≪も≫でし!
「盲亀の浮木」でし
広い広〜い海。
その中に住んでいる一匹の亀しゃんがいたんでし。
その亀は花織しゃんと言って、盲目だったんでし。
その花織しゃんは百年に一度だけ水面に浮かび上がってきて、ある穴に入ろうとしてるんでし。
その穴は海を漂っているある木にたった一つだけ空いているものでしが・・・。
もう分かったでしね。
『出会うのがなかなか難しい。または滅多にない幸運』という事でし。
「ちょっと離珠ちゃん、なんであたしがたとえに出されてるの?」
花織しゃんらしいと思ったからでし。
「どういうこと?」
太助しゃまとの出会いを運命の出会いと思っているところからでし。
「・・・そんなに確率の低い出逢いだったと思うの?
たしかに運命的だとは思ってるけど・・・でも!ここまでたとえにされるものじゃないもん!」
これにておしまいでし。
「終わらないでってば!」
「儲けぬ前の胸算用」でし
「うちでシャオちゃんが暮らす事になったら・・・やっぱり毎日手料理を作ってもらいたいなあ。
でもって朝には“たかしさ〜ん”って優しく起こしてもらって・・・。」
とまあこんな風に・・・
『まだ儲けていないうちから儲けた気になってあれこれと計画を立てることで、
不確実な事柄に期待を立ててあれこれと企てる』という事でし。
「ちょっと離珠ちゃん、儲けるっていうたとえで出して欲しくは無いなあ。」
けどたかししゃんの妄想はそれに近いでしよ。
「失敬だな!熱き願望と呼んでくれ!」
・・・どう違うんでしか?
「まず名前だろ。それから・・・」
名前だけだと思うでしが・・・。
「孟母三遷の教え」でし
孟子しゃんのおかあしゃまは、子供の教育の為に三回も引越しをしたそうでし。
最初は墓地の傍に住んでいたけど、孟子しゃんが葬式のまねをして遊ぶのでお引越し。
引っ越した先は市場の傍だったので、今度は商売の真似をして遊ぶようになったのでまたもやお引越し。
今度は塾の傍だったので、礼儀作法の真似をするようになったそうでし。
『子供の教育には、それにふさわしい環境が大切である』という事でし。
「というわけで引越しをしようじゃないか、太助。」
「何をいきなり言ってんだよ。別にこの家でいいじゃないか。」
「いや、あたしが言ってるのは家の引越しじゃない。部屋の引越しだ。」
「部屋の引越し?」
「そうだ。シャオ、ルーアン、キリュウと一緒の部屋で寝る!
そうすれば色んなものが学べるはずだぞ。」
「む、無茶苦茶言ってんじゃないって!!」
「まずはシャオだ。シャオから沢山学んでこいよ。」
「こらー、人の話を聞けって!!」
「もっとも、シャオの部屋でおしまいになるかもしれないな。」
「・・・なるほど、それが狙いか。俺は部屋の引越しなんてしないからな!」
「何を言ってるんだ!これは那奈姉三遷の教えという言葉にこれから変わるんだからな!!」
「そんな事偉そうに言ってんじゃねー!!」
いきなり出番を取られてしまったでしが、なかなか凄い計画でし。
「だろだろ?」
「だから俺は引越しなんてしないって!!」
けれども那奈しゃん、言葉を変えるのはどうも無理があるでし。
「別にいいだろ。とりあえず計画の旨をシャオに伝えてくれよ。」
わかったでし。
「おいこら!!俺を無視して話を進めるな!!」
「孟母断機の教え」でし
「さあ!ラーメンを作るぞ!」
那奈しゃんおお張りきりでし〜。
「お湯も沸いた!あとはこれを注ぐだけ!」
カップメン、でし〜。
「けどお湯を捨てちまったらどうなる?一からやりなおしだ!」
このように、やりかけた勉強や物事を中途半端でやめたら、なんの役にも立たないでしね。
『物事を途中で止めてはいけない、といういましめ』という事でし。
「というわけでだな、太助。シャオを・・・」
「なあ、那奈姉。」
「なんだ?那奈姉断機の教えは気に入らなかったか?」
「当たり前だ!カップメンと比べてんじゃねー!!」
ちゃんちゃん、でし。
「それを了解してる離珠も離珠だー!!」
「離珠は離珠で、途中でやめるわけには行かなかったんだよ。理解しろ、太助。」
そうでし。
「はいはい、もういいよ。・・・ったく。」
「燼には火がつき易い」でし
燼(もえぐい)っていうのは・・・説明略でし!
「お前なあ、そんないいかげんな・・・。」
だまるでし虎賁しゃん!
しょれはしょれとして、今回の解説のために天鶏しゃんを呼んだでし!
「なるほどねえ・・・。天鶏、お前も大変だな。」
こくこく
何をしみじみしてるでしか!
おっほん。とりあえず意味は・・・
『前に関わりがあった者は、仲たがいした後でもまた仲直りしやすい』という事でし。
「・・・で、天鶏に何をやらせようってんだ?」
見てのとおり、天鶏しゃんは今火に包まれてるでしね。
「そりゃあ、まあ・・・。」
こくこく
しょこで!一度天鶏しゃんの火を消してもらって・・・しょの後で火をつけて・・・
「・・・お前、それぜんっぜん意味の解説になってないぞ。」
こくこく
ぷう、しょこでおもいっきり肯定してる虎賁しゃんも天鶏しゃんも大っ嫌いでし!
「お、おい・・・。」
・・・・・・。
ぷいっと離珠がしょっぽを向くと、虎賁しゃんも天鶏しゃんもおろおろと・・・。ここでしね!
なあんちゃって、でし。
「!?」
!?
おっほん。とまあこのように、一度喧嘩をしてもしゅぐに仲直りできちゃうんでしね〜。
「・・・無理矢理だな。」
こくこく。
なんでしと?
「燃えついてからの火祈祷」でし
「ねえシャオリン、あんたって不幸から主を守るのが役目なのよねえ?」
「ええ、そうですけど。」
「だったら、出てきた時に既に主が不幸になってたら手遅れよねえ?」
「言われてみれば・・・。はい、そうですね・・・。」
しゃ、シャオしゃま!落ち込んでちゃ駄目でし!
「ほらほらごみチビ、いい例えが出たんだから。」
くうう・・・。
『火事になってから火事にならぬお祈りをする事で、手遅れの事の例え』という事でし。
「で、でもルーアンさん!」
「なによ。」
「ご主人様をこれ以上不幸にならない様にできます!」
「当たり前でしょ。それに、不幸を取り除くってのも出来るでしょうに。」
「は、はい、そうですよね!」
「ま、あたしはよりおっきな幸せを与えちゃうけど〜♪」
ちゃんとフォローしたでし。・・・これでいいんでしかね。
「燃える火に油を注ぐ」でし
『勢いのあるものに更に勢いを添える』という事でし。
離珠とキリュウしゃんの、勢いを更に添えてみようコーナー!
