません・・・。」
「すみませんじゃありませんよ遠藤君!早く君たちのチームで仕上げてください!」
「は、はいっ。」
大声を上げたのは、いつも仕事を懸命に頑張っている出雲係長しゃん。
社内では真面目でかっこいいと、女子社員から常に熱いまなざしを受けているでし。
頭を下げていたのは乎一郎しゃん。出雲しゃんの部下で、こちらもまた真面目な社員でし。
しかし今回、乎一郎社員が期限ぎりぎりで未提出の書類がある事を告げて、それで大騒ぎになってるんでし。
「どうした、乎一郎。」
戻ってきた乎一郎しゃんに声をかけたのは太助しゃま。乎一郎しゃんの同僚でし。
「書類不備をちょっと伝えに言ったら、締め切りが明日ってんで怒鳴られちゃった。太助君、手伝ってよ?」
「えええーっ!?そんなのあったのか!ったくぅ、今日は定時にあがってシャオと夕飯食べようと思ってたのに・・・。」
「僕だってルーアン先生と・・・いいから早く仕上げようよ。ちょっとたかし君、聞こえた?
だいたいたかし君のせいなんだよ、書類不備があったのは!」
「んあー?」
慌て気味の乎一郎しゃんと太助しゃまとは対称的に、のんびりとした返事をしたのはたかししゃん。
やっぱり乎一郎しゃんと太助しゃまの同僚なんでしが、真面目な二人と違ってとことん不真面目なんでし。
「わーってるよ、そう恐い顔すんなって。」
「恐い顔くらいするよ!早く取り掛かって!」
「へいへい。」
激怒する乎一郎しゃんに、ようやくたかししゃんも作業を開始したでし。
ところが・・・作業してもしても終わらない。
他の皆はとっくに帰ったというのに、太助しゃま達はまだまだ居残りでし。
なかなか書類を仕上げるのは大変なようでし。
「どうですか遠藤君、今日中にできそうですか?」
「それが出雲係長・・・。僕と太助君の分はなんとか終わりそうなんですが・・・。」
「ふむ、野村君の部分で作業量が多すぎて難しそうなんですね?」
「はい。元々たかし君が統括で作ってた書類なんで・・・。」
やれやれ、と出雲しゃんがたかししゃんを見やると、それなりにかたかたかりかりやってるたかししゃんが。
けれどもそのスピードは、あまりにもだらだらとしたものだったでし。
「やれやれ、仕方ありませんね・・・。これが提出できないと困るわけですし、私も手伝いましょう。」
「ええっ?いいんですか?」
「いいもなにも、このままでは私だって帰れませんからね。」
見かねた出雲しゃんが、こんな申し出を!
元々出雲しゃんは自分の仕事はさっさと終わらせていたので、手伝うなんて事は可能のようでし。
「野村君野村君。」
「んー?なんだ、出雲係長か。なんですか?」
「私もそれを仕上げるのを手伝いますから、そっち半分の仕様を教えてください。」
「えっ、本当!?やった、ラッキー!!そうと決まったら早速教えるぜ、えーっとこれは・・・。」
“上司なんだからそんな言葉遣いしちゃダメだろ”と太助しゃんが心で突っ込みを入れ、
乎一郎しゃんが出雲しゃんの申し出に感謝の念を送りながら、
そんな感じで作業は更に進みだしたでし。
ちくちくちくと出雲しゃんが作業・・・する一方で、たかししゃんはやはりマイペース。
「疲れたな・・・ちょっと休憩しよーっと。」
とか言いながら、コーヒーを飲みに部屋を出て行ってしまったでし。
まぁ多少の休憩なら、と出雲しゃんはそれを見送ったんでしが・・・
10分経っても30分経っても戻ってこないでし。
果ては1時間経ってようやく戻ってきたんでし。
「いやぁ、つい休憩室で寝ちゃってさあ・・・ははは。」
特に悪びれる様子もなく、たかししゃんは席に戻ったでし。
そうこうしているうちに、結局書類の大半を出雲係長が片付けたという結果になったでし。
『利口な人が馬鹿を使うのが当たり前だが、世間にはその反対の事がある』という事でし。
出雲しゃんみたいな真面目社員が、不真面目社員の二倍も三倍も働いてしまったんでしね・・・。
と、これにて解説はおしまいでし。
「・・・なあ離珠、なんだこの話は?」
これはこれは翔子しゃんじゃないでしか。でも解説はもうおしまいでしよ。
「てゆーか聞かされてたし・・・。いやそれより、妙にリアル性ない?気のせい?」
気のせいでしよ。
「利巧貧乏馬鹿の世持ち」でし
『なまなか小利口な者は才に頼って要らない事に手を出して失敗し、貧乏になる事も多いけど、
才の足らぬ者は野心も起こさず着実に暮らすので財産を固くまもってゆくものだ』という事でし。
「・・・微妙だなあ、この言葉。」
これは翔子しゃんの意見でし。
「これを見るに、山野辺先輩は貧乏くじをひきそうですよね。」
と、いきなり失礼な発言を飛ばしているのは花織しゃんでし。
「よく言うよ。それは愛原だろ?あたしは要らない事には首をつっこまないよ。」
「しょっちゅうシャオ先輩にちょっかい出してるじゃないですか。」
「ちょっかいじゃないぞ。あたしにとってシャオは親友だからな、手助けするのは当然だろ。」
「余計なおせっかいだと思いますけどねえ。」
「ま、愛原がどう足掻いたって勝てないのは分かりきってるから、それはひがみにしか聞こえないけどな。」
「な、なんですかそれ!あたしはひがんでなんかいません!」
「そうやってすぐ反応するのは図星ってことかな?」
「違います!だいたい山野辺先輩だって!」
「あたしがなんだって?」
「・・・そうやって余裕ぶってるのは小利口の証ってことですよーだ。」
「小利口?そうじゃなくて普通に利巧だと言って欲しいもんだね。」
「自分で自分を利巧なんて言う人は、馬鹿か足りない利巧かどっちかですよ。」
「口が減らないなあ・・・そんなだからいつも七梨に迷惑がられんだよ!」
「それは目の錯覚です!」
・・・あー、いつまでも喋らせてるとちっとも終わらないのでここで切るでし。
離珠は財産についてのお話とかしてほしかったんでしが・・・。
「律儀は阿呆の唐名」でし
これはきまじめや馬鹿正直を戒める言葉で、
『真面目といえばきこえはいいけど、気が利かない所は馬鹿と少しも変わらない。
実直とは馬鹿の別名である』という事でし。
で、ふらんすって国では、
“真面目な人を警戒せよ。あらゆる時代に世界を破滅させたのは彼らだ”と言ってるそうでし。
「・・・なかなか手がこんでるな。」
「今回はそういう趣向なんだな。」
おやっ、珍しいこんびでしね。那奈しゃんに虎賁しゃんとは。
「何を言う離珠。おいらは姐さんとは結構繋がってるんだぜ。」
そうなんでしか?
