≪ひ≫でし!(その1)


「ひいきの引き倒し」でし
言うまでもなく、言うまでもなく、これは・・・。
「たー様ー!頑張ってー!!」
ルーアンしゃんの事でし!
いつもいつもたー様たー様言ってるわりには、太助しゃまの役にはあんまり立ってないでし。
それどころか迷惑千万。おかげでシャオしゃまの元気がなくなったり・・・。
いいかげんにして欲しいでしね。
『必要以上にひいきしすぎると、かえってその人の立場を不利にしてしまう』という事でし。
太助しゃま、大丈夫でしか?
「離珠か・・・。まあ、これも試練かな、なーんて。」
慶幸日天に試練を与えられてどうするんでしか。太助しゃまもびしっとして欲しいでし。


「挽いた婆さえまだ喰わぬ」でし
「離珠、軒轅と一緒に宮内出雲んとこに出かけた時はこんな感じじゃねーのか。」
虎賁しゃん、それは失礼というものでし。
「作ってるそばでぱくぱくぱくぱく・・・ったく、いじきたねーな。」
虎賁しゃん!
『粉を挽いた婆さえまだ食べていないのに、それで作った団子をもう人が先に食べる』という事でし。
「月天様の料理も、月天様が箸をつけるより早く皆が・・・はあ・・・。」
もう、勝手に言ってくだしゃい。
ちなみにこの言葉は、肝心の本人が知らない間に噂が広まって驚いた時なんかにいうそうでし。
「多分おいらの知らない間に離珠がよくない噂を・・・」
離珠はそんなことしてないでし!


「引いてはなたず」でし
『弓を十分引いては見せるが矢は放たないということで、
人に教える時、底の底まで教えてしまわず、勉強のしかたを示すにとどめ、
自ら学んで習得するように仕向ける』という事でし。
「キリュウの試練って大抵そんなんだな。」
「そうだよな。七梨がやっとシャオに告白した時なんか、ほんとそう思ったよ。」
「あの時は俺もえらくびっくりした。でもキリュウにほんと感謝した。
実は俺は、シャオを遠ざけていたんだってことに気付いたんだ。」
「ほんと良かったな、シャオ。」
「・・・山野辺、今は俺と話してるんだからさ。」
「天に向かって告げて何が悪い。あ、離珠に伝えてもらえばいっか。頼むよ。」
了解でし。
「・・・今度は山野辺か。」
「は?何が。」
「いいや、なんでも。自分で学び取ってくれ。」
「あたしに浮いた話を期待するなよ。」
「げっ・・・な、何のことかな。」
「図星かよ。ひねりが無い奴だな。」
「・・・・・・。」
翔子しゃんの一本勝ちでし〜。


「火打石据石にならず」でし
「まず、火打石は小さくても役に立つでシュね〜。
けれども家の土台なんかにはならないでシュね〜。
小さいものでは大きい役には立たないでシュが・・・。」
『大は必ずしも小を兼ねないが、小も大を兼ねない』という事でし。
長沙しゃん、最初の語りどうもありがとしゃんでし。
「どういたしましてでシュ。それと、離珠ちゃん!」
分かってるでし!小さくっても、離珠も長沙しゃんも立派に役に立ってるでし!
「うんうん、さっすが離珠ちゃんでシュね〜。」


「非学者論に負けず」でし
『学問をしない者は学問をした者と議論する場合にはかえって屈しないものだ。
道理の分からない者はいくら筋道の立った話をされても、
負けた事がわからないからあくまでも自分の暴論を主張してやまない』という事でし。
難しそうなので出雲しゃん、語ってくだしゃい。
「別に語らなくても、世間にはそういう人がたくさん居るって事で十分では。」
例えばどんな人でしか?
「例えば・・・例えば・・・うーん・・・。」
すぐに例えが出てこないなんてだめでしよ。
「うーん、私としてはあまり語りたくないのですが。
第一そんなのより、更にタチが悪い人がいます。
中途半端に知恵を持ってはむかって来る人が!!」
出雲しゃん、それはまた別の時に語ってくだしゃい。今は・・・
「いいえ、これだけはゆずれません。そもそも学問には・・・。」
出雲しゃんに相談したのは間違いだったかも、でし。