「うむ。というわけで主殿、今回は難しい試練だぞ。」
「何が難しいんだか・・・。言っておくけど、変なもの出さないでくれよ。」
失礼でしね。変なものってなんでしか。
「キレたシャオ殿や暴走し出したルーアン殿などは出さない。だから安心するがいいぞ。」
「そんなもん出したら本気で絶交するぞ・・・。」
おほん!とにかく試練開始でし!こちらが用意したものは・・・。
「野村殿だ。」
「たかしぃ?」
キリュウしゃんが指さしが向こうには、たかししゃんが熱く歌っていたでし。熱く、熱く、熱く!
「野村殿と混じって共に歌ってこられよ。そうすれば野村殿の歌は更に熱くなる。」
「意味あんのかよ・・・。」
大有りでし!太助しゃまが混じることにより普段では見られないたかししゃんが!
「主殿の友人だからな。ちなみに、共に、と友をかけてみた。どうだ?」
「どうだって言われても・・・。ってそんなことより!もっとましなものはなかったのか?」
何気に失礼でしね、太助しゃま。たかししゃんの何が気にいらないんでしか?
「ことわざ通りに熱い身近な存在は野村殿くらいだと思ったからな。
そんなことより主殿、先ほどの私のかけたものはどうだ?」
「ううう、俺はやりたくないー!」
叫びながら・・・結局太助しゃまは逃げてしまったでし。
後で離珠とキリュウしゃんはたかししゃんに謝るはめになってしまったでし・・・。
「まったく主殿は・・・。しかも私のかけの感想を言ってくれないし・・・。」
「いや、そう言われても・・・。」
なかなか難しい試練だったでしね。
「鵙勘定」でし
「すいません、離珠さん。ここは私に解説させてください・・・。」
出雲しゃんじゃないでしか!!なんだか深刻そうでしが・・・
はっ!!ひょっとして離珠や軒轅しゃんが和菓子を御馳走になりにいっている事を・・・。
「違います違います。わざわざ食べに来て下さったりして母は喜んでいますし。」
ということは・・・無料でパンを受け取っている女子生徒しゃん達でしか!?
「あれは私が好意で差し上げているだけなんですから・・・。違いますよ。」
それじゃあ・・・分かったでし!!
家に出雲しゃんが来るたんびにお土産にたかっているルーアンしゃんでしね!!
「違いますって。それ以前にお土産は意味が違ってくると思うんですが・・・。」
それじゃあ一体誰なんでしか?離珠にはさっぱりわからないでし。
「別に人じゃなくても・・・。つまりはこういう事ですよ。
一緒に食事に行って、私におごらせてばっかり。
自分から誘ったんなら自分の分もちゃんと払って欲しいですよ。」
・・・何を言いたいのかはよく分からないでしが・・・とにかく嫌な事があったみたいでしね。
『食べたり飲んだりしても、人にばかり金を出させて、
自分の金はびたの一文も出さない様にする』という事でし。
「まったく・・・どうして私が・・・。」
出雲しゃん、ここは愚痴る為のコーナーじゃないんでしが・・・。
「餅の中から屋根石」でし
これは実現してみないと意味が無いでし。
「離珠、そんなもの誰も食べたがらないでしょ?」
だから、秘密にして出すんでしよ。そうすればびっくりすること間違いないでし。
「ダメです!まったくもう、人を騙そうとするなんて・・・。」
うう・・・。だったら、事前に知らせて演技してもらうことにするでし。
「そこまでしなくてもいいと思うんだけど・・・しょうがないわね。」
ということで、シャオしゃまが太助しゃまにお餅を出すことになったんでし。
「はいどうぞ、太助様。」
「ん、ありがとう。・・・おおっ?この固そうなのは・・・屋根石!?」
「まあっ!お餅の中にそんなものがまざっていたなんて!」
「うっひゃー!びっくりだー!」
以上!『あるはずがないことのたとえ』という事でし。
・・・太助しゃま、もうちょっと上手く演技してほしいでし。
「うーん、そう希望されてもなあ・・・。」
「離珠、お餅から既に屋根石がはみ出ている時点で無理がありますよ。」
それを言ってしまってはおしまいなんでしが。
「それにさ、離珠。あるはずがないことのたとえなのに、こうやって実際にあるのはどうかと・・・。」
ああっ!太助しゃま・・・そ、それだけは言ってほしくなかったでしー!
「そういえば・・・。もう離珠ったら・・・実行する前に気付きなさいね。」
「言ってるシャオも今気付いたっぽいけど・・・。」
「餅は猿に焼かせ柿は大名に焼かせ」でし
昔々鶴ヶ丘町というところに、ルーアン大名しゃんがいたでし。
ルーアン大名しゃんは、200億万石という、通常の単位を無視するほどの凄い大名だったしょうでし。
しょんなルーアン大名しゃんのある日のお食事においての出来事でし。
いつものようにシャオしゃま料理長の料理に舌鼓をうっていたでし。
「うぅ〜ん、あんたってほんと料理美味いわねぇ、がつがつ。」
「喜んでいただけて何よりでございますわ。まだまだ紀柳さんが大きくするのでたんとめしあがってくださいませ。」
「そーお?なら遠慮なく食べるわねん♪」
底なしと思えるほどにルーアン大名しゃんは何時間もがつがつがつ・・・。
・・・まぁ、いいかげん食べて、食べ終わった後に、ルーアン大名しゃんはふとおやつが食べたいと思ったでし。
というわけで、付き人を呼ぶことにしたでし。
ぱんぱん
「猿、猿はいないの。」
「は、こちらに。」
すっ、と登場したのは通称“猿”の乎一郎しゃんでし。
なんでも昔、ルーアン大名しゃんの日直に差し入れをしたことで気に入られたとか。
「おやつを用意して。」
「えっ?でもルーアン大名さま、先ほどお食事の時間であられたのでは?」
「おやつは入る所が違うっていうでしょ。」
しょんな言葉は聞いた事が無いのでしが、乎一郎しゃんはこくりと頷いたでし。
「それでは何をご用意しましょう?」
「そぉねえ・・・お餅と柿を食べたいわぁ。」
「では直ちに。」
しょんなこんなで、乎一郎しゃんの手早い対応により、餅と柿が用意しゃれたでし。
どういう意図の組み合わしぇなのかは置いておくとして、いざルーアンしゃんはしょれを食べようと・・・。
「って、猿。これ生じゃないの。焼かないといけないじゃない。」
「焼きたてがおいしいと思いまして。大丈夫です、こういう言葉がございます。
“餅は猿に焼かせ柿は大名に焼かせ”という言葉が・・・。」
「へえ?」
「焼くための役割は合った方がよいのでございます。」
しょうでし!つまりは、『適材を選ぶのが大事だ』という事でし。
「なるほどねぇ・・・。じゃあ焼いてあげるわん。餅はあんたが焼くのね?」
「はい。ルーアン大名さまが、私が先に焼いた餅をお召し上がりになってる間に・・・
ルーアン大名さまが直にお焼きになられた柿の渋みも抜け、舌鼓を打てることでしょう。」
「へえ・・・。よし、それいただきだわ。じゃあお願いするわん。」
「は、仰せのままに。」
というわけで・・・乎一郎しゃんの気遣いにより、ルーアン大名しゃんは気分よくおやつタイムを過ごしたしょうでし。
もちろん乎一郎しゃんも、ルーアン大名しゃんのお傍にいられてとても幸せしょうだったでし。
以上、出演は・・・。大名:ルーアンしゃん、料理長:シャオしゃま、料理補佐:キリュウしゃん、
猿:乎一郎しゃん、猿の使い:太助しゃま、たかししゃん、でし。
「・・・おいちょっと待て、俺たちはどこに登場してんだ?」
たかししゃん、しょれは影で動いてるんでしよ。ルーアンしゃんが使った食器を引き下げたり・・・
乎一郎しゃんに命令しゃれて餅と柿とを用意したり・・・。
「そ、そんな見えないところで動いてるなんてぇ!太助、我慢なら無いよな!?