「別にどこが繋がってるとか・・・」
「そりゃないぜ姐さん!」
「っていうかその表記やめろよ・・・。」
「こいつあ失礼しやした、姐さん。」
「だから!言ってるそばから!」
・・・とまぁ、生真面目な虎賁しゃんは気が利かないので馬鹿と少しも変わらない、でしね。
「・・・そういう事か?虎賁。」
「ふっふっふ。どうだ離珠、おいらの気の利いた演技・・・って違うっつーの!」
違うんでしか?目と台詞は本気だったように思えたんでしが。
「ああ、違うさ。その証拠においらは馬鹿じゃねーぞ。」
なんと、そうだったんでしか!
「その通り。ざまーみろってんだ。」
くっ、参ったでし・・・。
「はっはっは。」
「・・・なあ、なんであたしがわざわざこんな場に付き合ってんだ?」
「いやあ、たまにはって思ったんだけど・・・どう?」
「どうって言われてもなあ・・・。」
満足したでしか?
「するわけないじゃん。てゆーか解説最初の部分だけで十分だったと思うし・・・。」
「律義者の子沢山」でし
これは『真面目で一生懸命稼ぐ人には子が多い』という事でし。
それは外で遊んでこないからだという人もいるみたいでしが。
「・・・これってつまり、どういうわけ?」
「太助ぇ、それくらい察してやれよ。なあシャオ?」
「えっとぉ、那奈さん。私もあんまり意味が・・・。
お外で遊ぶとどうして子供が少なくなるんでしょうか?」
シャオしゃまシャオしゃま、子供が少なくなるなんて解説してないでしよ。
「シャオ、たとえば太助がシャオと結婚後に外で遊びまくって家に帰ってこないとどうだ?」
「寂しいです・・・。」
「そうだろそうだろ。夜なんて特に寂しくなるよな?」
「そうですね・・・。」
夜の暗闇にぽつんと取り残されるシャオしゃま・・・とっても淋しそうでし・・・。
「な、ななな、那奈姉!なんつーたとえを!!」
「で、だ。どうして子供が多くなるというとだな・・・。
太助が毎晩戻ってくるということは・・・。」
「はい。」
「その分子供を・・・」
「那奈姉ぇー!!もういい!これで解説おしまい!!な!な!」
うるさいでしねえ、太助しゃま。
「ここからがいいとこなんだから邪魔すんなっての。」
「これ以上は規制に引っかかると思う!」
「そんな憶測で語るな。」
「そうですよ太助様。でも太助様がそこまでおしまいと仰るのなら・・・。」
と、今回はちょっと遠慮がちなシャオしゃまによって、お開きになってしまったでし。
まったくもって残念でしねえ・・・。
「立錐の地無し」でし
ぴぴいぃーっ!!!!
羽林軍しゃん、ここに全員集合してくだしゃいっ!!!
離珠が指示したのは一つのソファーの上でし。
四十五人も居る羽林軍しゃん達は、当然ぎゅうぎゅうの状態で・・・。
というわけで!!
『こみあってびっしりとつまりほんのわずかな余地も無い』という事でし。
さあ羽林軍しゃん、解散するでし!!
えっ?つまり過ぎて解散でき無い?そ、それはこまったでしねえ・・・。
と、そこへ兆度良い具合にキリュウしゃんが!!!
「離珠殿に羽林軍殿・・・何をしているんだ?」
キリュウしゃん!!万象大乱でソファーをおっきくしてくだしゃい!!
懸命になって絵で伝える事十分、ようやくキリュウしゃんは理解してくれたでし。
「まったく、もう少し別のもので試せば良いものを・・・。万象大乱。」
しょいーんとソファーがおっきくなって、羽林軍しゃんがバラバラと。
ふう、良かったでし。ことわざの解説も楽じゃないでしねえ。
「・・・離珠殿、ちゃんと羽林軍殿に礼を言った方が良いぞ。」
も、もちろんでしよ!羽林軍しゃん、どうもありがとうでしっ。
深深と御礼を言うと、すっと皆しゃんの表情が和らいだでし。
どうやら怒ってたみたいでし。危なかったでし・・・。
「なるほど・・・。確かにことわざの解説は大変だな、別の意味で。」
ま、まあそういう事でし。
「理に負けて非に勝て」でし
『道理の上では言い負かされても、実際に利益を得た方がよい』という事でし。
正しい事はもうからないもののようでし。
「どんなたとえが出るのかすっごく楽しみ!ねえゆかりん?」
「あんたねえ、明日はテストだってのにまたのんきに・・・。」
ここは一年三組。花織しゃんがいるクラスでし。
実際に離珠は、ことわざどおりの体験をするためにここにやってきたんでし!
さあ花織しゃん、離珠を言い負かして離珠に利益を・・・
「ゆかりんったらそればっかり!他に言う事はないの!?」
「あんたが真面目に勉強しないからでしょ!友達の赤点を心配して当然じゃない!」
「あたしは大丈夫だもん!」
「どっからそんな自信がくるのよ。ぜんっぜん勉強してないじゃない!」
「あたしは夢見る乙女・・・そう、乙女はテストなんかより大切なものがあるの!」
「そんな屁理屈言ってんじゃないの!明日は赤点とったら一週間、放課後居残り決定なんだよ!?」
「ええっ!?そ、そうなの?でも大丈夫・・・」
「大丈夫じゃなーい!もしも赤点とったら一週間棒に振るのよ?乙女がそれでいいの!?」
「・・・よくない。」
「そ。じゃあ勉強しなくちゃね?」
「うん・・・。うーん、ゆかりんに言い負かされちゃったぁ。あははは。」
笑いながら花織しゃんは勉強に戻り・・・。
後に聞いた話では、なんとか無事に赤点は免れて、放課後太助しゃまのとこに遊びにゆけたそうでし。
めでたしめでたし・・・
って!離珠の解説になってないじゃないでしか!