「日陰の梨」でし
「たとえば宮内神社!あんなに立派そうな社だけど・・・」
だけど、なんでしか?翔子しゃん。
「実は全部はりぼてなんだ!」
な、なんでしとー!?
『形ばかりは立派に整っているが、内容が悪いもののたとえ』という事でし。
「でも、ビールの空き缶とか捨てられてたダンボールとかも使ってるから、
リサイクルなんてのを考えると立派だよな。」
ふむふむ、凄いでし・・・。
「あのう、勝手に人の神社で変な作り話をしないでくれます?」
「あ、おにーさん。いいじゃんか、ネタってのは大事だよ。」
「ネタにされて何がいいっていうんですか!」
ネタ・・・と聞いて離珠は少しがっかりしたでし。
今回の翔子しゃんのお話は、聞いた直後は立派だったでしが、
ネタばらしをされると内容悪いでし。
「離珠、なんか無理矢理なたとえだそうとしてるな・・・。」
「それより翔子さん!今後二度とああいう話はしないでください!」


「日陰の豆も時がくればはぜる」でし
「そうだな。離珠もいずれ成長するだろう。」
虎賁しゃん!のっけからなんて事を言ってるでしか!
「これは『心身の発達の遅れているものでも年頃になれば人並みに成長するたとえ』という事だ。」
しかも勝手に人の役割を取るなんてひどいでし!
「おいらは誰かが思うだろうな〜ってことを代わりに言ったまでだ。」
誰もしょんなこと絶対思わないでし!
「でもキリュウ姉の万象大乱があると別人になることは分かりきってるんだよな。
けれどそれとこれとは別だからな。」
虎賁しゃん!


「日陰の豆もはじけ時」でし
これはたとえば・・・
「愛原のことかなあ。」
「七梨、嘘はいけないぞ嘘は。自分のことだろ?」
「はあ!?」
「よく妄想しまくってるって那奈ねぇから聞いたぞ。」
「ちょ、ちょっと待てって山野辺!」
なんだか意味が摩り替わってるみたいでしが・・・。
『思春期のこと。色気づく年頃のこと』という事でし。
「合ってるって離珠。それに愛原がどうして違うか言ってやろうか?」
「違わない!第一、いきなりうちに泊まりに来たし!」
「遊びに来たんだろ。七梨が考えてるような色モノ系はなかったんだろ?」
「う、い、いいや、そ、そうでもない、ような・・・。」
「はい七梨の負け〜。というわけだ離珠。」
離珠にそういう結果を告げられても困るでしが・・・。


「日陰の桃の木」でし
実例を示す為に翔子しゃん!
「なんだよ、あたしにどうしろってんだ。」
おもいっきりダイエットをしてくだしゃい!
「あのな・・・。あたしは今のままで十分だからそんな必要無いの。」
そこをなんとかお願いするでし〜。
「だめだだめだ!」
実は翔子しゃんは重いんでしよ。離珠が持ち上げられないんでしから!
「離珠に持ち上げられたらそれはそれで大問題だ!」
えうー・・・『やせてひょろひょろしているもののたとえ』という事でし。
「野村にでも頼めよ。シャオが“ひょろひょろになったたかしさんが見たいですわー!”
って言ったら多分やってくれるぞ。」
なるほど、その手があったでし!!
「けどなあ。無理に実例を示す必要なく、今まで見た事はないのか?」
・・・そういえば、食べ過ぎてお腹を壊した時のルーアンしゃんがそんな感じだったでし。
「最初っからそれ出せよ!ったく・・・。」


「日がさ雨がさ月がさ日がさ」でし
『太陽がかさをかぶると雨傘のいるような天気になり、
月がかさをかぶると日がさのいるようなよい天気になる』という事でし。
「違うだろ?“日がさ月がさ出ると雨”って言うしさ。」
さすが翔子しゃん!いいとこに気がついたでし!
「いや、いいとこっつーかなんつーか・・・。」
明日はばっちり雨でしね。
「・・・おい、そりゃどういう意味だよ。」
じょ、冗談でしよっ。
「ったく・・・。」


「東に近ければ西に遠い」でし
「たとえば七梨先輩があたしの方をみてくれれば・・・シャオ先輩には遠くなる。
そういうことですよね、野村先輩。」
「そうなんだよな。同時に何人も、なんてことは太助にできやしないだろう。」
・・・採用したくはないでしが、たとえとしては合ってるのでこれでいくでし。
『一つのほうに近ければ、別のほうには遠くなる。
どちらにも偏らないことはなかなか難しい』という事でし。
「けれどもシャオ先輩の方へ向けば・・・あたしからはどんどん遠くなる。」
「そして同時に、俺とシャオちゃんの距離も遠くなる・・・。」
「それは我慢がならないですね。」
「それは我慢がならないな。」
けれども、別のところで近くなってるものがありそうでしね。