キリュウちゃんは名前も出てきてるのに!」
「いやたかし、別に目立っててもあんまり嬉しくないだろ・・・。」
「もちはもち屋」でし
「主殿、試練だ。」
「う、うわあああ!」
相変わらず試練が行われているでし。
でも、巻き添えを食らって壊れた家とかを直すのは羽林軍しゃんでし。
前までは太助しゃまが頑張って直してたんでしが、
雨漏りはするし、ずき間風は吹きこんでくるし、全然だめだったんでし。
『専門のひとに頼むのが良い』という事でし。
一応太助しゃまも少しは成長したんでしが、まだまだでしねえ。
「餅腹三日」でし
『餅は腹にもたれる』ということでし。
「ああそれあるそれある。な、太助。」
「正月の時にはしょっちゅうえらい目に遭ってたっけなあ。」
しかし!例外の人物も居るでし!
「ルーアンの事か?」
「ルーアンの場合はもたれないことはないけど・・・。」
「一日で治る、ってか。うらやましいよなあ、陽天心菌。
あたしも欲しかった。」
「那奈姉がなんでうらやましがるんだよ。そんなにがつがつ食ってんのか?」
「世界中を旅行してるとな、ついつい珍しいものを食べちまうんだよ。」
「なるほど、那奈姉らしいな・・・。」
「あたしらしいってなんだ。太助も行けば必ず食うに違いないぞ。
そうそう、離珠もおそらく例外じゃないな。」
り、離珠もでしか?美味しいおかしと大量に出会えるんでしか?
「出会える出会える。よし、あたしが今度連れて行ってやろう。」
「おい那奈姉・・・。」
わーいっ!でし。
「とりあえずどこに行く?和菓子を狙うなら・・・。」
当然日本でしね!
「おし、日本だ!」
「世界に行くんじゃないのかよ・・・。」
「何を言うんだ太助。日本も世界の中に入ってるぞ?」
そうでしそうでし。
「ちなみに日帰りだから心配すんな。」
「はいはい。行ってらっしゃい。」
「持ち物は主に似る」でし
つまりは、支天輪を見ればシャオしゃまが。黒天筒を見ればルーアンしゃんが。
短天扇を見ればキリュウしゃんの人柄が想像できるんでし。
『持ち物を見れば、その人の人柄が想像できる。
持ち物には持ち主の性質やたしなみがそのまま現れているものだ』という事でし。
「俺は分からん。」
なんでしと?太助しゃま、そんな事ではダメでしよっ。
「なんで支天輪を見たらシャオが分かるんだ、教えてくれ。」
・・・えいっ!!
ぴっ
持ってた筆の墨を飛ばして、それが太助しゃまに命中。目潰しでし。
「わっ!何するんだ離珠!」
目で見るんじゃなくて心眼で見るんでし!
「・・・行き詰まって困ったからそんな事言ってるんだろ。」
うっ・・・そ、そんな事ないでし!
「そういやあ筆に墨って、自分で書いたものを真っ黒に塗りつぶせるんだよなあ。」
何が言いたいんでしか、太助しゃま!
「沐猴にして冠す」でし
たかししゃん、この言葉の意味なんでしが。
「・・・わからん。最初の単語はなんなんだ?」
そうでしか。まず沐猴っていうのはお猿しゃんのことでし。
「なんか難しい漢字だな・・・。それで?」
お猿しゃんが人間の着る衣装をつけただけってことで、
『野卑な者はどんなに立派なものを着ても中身はサルみたいなものだ』ということでし。
「つまりはあざけりの言葉なんだな。」
そうでしね。
「ところで、なんで俺に聞いてきたんだ?」
離珠的に適役だと思ったからでし。
「それまたなんで?」
ノーコメントでし。
「あ、そ・・・。なんか俺ってこういう役ばっかしだよな・・・。」
たかししゃん!ノーコメントなんでしったら!
「はいはい。」
「持ったが病」でし
『無ければないでよいものを持ったがために面倒が起こる』という事でし。
「普通に病を例えると面白くないな。というわけでバキバキ君の意見を聞こうじゃないか。」
「・・・俺のこと?」
那奈しゃん、バキバキくんじゃなくってたかししゃんでしよ。
「そう、君だ。髪の毛バキバキだしな。おまけにうるさいし。」
うるさいは関係ないと思うでしが・・・。
「くっ、そうか・・・俺の熱き魂があるために・・・」
ますます関係ないと思うでし・・・。
「あっ、そうだ!離珠、今のバキバキ君の言葉でいいたとえができたじゃないか。」
ふえ?
「つまりだ、熱き魂なんてあるために、自分にとって不満なバキバキ君という愛称が・・・」
「太助のおねーさん!そりゃ酷いぜ!!」
「いやあ、いいたとえが出来てよかったな、離珠。」
「俺の話を聞いてくれー!熱き魂は無くていいものじゃないー!」
なんだかなあ・・・でし・・・。
「持った棒で打たれる」でし
「太助、ちょっとその本を貸してくれ。」
「ん?ああいいよ。」
たかししゃんの申し出に、快く本を貸した太助しゃま。しかし!
バシッ!
本を持ったたかししゃんが太助しゃまを叩いたでし!
「いてっ!何すんだよ!!」
「油断したな太助。武器は軽々しく渡してはいけないのさ。」
このように、『自分の武器を敵に貸すようになる事』という事でし。
「・・・だれの差しがねだ。」
「そいつは言えないな。」
「出雲がわざわざこんな作戦ねるわけじゃなし、
キリュウ・・・か?」
「・・・・・・。」
「なるほど、離珠か。」
「!!な、なんの事かな。」
「ほほお、やっぱり離珠なんだな。」
びっくう!!アッサリばれてしまったでしー!!