「まあまあ離珠ちゃん、落ち着きなさいって。」
おや、花織しゃんのお友達の熱美しゃんでしね。どうしたんでしか?
「どうしたもこうしたも・・・出番が無かったから今登場したの。」
それは残念でし。もうおしまいでし。
「あ、あははは、それは分かってるんだけどね・・・。」
でも離珠をなだめにきてくれてありがとうでし。さすがなだめ役では一番でしね。
「はあ・・・あたしってこんな役回りばっか・・・。」
「流言は智者に止まる」でし
『智者は、噂を聞いてもつまらぬ事は人には語らないので、
風評もそこまでくるととまってしまうものである』という事でし。
智者といえばこの人!宮内出雲しゃんでし!!
ふぁさぁ
「ふっ、またまた離珠さん。本当のことを・・・。」
そしてもう一人!キリュウしゃんでし!!
「・・・・・。」
無口でしねえ、キリュウしゃんは。
しゃてしゃて、今回は二人に流言絡みの体験談を語ってもらうでし。
「よろしいですか?ではまいりましょう。
あれはそう、私がいつものように境内の掃除をしていたある日の事でした。
今日も平和だ・・・などと天を見上げ感謝していると、何やら大慌てで誰かがやってきます。
それは花織さんでした。息が切れるほどにわざわざ走ってこられたのがなんとも不思議でしたが、
私は彼女を落ち着かせた後に尋ねたのでした。どうしたのですか?と。
そしたら花織さんは・・・」
「宮内殿。」
だああ、話を区切っちゃだめでしよキリュウしゃん。
「どうかしましたか?」
「実は私はシャオ殿とルーアン殿と、明日には精霊界に帰らなければならなくてな・・・。
そろそろ終わりにしたいのだが。」
・・・そ、そんなの初耳でし!しかも随分唐突でし!!
「・・・それは本当ですか?」
「本当だ。」
「試練に誓えますか?」
「・・・どういう意味だ?」
「つまり、試練を賭けのリスクとしても自信があるくらいに本当ですか?という事ですよ。」
「・・・いや、気にしないでくれ。ただの冗談だ。」
「やはり・・・。」
ふえっ!?じょ、冗談なんでしか!?
「試してみたんですよね?本当に私で流言が止まるかどうかを。」
「こういうのは話を聞くより実際に試す方が早い。しかし、疑問の投げ方が腑に落ちないが・・・。」
「ああ、試練に誓うってとこですか?これくらいの余裕とジョークは必要でしょう。」
「そうなのか?」
なるほど・・・離珠の知らないところで、なかなかのもんでしね。
けど、なんだか離珠はほったらかしにされた気分でしが・・・。
「流言蜚語」でし
ぴんぽーん、ぴんぽーん!!
激しく呼び鈴がなってるでし。
朝食を済ませて皆でリビングでくつろいでいたんでしが、
太助しゃまが立ち上がって行ったでし。
「たく、日曜の朝っぱから誰だよ・・・。」
不機嫌そうに太助しゃまが出迎えると、そこにはなんとも恐い表情のみなしゃんが。
「太助!!シャオちゃんが精霊界に帰るんだって!?」
「はあ?」
たかししゃんが唐突にこんな事を。と、他の皆しゃんも口々にそれに続いたでし。
「精霊界で非常召集がかけられたんでしょう!?シャオ先輩に対して!!」
「それでルーアン先生も一緒に帰っちゃうって!!僕そんなのやだ!!」
「キリュウも呼ばれて・・・なんで突然なんだよ!!」
「これが今生の別れとなると、町中の噂になってますよ!!!」
五人が太助しゃまに詰め寄ってるでし!!
リビングで聞いていたシャオしゃまは・・・
「大変、私精霊界に帰らないと・・・。」
シャオしゃままで何を言い出すでしか。
「シャオ殿、そういうのは聞いた事が無いのだが・・・。」
「というかあまりにも唐突過ぎるような・・・。」
那奈しゃんの言う通りでし!これは訳のわからない噂でし!
皆の騒ぎにルーアンしゃんも起きてきて、懸命に説得してたでし。
「だからあ、そんな所に帰らなきゃ成らないなんて事は無いの!!」
「でもルーアン先生・・・。」
「うるさーい!!いつまでもぐだぐだ言うってんなら陽天心で吹っ飛ばすわよ!!」
とうとうルーアンしゃんが怒って、それで皆しゃんがやっと落ち着いたみたいでし。
詳しく話を聞いてみると、訳も分からずフッと出てきた噂のようで、
一体何処からどうやって広まったのかまったくわからないみたいでし。
『何処から流れてきたか誰が言ったかわからない根も葉もないいいかげんな噂』という事でし。
皆しゃんも妙な噂には気をつけようでし。
「まったくよ。日曜の朝っぱらから起こされて・・・。」
あと離珠は非常に気になる事があるんでし。
「何よ。」
手前の言葉で出雲しゃんが出ておきながらこんな騒ぎが・・・はぅーっでし・・・。
「・・・自業自得でしょ。」
しかも流言の内容がどっちも一緒でし・・・。
「ダメダメね・・・。」
「流星多ければひでり続く」でし
「そうだったの?僕そんな事初めて聞いたよ。」
「ということは、日照りが続けばたくさん願い事が言えるのね!」
「花織ちゃん、いくらなんでもそんな・・・。」
乎一郎しゃん、花織しゃん、実はこういう事らしいんでし。
『ひでりの時には空気が済んでいるので、流星を見る機会が多い』という事でし。
「なるほど。そういう事なら納得がいくかもね。」
「それはともかく、日照り乞いをしなきゃあ!」
ひ、日照り乞いでしか?