「東の白いのと女の賢いのは役に立たぬ」でし
「なんだとぉー!?」
「ふざけんなそんな言葉ー!!」
な、那奈しゃんも翔子しゃんも落ち着いてくだしゃいっ。
「これが落ち着いてられるか!」
「離珠もこんな言葉解説しようとするなっ!」
えうー・・・。えーと、肝心の意味でしが、
『東の空が明るいのは晴れを約束するとは限らない。
女の小利口なのも当てにならない』という事でし。
「だからんなもん解説するなって言ってるだろ!?」
「こうなったら宮内!宮内を呼んでこい!!」
い、出雲しゃんでしか?
「いい考えだ那奈ねぇ!あのおにーさんなら完全に言葉を否定してくれる!!」
「ああ!こんな言葉ふざけんなだからな!」
えうー、いつにもまして二人が恐いでしよぉ〜。


「干潟の鰯」でし
今離珠が居るのは玄関。水槽の隣でし。
じっ・・・
水槽の中では、相変わらず金魚しゃんが元気に泳いでるでしねー。
水を全部抜いてしまうと・・・金魚しゃんは手も足も出なくなってしまうでし。
『水をなくした魚で、手も足も出ない、どうにもならぬことのたとえ』という事でし。
「そのままだな、離珠。」
太助しゃま。こういう簡単なのがいいんでしよ。
「実演しないとわからないぞ?」
うーん、そうでしかねえ?
「けど金魚に試すわけにはいかないから、離珠で試してみようか。」
ふえっ?
「水にどぼんと落ちればそんな感じじゃないかな。」
ひょいっ
離珠は持ち上げられてしまったでし・・・
って、たっ、太助しゃまっ!!
「冗談だって。俺も太平洋の真ん中に落とされたらどうしようもなくなるもんなあ。」
すとっ、と元の位置に戻してくれたでし。
ふう。


「日が西から出る」でし
『絶対にないこと。反対のこと』という事でし。
たとえば虎賁しゃんが伝心を行って離珠が球技を教えればおっけーでし。
「・・・なあ、おっけーなのか?それで。」
そうでし!
「絶対にないとは言い切れねーんじゃねーのか。勉強すれば離珠でも球技教えられるし。」
そうなんでしか?
「おいらは教えるのは上手いが、ただ教えるだけならおいら以外駄目ってわけでもないしな。」
うむむむ・・・。


「火が降っても槍が降っても」でし
『たとえ火の雨、槍の雨が降っても』という事でし。
「結局それはどういうことなんだ?」
どんな困難があろうとも、どうしてもっていう事でしよ、太助しゃま。
「なるほどな、うんうん。」
たとえを出すまでも無いでしが、太助しゃまも頑張ってるでしよね。
そういう勢いで!
「まあな。けど・・・。」
けど、何でしか?
「試練で火の雨とか槍の雨とか使われたら嫌だなあ、って思ってさ。」
たしかにそうでしね・・・。
というわけで!離珠とキリュウしゃんの・・・
「だからやるなって。」
むむっ、太助しゃま逃げるんでしか?
「じゃなくってさ、限度を考えようぜ。な?」


