旧文明




 さくさくと降りていって18階を通ったが、まだモリビトたちは襲ってきていた。少女の通達が間に合っていないのか、そもそも聞く気が無いのか、ここは譲れない土地なのか。
 気の毒だが、襲いかかられても手を出さないという約束はしていないので、いつも通り普通に倒していった。
 19階を転送であっさり抜け、20階へ降りると、そこはひどく静かだった。
 地図を見ながら奥へと進んでも、小動物の気配も、モリビトの気配もいっさい無かった。
 この階は少女の通達通り冒険者には手を出さないことになっているのだろうか。
 そして、何とも出逢わないまま階段へと辿り着く。
 相変わらず青みがかった光に照らされた階段へと踏み込んだ。
 そのやたらと長い灰色の階段を一段一段降りていく。
 「…ものすごく、整然とした階段だよな」
 「そうね、段差が同じみたいだし、幅もおんなじ。完全に人工なんだろうけど…」
 「何故、<誰も到達したことのない迷宮>に人工の階段があるのか、という…」
 かつん、かつん、かつん。
 灰色の階段は規則正しく延びている。
 2回ほど踊り場があって方向が変わったが、更に降りていってようやく、廊下らしきところに降り立った。
 ルークとカーニャは、吸い寄せられるように窓へと向かった。リヒャルトは周囲の気配を探り、グレーテルは腰を屈めて降りてきたばかりの階段と床を触り、アクシオンは壁を撫でた。
 「…あれは、何だ?」
 「これ、何?水晶?」
 同じように窓に向かっても、ルークとカーニャは別のものを見ているようだった。
 ルークの目に映っているのは、外。腕を伸ばしてみたが、間違いなくそこは空気だった。その遠くに青みがかった景色が見える。ところどころ緑に覆われてはいるが、四角く塔のようにそびえ立っている灰色の建物が幾つも伸びていた。
 果てが見えない、と言うことは、この広い迷宮の外には、更に広い空間があった、ということだ。
 だが、覗き込んでみても、下は見えない。うっすら見えるのは緑ばかり。
 この光景から類推するに、この迷宮も緑に巻き付かれた灰色の塔の一つで、その一番上から枯れ森へと続いている、というのだろうか。
 「…だったら、世界樹の根っこってのはどこにあるんだ?」
 樹木は下から水を吸い上げ葉を茂らせる。
 豊かな水をたたえた3階層の上はジャングルで、枯れ森の上は樹木ではなく岩に張り付いた海藻のようなものが多い岩場、だから、枯れ森の下には、あまり水は無いのだろうとは思っていたが…いくら何でもこんな光景は想像していなかった。
 「いたっ!」
 カーニャの声に、視線を近くに戻す。
 人差し指を見つめて顰め面をしているカーニャは、どうやら窓に入っている水晶のようなものを触ったらしい。
 「…ガラスのようにも見えますが…失礼」
 アクシオンが杖でその辺りを突いてみると、がしゃん、と音を立ててそれは砕けた。
 「やっぱりガラスなの?全然色が無いんだけど」
 「感触はそのようですね。本当に、全く透明なものを見たのは初めてです」
 透明なそれを拾い上げると、断面が鋭くて刃のようになっていた。
 頭の中で情報を検索する。
 ガラス細工が得意な街、というのは幾つかある。だが、どれも色つきのもので、こんなに完全に透明なものでは無い、と聞いたように思うのだが。
 「自分は一度だけですが、ほぼ無色のグラスを見たことがあります。本当に小さなものでしたが」
 さすが聖騎士さまの家系、王宮あたりで見たのだろう。
 「…もうちょっと思い出したぞ。確かある種の砂と水、それから高熱…だったかな。…でも、こんな完璧真っ平らで完全に透明ででっかいガラスなんて、聞いたことが無い」
 「つまり、我々よりも進んだ文明、あるいは接触したことのない文明の遺跡、ということですか?」
 「…その、可能性が…」
 ルークはもう一度外を見た。森に埋もれた建物は、相当の高層に見える。
 「バベルの塔ってな話があったよな。あまりにも高い建物を作った人間が、神の怒りを買った、とか言う…」
 神の怒りなんて信じないルークだが、それでもこの朽ちて樹木が壁面に這っている建物を見ていると、滅び、というものについて考えざるを得なかった。
 「とにかく、進もうか。ガラスの破片に気を付けて」
 いつも通り階段を降りて右に曲がると、どうやらそこは外周だったようだ。右手にずっと窓が続いている。
 割れたものもあれば、かなり大きさが残っているものもある。
 「これって持って帰ったら高く売れるんじゃないの?」
 「かもなー。…綺麗に切り取って、無事持ち帰る方法が分かれば、だけど」