「雨乞いの類似?でも花織ちゃん、どうやってするつもりなの?」
「出雲さんなら、神主だから知ってるはずですよ!
早速教えてもらいに行こ〜っと!!」
ああっ、行ってしまったでし!
「さすが行動が早いね。」
一緒に行って出雲しゃんから何かご馳走してもらおうと思ってたんでしが・・・。
「離珠ちゃんってば・・・。」
その後聞いた話によると、日照り乞いは教えてもらえなかったようでし。
「なんで知らないんですか出雲さん。期待してたのに・・・。」
「いや、そう言われましても・・・。」
「竜頭蛇尾」でし
今は放課後、学校の校庭でしっ。
これからたかししゃんに一キロ走ってもらうでし!!
しかも叫びながらでし!さあたかししゃん!!
「ふっ、甘いな離珠ちゃん。俺の熱き魂はたかだか一キロ程度で燃え尽きたりしないのさ。
しっかり見ていてくれよ。うおおおお!!!!!!!!」
言うなり走り出したたかししゃん。ばっちり叫んでいて、五月蝿いくらいでし・・・。
「うおおおおお!!!!!」
近所迷惑にならないといいでしがねえ・・・。
「なあ離珠。何であたしが付き合わされてんだ?」
翔子しゃんしか残っていなかったからでし。
「たく、とっとと家に帰っておけば良かった。
おかげであの五月蝿い声をきかなければ成らなくなったし。」
「うおおおおおお!!!!!」
「たく、元気だけはある奴だな・・・。」
それがたかししゃんのすごい所でしよ。
ちなみに、校庭を何周かして一キロ、という計算でし。
・・・ところが、あと一周という所でたかししゃんがへばってきたみたいでし。
「うおおお・・・おお!!」
「声が途切れてきたな。つーか、よく枯れないもんだ。」
むむ、そろそろ終わりでしね。
「うお、お、お・・・はあ、はあ・・・。」
息切れしながらたかししゃんがゴール。
バタンと地面に仰向けになる姿は、まさしく、でし。
『最初は盛んで立派だけれど、終わりになると勢いがなくなってしまう』という事でし。
「別に野村じゃなくても、誰でもそうなると思うんだけど。」
たかししゃんだからこそ、こういう御約束の結果になるんでしよ。
「ま、確かに適役だよな。」
「はあ、はあ、くっそー・・・・。」
「龍と心得た蛙子」でし
秀才だと思っていた我が子がやっぱり凡才であっていしゃしゃかがっかり。
『見込み違い』という事でし。
「・・・離珠、いしゃしゃかってなんだ?・・・あ、“いささか”って事か。」
虎賁しゃん、分かってるなら聞かないでくだしゃい。
「おいらじゃなきゃわからない時点でアウトだぞこれ。」
虎賁しゃんがこうやって分かって通訳してくれてるから大丈夫なんでしよ。
「なんつういいかげんな・・・。まったく、見込み違いもいいとこだな。」
なんでしかしょれは?たとえのつもりでしか?離珠をたとえに出しゅのはお門違いってもんでしよ?
「くっ・・・。じゃあどうすんだよ、たとえ。」
今回は無しでし。あっ、でも・・・。
「でも、なんだ?」
たとえば花織しゃんに子供ができたとしゅるでし。
花織しゃんのことだから、きっとその子を秀才だと思うに違いない弟子。
「それまたなんでだ?」
花織しゃんは乙女ちっくだからでし。
「どういう根拠だ・・・。」
けれども、やっぱり凡才でがっかりしゅると思うでし。
「あーはいはい、じゃあそういう事で終わりな。」
ちょっと虎賁しゃん!投げやりでしよ!!
「龍の髭を蟻がねらう」でし
これは一つ離珠が体をはるでし!キリュウしゃんかくごー!!
「なっ!!?」
食事中に不意をついてキリュウしゃんの背中にもぐりこむ!
そしてくすぐりで攻撃でし!
「は、はははは!!離珠殿、やめ・・・くすぐったいー!!」
こちょこちょこちょ〜。
「ははははははは!!」
数分後、息も絶え絶えのキリュウしゃんの服から這い出す離珠・・・
って、これじゃあ反対の意味じゃないでしか!
ううむ・・・。そうでし、シャオしゃまに・・・
「離珠!!」
びくうっ!
「食事中になんて事するの!!今度という今度はもう許しませんからね!!!」
どどーん!!!
と、シャオしゃまの激しい雷が離珠に落ちたでし・・・。
『弱い者が身のほども考えず無鉄砲な勇気を振るって強い者に立ち向かう』という事でし。
やっぱり離珠はシャオしゃまに勝てないでしね。
「離珠殿、くすぐられた私の立場は一体・・・。」
「龍の髭を撫で虎の尾を踏む」でし
『非常な危険をおかすことの例え』という事でし。
離珠とキリュウしゃんの、非常な危険をおかしてみようコーナー!
「うむ!という訳で主殿、翔子殿の家に、真夜中に侵入してもらいたい。」
「それ犯罪だって。」
おやあ?太助しゃま、怖気づいちゃったんでしか?
「それならば仕方ない。ではこうしよう。
今夜シャオ殿をおそっちゃうという事に。」
「別に怖気づいたんじゃなくて・・・って、シャオをおそうー!?」
き、キリュウしゃん、えらく大胆な発言でしね。
「必ず実行してもらうからな。ちなみに今回は那奈殿も協力してくれるから・・・」
「ふざけんなー!!おれはやらないからなー!!」
ううむ・・・太助しゃまの言う事ももっともな気がするでし。
「まったく・・・。ならばこういうのはどうだ?
ルーアン殿と同じくらいの量の食事をとる!」
「それこそ無理だって・・・。
それより、なんかだんだんテーマから外れてないか?」
「柳眉」でし
『柳の葉のように細く美しいまゆ』という事でし。
「柳ということでキリュウちゃんだな!!」
「いや、その、私は・・・。」
たかししゃん!安易に連れてきては駄目でし!!
「何を今更。キリュウちゃんの名前にも入ってる、完璧だ!!」
「だから、その、私は・・・。」
もう、名前だけで決めてたらキリが無いでしよ!?