「低き処に水溜まる」でし
今日は日曜日。太助しゃまもシャオしゃまも、学校じゃなくてお家でのんびりしてるでし。
ところが、でし。なぜか他の皆しゃんも居るんでしね・・・。
「おまえらな・・・。なんで日曜になったら決まって家に来るんだよ。
こんなんじゃあ普段の日と全然変わらないじゃないか!」
と、太助しゃま。それもそうでしよねえ。
いつも学校であってる時とほとんど同じでし。
「何言ってんだ太助。シャオちゃんが居るのはおまえん家だ。
だから俺は日曜だろうとシャオちゃんがいる所に来る、という訳だな。」
と、たかししゃん。うーん、それってなんだか恐い気もするでし。
「僕はルーアン先生に宿題とか教えてもらいに来たんだよ。
もっとも、あんまりそれは達成できないでいるけど。
それでもいいんだ。ルーアン先生に会えるから・・・。」
と、乎一郎しゃん。そんなにルーアンしゃんに会ってどうしようっていうんでしかねえ。
「あたしは七梨先輩に会いに来たんですよ。
ただ会いに来ってだけじゃなく、ちゃんとゲームも持ってきてますう!」
と、花織しゃん。なにもわざわざ家でゲームをしなくても、と思うんでしが・・・。
「私はシャオさんにお土産を、と思いましてね。
うちの母特製のいもようかんをこうして持ってきたわけです。」
と、ふぁさぁと髪をかきあげる出雲しゃん。
いもようかんでしぃ!出雲しゃんが来てくれるって事は離珠にとっても嬉しい事でしい!
「あたしは、ここに来ればなんか面白い事があるだろうなあって。
なんと言っても瓠瓜が居るし。なあ、瓠瓜。」
「ぐえっ。」
と、ひざに抱えた瓠瓜しゃんに話しかける翔子しゃん。
つまり面白い事を求めて来るってわけなんでしね。
皆しゃんそれぞれ思惑があるみたいでしね。ここにいい事が有ると知っているから。
『人は利益の有る所に自然に群がり集まってくる』という事でし。
太助しゃまのお家は皆しゃんにとって娯楽の場なんでしね。
「離珠・・・それは違うと思うぞ・・・。
たとえそうだとしても、なんで日曜日ごとに家にわざわざ・・・。」


「膝枕と頬杖」でし
「美人の膝を枕に寝るのと、話し相手も無くぼんやり頬杖をついているのとではえらい違いですね。」
というわけで、『大変な違い』という事でし。
「シャオさんの膝枕で寝るのと頬杖をただついてるだけとは、そりゃあ違って当たり前でしょう。」
出雲しゃん、離珠の膝枕はどうでしか?
「それはさすがに無理だと思いますが・・・。」
えうー。離珠は美人じゃないでしか?
「いえ、大きさがやはり・・・。」


「美人に年なし」でし
「誰が何といおうと、これはシャオの事だ!」
「太助君、ルーアン先生を忘れちゃだめだよ!」
「乎一郎・・・。そうだな、シャオとルーアンだ!!」
とまあ、ふたりの強調により・・・。
『美人はいくつになっても若く美しく見える』という事でし。
「七梨も遠藤も、キリュウを忘れてないか?」
翔子しゃん、ナイスフォローでし。
「ついでに言うと、精霊を例えに挙げるのはどうかと思うぞ。」
翔子しゃん、それは悪いツッコミでし。


「美人は言わねど隠れなし」でし
これはもうシャオしゃまの事でしね。
シャオしゃまが初めて学校へきた日から、シャオしゃまの事は学校中に知れ渡ってしまったでし。
これもシャオしゃまがとびっきり可愛いから、でしね、太助しゃま!
「う・・・うん・・・。」
という訳で『美人は別に宣伝などしなくても、人から人へと評判を呼んで世間に知れ渡る』という事でし。
「ちょっと待ってよ、ルーアン先生だってすっごく有名になったんだよ!」
乎一郎しゃん・・・。
いきなりやってきた乎一郎しゃんにあっけに取られていると、太助しゃまがぽんと肩を叩いたでし。
「乎一郎、ルーアンの場合は騒動を起こしたから・・・だと思うぞ。」
「だったらシャオちゃんも一緒じゃない。」
「うっ・・・。」
太助しゃま、なんでそういう余計な事を言うんでしか。
ちなみにキリュウしゃんは・・・どんなもんでしかねえ?


「ひそかに諌めて公にほめよ」でし
『人に注意する時には人前でいさめることはできるだけ避けて、
人の見たり聞いたりしていない所でこっそりと相手をいさめ、
誉める時には人前で誉めてやるようにするが良い。
そうすればいさめられても自尊心を傷つけられないから、
率直に非を認めることが出来るし、また公にほめられれば自信を強めて、
一層良い人間になろうと努力もするだろう』という事でし。
「だからあたしはたー様褒め称え計画を実行するのよー!」
ルーアンしゃん、それはかえって迷惑になるだろうからやめたほうがいいでし。
「たまにはいいじゃないの。」
駄目ったら駄目でし!太助しゃまが困るんでし!
「関係ないけど、人を諌めようとした時に、“ちょっと後で・・・”
なんて言う奴がいるわよね。」
はいはい、だからそれはいいことなんでしよ。
「ふんっ、それは違うわよ。公でやると自分の威厳が損なわれると思ってるからやってるのよ。」
なんてこと言うでしか。それは違うでし!
「例外もあるってことよ。全部が全部、いい奴だとは思わないことね。
あたしは教師やっていて、そういう奴を見かけたわ。
生徒の前で堂々と言ってくれりゃあいいのに。
“ルーアン先生、後でちょっと・・・”ですって。
絶対あたしの事より、自分のことを考えてるって態度だったわ。」
うーん、そういう人も居るってことでしか。
でもそれはほんの少しだと思うでし。
「ともかく、少しは気を付けなさいってことよ。
“ああ、この人は考えてくれてる〜”なんていつも思わないことね。」
・・・ちょっと暗い話になっちゃったでし。
もう少し明るい例えがほしかったでし〜。