で、酷く怒られてしまったものの、叩くとかいう被害はでなかったでし。
太助しゃまは優しいでし〜。でも鋭いでし〜。
「たかしの表情みてれば分かるって。」
「そうか、こいつは一本取られたぜ!」
「あのな・・・。」
「持った前にはつくばう」でし
ある田舎のあぜ道に、人が倒れていたでし。
その人とは出雲しゃんと言って、かつて優雅な暮らしをしていたのでしが、
財産が底を尽き、食うものも食えず、とうとうここで行き倒れてしまったんでし。
「なんなんでしょうかこの唐突な展開は・・・。
しかしとにかく今はお金が欲しい。お金さえあれば飢えをしのげるはずです・・・。」
そうでし!薄皮饅頭でも芋羊羹でも、お金さえあれば購入できるんでし!
「和菓子は無理に欲しくありませんが・・・。」
・・・ト書きに反抗的な出雲しゃんだったでし。
とそこへ、不良として有名な翔子しゃんがやってきたでし。
「・・・なんであたしが不良なんだ。」
翔子しゃんも反抗的だったでし。
「ん?おやおや、そこに倒れてるのはつい最近までお金持ちだった出雲にーさんじゃないか。」
「しょ、翔子さん・・・お願いします、お金をめぐんでください・・・。
もう3日も何も食べていないのです・・・このままでは飢え死にしてしまいます・・・。」
「うーん、でもあたしは大金持ちじゃないからなあ〜。ここに一万円札ならあったりするけど〜。」
ぴらぴらと翔子しゃんは札束を取り出したでし。おおよそ・・・何枚かなんてのは数え切れないほどでし!
とっても嫌味な態度でし!
「お、お願いします。なにとぞ・・・。」
最後の力を振り絞って出雲しゃんは身体を起こし、地面の上で土下座したでし。
けなげでし・・・。
『立派な人だから頭を下げるのではなく、金のある者には頭を下げる』という事でし。
「しょうがないな〜、そこまでするなら。・・・って、これだとなんか使い方ちがくねーか?
普通はこう、何かするためにお金が必要で、それを貸してもらうために頭をさげるとかさあ。」
やっぱり翔子しゃんは反抗的でし。
「まあまあ翔子さん、抑えて抑えて。損な役回りではありますが、これも離珠さんのためですよ。」
出雲しゃんはとっても優しいでし〜。
「たくう、だいたいこういう解説の仕方にどういう意味があるんだよ。」
最後まで翔子しゃんは反抗的だったでし。
「本木にまさる末木なし」でし
これは夫婦関係によく使われる言葉で、
『最初の妻が気に入らなくて何度妻を変えても、結局は一番最初の妻ほどよいものはない』という事でし。
ちなみに末木は“うらき”と読むんでしよ。
「離珠!これだ!あたしはこの言葉を待っていた!!」
な、那奈しゃん。突然どうしたんでしか?
「太助に一番最初出会った女性は、この中ではシャオ!
だから太助はシャオと結婚するべきも当然って事だな、うん!」
いきなり突っ走ってるでし・・・。しかもこの中ってのはどの中をさすんでしかねえ・・・。
ついでに、一番最初出会ったとかいう事をこの言葉は言ってるわけではないんでしが。
「これで根拠は整った!次は挙式だ!」
ちょちょちょ、ちょっと那奈しゃん!?
「求めよさらばあたえられん」でし
“求めよさらば与えられん。尋ねよさらばみいださん。たたけよ、さらば開かれん。”で、
『決意を持って積極的に努力すれば、何事も出来るものである』という事でし。
「絶対に嘘だ・・・。」
たかししゃん、そんな事無いでしよ。
「だって!!俺の努力はいっつも報われないじゃないか!!」
いつになく弱気でし・・・どうしたんでしか?
「ふ・・・。人は色々と事情があるものなのさ。」
是非知りたいでし。
「これは教えられないな。」
そう言わずに頼むでし。
「駄目だね。」
言わないなら、シャオしゃまにたかししゃんの事を伝えるでし。
「・・・分かった、言う。」
ちゅわ。離珠の努力の結果でし。エッヘンでし。
「これはただの脅しなんじゃ・・・。」
「元も子も失う」でし
「よかったなあ離珠。身近にとってもいい例がいるぞ。」
えっ?本当でしか、那奈しゃん。
「ああ。あたしに任せておけ!」
・・・というわけで、那奈しゃんに連れてこられたのは学校の購買部でし。
いつものように出雲しゃんが働いているでしが・・・例ってのは出雲しゃんのことでしか?
「宮内。あんたってば購買部で儲けた分を女生徒に配ってるっていうじゃないか。」
「いえ、そのようなことはしてませんが・・・。」
「またまたぁ。調べはついてるんだぜ。優しい購買部のおにーさんは無料で女生徒にパンを配るって。」
「別にそれと儲けは関係ないんですけど・・・。」
「いいからそういうことにすんの!じゃあ離珠、たとえは宮内ってことで。」
えええ〜?やっぱりそうなんでしか〜?・・・えーっと・・・
『儲けも元でもすっかりなくす。損して何も無くなる』という事でし。
「あー、働いた後は気分がいいな。ついでにお腹もすいちゃった。
だから宮内、パンをくれ。あ、焼きそばパン希望ね。」
「まったく・・・。えっと、120円になります。」
「えええ〜?金とるの〜?女性には無料で配るんじゃないの〜?」
「あなたって人は・・・。ここは購買部なんですから!!
それに女生徒にパンを無料で配るっていっても絶対にとかそういうことはありませんので!!」
とうとう出雲しゃんは怒り出してしまったでし。
むむう、那奈しゃんに頼った離珠の失敗でし・・・。
「物言えば唇寒し秋の風」でし
『何事につけても物を言えば後悔する』という事でし。
人の悪口を言えば後で自分自身が嫌になるでしね・・・。
たとえばでしね、こんな事があったんでし。
「ルーアンの馬鹿ー!」
なんて泣きながら走り去っていった乎一郎しゃんが、“ああ、僕はなんて罪深いことを・・・”
と、その後でのたまわっておられたんでし。
また、人の事を批評するとそのために困った問題が生ずることもあるでし。
たとえばでしね、こんな事があったんでし。
「シャオさん、あなたの守護月天ぶりは目にあまるものがあります。もう少し太助君から離れてもいいのでは?」
などとくどくどと批評してた出雲しゃんが、後で南極寿星しゃんからきつくツッコミを受けてたんでし。
おかげで出雲しゃんはしばらく神主の仕事ができなかったとか。大変でしねえ・・・。
「くぉら離珠。」
あ、虎賁しゃん。残念ながらたとえ話はもう終わったでしよ。
「嘘ばっかついてんじゃねーっての。今離珠が例に挙げた二人、そんなこと全然やってないだろ?」
たとえでしよ、たとえ。
「たとえにしても酷すぎるだろ。ちったぁ考えろよ、ぼうずの立場とか。」
どうしてそこで太助しゃまが関係してくるんでしか。
「今あっちの方で離珠の解説見てたんだぞ。
“色々言ってやりたいけど、一生懸命な離珠に悪いし、
けどあのままだと乎一郎や出雲に申し訳がたたないような・・・”とかって悩んでたんだ。
そんなぼうずに代わっておいらがびしっとだな・・・」
こ、これにて作り話はおしまいでし〜。
「あ、おい!」
「物言わずの早細工」でし
『あまり喋らず目立たぬ者が、仕事をさせると早くて上手だ』という事でし。
「そんなわけで遠藤! 掃除は任せた!!」
「ちょっと山野辺さん!!今日の掃除当番は僕じゃなくて山野辺さんじゃ・・・」
「じゃあな!!」
「ああっ、ちょっと!!」
素早く逃げ去った翔子しゃんに乎一郎しゃんはどう対処するのか!?
