燃える樹林




 ジューローは、頭上に垂れ下がって来ていた枝をぽきりと折った。その衝撃で、2枚ほど葉がはらりと落ちる。
 邪魔なものを排除しただけだが、何となくしばらくその枝を持ったまま歩く。
 最初この階層に入って真っ赤に染まる葉を見たとき、ジューローは、赤子の手のような、と表現するのだったか、と遠い記憶を呼び起こした。まさかこんな雪に埋もれた異国で、そんなものを思い出すとは思わなかったジューローは、迫り上がった奇妙な衝動にしばし狼狽えた。
 赤く揺れる森を歩いていると、まるで故郷に戻ったような錯覚に陥る。
 紅葉狩り。酒を飲む男たちに、きらびやかな衣装をまとった女たち。無論、子供たちは、紅葉の何が面白いのかは分からなかったが、それでもお祭り気分だけは十分に味わった。
 昔の…話だ。
 まだ一族が、重要な地位を占めていた頃の遠い想い出。
 細い枝を回すと、真っ赤な葉がかさりと音を立てた。
 まるで森が燃えているようだ、と最初の頃こそ驚いていた異国人たちは、すぐにその景色に慣れたようだった。
 この森に入るたび、何か固いものを無理矢理飲み込んだような違和感を覚えるのは、ジューローただ一人。
 5つに割れた葉の形は異国人には奇妙に見えるらしく、世間知らずの僕ちゃんは落ちている葉っぱを拾ってはまじまじと見ていたものだった。
 「何だか、軍鶏の足のようだな」
 サナキルはひらひらと葉を回しながら、『手』には違いないが『赤子の手』とは全く異なる感想を漏らした。
 「僕は、あの、軍鶏という奴が苦手でな…鳥の癖に生意気だと言うか、喧しいと言うか」
 ぶつぶつ言いながら、ぽいっと葉を捨てた。まるで汚らわしいものでも捨てるかの如くに、眉を顰めて。
 不愉快だと認めたくは無かった。故郷の想い出を汚された気がするなど…とっくに捨てた国のことなど、大して美化もしていないはずなのに。
 けれど、心のどこかでほっとしているのにも気づいていた。これで、このじくじくと痛む胸の不快さを、サナキルのせいに出来る。この景色がジューローの故郷に近いなどと知るはずもないパラディンを、他人を慮ることの出来ない無神経な馬鹿だと嘲笑うことが出来る。
 今まで以上にきつく当たられているのには気づいているだろうが、サナキルは相変わらずジューローの隣でどうでもいいことをさえずり続けていた。
 おめでたいにも、ほどがある。
 まったく…こんなイライラする階層など、さっさと抜けたいものだ。
 

 そんなジューローの思惑を知ってか知らずか、探索はジューロー抜きで行われることも多かった。
 まずは、新しく入ってきたペットたちを採集メンバーとして鍛えること。
 それから、ウロウロと邪魔をするカボチャ頭を倒すこと。これは、どちらのパーティーも試してみた。そして逃げる羽目になった。
 南瓜の分際で、火炎に抵抗するというのは何なのだ。大人しく煮物になっていればいいというのに。
 まともにダメージが通るのは、ピエレッタの毒だけ。それもかかるかどうかは運次第。
 ということで、ネルス(ヘッドバッシュで頭が殴れたら良いなぁ、ということで)、バースとアクシオン(キャンドルペイン回復用)、ファニー、ピエレッタ、という変則パーティーで何度か挑戦しに行ったのだ。毒がかかったら、後はその毒が回るまで耐える、という消極的な戦法である。
 そんなやられる方はたまったもんじゃない嫌らしい戦法でも、倒した方が勝ちである。おかげで採取場所にレンジャーたちが行く時に、カボチャの警戒までしなくて良くなった。
 そうやって、地道に地図が埋まっていき、石化されて這々の体で逃げ出す羽目になったりしつつも、どうにか7階への階段が見つかった。