「左鮃右鰈」でし
『ヒラメとカレイとはよく似ていても体の左側に目がついているのがヒラメで、
右についているのがカレイだ』という事でし。
「まあ。それならお魚を選ぶ時には注意して見なくっちゃ。」
ところがでし!必ずしもこうとは言い切れず、
ヒラメの仲間にも右側に目のあるものもあるし、
カレイの中にも左側に目のあるものがあるでし。
ヒラメとカレイを区別するには口の大きさで区別する方がよく、
ヒラメは大きな口をしているのに対し、カレイはみな口が小さい、でしね。
「まあ。そういう事ならお魚やさんで選ぶ時もこれで大丈夫ね!」
「シャオ、無理しなくても店の人に聞けば分かるってば・・・。」


「跛馬宵から乗り出せ」でし
『遅いものは早くから出かけるように、早くから用意せよ』という事でし。
ここは離珠自ら実行でし!!
学校へ行くのに、離珠は自分は非常に時間がかかるので、
夜明け前にこっそり起き出してゴーでし!
そろりそろりと、シャオしゃまの部屋を抜け出したんでしが・・・。
「おや、離珠殿?」
キリュウしゃん!?なんと、見つかってしまったでしか・・・って、
こんな時間に何をやってるんでしか?
「目覚ましの案がなかなか決まらなくてな・・・。
気分転換にお茶でも飲もうかと思ったのだ。」
何やってるんでしか。起きる案だので夜更かししてどうするんでしか!
結局その後、離珠もキリュウしゃんも寝たんでしが・・・そろって寝坊してしまったでし。
「何やってんだよお前ら。もっと早く寝ろよな。」
那奈しゃん・・・ごもっともでし・・・。


「引越三両」でし
『引越をすれば何やかで出費がかかる。
じっとしていれば何でもないのに少しでも動けば多少なりとも金のかかるものだ』という事でし。
出雲しゃん、離珠はこの言葉は少し違うと思うんでし。
「そんな事はありませんよ。動けばお腹もすいたりしますし、
厄介事に巻きこまれたりもしますしね。」
けれども、こうして軒轅しゃんに乗って神社に来てる離珠は、いいものをもらっているでし!
そう、今離珠と軒轅しゃんは、出雲しゃんに呼ばれて特製の和菓子をご馳走してもらってるんでし。
「それはまあそうですが、わざわざここまで来なければならなかったでしょう?
軒轅さんも少しは疲れたのでは?」
軒轅しゃんを見ると、食べる手を止めてこくりと頷いたでし。
そうでし、離珠は乗ってるだけでしが、軒轅しゃんはお空を飛んできたじゃないでしか!
改めて気がついて申し訳なさそうにしていると、出雲しゃんがこう言ってくれたでし。
「そう細かい事は気になさらずに。楽しく召し上がってください。」
ちゅわ、ありがとうでし。


「羊の歩み」でし
今日はなんと、花織しゃんに頼んでお料理を作ってもらったんでし!
「できましたあ!でも二人だけなんて残念です・・・。
でもまあいいや。さ、どうぞ。」
そうでし。今家にいるのは那奈しゃんとキリュウしゃんのみなんでしね。
「おいキリュウ、お前が食べろよ。試練だぞ。」
「全ての試練は超える為にあるというわけではない。
那奈殿こそ、お腹がすいているのだろう?」
「あたしは別に・・・。」
「遠慮しないで・・・。」
ひそひそとつっつきあってなかなか食べようとしない二人。
しかし!結局は食べないといけないんでしよ〜。
食べるまで帰らないように花織しゃんに頼んだでしからね〜。
「もう、なに遠慮してるんですか二人とも。」
「き、キリュウが先に。」
「な、那奈殿が先に!」
こんな風に言い争っている二人はまさに!
『屠殺場に近づく羊の歩みという事で、死に近づくものの例え』という事でし。
「ちょっと離珠ちゃん、なんでそんな例えなの?
あたしの料理は屠殺場に向かうのと同じなわけ〜!?」
わっ、わわっ!こっそりと解説してるのがばれたでし!こうなったら逃げ・・・
がしっ
「そういう事だったのか離珠。」
「こうなったら離珠殿が食べられよ。」
ひ、ひえー!!
今まさに離珠の状況わああああ!!