「名前でどうこうなんて滅多にないさ!というか折角の出番じゃないか!!」
「の、野村殿、私は・・・。」
名前についてのことわざもあるんでし!だからキリが無いんでしよ!!
「たまにはいいじゃないか!俺の名前はひらがなだ。だからこだわるんだ!!」
「あの、その、私は・・・。」
でも言われてみるとキリュウしゃんのまゆも美しいでしね。
「だろ?だからこれでいいんだ!!」
「うう、私は、私は・・・。」
ではこれにて終わりでし!
「よーし、ばっちりだな!」
「二人とも、話を聞いてくれ・・・。」
「龍馬の躓き」でし
龍という事で、軒轅しゃんの登場でし〜!
ごん!
おおっと、登場した途端に軒轅しゃんは壁に激突してしまったでし!
人を乗せて飛ぶ軒轅しゃんでもこんな失敗が!!
『ずば抜けた馬でも時にはつまずく事があるもので、
どんなに賢い人にも失敗がある事の例え』という事でし。
じと〜っ・・・
な、なんでしか軒轅しゃんその目は・・・。
「だれですか!こんな所に壁なんか作ったのは!!」
遠くからシャオしゃまの声が。
け、軒轅しゃん、それは離珠が作ったんじゃな・・・
きゃー!でしー!!
「粒々辛苦」でし
『一つ一つがどれも苦労の結果できたもの』という事でし。
どんなことでも、仕上げるまでにたゆまぬ努力が必要なんでし!
そう、たとえば離珠のことわざ解説一つ一つも・・・。
「そうだな、努力が必要だ。もちろん試練の一つ一つも。」
キリュウしゃんでしか。むう、今回は離珠のみで終わらせるつもりだったんでしが・・・。
「いや、こういう事は試練のひらめきに繋がるというもの。
試練と名の付くものは数多くあるが、どれもこれも中途半端では意味を成さない。
そう、すべてを、一つ一つを、越えてゆく事に意味があるのだ。」
ふむふむ・・・って、離珠の出番がなくなっちゃうじゃないでしかあ。
「では実際に一つ試練をこしらえてみよう。」
キリュウしゃんってばー。
「万象大乱によって大きくなった薄皮饅頭に対して、食べることによって穴をあけ・・・」
って、それはそれで何の試練でしか!
でも離珠は是非挑戦しちゃうでし〜♪
「猟ある猫は爪を隠す」でし
『実力のある者ほど、平生はそれをあらわさないことのたとえ』という事でし。
たとえば虎賁しゃんを見るでし!
球技の星神であり球技が得意なくせに普段全然それを見せびらかせないでし!
現に今も!
「そりゃあ今は食事中だしな・・・。」
「虎賁、美味しい?」
「はい月天様!そりゃあもう。」
「たくさん食べてね。」
「はい!」
・・・・・・。
「けれど珍しいな。虎ぼうずと食事なんて。」
「たまには虎賁と食事したいじゃないか、那奈姉。」
「太助はどういうつもりか知らないが・・・まあいいけどな。」
「そうそう。アバウトでいいじゃないか。」
・・・えーと、たとえば離珠でしが、普段伝心の事を・・・
「なーに逃げてんだよ、離珠。おいらのツッコミが気に入らないか?
心配すんな。食事中じゃなかろうとおいらはおいらだ。」
くうう、そういう問題じゃないでしよぅ。
「良弓は張り難し」でし
身近な例では陽天心でし。
かけるものによっては大変扱いにくかったりするみたいでしが、
それを有効に使えたならまさしく色んな所で大活躍するでし!
「そ。例えば支天輪とか短天扇にかけられれば言う事無いんだけどね〜。」
ルーアンしゃん、もともとそれって無理だと思うんでしが・・・。
「不可能を可能にしてこそ慶幸日天よ!!」
意味不明でし・・・。と、とにかく!
『才能の優れた人は言いつけにたやすく従わないから使いにくいが、
使う人が良ければ立派な成績をあげる』という事でし。
「良く考えたら、シャオリンってばあんな大量の星神をよくもまあじざいに操ってるわねえ。」
はっ・・・。そっちを例えに出した方が良かったかもでし。
「守護月天だからこそ出来るんだけどね。」
そうでしけどね。
「良禽は木を撰ぶ」でし
『よい鳥は木をえらんでからとまるが、
それと同じで、賢い人は良い主人を選んで仕える』という事でし。
「将来太助ってどんな仕事をするんだろうな。」
「たかし君、そんな先の事考えても仕方ないでしょ。」
「そうだよ。俺よりたかし、お前はいったいどんな仕事をするんだよ。」
「俺か?ずばり、演歌歌手だ!!」
「・・・合ってるかもしれないけど。」
「やめて欲しい気がするな。」
「なにー!?じゃあ乎一郎に太助、お前らはどうなんだ!!」
「僕ルーアン先生のしもべー。」
「俺は・・・っておい乎一郎、本気か?」
「ぴったりだが、そんな仕事は無いと思うぞ。」
「やだなあ、冗談だよ。ルーアン先生みたいに、僕も先生になりたいな。」
「なるほど。それなら乎一郎にぴったりだよな。」
「生徒におもいっきり振り回されそうだけどな。」
「一言多いよたかし君。で、太助君は?」
「俺は・・・」
「スタントマンなんかどうだ?キリュウちゃんの試練を受けてる事だしさ。」
「あ、それいいね!凄いなあ、太助君。今から就職活動してるなんてさ。」
「おい・・・。」
というわけで太助しゃまの将来はスタントマンに決定したでし!
「勝手に決めるな!」
「まあまあ太助。」
「頑張ってね。」
「だからあ、なんで俺が!!」
「領袖」でし
星神全員集合でしー!!そして・・・!!!
「みなの代表者といえばこの儂じゃ〜!!!!!」
南極寿星しゃんの登場でし。
「とにかく一番格が上じゃからのう。儂はエライんじゃー!!!!」
「うるせーなあ・・・。離珠、とっとと終わらしちまえよ。」
わ、分かったでし。とまあそういうわけで、
『集団の中で目立つ、重要な人物、代表となる人』という事でし。
これは、えり(領)とそで(袖)は服のなかで特に人の目に付きやすい事からきてるんでし。
「ちょっとまたんか、まだワシのアピールが終わっておらんぞ!!」
だああ、もうこれにて終了でしー!!
