一般公募された後藤真希主演ミュージカルのプロットとして応募した作品です。
見事落選しましたので、せっかくなので公開してみます。
なお、応募要項は以下のようなものでした

『後藤真希ソロミュージカル(来春公演予定)のプロット募集
テーマは昭和40年代の東京下町を舞台にしたほのぼのした青春もの
締め切り9月20日。賞金200万円。1600文字以内で』

結局僕は3作品応募したのですが、その中ではこれが一番よかったんじゃないかなぁというのが以下のものでした。




『さよならが教えてくれた』

時は昭和40年代半ば。
場所は東京の下町。

下町の一角にお化け屋敷と呼ばれている古びた洋館があった。
明治時代に建てられたというその洋館は、今はすっかり老朽化し誰も住むものなく放置されている。
お化けを見たという噂のたえないその洋館は、この町の一種のシンボルともいえるような存在だった。

その下町で和菓子屋を営む一家の長女、茜(後藤真希)
ちゃきちゃきの下町一家で育った茜は、いつも元気で明るく男勝り、近所の子供達のリーダー的存在。

ある日、茜の子分格の小学生である「強」が、茜の家に駆け込んできた。
(そのころ茜は、商売もののせんべいに手を出したところを見つかって母親に怒られていた)
母親から逃げ出すいいきっかけをつかんだ茜は喜んで強のところへ行く。

強「姉御!姉御!たいへんだ!!」
茜「おう!どうした八兵衛?」
強「はぁ?八兵衛??何言ってんだ姉御」
茜「姉御って呼ぶな!助さんってお呼び!」
強「え〜?何言ってんだよ?」
茜「なんだよ強、あんた昨日の水戸黄門見てないの」
強「なんだよそれ、そんなの知らないよ」
茜「おっくれてんな〜。今流行りなんだぞ。この紋所が目に入らぬか〜ってな」
(紋所を見せるポーズ。茜は紋所のかわりにせんべいを使用。
 ちなみに水戸黄門は昭和44年8月に第一回放送が開始され、八兵衛は昭和45年の第2シリーズより登場)
強「ただのせいべいじゃねぇかそれ」
茜「あんだと、口答えするのか八兵衛のくせに」

強によると、お化け屋敷で髭を生やした紳士のお化けを見たらしい。
半ば笑い飛ばしながらも、これ幸いと母親から逃げるようにお化け屋敷に向かう茜と強。



お化け屋敷に入る2人。
しばらく探検した後(怖がりながらの探検シーン)、2人は一人の少女(葵)と出会う。
それは透き通るような白い肌の、きれいで、でもどこかはかなげな少女。
その少女は今のTVや流行のことを何も知らない不思議な娘だったけれども、3人はすぐに打ち解ける。

やがて彼女の父親と母親が現れる。そしてその父親というのは強が見たお化けだった。
強「なんだ〜お化けかと思ったよ」
茜「あんた本当にうっかり八兵衛だな」
そんな風に笑いあっていた2人だが、やがて彼らの姿が鏡に映っていない事に気づく。
彼ら(親子3人)は本当にお化け(幽霊)だった。

「わ〜っ!!」
逃げ出す2人。
強「妖怪人間だよあいつら」(妖怪人間ベムは昭和43年〜44年放送。こういう時事ネタも随所に絡めるといいかもと思う)
茜「でも、そんなに悪い人達に見えなかった・・・私達が逃げ出す時のあの娘・・・すごく悲しそうな顔してたよ・・・」
茜の脳裏から、お化けだと言われて本当に悲しそうな顔をしていた葵の顔が離れなかった。



葵の事が気がかりで、結局もう一度お化け屋敷に向かう2人。そして仲直り。友達ができたことを喜ぶ葵。

茜の子分たちも葵と仲良くなり、幸せな日々が訪れる。しかしそんな日は長く続かなかった。
このお化け屋敷を取り壊すという計画がはじまったのだ。そこに映画館を建てるために。
葵たちはこの家に憑いているので、この家がなくなれば永遠のお別れ。

なんとか取り壊しにならないようにと動く茜と仲間たち。
だけど無理だった。葵たちのことなど信じてもらえるわけもなく、映画館はこの町の人達がみんな待ち望んでいた施設。
抗うすべなどなかった。