「匹夫も志を奪う可からず」でし
これに関してははルーアンしゃんがよく言ってるでしね。
「な、なんであたしが・・・。」
とぼけても無駄でし!!ごみチビのくせに、とか小娘のくせに、とか・・・。
例えごみチビで、そんな事をいうのは許せないでし!!
「・・・分かったわよ。まったく、自ら匹夫を名乗るとは恐れいったわ。」
じゃあ約束して欲しいでし。
「はいはい。今後二度とそういうことは言いません。これでいいかしら?」
うむ、それでいいでし。
『どのような人であっても、その志は尊重しなければいけない』という事でし。
“匹夫”とは卑しい人、とかいう意味でし。
「・・・別に小娘の方は言って良いわよね。」
駄目に決まってるでしよ!!
「あら、小娘を匹夫なんて言っていいの?ちゃんと本人の許可を取ったの?」
くうう、意地悪でしい・・・。
「冗談よ。近頃言うようになってきたんで感心してんだから。がんばんなさいよ。」
ルーアンしゃんがそんな事を言ってくれるとは・・・。もちろん頑張るでしよっ!
「で、何を頑張るわけ?」
出雲しゃんのおかあしゃんの御菓子に埋もれて暮らすんでし!
「はあ?」
冗談でしよ。
「あんたね・・・。」


「必要は発明の母」でし
虎賁しゃん、離珠のことわざ辞典はどうして始まったか知ってるでしか?
「そんなもんおいらが知ってるわけねーだろ。」
ふふん、実はコレは、“ああ、色んなことわざの意味が知りたいー!”
と悩んでいる人のリクエストによるものなんでしよ!!
「・・・マジか?」
というわけで!
『不便で困っている時やどうしても必要な時は、
あれこれ工夫して考えるので、新しいものがつくれる』という事でし。
ちなみにこれは小説「ガリバー旅行記」に出てくる言葉なんでしよ。
「・・・やっぱ嘘くせーな。第一そのリクエストした奴は一体誰なんだよ。」
しょれは企業秘密でし。
「離珠が勝手にやりだしたことなんじゃねーのか?」
だ、だから企業秘密でしよ。
「はあ、やっぱりな。よく月天様も許したよなあ。」
だ、だから企業秘密なんでしってばー!


「旱に雨」でし
夏休み、太助しゃまとシャオしゃまと皆しゃんとで旅行へ出かけたんでし。
一週間というとぉ〜っても長い長い旅行だったでし。
帰ってきた時にはくたくたのボロボロ。真っ先に自分の部屋へ戻ってお休みしたんでし。
しかし、離珠はちょっと気になる事があって、こそっと起き出して庭先に出たんでし。
そこは以前太助しゃまにプレゼントした花壇があるんでし。
家を留守にしている間、雨が全く降らなかったのか、お花しゃんたちはぐったりと。
大変だと思ってシャオしゃまに呼びかけようとしたんでしが・・・。
相当つかれてたんでしねえ。ぐっすり眠ったまま、シャオしゃまは一向に目を覚ましてくれなかったでし。
それでも仕方なく離珠だけで何とかしようと、以前教わった雨乞いをやったんでし。
一生懸命に、旅行の疲れもなんのその、雨乞いの踊りを踊ったんでし。
すると・・・その願いが天に通じたのか、雨がざああっと!!
感激で、離珠は雨の中もまだ踊ってたでしよ。
『日照りが長く続いてからからに乾ききったところへ雨が降って、
全ての生物がいきいきとよみがえった様に喜ぶ事。まちあぐねる例え』という事でし。
「そんな事があったなんて・・・。ごめんね離珠、そしてありがとう。」
気にする事は無いでしよ、シャオしゃま。いい経験が出来たでし。
「それにしても雨乞いなんて誰に教えてもらったの?」
出雲しゃんでしっ。こんな事もあろうかと、離珠頼んで教えてもらったんでしよ。
「まあ・・・。偉いわね、離珠」
えっへんでし。