「梁上の君子」でし
『はりの上にいる人。泥棒の事をしゃれて言う言葉』という事でし。
とある休み時間の事でし・・・。
「そこでシャオ!是非七梨の部屋に忍び込む泥棒を演じてみよう!」
「ですが翔子さん、梁がありませんわ。」
「天井裏で大丈夫だってば。そこから・・・」
「山野辺!またお前シャオに変な事を!!」
変な事というのは離珠も同感でし。
一体翔子しゃんはどんな目的でシャオしゃまを泥棒に・・・。
「お前なあ、誰かが忍び込んできた時に気配を察知する試練になるだろ?」
「なるほどっ。」
「シャオ、そこで納得するなって。上手い事言っても俺は騙されないぞ!」
強く念を押して太助しゃまは自分の席へ戻って行ったでし。
また、『ねずみ』の事もいうそうでし。
「よし、泥棒が駄目なら鼠だ。シャオ、鼠を真似てだな・・・。」
「はい。」
「くおらー!!お前さっき言った傍からやってんじゃねー!!」
話し声は太助しゃまに筒抜けだった様でし。
二度目やってきた時の太助しゃまの顔はかなり恐かったでしよ。
「蓼蟲苦きを知らず」でし
たとえばここに・・・辛い麻婆豆腐の海があったとしゅるでし!
「うわ、何それ・・・。嫌な海ねえ・・・っていうか海なの?それ」
しゃらーっぷでし!花織しゃん、余計な口は挟まないでくだしゃいでし。
こほん、しゃてしゃてしょの海に・・・花織しゃんが放り込まれたとするでし!
「えええっ!?ちょっと!か弱い乙女になんてことするの!!」
と、普通ならこんな風に嫌がるでしね。
「当たり前でしょ!!」
しかぁ〜し!これがルーアンしゃんならどうでしか!?
「そりゃあ、いくらルーアン先生でも嫌がるでしょ、普通・・・」
あの大食のルーアンしゃんなら!
“あ〜ん食べ物いっぱい〜♪”とか言ってがつがつ全てを平らげるに違いないでし!
「それってかなり偏見・・・」
『普通の常識だと嫌だと思う事でも、人によっては好きだという人もいるから、
一概には言えない』という事でし。
「・・・無理矢理まとめたわね。そんな離珠ちゃんだって・・・。」
なんでしか?
「出雲さんのお母さんお手製の薄皮饅頭の山に放り込まれたらすべてを食べつくすでしょ?」
・・・・・・。
何を言うでしか!離珠はしょんな事しないでし!
「今の間は何よ・・・。」
「両手に花」でし
えーと、これは・・・
「あ―ん、そんなのこのルーアンに決まってるじゃないの―!
た―様ったら、ルーアンと、幸せを授ける精霊、なんて一気に二つも!
しかもそれが同一人物だってんだから驚きよねー!!」
ちょっとルーアンしゃん!離珠はシャオしゃまのことを言おうとしてたのに!
「何よ、そんな恐い顔して。分かったわよ、シャオリンと、このルーアン。
これで両手に花って事よね。」
うーん、まあそれでいいでし。
『良いものを二つ同時に手に入れる』という事でし。
不幸から守ってもらって幸せを授けてもらって。これほどすごいものは無いでしよ!
「あの、離珠殿、ルーアン殿。私の立場は・・・。」
はっ、キリュウしゃん!!
「そういやキリュウの事忘れてたわねえ。ま、四人目が来るまで諦めなさい。」
「せ、せめて那奈殿と一緒に考えて・・・というのは駄目だろうか?」
・・・なんだかすごい要求をしてきたでし。
「あんたねえ、おね―様と一緒に来たって訳じゃないでしょ。」
「ルーアン殿もシャオ殿と一緒に来た訳では無いではないか。」
おおっ、鋭いでし、キリュウしゃん!
「そ、それとこれとは話が別よ!第一あんたとおね―様じゃあつりあわないわ!
あたしは、百歩譲ってシャオリンはあたしとつりあってるって認めてあげてるけど。」
「そんな・・・。」
言いすぎでしよ、ルーアンしゃん。それより百歩譲ってるなんてなんだか許せないでし!!
と、三人で言い合っているとシャオしゃまが・・・。
「あら?どうしたんですか、三人でそんな所に・・・。
・・・なるほど両手に花ですか。太助様の手が三本あれば揉めなくてもすむんですがねえ。」
「ちょっとシャオリン、本気でそれ言ってるの?あたしはそんなの見たくないんだけど・・・。」
離珠も同じでし。手が三本も生えてたら気持ち悪いでし。
「ぐすっ、シャオ殿、私は那奈殿とはつりあわぬのだろうか?」
な、いつのまにかキリュウしゃん泣いていたでし!もう、ルーアンしゃん早く謝るでしよ。
「大丈夫ですか?キリュウさん。つりあわないなんて、そんな事無いですよ。」
「そ、そうよ。さっきは言いすぎたわ。ごめんね、キリュウ。」
「・・・ありがとう。シャオ殿とルーアン殿に慰められて。
うーん、これは両手に花とは違うのだろうか・・・。」
・・・なんだか変な話になってきたでし。
キリがなくなるのでこの辺でおしまい!でし。
「遼東の豕」でし
昔々、遼河の東の地方に、たかししゃんというお百姓しゃんが住んでいたでし。
「さあてと、今日も今日とて豚の世話だ。」
ところがある日の事でし!
「たかしくん、大変だよ!頭の白い豚が生まれたよ!!」
「な、なにーっ!?」
同僚の乎一郎しゃんが慌ててやってきて、二人そろって驚き驚き。騒ぎ騒ぎ。
「こんな珍しいもの、是非ともシャオちゃ・・・シャオ姫に献上しないと!