 もっとも、7階に上がっても、どのみち景色は変わらなかったが。


 7階に上がって、またカボチャにまとわりつかれながらも地図で言えば左の方を確認し終えたネルスたちは、今度は右へと向かった。
 扉を開けると、そこは広場になっていた。
 だが、その地面は、今までとは異なっていた。
 「何やの?何か黒いツタみたいなんが蠢いとるけど…」
 ピエレッタが、その辺に落ちていた枝で、その色の変わった地面をつんつんとつついた。
 「うわっ、気持ち悪っ!」
 枝にしゅるりと黒いツタが絡まる。まるで蛇のような動きに悲鳴を上げて、ピエレッタは枝を取り落とした。
 だが、やはり生き物ではないのか、黒いツタは落ちた枝に絡まるだけで、地面に引きずり込んだり噛み付いたりしたりはしていない。
 「ある種の植物は、支柱を求めて蔓を伸ばすが…こやつらも、その速度が異様に早いだけで、攻撃をしているつもりは無いのかもしれんがの」
 「ですが、鋭い棘がありますから、あちらは攻撃しているつもりでなくとも、こちらはかなりのダメージを負いそうですわ」
 ネルスは、目を細めて奥を見やった。伐採出来そうな箇所もあることだし、出来れば安全を確認しておきたい。
 バースの回復が追いつく限りは、何とか地図を埋めるか、と口に出しかけて、鋭く走った小指の痛みに苦笑した。
 <馬っ鹿野郎!棘床なんぞ踏むんじゃねぇぞ!?んなことしたら、ぜってぇやらしてやんねぇからな!>
 遮断しなかったせいで、この光景はショークスの知るところとなり、慌ててネルスに念を送ってきたらしい。
 <…しかし、そうは言ってもな…>
 <俺が行くからいいの!お前らは棘床無しで行ける場所の探索でもしてろよ!>

 かつて、エトリアの迷宮で、ネルスとショークスは散々棘床を歩き回った。ネルスにとって棘床は、自分の体を効率的に傷つける場所でしか無かったが、ショークスは歩き回るその間に、何とかダメージ無しに歩く方法を模索していたらしい。
 その結果、ショークスは、棘床でもうまく棘を避けて歩く術を身につけているのである。
 この広間のあちこちに出現している棘床を見ていると、それを避けて探索するのは少々気が咎めたが、無理に押し通ってショークスの機嫌を損ねるのも後が面倒くさい。
 「ともかく…棘床を避けて、行けるところまでは行ってみるか。どうしても、棘床を通らねば先に進めぬ、となれば…まあ、さすがに通るしかあるまいが」
 後半は半ばショークスに聞かせるつもりで宣言し、その広間を後にした。
 とは言え、その先の道にも棘床が広がっていて、完全に無傷で通るのは難しそうだったが。
 遠回りになりつつも回廊のような道を抜けていく。
 突然襲いかかってきた食人植物に腕を縛られつつも、何とか倒してみるともう代替わりの時期だったのか球根がぽろりと落ちてきた。
 何の気なしに拾い上げたピエレッタが、また悲鳴を上げる。
 「うわ、動いとるし!気色悪〜!」
 思わず放り投げた、中に何かが入っているかのようにうにうにと蠢いている球根を、エルムが拾い上げた。
 「…えーと…うん、これ、依頼に入ってますね」
 バースがごそごそとメモ用紙を取り出し、確認する。
 「確かにの。蠢く球根…というのは、これじゃろうのぅ…お味のほどは、保証せんが」
 フロースの宿の女将から、料理用食材を依頼されているのである。こんなところまでやってきて、これを倒して球根をゲットしていくとは、宿の主人、侮りがたし。
 「はよ、しまってや!きっちり袋に入れてな!」
 まるで中から何かがうぞうぞと出てきそうな動きに、ピエレッタは背筋の毛を逆立てて後ずさった。
 「火を入れると、動きが止まるのかもしれませんね〜…夕食に出てきたら、どうしましょう」
 「うひー!」