と、黙々と掃除をやり、すぐにそれを終えたでし!!
「たく、なんで僕が・・・。」
物陰からそれを見守る離珠と翔子しゃん。作戦成功でし!
「いやあ、よかったよかった。」
さすが乎一郎しゃん。掃除が早いでし。
「物が無ければ影ささず」でし
『原因が無ければ結果は起こらない』という事でし。
まあ当たり前の話でし。
「例えはありすぎるだろうな。だから無理に出さなくて良いぞ。」
何を言うでしか。離珠が筆を使ったから絵が描けたとかいろいろあるんでし!
「早速一つ出したか。ま、このへんで終わり終わり。」
えうー。虎賁しゃん、何故勝手にしきってるでしか〜。
「物種は盗まれず」でし
ずばり意味は『遺伝は隠そうとしても隠せないものだ』という事でし。
「そうなんだろうな。那奈姉見てるとよく分かるよ。」
「いやいや、あたしは太助を見ててこそ十分分かると思うぞ。」
どっちもどっちだと思うんでしが・・・。
「たとえば姉貴は親父に似たんだろうな、ってこととか。
アバウトなとことか世界飛び回ってることとかな。」
「太助こそ母さんによくにてるよ。けど愛を振りまいてはないよなあ・・・。」
ふむふむ、なるほどでし。
「俺が愛は振りまけないだろ・・・。」
「それより、さっき何気にあたしをけなさなかったか?
まあいいけど・・・。それよりこれはもっと違うことに使われるんじゃないかな。」
那奈しゃんはそういうところがアバウトだと思うでし。
「もっと違うことってなんだ?」
「浮気して違う子が出来たときにだ、隠しててもあんたそっくりだ!とかさ。」
むう、そういう使い方なんでしか・・・。
「なんか嫌な使い方だな。」
「だから太助も浮気はしないように・・・って、太助なら大丈夫か。奥手だしな。」
太助しゃまの話になるんでしね、結局。
「なんで俺が引き合いに・・・。」
「まあまあ、これも解説のためだよ。」
うーん・・・。
「物には七十五度」でし
『物には限度がある』という事でし。
「どういう事なの?」
たとえば花織しゃんが、離珠をいじめるとするでし。
「ええ〜?あたしそんなのしないもん」
たとえば、でしよ。
で、いじめられても、離珠は相手が花織しゃんだからと大目に見るでし。
「それってどういう理由?」
けれど、回数が重なるにつれて離珠は我慢できなくなってくるでし。
「人の話聞いてよ」
いくら相手が名だたる悪者であっても、限度というものがあるんでし。
「ちょっとぉ!あたしってば悪者なの〜!?」
これは、悪どい事もあまり度が重なれば許してはおけない、という事なんでし。
「離珠ちゃん!今のたとえってあんまりよ!」
まあまあ花織しゃん。これもたとえば、の上でしから。
「そうやって何度も何度も・・・あたしもう我慢できない!」
うえっ!?り、離珠は75回も花織しゃんをたとえてないはずでし〜!
「回数の問題じゃないー!!」
「物は八分目」でし
「よーし、あたしが解説しちゃうからね!たとえばここに、花瓶がありま〜す。」
得意げに花織しゃんが花瓶を指差したでし。
「これを、よ、いしょっ・・・あ、あれ、持ち上がらない。」
ところが、花瓶が重くて花織しゃんは持つこともできなかったでし。
「ふんぬ〜・・・。」
とまあ、花織しゃんが格闘している間に離珠は意味をいっておくとするでしかね。
『十分は一番良いようだが、十文よりはたりなめがよい』という事でし。
「ちょっと離珠ちゃん!あたしがまだたとえを出してないのにー!」
十分重たい花瓶より、そこそこ思い花瓶を使うべきだったでしね、花織しゃん。
「そ、そんなたとえありなの・・・って!この花瓶接着剤で固定されてるー!」
それではこれにて解説はおしまいでし〜。
「ああっ!ちょっと待ってー!」
「物は宜しき所有り材は施す所有り」でし
早い話が、離珠に建築をやれとか、虎賁しゃんに空を飛べとか、
軒轅しゃんに伝達をしろとか、軍南門しゃんに球技を教えてもらうとか、
瓠瓜しゃんに陽天心を使えとか、ルーアンしゃんに万象大乱を使えとか、
・・・まあこれくらいで置いておくでし。
とにかく、そんな事はたいていは無理に決まってるでしね。
『物には、それぞれ適当な用途が有り、人も能力に合った地位が有る』という事でし。
もうひとつおまけでし。これは太助しゃまから聞いた話なんでしが、
たかししゃんは熱き魂とやらを語るために居るらしいでし。(離珠には良く分からないでしが)
そう言われればそう見えない事も無いでしが、なんだか複雑な気分でし。
「木綿布子に紅絹の裏」でし
つりあわないたとえ・・・何かあるでしかねえ?
「それならワシが解説してやるとするかの。」
・・・なるほど、謎はすべて解けたでし!
「なんじゃいきなり。」
とってもちっちゃい離珠と南極寿星しゃんが・・・
「そんなたとえは却下じゃ!」
まだ途中なんでしが・・・。
「うぉっほん。ワシが解説してやると言うからにはワシの話を聞くがよい。」
・・・・・・。
「ずばり、シャオリン様と野村とかいう小僧じゃ!
物静かなシャオリン様にあのやかましいのは絶対につりあわん!」
・・・ということだそうでし。
『木綿の綿入れに紅絹の赤い裏をつけることで、つりあわないたとえ』という事でし。
なんだか強引でしねえ・・・。もうちっと違うたとえを離珠は期待してたんでしが・・・。
「ふむ、ならば軍南門と北斗七星かの。もしくはこのワシと北斗七星じゃな。」
その心はなんでしか?
「北と南じゃ!」
・・・・・・。
「桃栗三年柿八年」でし
太助しゃまがシャオしゃまを守護月天の宿命から解き放つには・・・
一体どれくらいの年月がかかるでしかねえ?キリュウしゃん。
「それはまあ、主殿次第だ。」
けれども、やっぱりそれなりの年月が必要でしねえ。
「それはまあ、仕方の無い事だと思うが。」
『芽が出てから身ができるまで、桃と栗は三年、柿は八年かかる。
実が実る様に、何事もものになるまでにはそれなりの時間がかかるものだ』という事でし。
太助しゃまがおじいしゃんに成ってしまっては困るでし・・・。
「心配しなくとも、そう遠くないうちに実現すると思うぞ。」
そうでしか?
