「これが新幹線ですかぁ」
「お待たせ」
がつがつがつがつがつ
「あ〜、美味しいわぁ(ハート)」
そして新幹線は、目的地に向い走り始めた。
窓際に座るシャオは流れ行く景色を見て溜息を吐いた。
ゴウッ!!
「きゃっ」
ゴワッ!
今度はトンネルに入ったのだ。シャオはトンネルの暗さで鏡のようになった
窓ガラス越しに太助と目があった。
がばっ
「「!!」」
彼女は不機嫌そうに起き上がり呟いた。
「・・・・・」
その場を非常に気まずい雰囲気が支配した。
では、今回はこれにて
2001年9月11日 ふぉうりん
彼女は初めての乗るのその新幹線という電車への第一声だった。
彼女の声は半ばその概観の大きさへの感慨と驚きに満ちていた。
「中は広いですね♪」
みんなとの旅行の為か、初めて乗る新幹線にわくわくしているのか、
彼女はやや浮かれ気味だった。
「シャオ、そんにはしゃがなくても・・・」
太助はやや苦笑気味で、シャオをなだめる。
「ねぇ、太助様。この『新幹線』って電車と軒轅ってどっちが早いかなぁ?」
「ほう、これが新幹線というものか・・・・」
キリュウは太助達より一足先に新幹線に乗り込み、
車内をきょろきょろしていた。チケットが自由席なので、
本来ならば早めに人数分の席を確保しなくてはならないのだが。
それは彼女の役目では無かった。
「あんた、きょろきょろしてないで、座ったらどうなの?
近くでぼーっと突っ立ってても鬱陶しいだけよ!」
彼女に不平の声を上げたのは、ルーアンである。
彼女はすでに人数分の席を確保して、駅弁を広げようとしていた。
「手厳しいな。ルーアン殿」
キリュウはやれやれといった感じで嘆息した。
「案外、ルーアンの言ってることも間違いじゃないかもよ。
通路にいつまでも突っ立ったら通行の邪魔になるからな」
「・・・ふむ、そうだな。座るとしようか」
キリュウは椅子にもたれるように深く座り込んだ。、
「ほう、これはなかなか快適そうではないか。これなら、可能だな・・・」
少し、嬉しそうに言ったキリュウは、ごそごそと荷物を漁り、
なにやら支度をはじめた。
「皆さん。お待たせしました」
「たー様おそい(ハート)」
「今までどこ行ってたんだ?」
那奈とルーアンの抗議の声
「太助様と一緒に皆さんの分のお菓子とジュースを買ってきました」
「おお、気が利くじゃんか」
「あれ? キリュウは?」
「ここに居るぞ。主殿」
太助は荷物の塊かと思った席からキリュウの声がした。
「わっ、キリュウ、一体どうしたんだ?」
キリュウはタオルケットに包まっていた。
「いや、な、今朝は旅の都合で早起きをしただろう。
その分を車中で取り戻そうかと・・・」
「それで眠る訳なのね」
「そうだ。すまんな主殿。折角の旅行だというのにこんな様で」
「べつにいいってば」
「では、おやすみ」
キリュウはその言葉と共にアイマスクを被って眠りにつこうとした。
「なぁ、ルーアンこの積み上げられた箱は?」
太助はルーアンの席の隣に積み上げられた箱の山を指差して言った。
「あ、これ? 弁当屋に見なれない御弁当が沢山あったから、
つい買い込んじゃった(ハート)」
御昼ご飯はシャオが御弁当を家から準備してきたのだ。
それでも買い込むルーアンに太助は少々呆れた。
「相変わらずだな」
「いっただきまーっす(ハート)」
彼女は本当に幸せそうに言った。
「ほぇ〜、新幹線って軒轅よりずうっと速いんですねぇ」
「人間の文明の利器のって凄いよなぁ」
「そうですね。太助様」
とその時、
シャオは対向線路の新幹線に驚きの声を上げた。
「大丈夫、シャオ?」
「はい。びっくりしただけです」
「そうかい」
シャオは太助に掛けれた言葉が嬉しかった。しかし、
すぐに「守護月天が御主人様に気を遣ってもらっちゃダメでしょ」
との考えがよぎり、シャオは窓側に顔向け、密かに複雑な表情をしていた。
