炭化綿の応用 (菌着床性)


活魚輸送技術

 炭化綿の硝化菌着床性と、固形酸素を利用することで個別に魚を輸送する技術です。

 活魚を輸送するには、活魚車を利用しますが、本技術では一般の輸送車を利用できます。個別に梱包して輸送する技術です。
 これを実現するには、

1)水浄化法
2)酸素供給法
 を満たしていなければなりません。

1)の水浄化は、硝化菌着床を行なった炭化綿を利用出来ます。炭化綿シートを利用し、輸送形態に合った形状を工夫することで解決できました。
2)の酸素供給には、過酸化水素水をカルシウムに結合させた「固形酸素」が市販されています(大原商事
株式会社)。
 以上の二つを組み合わせることにより、図に示すような方法で魚を輸送することが出来ます。

 現在も検証を続けていますが、室温で一般の宅急便の利用が可能となりました。

宅配便での輸送実験(固形酸素との併用)

輸送に特別な装置や特殊車両を用いず、効率的な輸送が出来ないものであろうか。上述した菌着床炭化綿はその可能性を引き出すものである。完全密閉状態で、水浄化、酸素供給が可能であれば、実現できると考えられる。過酸化水素をカルシウムに結合させたもの(固形酸素:オーツーパワー;大原商事)が、市販されている。これは主に釣り業界で、一部釣り果を持ち帰る人が用いている。幾つかの活魚輸送実験が行なわれた経緯があるが、水の悪化がこれを活魚に応用する事を困難にしていた。この固形酸素を利用し、硝化菌着床炭化綿と組み合わせる事を試みた。に示すようなパネルを作成し、黒ソイを用いて宅急便による輸送を行なった。


 硝化菌シート(硝化菌着床炭化綿を不織布で被ったもの)をプラスチック製のネットで挟み込むようにしてパネルを作成した。これを水槽に合った形に組み立て、底に固形酸素を置き、ビニール袋にそっくり入れた。
 次いで海水を入れ、十分に酸素を通気して溶存酸素量を増やした。ここに黒ソイを入れ、ビニール袋の口を塞いだ。そのまま室温あるいは冷蔵で保存した。


上の図にあるように、魚は冷蔵保存し固形酸素4個を用いた場合、4日目まで生存した。

パネルの側面には菌着床炭化綿シートが挿入されており、底面には固形酸素が固定されている。菌着床炭化綿は湿重量で100g、固形酸素は50gのものを4個使用した。固形酸素は水に触れる事で酸素を発生するが、のような酸素発生パターンを示し、50gを使用した時には、約48時間で総量220mLの酸素発生が確認された。酸素は初期に多く発生し、時間の経過と伴に少なくなる。初期には、海水に十分酸素を吹き込み、溶存酸素量を極力増やすようにしたが、閉じた袋の中で、始めに溜め込んだ酸素と、固形酸素が発生する酸素との総量が、海水との平衡の中で溶存酸素を維持し、一定期間の魚の呼吸を支える事になる。

実験室内では、菌着床炭化綿との併用で固形酸素100gを使用した場合、4℃で約50時間の保存が可能であった。また、固形酸素200gを使用した場合、12℃で80時間の保存が可能であった。この結果を受け、実際に梱包を行なって輸送実験を行なった


 梱包の様子。固形酸素を入れ、海水を、満たし、酸素で通気後魚を入れて、ビニール袋毎発泡スチロール製の箱に入れた。温度を出来るだけ一定に保つためである。この状態で宅急便にて送付した。


固形酸素50gを4Lの海水に入れ、発生する酸素量を測定したもの。

魚は函館から愛媛県宇和島市、あるいは兵庫県赤穂市まで通常の宅配便によって輸送を行なった。使用した菌着床炭化綿の湿重量は100g、固形酸素は100gであり、宅配便では冷蔵を用いた。魚の梱包から、輸送配達され、開封するまでには、約48時間を要したが、固形酸素のみでは、魚は死亡した。しかし、菌着床炭化綿との併用を行なったものでは、生存していた。暖海性の魚では一定温度以下では死んでしまうので、常温輸送はさらに好ましい。従って、常温での輸送も試みた。季節は10月下旬であり、函館では昼間15℃前後、夜10℃以下である。一方、宇和島市あるいは赤穂市共に、昼間は23℃前後、夜15℃程度である。魚輸送用にトラックを仕立てている訳ではないので、昼間の温度上昇が、貨物室にどう影響するかは心配ではあったが、取りあえず温度は最大で25℃、最低で20℃前後を維持していた。使用した菌着床炭化綿は湿重量200g、固形酸素200gであった。この場合も、固形酸素のみでは死亡し、固形酸素と菌着床炭化綿との併用では生存していた。

常温輸送の場合、季節による温度上昇、あるいは低下が、一年を通じて大きく変動するので、さらに長期間の実証試験が必要である。しかし、保冷車などを仕立てる事は実際に行なわれているので、魚の種類に応じた輸送は可能であると考えられる。

考察

密閉された状態での輸送実験が成功した事は、今後の様々な輸送に十分対応出来る事を意味しており、大きく活魚輸送形態を変化させる事ができると考えられる。活魚を輸送する場合には大いに利用価値の高い素材であると言える。本稿では海水魚の例のみ挙げたが、もちろん淡水魚にも適用が可能である。従って、熱帯魚など、一般家庭でもすぐに水槽を理想状態に設置できるようになるので、失敗のないペット魚飼育が可能となる。また、高価な魚の海外からの輸送にも十分対応が可能であると思われる。

魚以外の輸送はまだ実験段階であるが、基本的には魚と同様、海水あるいは淡水によって満たした袋や容器に入れて輸送する事は可能である。特に、海老などは従来の大鋸屑での輸送と比べ、臭いなどの付着がなく、より新鮮に感じられる。