「そうだ、と私は信じている。なあに、主殿なら大丈夫だ。」
そうでしねっ。
「ところで離珠殿、離珠殿は絵を描き始めてからどのくらいになる?」
かなりの時間になるでしよ。なんといってもずっと昔から描いているでしからねえ。
「なるほど、ものになるまでにはやはり時間はかかるものだな。」
・・・どういう意味でしか!?キリュウしゃん!!
「深い意味は無い。」
なんだか凄く腹が立ったでし!!
「それは気の所為だ。」
そんなごまかし方では離珠は納得しないでしよ!!
「ももをさして書を読む」でし
とりあえずキリュウしゃん!!
「どうした離珠殿、そんな恐い顔をして・・・。」
これを太助しゃまの試練になんて絶対考えちゃダメでしよ!
「そりゃまあ、使うつもりは無いが・・・。」
良かったでし。という訳でキリュウしゃん、実践して欲しいでし。
「な!?なぜ私が・・・。」
まあまあ、真似でいいでしから。
「・・・よし、やってみよう。」
という訳でキリュウしゃんの部屋。
うつらうつらと眠そうなキリュウしゃんが本を読んでるでし。
と、あやうく眠りそうになったキリュウしゃんは手に持っていたナイフで、自分のももをグサッ!
赤い血しぶきがそこらに・・・って、キリュウしゃん!!真似でいいんでしよ!!!
「頼まれたからには半端は許されない。心配するな、死にはしない。」
うわあああ!!もう止めるでしー!!
慌ててキリュウしゃんに駆け寄ると、飛び散った赤いものはケチャップだと分かったでし。
「どうだ?なかなか真に迫っていただろう。こんな事もあろうかと事前に作っておいたのだ。」
一体どういう事を予想してつくっていたんでしか。さすがでし・・・。
とまあ、『読書に励む人、一生懸命勉強する人の様子』という事でし。
うう、なんだか痛々しい解説だったでし・・・。
「離珠殿の分も作ろうか?」
え、遠慮するでしっ!
「貰い物に苦情」でし
「はい、あなたは可愛いですからこれを差し上げましょう。」
そう言いながら出雲しゃんが手渡したのは、パンでし。
「ええ〜?あたしジャムパンより焼きそばパンの方がいいです〜。」
しかし文句を言うのは花織しゃん。
当然出雲しゃんは困ったような顔をしてたでし。
『人はわがままなもので、貰ったものについてさえ、あれこれ勝手なことを言う』という事でし。
「では焼きそばパンを差し上げましょう。」
「わあっ!さっすが出雲さん!!」
「ちょっと花織、あんたってばそんなタカリみたいなことを・・・。」
「素直に渡す出雲さんも出雲さんですよ。もうちょっと何か言わないと。」
花織しゃんの傍にいた二人のお友達が抗議してるでし。
ところが出雲しゃんはさらににこっと笑ったでし。
「まあそうおっしゃらずに。あなた方にも差し上げますよ。」
「わわっ!ありがとうございますー!!」
「きゃー!感激ー!!」
・・・やっぱり苦情は言ってはならないでしね。
「離珠さん、そんな難しい顔してないで。お饅頭もありますよ。」
ちゅわ!?い、いただくでしー!!
「貰う物は夏も小袖」でし
昔々あるところに、乎一郎しゃんという少年が居たんでし。
そしてその近所にルーアンしゃんというおねーちゃんが住んでいたんでし。
ルーアンしゃんは家以外は何でも食べるというおおぐらいだったそうでし。
けれども、さすがに海老の殻なんかは食べなかったそうでし。
そんなルーアンしゃんを好きな乎一郎しゃんは何度も食事に誘っていたそうでし。
「あー、食べた食べた。カニはやっぱりおいしいわあ。」
「よかったです。それにしても綺麗に食べますねえ・・・。」
「まあね。さすがに殻は食べらんないけど。」
「じゃあいただいてもいいですか?」
「はあ?まあいいわ、それあげる。」
「うわあ、ありがとうございます!」
「そうそう、あとこっちの海老の殻も邪魔なんだけど・・・要らない?」
「要ります!ありがとうございます!」
とまあ、ルーアンしゃんが要らないものすべてをもらいまくってたでし。
『人からもらうものは不要の品でもなんでも辞退しないことで、欲の深いことのたとえ』という事でし。
「あのさあ、離珠ちゃん・・・。」
なんでしかたかししゃん。たとえ話の感想はいかがでしか?
「ここで言う不要ってのは乎一郎の立場に当たるんじゃないのかなあ・・・。」
だからどうしたんでしか?乎一郎しゃんにとっても殻は不要だと思うでしが。
「いやあ、それは甘いな。ルーアン先生が食べ残した殻は乎一郎にとっては絶対必要なものだ!
だから違うと思うわけなんだよ、うん。」
うっ・・・言われてみれば・・・。
「ところで離珠ちゃん。」
なんでしか?
「わざわざ“昔々”なんてする必要あったの?」
ノーコメントでし。
「貰った物は根がつづかぬ」でし
自分で働いて得るものは働き続ければいつまでも続いて得られるでしが、
人から貰った物は、どんなにたくさんあっても使えば減り続けるからいつまでもあるものではないでしね。
『もらい物は長続きしない』という事でし。
「たとえば・・・」
出雲しゃん、実はたとえは既に用意してあるんでし。
「どんなたとえですか?」
それは出雲しゃんがいつもくれる和菓子でし。
「・・・なるほどねえ。しかし離珠さん、それはそのまんまなのでは・・・。」
いいんでし。
で、解説が終わったところで早速なんでしが・・・その和菓子がもう無いんでし。
やっぱり貰ったものはすぐになくなっちゃうんでしねえ・・・。
そこで!追加をお願いするでしー!
「昨日かなりたくさん持ち寄ったばかりだと思うんですが・・・。」
追加をお願いするでしー!
「・・・・・・。」
「両刃の剣」でし
別の頭文字で既に書いてるでしが・・・あえてやってやるでし!
両刃の剣は人を切るが自分自身も怪我をしゅることがあるというところから、
『一方では非常に役立つが、別の面では大害を与える危険もあるもののたとえ』という事でし。
「こうやって同じ言葉二回やってる辺りすでに言葉の意味まんまだな。」
虎賁しゃん、いきなりしょれは失礼でし!
「ちなみに読みは“もろはのつるぎ”だかんな。間違えんなよー。」
誰に向かって言ってるでしかー!