なんとなく今の顔を太助に見られたく無いと思ったシャオは、
じっと外の景色をを窓ガラスに張り付くようにして見ていた。そして再び。
「「・・・・・あ」」
御互いの声が重なり合う。
「あの・・・太助様」
「なんだい?」
「太助様は、外の景色を見てたのですか? それとも・・・」
自意識過剰かも知れない、おこがましいことこの上ない考えだと
シャオは思ったが、今日は何故だかその続きの言葉が出た。
これは旅行という一種の特殊な環境でなせることかもしれなかった。
シャオは太助の方へ向き直りその言葉の続きを紡いだ。
「・・・・それとも私を見てたのですか?」
シャオは口にした途端、恥かしさで顔から火が出そうだった。
「・・・・」
自分のしている事を見事に言い当てられた太助も、
驚きに目を見開き顔を真赤にした。
「・・・・・」
太助様、怒ってらっしゃる? シャオは一瞬そう思った。
しかし、太助の表情が柔らかくなり、その思いが杞憂に終ったことを知って安心した。
「・・・シャオ・・・・俺はさ、欲張りなんだ」
「・・・・」
太助は言葉を続ける。
「俺はシャオがどんな景色を見ているか知りたい。知って一緒にその景色を眺めたい。
でも、そんな景色を眺めているシャオも俺は見ていたい・・・」
「太助様・・・・」
「なっ? 欲張りだろ?」
太助は赤い顔のまま。軽く片目を瞑りウィンクした。
不恰好な格好付けだったのだが、それでもその言葉はシャオの心の奥に響いた。
「・・・・太助様・・・・・」
太助は優しく微笑んだ。もはやそこは二人の世界が構築されつつあったが・・・・
「耳が、キーンとする・・・・」
「キリュウ?」
「キリュウさん?」
二人は声の主、キリュウの方に向き直った。
「キリュウは、いつから起きてた?」
するとキリュウは、頬を赤らめて、顔を俯かせた。
「その・・・急に耳鳴りがして、目が醒めてだな・・・主殿達の声が聞こえてきた。
悪いとは思いつつも耳鳴りが我慢できなくてな・・・・その申し訳無い・・・」
不可抗力の上、謝られてしまうと太助は文句を言う訳にもいかず、
シャオと二人で困った顔を見合わせた。
「・・・その、耳鳴りは耳栓でどうにかする・・・じゃ、邪魔をして悪かったな主殿、
シャオ殿、ではおやすみ」
キリュウは荷物から耳栓を取りだし耳に詰め、再び寝入った。
しかしその顔はまだ少し赤かった。
「・・・・・」
なんとなく取り残された感のある、太助とシャオは、
どうしたものかと困っていた。
「・・・・・太助様」
「・・・なんだい。シャオ?」
「あの、のどは、渇きませんか?」
シャオの口から出た気遣いの言葉、この言葉と気持ちを摘み取ってはいけない。
太助は強くそう思った。
「うん、そうだな。すこし飲み物が欲しいところだな、
御茶を貰えるかな? シャオ」
「はい(はーと)」
彼女は、持参した水筒で自慢の御茶を彼の為に煎れた。
太助は、シャオの煎れた御茶を一口呑む。
「やっぱり、シャオの煎れてくれた御茶は、美味いな」
シャオの御茶に舌鼓を打ち
「ありがとうございます」
シャオも満面の笑顔で答える。場所は違えど、いつも通りの会話だった。
暖かな空気が二人の間を満たした。
暫くして、彼らは目的地に到着した。
新幹線編終幕
あとがき
今回は旅行ネタということで、私が先日徳島へ行った時の事が
下地となっています。適当に起きた事をネタに書きお越しました。
ネタの出所は別途で書く「徳島旅行記」で。
今回は『新幹線編』ということで、今後見せ場が非常に危うい
シャオにスポットを当てました。次回は『名物料理編』か『温泉編』・・
つーか、タイトルだけで、誰が主役かばれてしまう(苦笑)あと
『観光編』はサボってましったのと、
月天ネタにするほでもないかなぁと思うので、多分少ししか書きません。
2001年9月30日 誤字など修正