 動かなければ、ただのタマネギかニンニクかもしれないが、この動きを見てしまってからでは、とてもじゃないが食べたいとは思わない。
 「…一応、樹海料理は、あの宿の名物料理らしいからな…食事に金を払う客用だろう」
 食事込み下宿代を払っている人間にまで希少な原材料から料理を作っていたのでは割に合わないだろう。まあ、自分で採って来られれば無料であり、どうも宿の主人は今まで自分で採ってきていたようだが。
 だが、ネルスの説得力ある推測を聞いて、ようやくピエレッタは落ち着いた。
 「ま、まあ、世の中には、蛇を丸飲みする料理もあるしな…問答無用で食べさせられるんでないなら、えぇか」
 胸を撫で下ろし、大きく息を吐く。もっとも、荷物に入れた球根からはなるべく遠ざかっていたが。
 そこから回廊を抜けたが、やはりどうにも棘床を通らねばならない場所もあった。
 先頭のネルスが、手斧で蔓を払いつつ通り抜けると、そこには上へと通じる階段があった。
 「地図は?」
 「まだまだ埋まってませんね〜。左半分がすかすかです」
 苦笑しながらファニーがひらひらと振った地図を見て、それを埋めることを優先するかどうか一瞬悩んだが、もしも上に磁軸があるなら便利だ、とともかく確認することにする。
 8階もまた、赤く燃える森だった。
 期待通り、少し歩いた先に磁軸柱がある。
 起動しておいてから、下を埋めるか、と帰ろうとしたとき。
 ネルスは、ふと歩みを止めた。
 背後に強い視線を感じる。
 ファニーも、じわりとスカートを引き上げ、銃に手を伸ばしている。
 二人の様子に気づいたのか、他の3人が怪訝そうな目を向け、ピエレッタが「何かあったん?」と声を上げた瞬間、草むらががさりと音を立てた。
 エルムとバースもそれぞれを武器に手をかけたが、ネルスはゆっくりと首を振った。
 「…気配は、去ったな」
 「何でしょう…獣ではないように思いましたけど〜」
 念のため辺りを確認したが、小さな木の実が落ちているだけだった。
 ネルスは、ふと、エトリアのモリビトを思い出した。ネルス本人は、大して会ってもいなかったが、樹海に潜む先住民がいて、冒険者と敵対していた、というくらいの知識はある。
 同じような人工の迷宮に、同じような『人ではない知性ある原住民』がいてもおかしくはない。
 敵対することになって、相当滅入っていたリーダーの様子を思い出して、出来れば話したくはない、とは思ったが…何も言わずに遭遇するよりは、事前にその可能性について考えておく方がマシだろう、と思い直す。
 少なくとも、いきなり襲われることはなかったのだ。今回も敵対する種族とは限るまい。
 もしも、敵対する『人間に似た種族』だった場合、このパーティーはちゃんと敵を殺すことが出来るだろうか、とネルスはこっそり己の仲間を見回した。
 自分は平気だ。相手がたとえ人間そのものでも、敵ならば倒せる。ファニーも若様のためなら迷うことなく排除するだろう。バースは…相手が女性形でなければ大丈夫そうだ。仮にも騎士の従士を数十年も勤めたのだから、青臭い感傷などには左右されないだろう。
 問題は、エルムとピエレッタ。
 エルムは命令すれば従いそうだが、後で延々悩みそうな気がする。ピエレッタに至っては、悲鳴を上げて拒否しそうだ。
 もちろん、この子供たちの反応こそが、一般人の反応なのかもしれないが…冒険者としては不便だ。
 精神的な外傷を与えるのは本意ではない。最悪、敵を殺せるメンバーだけが残るという手もある。現在、ギルドには16名(3匹の雪狼含む)もいるのだから。
 …願わくば、あれが敵対する種族などではありませんように。もしも、敵対するならば、人間とはかけ離れた姿をしていますように。