「門外漢」でし
「来々、長沙!」
ぽわん、と薬の壷を持った星神、長沙しゃんが出てきたでし。
「まったく、ちゃんと気をつけないと駄目でしょ。それじゃあ長沙、お願いね。」
少し怒りながら、それでも心配しながら部屋を出て行くシャオしゃま。
そうなんでし、出雲しゃんの家に行った後の帰り道。またもや軒轅しゃんが怪我をしてしまったんでし。
今回は前に比べれば大した事の無い怪我なんでしが、やっぱり治療が必要。
という事で、長沙しゃんに出てきたもらったわけでし。
当然離珠は軒轅しゃんの傍で居るでし。軒轅しゃ〜ん、元気だしてくだしゃ〜い。
そしてしばらくの時間が経過、と、なにやらどたどたと音がしたかと思ったら、
たかししゃんが扉を開けて入ってきたでし。
「おおっ、軒轅ー!そんな大怪我をして・・・うおー!!」
な、なんだか様子がただ事じゃないでし。そう言えば以前も騒いでいたような・・・。
「軒轅!俺がしっかり傍に居て治療してやる〜!」
ほえ?たかししゃんてそんな事できたんでしか?
ところが、ただ傍に居ていろいろ適当に喋っているだけ・・・。
たかししゃん、それは治療でもなんでも無いでし。
『専門外の人、関係の無い人』という事でし。
いいかげん迷惑な顔をしてた長沙しゃんが、怒って物を投げつけたんでし。
たかししゃんの鼻の頭に見事それは当たって、驚いたたかししゃんは慌てて出ていったでし。
廊下の方で“星神の邪魔をするからだよ”なんて言う声が。
その通りでし。治療に関係の無い人は無駄に入ってこないで欲しいでし。
離珠?離珠は軒轅しゃんの傍で元気付ける係なんでしから、居て当然でし!
「文殊も知恵のこぼれ」でし
『どんなにえらい人にも失策はあるということのたとえ』という事でし。
たとえばでしねえ・・・。
「無理にたとえ出そうとしなくても・・・。で、えらい人って言えば南極寿星のじーさんだろ?」
そうでしね。位が高いとかって肩書きが出てるのはこのひとしかいないでし。
「失策、か・・・。」
太助しゃま、何か心当たりがあるんでしか?
「いやぁ、以前昔の中国に行った時だけどさ、魅花さんに会ったんだけど・・・。」
ふむふむ、魅花しゃまでしね。
「ああ。その時にじーさんが方向音痴っぷりを発揮してくれたから。
そうだな、その時の話を記録として残そうか。」
太助しゃま、そこまでしなくていいでしよ・・・。
それよりも、それって失策なんでしか?
「方向音痴を自分でバラしたからさ。俺が疑った時には散々誤魔化してたのにさ。」
なるほど、でし。
「門前市をなす」でし
シャオしゃまー、ちょっと羽林軍しゃんたちを呼んで欲しいでし。
「どうしたの?離珠。家のどこかが壊れたの?」
うーん、そうじゃないんでしが、とにかく呼んでほしいでし。
「分かったわ。来々、羽林軍!」
そして支天輪から次々と出てくる羽林軍しゃん達。全部で45人も居るんでしよ。
「はい、離珠。呼び出したけど、どうかしたの?」
ちょっと待っててくだしゃいね。羽林軍しゃん、ちょっとここら辺に集まって欲しいでし。
そうそう、そこをそんな風な感じで・・・。こんなもんでしね。
おっほん、さてさて、この45人も居る羽林軍しゃん達を見てくだしゃい。
つまり、『多くの人が群がってにぎわっている』という事でし。
というわけで、皆しゃんご苦労しゃんでし・・・
「離珠!!」
は、はいでし!
「なんてことなの!?そんな事だけの為にみんなを呼んじゃだめじゃないの!
いいですか、離珠。羽林軍は、いつもいろんな時に呼ばれてて・・・。」
そうしてシャオしゃまのお説教がしばらく続いたんでし。
離珠の周りには沢山の羽林軍しゃん達。更には他の星神しゃん達まで・・・。
なんでこんなに大勢居るんでしか、まったく・・・。
「門前雀羅を張る」でし
尋ねてくる人がなく、門の前にスズメが集まってきて遊ぶのでそれを捕えようと網を張るほどだってことでし。
「つまりはどういうことだ?」
ふっふっふ、翔子しゃん。それはでしねえ・・・
『訪問する人もなくひっそりと静まりかえっていることのたとえ』という事でし。
「なんで笑うんだか・・・。でもそういうのだとたとえを出すのはなかなか難しいだろうな。」
なんででしか?
「スズメが集まってくるような門が近辺にあるか?」
むむう、言われてみれば・・・。
「そこでだ、罠をはるので我慢しようじゃないか。」
罠、でしか?
「そうだ。とりあえず七梨家に罠を張って、七梨とシャオを捕まえる。」
た、太助しゃまとシャオしゃまをでしか?
「そうだ。それでだな、二人だけをどっか別の倉庫に閉じ込めて・・・。」
閉じ込めて?
「・・・・・・。」
翔子しゃん?
「やーめた。いつもとやってること変わらないな。この案はやめにしよう。
やっぱりシャオにもっともらしいウソをついて・・・。」
って翔子しゃん!ことわざのたとえはどうなったんでしか!
「門前の小僧、習わぬ経を読む」でし
しゃてと、これはどういった例がいいでしかねえ・・・。
「離珠!あたしがとびっきりの方法で解説してやるよ!」
な、那奈しゃん。なんだかいつもと違って元気でしねえ。
「あたしはいつも元気だ。そんな事より今回は画期的な方法で解説しよう。」
ふむふむ、しょれはどんなものでしか?
「いつもはすでにある物を例に出している。だが今回は違う。
すでにある物じゃなくって、ばっちりな例を作り出すんだ!!」
ななな、なんともしゅごい発想でし。しょれでどんな方法を?
「丁度いい例が近くに居る、あたしの弟七梨太助だ。」
ほえ?太助しゃま?