 角を曲がり、階段は見つけたがとにかくこの階を探索しようとメモだけしておく。
 更に曲がると、扉を見つけた。
 普通にいつも通り押し開けようとしたルークは、がちゃ、という音に眉を顰めた。
 「何?鍵かかってんの?」
 「いや…ドアノブだ」
 グレーテルが覗き込んだが、ルークが捻るとあっさり開いたので、なーんだ、と呟いた。
 「…でもさぁ…完全に、異質な文明ってんじゃ無いんだよなぁ…」
 壁の材質も全く見当が付かないし、製造法の分からないガラスが入っていたりはするが。
 小部屋になっているそこを地図に書いて、ルークは壁に触れた。
 「まず、扉の大きさが人間レベルですよね。ドアノブを捻れば入れる、という方法も異質ではありません。窓の間隔も、我々サイズです」
 つまり、異種族、というものではないだろう。
 「しかし、仮に同族として、だ。ここは朽ちた遺跡だよな?…何で滅んだんだ?」
 「少なくとも、戦では無いと愚考いたします。仮に戦であれば、もっと建築物が破壊されておりますかと」
 窓から見える建物は、高さは色々だが崩れたものではないように見えた。完全な角柱だ。
 「病原菌で死亡、あるいは、その類で街を捨てた、という可能性もあります。その場合、逃げ遅れた人間の死体が見つかると思います。見つかれば調べたいですが…危険かもしれませんね」
 メディックは眉を顰めて薬の入った鞄を撫でた。完璧に未知の病原体であった場合、自分たちはおろか自分たちが媒介になってエトリア中が病魔に倒れる可能性もあるのだ。
 「…進んでいくしか無い、か」
 自分の目で確かめなければ何も分からない。
 もしも死体の山に突き当たってしまった場合…最悪、地上には戻れないかもしれないが、警告くらいは出来るだろう。
 そう決断して小部屋を出ると、奥から見たことのある影が向かってきているのに気づいた。
 「骨竜ですな」
 リヒャルトの声が、どことなく弾んでいる。どうやら肋骨を取って自分用の剣にしたい、という野望に燃えているらしい。
 「上で見てて良かったなぁ。滅んだ文明について考えてるときにこれを見たら、あまりにも…」
 死体が襲ってくる、という吟遊詩人お得意の一分野はあるが、実際に味わいたいとは思わない。
 あっさり、とまでは言わないが、上と同じ対処で骨竜を倒してしまう。残念ながら、ちょうど良い肋骨は無かったのでリヒャルトはがっかりしていたが、希少な魔物だというのでも無い、ということが分かった分、少し気が楽だ。
 ついでに出てきた青いウサギを倒して、先ほどの小部屋の隣に入った。
 「磁軸確認、と」
 「一応、一回帰っていい?帰還の術式のセットをしときたいから」
 「あいよ」
 一端地上に戻り、すぐに磁軸に乗ると、ちゃんと奇妙な遺跡にまで飛んでこられた。これで次からはモリビトの土地を通らずに済む。
 さて、改めて探索開始…と思ってから、ルークは舌打ちした。
 「やべ、未知の病原菌があったらやばいから、なるべく上には帰らないように、とか考えたんだった」
 もしもこの遺跡が病で滅んだ文明のものなら、<何か>を付着して帰るのは非常に危険だ。
 だが、アクシオンがあっさりと否定した。
 「大丈夫だと思います。先ほどの骨竜といい青いウサギといい、16階横道で確認したものと同種でしたから、どこかにこの遺跡と16階と通じる道があるはずです。つまり、とっくに魔物はこの遺跡と上とを行き来している、そして我々は健康、ということは、病原菌問題はクリアしているかと。もちろん、絶対、とは言いませんが」
 ルークも少し考えてみた。
 確かに、16階から17階に降りた時の道で出会った魔物は、ここと同じものであった。この奇妙な遺跡が完璧に隔絶された場所であれば、独自の生物相になっているはず。ということは、普通に交通があると考えても良い。
 「…まあ、今の時点では、そうだな。もっと下になると分からないけど」
 途中で完璧に隔離された階があった場合、また悩めばいい。
 「んじゃ、とにかく普通にマッピングしていくか」
 そうして、いつも通りに敵と戦いつつ地図を作っていく。
 これまでの階層と違って天井が人間向け家屋と同じような高さで、何となく閉息感がある。
 「…遺跡ってーより、ひょっとしなくても建物そのものなんだな、ここ」
 朽ち果てた遺跡のイメージ、というのは、青空に草が生い茂った中に建物の残骸、柱だけとか崩れた壁とかって感じである。こんな風に完全に壁も天井も崩れていない建物、というのはどうも奇妙だ。
 それとも、こちらが思うほど古い文明ではなく、こちらが知らないだけでつい最近まで地下文明が独自に発展していたとか?