 帰ってから、リーダーに状況を報告すると、予想通りイヤそうに顔を顰めた。が、動揺はせずに、「ご苦労さん」といつも通りに労われた。
 ショークスと情報交換し、ゆっくり休んで夜が明けて。
 まだ早朝ではあるが、ぎりぎり他の人間が起きていそうな時刻に、裏庭に出ていく。
 そこには、先客がいた。
 「おはようございます」
 「…先を越されたか」
 積まれた丸太の前に、斧を手にしたアクシオンが立っていた。寝衣ではなく部屋着なのだが、どこか気怠そうな空気もまとっていて、夕べは相当だったことを思わせる。
 更に体力を使うようなことをしていいのだろうか、今日はそちらが探索だろうに、とは思ったが、メディック相手に体力を心配するのも何だったので、黙っておいた。
 そのまま無言で丸太を引き出す。
 斧を振り上げ打ち下ろすと、甲高い「かーん」という音が静かな朝に響いた。
 ネルスには背を向けて、アクシオンも丸太を割り始める。
 次々に積み上がっていく薪は、宿に依頼されたのではなく、サービスでもない。
 20分ほどすると、ネルスの方は規則正しいリズムで薪割りが続けられていたが、アクシオンの方は、やや遅れがちになっていった。
 ふぅ、と溜息が聞こえる。
 「…体が辛いのならば、何も今朝せずともよかろうに…」
 薪割りを続けながら呟くと、アクシオンの視線を背中に感じた。
 「後背筋に効くんですよね、この運動」
 だからこそ、ネルスもしているのだが。斧で敵を倒すには、腕の筋肉よりも背中の筋肉を鍛えた方が良い。もちろん、杖で殴るのも同じだろう。
 「自分で選択したことではありますが…筋力が弱ってて、ちょっと辛いんですよね」
 苦笑して、アクシオンはまた木ぎれを切り株の上に置いた。
 がん、という音と共に、真っ二つではなく欠けるように割れた薪を見て舌打ちする。
 「筋肉が付きにくい体質か?」
 ネルスは、鍛えた分だけ筋肉になる質である。カースメーカーであった頃にはむしろ不便な体質だったが、今はそれがありがたい。もっとも、さぼるとその筋肉はすぐに脂肪になるのだろうが。
 「見た目を優先しましたので。男性らしい筋肉質と、この外見を維持するのって、相反してるんですよ」
 ネルスは手を止めて、背後を振り返った。
 白くて柔らかそうな頬の10代後半の少女のような顔。部屋着に包まれているが、体も男性的と言うよりは中性的なのだろう。もちろん、胸までは無いが。
 「…ルークは、お前が男であることは、十分認識した上で惚れているのだと思うが」
 「えぇ、もちろん、ルークはそうです。俺にすね毛が生えようと、無骨な体になろうと、俺を離縁したりはしないでしょうが…」
 アクシオンは己の頬を撫でた。化粧品の威力とは言え、本当に10代少女の肌に劣らないと自信を持って言える。
 「でも、周囲の人間はそうでもないでしょう。俺があんまりにも男らしい外見になると、あんなのを<妻>に選ぶなんてどうかしてる、とルークが馬鹿にされる可能性があります。ま、一種の意地ですね。あぁ、こいつならそんじょそこらの女よりも良いな、と周囲に思わせたいんですよね」
 ネルスは、よく分からん、と眉を顰めながら聞いた。ネルスも男が<妻>ではあるが、ショークスが女性的であればよいなどと思ったことは一度も無い。というか、周囲にどう思われるかなどということ自体、考えたことが無い。
 「いつまでも若くて美人の妻、というのは、男のロマンでしょう?性別で世間的に後れをとっている分、そっちでポイント稼ごうと。…ただ、そうすると、筋肉が付かないのが欠点で」
 アクシオンは溜息を吐いて、ぐるぐると肩を回した。
 「俺はルークを守りたいのに」
 あぁ、なるほど、夕べの『異種族遭遇(?)』は、むしろこっちに効いたのか。