「そうだ。いつもシャオ達が能力を使っているのを傍で見てる。
という事は、太助も使えるはずだ!」
ちょ、ちょっとしょれは・・・。
「というわけで早速試す!!よーし、皆の所へレッツゴーだ!!」
な、那奈しゃ〜ん・・・。
・・・まあしょんなこんなで、お家に居る皆しゃんで庭に集まったんでし。
「まずはシャオ、太助に支天輪を。」
「はい、分かりましたわ。どうぞ、太助様。」
「・・・あのさ、いくらなんでも俺が支天輪を使えるわけは無いと思うんだけど。」
困惑している太助しゃま。当然でしねえ・・・。
「いいから太助、とりあえずやってみろ。」
「頑張ってください、太助様。」
「分かったよ・・・。来々、離珠!!」
支天輪を掲げて離珠を呼び出そうとする太助しゃま。けれど離珠は出てこなかったでし。
「・・・駄目ですね。」
「やっぱり俺には無理なんだ。」
「おい二人とも、何ボケをかましてんだ。離珠はすでに支天輪の外だろ。」
はっ、しょういえばしょうだったでし。もう、太助しゃまったら・・・。
「そういえばそうでしたね、さすがは那奈さんですわ。」
「あのな・・・。」
「まあいいや、もう一度・・・来々、虎賁!!」
次に太助しゃまが呼んだのは虎賁しゃん。けれど、支天輪には何の変化も無かったでし。
「・・・やっぱり無理があるって。」
「支天輪は難しいのかもしれませんね。」
「じゃあとりあえず後回しにして・・・次はルーアン。」
シャオしゃまが支天輪を受けとって下がり、ルーアンしゃんが前に出たでし。
「はぁ〜い、たー様。しっかり使ってよん。」
「ルーアン、無茶言うな。」
まあとりあえず、普段ルーアンしゃんがやってる様に使おうとしゅる太助しゃま。
つまり、黒天筒をしゅるしゅると回しゅんでしね。
ところが・・・。
「こうやって・・・うわっ!」
「おいおい太助、回す時点で駄目じゃないか。」
「たー様って不器用ねえ・・・。もうちょっと軽い気持ちで回しなさいよ。」
「そ、そんな事言ったって・・・。」
何回も何回も挑戦して、しょれでもやっぱり完璧に回す事は出来なかったでし。
「・・・しょうがないわ。たー様、回さなくていいからそのまんま唱えてみて。」
「あ、ああ。え〜と、日天に従うものは尊し・・・。」
長い長い詠唱呪文を唱え出したでし。離珠は別に要らないと思うんでしが・・・。
「・・・陽天心召来!!」
「よし!これでぴかぁーって・・・。」
結局はシャオしゃまの時と同じで、何にも起こらなかったでし。
「・・・駄目ねえ、たー様。」
「言っただろ?やっぱり俺には無理なんだよ。」
「弱音は吐くな、太助。まあいい、とりあえずルーアンも後回しにしてキリュウいってみようか。」
黒天筒を受け取ったルーアンしゃんが下がり、キリュウしゃんが前へ。
短天扇を手渡すと少し笑ってこう言ったでし。
「那奈殿、いい試練を考えられたな。」
「まあな。」
「主殿、悪いが短天扇を扱えるようになるまで今日は寝かせない事にする。」
「な、なにぃー!!?」
驚きのあまり短天扇を落としかける太助しゃま。
もちろん皆しゃんもびっくりでし。
「ちょ、ちょっとキリュウ、いくらなんでもそれは・・・」
「試練だ、耐えられよ。」
「そんな無茶な・・・。」
ともかく短天扇を懸命に使おうとする太助しゃまが。
「万象大乱!」
・・・もちろんなんにも起こらないでし。
しょのうちに夜になり、御飯を食べて、お風呂に入って・・・。
夜中の十二時、キリュウしゃんはようやく太助しゃまを解放したんでし。
なぜかって、今日という約束だったんでしから。
ぐったりとなった太助しゃまは死んだ様に眠りについたとか。
・・・なんか忘れてるような・・・ああー!!肝心の意味を言って無いでし!!
『いつも見たり聞いたりしている事は、自然にいつか覚えてしまう』という事でし。
いくらシャオしゃま達の能力を太助しゃまが見てるからって・・・。
「太助の奴・・・。あたしの面目丸つぶれじゃないか。」
無理でしよ、那奈しゃん。見てて出来るようなものじゃないんでしから。
「まあいいさ。また何年かしたら絶対やってやる。」
・・・本気でしか?
「門徒物知らず」でし
『真宗の信者がひたすらに弥陀ばかりに頼っていて、
他を少しも顧みないことをあざわらう言葉』という事でし。
「宗教的な言葉になるとあたしはわかんないなぁ・・・。たとえばどんなものがある?」
だからしょれを翔子しゃんに尋ねにきたんでしよ。
というわけで翔子しゃん、是非お願いしゅるでし。
「うーんそうきたか・・・。けど信者となれば・・・待てよ。
そういや離珠達星神はシャオ・・・いわば守護月天につきっきりなんだよな?」
しょううでしが。
「だったら、あまり外の世界の事は知らないってことで・・・ってのはどうかな?」
・・・つまりは、離珠達が信者だっていうたとえにしたいんでしね?
「そういうことだけど。・・・でも強引だよなぁ。よし、こうなったら離珠。信者を探そう。」
信者・・・でしか?!
「そうだ。野村みたいな、シャオを褒め称えるファンクラ・・・そうだ!出雲ファン倶楽部!」
い、出雲しゃんでしか?
「そうそう。出雲ファン倶楽部のメンバーなら、出雲以外はなんにもしらない〜って感じだぜ、きっと。
うんうんそうそう。いいたとえが出てよかったなあ。あははは。」
・・・これでいいんでしかねぇ。
「門に入らば笠を脱げ」でし
『人の家に行ったら笠を脱げということ。
人は住む所の風俗習慣に従うのが処世の法である』という事でし。
「これはいい言葉だ。早速実行しよう!なあ太助。」
「・・・・・・。(那奈姉がこんなに張り切ると必ず良くないことが・・・)」
「何か言ったか?」
「な、なんでもないよ。で、何を実行するんだって?」
「日曜になるたびに我が家に押し寄せてくる連中に、七梨家のしきたりってのを教えてやろうと思ってね。」
「七梨家のしきたり・・・そんなものあったのか?」
「無い!だからこれから作る!」
「んな無茶苦茶な・・・。」
「はーいはいはいはーい!しきたりならこのルーアンにお任せよ〜ん!!」
唐突にルーアンしゃんの登場でし!
「よしっ、元気のいいルーアン。まずは何だ?」
呆れる太助しゃまを差し置いて那奈しゃんがご指名でし。
「それはねぇ〜。七梨家に足を踏み入れるには、最低でも一つの菓子折りを持ってこなくちゃならないのぉ〜。」
「ありきたりじゃないか・・・。」
そうでしよねぇ・・・。
「だ、だったら菓子折り三つとかどう?」
「数が増えただけじゃん・・・。」
そうでしよねぇ・・・。
「あの〜、一ついいかな。」
とここで、おずおずと太助しゃまが挙手。
「なんだ太助。言いたいことがあるなら言ってみろ。」
「しきたりってことはさ。俺たちも従わなきゃならないって事じゃないの?」
おおおおおっと!太助しゃまが痛いところを突いたでし!
最大の盲点!最大の弱点!さあどうするでしか、那奈しゃん!
「・・・何言ってんだ。客がやらなきゃならない七梨家のしきたりだ。」
「・・・・・・。」
・・・負けたでし。
「再開していいかしら?おねー様。」
「ん?ああいいよ。けどさあ食べ物以外でなんかこう、無いかな?」
「けれどもねえ、手土産というのは結構大きいと思うんですのよ。
七梨家の財産が増えていくじゃありませんこと?」
「他人のものを財産にしてもろくなものにならないって言葉がどっかになかったっけ?」
「ん〜と、それならば・・・。」
二人で会議始めちゃったでしね。・・・離珠はこの辺でさよならするでし。
「お、俺も逃げようっと・・・。」