「人一寸」でし
離珠と虎賁しゃんを比べてみるでし!
「まあたしかに一寸くらいはちがうだろうな。」
見ての通り、全然違うでしね。
『ちょっと違ってもひどくちがって見える』という事でし。
「比べる対象が悪いって気もするが・・・。」
細かいと嫌われるでしよ、虎賁しゃん。


「一浦違えば七浦違う」でし
昔々、七梨村という漁村があったしょうでし。
村長の太助しゃま率いる村人しゃん達は、海へ漁に出かけて日々の糧を得ていたでし。
実はしょの周辺にも似たような村があり、同じく漁を行っていたそうでし。
ところがある日、魚がなんと一匹も捕れないという超不漁な日がやってきたんでし!
一日だけならまだしもしょれは何日も続き・・・食料の蓄えも何もかも尽きようとしてたでし。
これは困った、と頭を抱える太助しゃま。
とここで、そうだ他の村の人から少し蓄えを分けてもらおう、という考えに至ったんでし。
早速太助しゃまは、かこっていた…もとい、一緒に暮らしていた女性たち、
シャオしゃま、ルーアンしゃん、キリュウしゃん、そして姉の那奈しゃんにお出かけをお願いしたんでし。
ところが・・・。
「だめよ、たー様。山の向こうの遠藤村も不漁だそうよ。」
「太助さまぁ、お隣の愛原村も同じく不漁だそうですぅ。」
「太助殿、残念ながら山野辺村もだ。逆に向こうから頼みにこようと思っていたほどだとか。」
「太助ぇ、だめだだめだ。山頂の宮内村なんざ全然漁にならないそうだってよ。」
那奈しゃんだけ漁村とは違うところへ行っていたような気がするでしが・・・。
ともかく!不漁なのは太助村だけじゃなかったわけでしね!
『不漁の時には近くの村はどこも同じように不漁だ』という事でし。
結局いい解決方法も見つからず、皆で頭をかかえ・・・。
「おいぼうず!伝令だ!」
と、更に密偵として出かけていた虎賁しゃんが帰ってきたでし。
「北西の野村村なんだけど、そこも不漁だって話でさ。
で、そこの村人が話してたんだけど・・・
“やっぱりたかし村長が歌で漁をしてたのが問題では・・・”
だってさ。どう思う?」
どうやら虎賁しゃんは重要な情報をつかんだみたいでし。
なんと!たかし村長しゃんの熱血の歌漁が各村の漁に悪影響を!
また、『一人の失敗が同業者全体に悪影響を及ぼす』という事でし。
以上、これにて一件落着でし〜。
「・・・離珠、結局七梨村は?俺の村はどうなったわけ?」
ことわざ解説できたので丁度終わりで〜。
「こらー!」


「人盛んにして天に勝つ」でし
『人の勢いが強い時には一時は天理にも勝つものだ』という事でし。
「天理なんて大袈裟すぎるから、精霊ってことにしよう。」
さすが翔子しゃんでしね。・・・まあもとよりそのつもりでしが。
「対戦相手はキリュウ!」
「・・・別に構わないが、何を対戦するつもりだ?」
そうでし。喧嘩とかじゃあ多分翔子しゃんは勝てないでしよ?
「口喧嘩なら勝つ自信有るぞ。・・・って、そうじゃなくてだな。
我慢大会だ!丁度隣町であるんだ。賞品も出る。いっちょこれで勝負しようぜ?」
「・・・それは一体どういうことをするんだ?」
「そうだなー。あっつーいストーブの前であっつーい服を何重にも着て、
そこで鬼の様にあつい鍋焼きうどんを食べたり・・・あれ?キリュウ?」
キリュウしゃんなら“しゅんっ”って姿を消してしまったでしよ。
「ふっ、あたしの不戦勝ってことか。」
って翔子しゃん、キリュウしゃんは暑いのが苦手だから翔子しゃんが勝って当たり前でし!
「どうかなー。あたしも暑いのが好きってわけでもないし。
ま、話の時点で逃げ出してるようじゃあどう弁解もできないよな!」
さすがでし、翔子しゃん・・・。