 もちろん、ルークの心にも某かの細波が立ったからこそ、アクシオンが反応しているのかも知れないが。
 ネルスは他人の夫婦事情に口出す気は無いので、また無言で薪割りを始めた。
 斧を振り上げ、的確な位置に振り下ろす。単純な動作だが、そのつもりでやれば、結構な筋トレになる。背後でも、また薪割りが始まったが、ネルスのものとは異なり、何となく音が不均一でばらばらだ。最大瞬間筋力も足りないが、持続力も落ちているらしい。
 焦って筋トレしたところで、すぐに効果が出るわけでもない。今日のところは諦めて、また明日にでも回せばいいだろうに、と一瞬思ったが、アクシオンの筋力が付いて攻撃力が増せば、その分、敵を倒す可能性が増す。つまり、ショークスが怪我をする可能性が減るということだ。そういう意味では、アクシオンの筋トレを心から応援したい。
 ただ、アクシオンが杖で殴る、ということは、前衛にいるということで、敵から攻撃を受ける確率も高いということでもある。
 一般的に、メディックは鎧に制限があって他のメンバーよりも薄い。攻撃を受けたら他の者よりもダメージは大きく、戦闘不能になる可能性も高い。メディックが戦闘不能になると他のメンバーの回復が出来なくなってしまう。
 けれど、自分が後衛に回って身の危険を少なくし、その分他のメンバーに回復をかける余裕が出来る、という方向性の守り方にはならないらしいアクシオンは、やはり好戦的なのだろうと思う。
 まあ、前に立って的を散らしてくれる分、後衛のショークスには被害が及ばない可能性もあるし、どちらがショークスのダメージが少なくて済むのかははっきりとは言えないので、他人のパーティー隊列には口を挟まないことにする。
 前衛がきっちり攻撃を受けきって、なおかつ、もしも後衛が怪我をしたならすぐに回復してくれる、というのが理想だが…なかなかそうもいくまい。
 あのパラディンが、パーティー全員をしっかり守れるようになればよいのだが、とネルスはサナキルの姿を思い浮かべた。
 金髪に青い目、と表現すると、ショークスと同じになるのだが、落ち着いたしっとりした色合いのショークスとは異なる明るくさらさらとした金髪に、鮮やかな空の色の目は、妙に子供っぽいというかヒヨコを思わせて、どうも頼りない。まだ少年に近い体躯で大きな盾を構えているのを見ると、正直危なっかしいと思う。
 同じ大きさの盾を腕に付けている元カースメーカーのソードマンは、やはり出来ることなら自分の手でショークスを守りたかった、と息を吐いた。
 自分の手で、ショークスを守って、ショークスを回復して、ショークスを傷つける敵を倒して。
 <…熊にでもなってろ>
 呆れたような声が響いた。
 <考慮の余地はあるな>
 ショークスを庇って、傷を舐めて癒して、攻撃もできるなら、獣になるのも悪くない。
 人が獣になる呪いについての文献を思い出していると、ショークスの怒鳴り声が響いてきた。
 <俺、絶対、獣×の趣味はねぇからな!けだものは今でも持て余してるっつぅの!>
 <それは残念>
 ネルスにもマニアックな性癖は無いので、冗談半分に軽口を叩いて、また薪割りを始めた。
 背後のアクシオンも、ゆっくりながらも着実に薪割りを続けている。
 いくらこの国が寒くて薪が必要とはいえ、これだけ量産すると場所も取って仕方がない。まあ、この辺に積んでおけば、女将が適当に売りさばくだろう。宿の少女の小遣いくらいにはなるかも知れない。
 この行為が迷惑ならば、毎日丸太の補充もあるまい。文句も言われていないし、これからも続けることにしよう。



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