葵が茜達にお願いする。
葵達が成仏できなかった理由は、歌手としてデビューする寸前だった葵がその夢の直前に病死したことの無念さが故だった。
最後に大勢の人の前で歌を歌いたいと願う葵とその両親。

その願いを聞き届けるべく、取り壊しの前日、お化け屋敷にてコンサートを企画する茜達。
歌うのは茜。しかしそれは音痴で有名だった茜ではなく、葵が茜の身体を借りて歌を歌うと言うもの。

葵と茜による最初で最後のステージは、トラブルがありながらも大成功を収める。
そして葵と両親はそらへ旅立っていった。
涙で見送る茜。


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すっかり取り壊されてただの空き地になってしまったお化け屋敷の跡。
強「いっちゃったね・・・」
茜「うん」
そして茜は空を見上げ、
茜「ありがとう・・・・そして、さよなら」
今度は笑顔で告げられた。

一人の少女が大人に成長した瞬間かもしれなかった。


(終幕)








◆合格者が発表になった今になって読み返してみて思う事。つまりはあとがき。


2331通の応募の中から見事合格したプロットの中身はだいたい以下のようなものだったようです。
『後藤が演じるのは、「サントワマミー」が大好きなオヤジが経営するもんじゃ焼き屋の娘。その向かいに大阪からお好み焼き屋が引っ越してくる。こちらは「君といつまでも」が大好きな家族で、ライバル関係に…。両家の娘は親のケンカを止めるために、商店街主催のイベントで「ミニスカ漫才」を披露する。当時の流行をふんだんに取り入れた笑いあり涙ありの青春グラフティーだ』

その「サントワマミー」とか「君といつまでも」を無理矢理絡めてるところはどうかなぁとも思うのですが、やっぱミニスカ漫才ってのはインパクトありますよね。あと、もんじゃ焼き屋vsお好み焼き屋って設定も何かと色々出来そうです。
ま、とにかくインパクト。これは確かにありそうで、やっぱそこの勝利なんだろうなぁって思います。
一般公募してつのるってことは、それなりにぶっとんだ作品を事務局側も期待してたんだと思うのです。そう考えると僕が書いたのはいかにも普通。まぁそれなりにはまとまるだろうけれどもって感じで、素人ならではの無茶が足りないよなぁって反省してたりします。だめだこの程度じゃ。

ってことで、まぁしょうがないのかなぁって感じなのですが、今回このプロットを書いて一番苦労したのは実は文字数制限。1600文字以内って設定がきつかったです。
最初文字数とか考えずにだーって書いたんですよ。そしたら3000文字近くありました。
で、それを1600文字に削っていくのが辛かった。
もっと文字数無いと伝えたいニュアンスが表現できないよぉって感じで。

最初は、茜と強がお化け屋敷をはじめて探検するシーンは、実際の芝居でこんなシーンとか台詞回しがあればおもしろいなぁとかかなり細かく書いてたんですよね(暗い部屋に入ったらいったん照明を全部消して驚かすとかそういうの)
あと、お化けって言葉に過剰に反応してすぐネガティブになってしまう葵とか、そんな葵がはじめて茜達の前で歌を披露するシーンとか(普段は内気な葵がはじめて勇気を出す&茜つまり後藤が思いっきりへたくそに歌って笑いをとる)
そういう僕の頭の中にあるもの全部書かないと、最後の盛り上がりに繋がって行かないんだよなぁってもどかしく思いながら、それでもちゃんとまとめるのが文章力ある人なんだろうなぁって思って、でもうまくまとめることが出来なくて。あぁもういいやって感じで最後の方はかなり無理矢理事実だけの描写にしてって感じが、今読み返してみてもありありと感じます。もう本当まとめるの下手。

ただ、今にして思えば、これは脚本ではなくプロットの募集なわけなので、もうまとめるなんてこと放棄して、訴えたい事を箇条書きで書くくらいな開き直りがあってもよかったのかなぁって思ってます。
こんな風に中途半端になっちゃうくらいならば。

ま、そんなこんなであとがきなんだか言い訳なんだかってかんじなんですけども、いい勉強と経験になったのでよかったなと。本当思います、はい。
あと、茜ちゃんとか葵ちゃんとか強くんとかをそのまま闇に葬らず、こうやって公開できるのも嬉しかったりします。たかが1/2331だけど、でもそれなりの思いがそこにはあるので。


(あとがき おしまい)


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