「一つ事は同じ事」でし
「主殿。試練だ、耐えられよ。」
という言葉を、
「太助様ぁ。試練ですぅ、耐えてくださいぃ〜。」
というものに変えたところで、試練をやるには変わりないでしね。
『言い方は違っていてもつまりは同じ事だ』という事でし。
「・・・なあシャオ殿。」
「なんですか?」
「もしもシャオ殿が万難地天であったなら、今の様な言い方になるのか?」
「はいっ。翔子さんが、この方が太助様が喜ぶ、って。」
「・・・・・・。」
「あら?キリュウさんどうしたんですか?」
・・・・・・。
「離珠も。どうしたの?」
「い、いや、別に。」
翔子しゃん、変なことを吹き込んでは困るでし。


「人の事より足元の豆を拾え」でし
「例えばだ、離珠。」
なんでしか、虎賁しゃん。
「ことわざ解説をしっかりしてくだしゃい!なんて伝える前に、自分がしっかりしろ。」
失敬な!離珠はしっかりしてるでし!
「たまにならおいらも大目にみる。しかししょっちゅうじゃねーか、ロクな解説じゃねーのは。」
う、うー・・・。
「だからこの言葉は離珠のためにあるようなもんだ。」
虎賁しゃんだって解説とちったりしてるじゃないでしか!
「おいらは元々解説者じゃねーだろ。だからいいんだよ。」
そんなもんでしかねえ・・・違うと思うんでしがねえ・・・。
『多少考え方が利己的ではあるが、他人の事をかれこれ言うよりも
自分の事に注意せよ』という事でし。
・・・そうでし、虎賁しゃんこそ当てはまるんじゃないんでしか?
「は?だからおいらはことわざ解説なんて・・・」
違うでしよ!球技に関してでし!
「アドバイスはするが自分では出来ないだろうとでも言いたいのか?
甘いな。体格さえ整えば、おいらはスポーツ万能なんだぜ。」
そ、そうなんでしか?
「ああそうだ。なんならキリュウ姉に頼んで大きくしてもらえば真実がわかる。」
う・・・か、完敗でし・・・。


「人は人中田は田中」でし
『人は大勢の中で鍛えられるのが良く、田は真ん中にある田が良い田である』という事でし。
うーん、離珠にはよくわかんないでしねえ。
そうだ!!実際に田んぼを作ってみるでし。
とりあえず羽林軍しゃんに家を壊してもらって・・・後はなんとかすればいいでしね。
その前に太助しゃまに許可をもらうでし。
「だめだ。」
えうー、なんででしか?
「うちを壊して田んぼにするなんて絶対だめだ!!
第一、まわりが田んぼじゃ無いじゃないか。」
それもそうでしね。じゃあ他の家も壊して・・・
「だから駄目だってば!!」
というわけで、よくわからないまま終わってしまったでし。
はうー。


「人を見て法を説け」でし
「ふっ、これこそまさに私に言えるべき言葉ですね。」
「なんでおにーさんが関係あるのさ。」
「私が知っている女性に対する接し方等々、野村君達に言うべきじゃありません。
しかし、シャオさんなら私の言いたい事を・・・。」
「はいはい、そりゃすごいや。ついでにあたしにもそんなのは言わないでくれよ。」
「翔子さん、あからさまに拒否するのはいけませんよ。いいですか、話というものは・・・」
ちょっと待つでしー!!なんで勝手に二人で話を進めてるんでしかー!!
「離珠さん、これは私の使命なのです。いかに女性達に・・・」
「それはもういいって。で、離珠。
別にあたしたちが解説したって構わないだろ?今回離珠の出番は無いよ。」
な、なんでそうなるでしか!!これは離珠のことわざ大辞典でし!!
だから頼まない限りは離珠が解説するべきなんでし!!
「たまにはいいじゃありませんか。」
「そうだそうだ。翔子のことわざ解説記ってのもいけると思うよ。」
・・・今の二人に離珠の尊い意志を告げても無駄の様でしね。
『高邁な理想を愚か者に話しても役に立たないように、
相手を見て適切な行動を選ぶことが肝要だ』という事でし。
まったく、ちゃんと相手を選んで主張するべきだったでし。
「おいちょっと待て、今なんて言った?尊い意志だと?」
「離珠さん、そういうおごった考えには賛同できませんね。
しかも離珠さんの解説だと、私達が愚か者という事ですか?」
「ちょっと待てよ離珠。おにーさんとあたしを一緒にしないでくれ。」
「これは心外ですね。自分だけ対象から逃れようという行為こそ見苦しくありませんか?」
だああ、もう。またもや勝手に話を進めてるんじゃないでしー!!


戻るでし。