早速行くぞ乎一郎!」
「待ってよー、たかしくーん。」
そして二人は、河向こうのシャオ姫しゃまがいるお城へ出かけたんでし。
「シャオ姫様、ここに珍しい豚を献上します!」
「侍女のルーアン様も見てください!」
二人がその豚を差し出したんでしが・・・。
「せっかくもって来ていただいて申し訳無いんですが・・・。」
「別に要らないわ。」
と、シャオしゃ・・・シャオ姫しゃまもルーアンしゃんもそっけない態度だったでし。
それを見て慌てふためくたかししゃんと乎一郎しゃんをいさめるように、
もう一人の侍女、花織しゃんがやってきたでし。
「頭が白い豚なんて、こっちじゃ珍しくもなんとも無いんですよ。
わざわざ無駄足踏んでご苦労様。さっさと家に帰って仕事に戻ったらどうですか?」
「「・・・・・・。」」
花織しゃんのきつい言葉は、二人の胸に深く突き刺さったようで、かなりショックを受けてたでし。
『世間を知らぬ者が、自分だけがえらい者だと思っていい気になる事の例え』という事でし。
とぼとぼと城を後にするたかししゃんと乎一郎しゃん。
すると、衛兵のキリュウしゃんにこう言われたんでし。
「試練だ、耐えられよ。」
それでますます落ちこんだ二人。
めでたしめでたし、でし。
「猟は鳥が教える」でし
これは試練のことだと思うんでし。
たとえば・・・。
「万象大乱。」
突如大きくなる折り鶴!
ズガガン!!
硬さも増したのか、壁に深々と突き刺さったでし。
そのきわどい所で息をついてる太助しゃま。
「あ、危ねー・・・。あと1メートルずれてたら串刺しだった・・・。」
「しかし主殿、見事に避けられるようになってきたな。」
「そりゃあ、毎回試練で色んなものを避けてるしさ。」
というわけでし!
『何事もやっているうちに自然に覚えるものだ』という事でし。
つまりは、避けるための試練を何度もこなすうちに、太助しゃまの反射神経もアップ!なんでし。
「けどこれは実は手放しでは喜べないんだ、離珠。」
むむっ!それはどうしてでしか翔子しゃん!
「たとえばシャオが“太助さま〜(はあと)”とか言いながら七梨に飛びつく!」
シャオしゃまが!?
「しかし七梨は普段の試練で鍛えられた反射神経で思わず避けてしまう!」
な、なんと!?それは一大事でし〜!!
「・・・なーんて、あるわけないって。七梨なら何もできずに抱きつかれてオシマイ、だよ。」
がくっ・・・。だったらそんなこと言い出さないでくだしゃい!
「両刃の剣」でし
「これは世間では“もろはのつるぎ”とも呼ばれてますね。」
そうでし。
「で、私がこれを解説するのですか?」
そうでし。出雲しゃんの力で是非お願いするでし。
「離珠さん、これは離珠のことわざ大辞典ですよね?」
そうでしよ。
「となると、他の人が解説することによって、そのタイトルに矛盾が生じてくるのでは?」
で、でも、それは協力してもらって、ってことでしから・・・。
「たしかに皆さんの協力の元解説をすると、楽に済むことが多いでしょう。
しかしずっとそれに頼りつづけていると、やがては悲惨な事態を招きかねません。
堂々と解説の場を取られたりしていませんか?」
うっ、言われてみると最近たしかに増えてきてるでし。
離珠に断りも無く解説をする人が・・・。
「とまあ、これを解説にしてはいかがでしょう?」
ふえっ?
「『非常に役に立つのだが、その反面大きな害を与えるおそれもあるもののたとえ』という事です。」
ああっ!言ってる傍から出雲しゃんに取られてしまったでし〜!
「なあに、今後気を付ければいいことですよ。」
はい、でし。
「両方聞いて下知をなせ」でし
昔々のそのまた昔・・・。
ある所にルーアン裁判官という、あはーんうふーんな女性裁判官がいたでし。
ある時、ルーアンしゃんが恋焦がれている太助しゃまが人を殴ったという事で訴えられ・・・
その被害者であるたかししゃんと共に法廷にやってきたでし。
「太助のやつ、俺がTシャツ自慢しただけでいきなり殴りかかってきたんだぜ?ありえねーよ!」
「あれは自慢ってレベルじゃないだろ!?俺の眼前までTシャツ持ってきて・・・しかも着たまま!」
「馬鹿やろー!あれくらいしないとお前には分からなかったからだ!
なんだよ、俺がちらっと見せたらすぐにしらけやがって!」
「当たり前だ!いちいちシャオの写真をプリントしたお手製Tシャツの話なんて聞いていられるか!」
「なんだと?だからって殴っていいってのか!?」
「なんだよ・・・。」
ガン!ガン!
またも争いに発展しそうだった時、ルーアンしゃんハンマーが鳴り響いたでし。
「はいはい、静粛に静粛に。今のではっきり分かったわ。あたしが判決出すからね!」
いきなり早い展開でしが、判決という言葉に、太助しゃまもたかししゃんもごくりと唾を飲み込んだでし。
「判決!たー様の勝ちー!」
「はぁ!?」
「ルーアン・・・。」
あからさまにあっさりとしたその言葉に、たかししゃんは目を丸くし、太助しゃまはほっとした様子だったでし。
「なんだよそれ!俺のどこが悪いって・・・。」
「だあって、あたしはたー様中心的だもーん。」
「・・・そ、そんな道理が通ってたまるか!もっと話をよく聞いて・・・」
「ええーい、あたしが善って言ったら善!悪って言ったら悪なのよー!」
・・・とまあ、非常に理不尽な理由で、法廷はお開きになってしまったでし。
『争いの善悪を決める時には、両方のいう事をよく聞いてから決めないといけない』という事でし。
両方の言う事を聞かないと不公平になる恐れがあるからでし!
結局たかししゃんは・・・太助しゃまにシャオしゃまグッズの自慢を一切してはダメという罰を申し付けられたでし。
「両方よいのは頬かむり」でし
大抵はあちら立てればこちら立たずで、両方によいものは頬かむりくらいだという事で、
『世の中には両方のどちらにもよいというものはありえない』という事でし。
「つまりはどういう事だ?」
虎賁しゃん、頬かむりをしてくだしゃいでし。
ここにばっちり用意したんでしよ!
「用意がいいこったな・・・しかもなんでおいらが・・・。」
文句言わずにやるでし!
「へえへえ。よっ・・・と、これでいいのか?」
では解説おしまいでしー。
「離珠?」
ばいばいでしー。
「っておいこら待てっての!」
なんでしか虎賁しゃん。
「こんなんじゃ、何がどういう事なのかわかんねーだろーが!」
・・・虎賁しゃんは頬かむりしてみて、どうでしか?両頬とか。
「は?そりゃあ・・・」
はい、そういう事なんでし。よかったでしね虎賁しゃん。
「っておいらまだ何も言ってねー!」
今度こそおしまいでしー。
「こらー!解説サボるなー!」
ふう、あっちを立てればこっちが立たないでしねえ。
「意味不明なこじつけすんなっての!」
「良薬口に苦し」でし
これはまさにキリュウしゃんの試練の事でしね。
せっかく成長できるチャンスなんでしが、
「好んで試練を受けようとする人はいない。」
とキリュウしゃんは言ってたでし。
『身の為になる事は、受け入れるのが難しい』という事でし。
でも太助しゃまは試練を受けつづけているでし。
これからも頑張って欲しいでしね。
「良薬口に苦し忠言耳に逆らう」でし
「離珠、何度も言ってるでしょ。無理して食器を並べるなんてしなくていいの。
お手伝いをしたいのはわかるけど、小さいのに怪我したら大変でしょ?大人しく待っててね。」
・・・と、離珠はよくシャオしゃまに注意されてしまうでし。
気をつかってくれているのは分かるんでしが、離珠はこの忠告は嫌いでし。
離珠だってお手伝いできるんでし!
『忠告はよく嫌われる』という事でし。
「いや、無理だろ。」
虎賁しゃんまで何を言うでしか!
「体格考えろよ。食器にでかでかと乗れるおめーが食器運べるわけねーだろ。」
成せば為るんでし!
「それを置いといて月天様を嫌いになるなんてお門違いもいいとこだぜ?」
えうー、離珠はシャオしゃまが嫌いなんじゃなくって、シャオしゃまが言ってる、
“小さいのに怪我したら”って辺りが嫌いなんでしー。
「・・・まあ、あれだな。」
なんでしか?
「たとえ悪すぎだな。」
・・・ぐっ、離珠は虎賁しゃんを嫌いになりそうでし。
「いや、これは忠告っつーよりはツッコミだろ・・・。」
「両雄ならび立たず」でし
太助しゃま!!今こそ、日天月天同主の危険性を教えるでし!!
「という訳で素早い通訳はおいらだ。良く聞けよ。」
「あ、ああ・・・。」
とにかく説明不用でしね。この言葉は・・・
『同じくらいの力を持つ英雄が二人同時に現れると、必ず争いが始まり、どちらかが倒れる。
強いものが二人いれば、必ずけんかになり、どちらかが負ける』という事でし。
つまり、同じくらい強いシャオしゃまとルーアンしゃん。
その二人の同主という事は!!
「まさしくこの状況に当てはまっているという事だ!」
「いや、ルーアンは後から来たんだけど・・・。」
もう、そんな細かい事を気にしちゃ駄目でしよ!!
「危機なのはかわんねーだろ?何か対策をたてねーといけねーぞ、ぼうず。」
「別に、今平和に居るからいいと思うんだけど・・・。」
そんな弱気でどうするんでしか!もしシャオしゃまが負けてしまったらどうするんでしか!
「そうだ!大食い競争なんて申し込まれたら月天様は絶対勝てねーぞ!」
「そんな競争受けて立ってどうするんだ・・・。
それより虎賁、解説役じゃなかったのか?もう一つ、キリュウの立場は・・・。」
はっ!そういえばそうでし!!
「たく、それを先に言えってんだ。ちぇ、行こうぜ、離珠。」
まったく、無駄な時間を過ごしてしまったでし。
という訳でぶつぶつと心で呟きながら太助しゃまの部屋を後に。
「・・・なんだったんだ?あの二人。」
「臨機応変」でし
ずばりシャオしゃまでしね。もう、なんて分かりやすいんでしか。
『時と場合に応じての、適当な手段や方法を用いて物事を処理する』という事でし。
というわけで終わりでし。
「離珠、もうちょっと具体的に説明しろよ。」
虎賁しゃん。もう、別にいいじゃないでしか・・・。
ええと、お買い物に行く時は八穀しゃんと一緒。
壊れたお家を直したりするのに、羽林軍しゃんを呼んだり。
また、いろんなお客しゃんが来た時にはちゃんともてなす物を用意したり。
・・・うーん、とりあえずそういう事でし。
「なんだか無理矢理な説明だなあ。もうちょっとしっかりしたのはねーのかよ。」
うーん、しょんなこといわれても、離珠は困るでし。
「肝心なものを忘れてるぜ、おいらだよ。」
へ?虎賁しゃんでしか?
「ぼうずにアドバイスをする時、いかなる球技でも瞬時に判断。
そして無駄なく適切なアドバイス。おいらを言わずして何が言えるっていうんだ。」
・・・それが言いたかったんでしね。
こんな自慢話でもちゃんと応対している離珠は偉いでし・・・。
「鱗次櫛比(りんじしっぴ)」でし
羽林軍しゃん、そこに全員立ってみてくだしゃい!
ぞろりっ
とまあ、ソファーの上にぎゅうぎゅうに立ってる羽林軍しゃんでし!!
『鱗や櫛のように細かくびっしりしている様子』という事でし。
「おわっ!な、何やってんだそんなところで!!」
あ、太助しゃま。お帰りなしゃいでし。
「いや、俺はずっと家にいたけど・・・ってそれ、新しい遊びか?」
ぶう、違うでしよ〜。
「シャオが呼んでたぞ。直して欲しいところがあるんだってさ。」
なんでしと!?羽林軍しゃん、レッツごーでし!!
おーっ
がたがたがたがた
そ、ソファーがゆれてるでしー!!
「いっぺんに動こうとするなって。」
戻るでし。