 まあ、そのうち誰かが暮らしていた跡でもあれば少しは推測できるだろう、とルークは吟遊詩人的興味を振り払った。
 ドアノブを開けると、そこは少し広い部屋だった。
 これまでと同じく壁に囲まれたそこを見回すと、正面の壁が崩れているようだった。
 いや、そこから道が延びているので、元々戸口だったのか。
 そちらを見つつも敵がいないか周囲を確認していたが、ふいに首筋が総毛立った。
 リヒャルトに問うまでもない明らかな気配。
 示し合わせた訳でもないのに、皆一斉に正面から逃れ、近くの壁沿いに逃れた。更に、戸口からの射線を通さないよう、向こう側の壁へと移動する。
 「…ちょっと、何、この気配」
 「敵ですな。どうやら一本道のようでありますから、そこで待ち構えているのかと」
 「姿は確認できませんでしたから、おそらく骨竜ほど巨大なものでは無いと思います」
 もしも敵が近づいてきたら待ち伏せ出来る、としばらく戦闘態勢のまま待機していたが、何も起こらなかった。
 そのまま、ずり、ずり、と少しずつ戸口に近づいてみる。
 「リヒャルト」
 「…気配は近づいておらぬようです。あくまで、向こうが待ち構えるつもりのようで」
 こちらには気づいているだろうに、近づいては来ない、というのは、ただの獣ではあり得ない。
 そこに巣を張る昆虫か、あるいは。
 「…ちょっと、怖いけどさ。もしやられそうになったら引っ張って」
 グレーテルがそう言って、戦利品のウーズの水晶核を2つ取り出した。
 目のあたりと、まっすぐ伸ばした手の中に水晶核をセットし、戸口から身を乗り出して奥を見た。
 「えーと…レンツス発見」
 「やっぱり?」
 グレーテルが上半身を引っ込めた。
 望遠鏡代わりにした水晶核をまた荷物にしまって、イヤそうにルークを見上げる。
 「どうする?予想はしてたけどさ、ホントに戦うの?」
 「向こうさんは思いきりやる気だよな」
 「…本当なら、殺気は出さずに待ち構えた方が勝率が高いにも関わらず、故意にあれだけの殺気を放っている、ということは、ここは通るな、と忠告しているのか、単に正々堂々に拘る馬鹿か…」
 「ブシドーだもんなぁ」
 攻撃力が高いブシドーと、封じや状態異常を得意とするカースメーカー。
 「どうするよ」
 「どうするもこうするも、もしもここしか道が無いなら倒すしかありませんが」
 一応、まだこの部屋の奥や階段は確認していない。ひょっとしたら、別の道があるのかもしれない。
 「別の道があったら良いんだけどなぁ…」
 「背後を突けたら嬉しいですね」
 「…や、そういう意味じゃなくて」
 ひっそり裏手で突っ込んでから、ルークは4人を見回した。
 強くなってる。そりゃ完璧とは言わないが、連携も取れるし、防御も回復も出来るし、攻撃力だって結構なものだ。弱点があるとしたら、その重要な防御の速度が危ないってことくらいだ。だが、カースメーカーは遅いし、ブシドーの単なる攻撃はアクシオンを一撃で殺すほどでもない。仮に構えたら、そりゃもうこっちの医術防御が先になるの請け合い。
 「向こうは2人、こっちは5人だから、少々卑怯だけど…やれんこともないよな」
 「もっと卑怯な手段で排除することも可能ですが…ちょっと毒ガスとか睡眠ガスとか調合すれば、その」
 くすくすとアクシオンが楽しそうに笑った。どう見ても、寝かせておいて横を通り抜けるだけのつもりではないだろう。
 「ま、とりあえずは、他の道の確認、な」
 その戸口を通り抜けるのに冷や汗はかいたが、迫ってくる気配も無いので、そのまま探索を続けた。
 魔物と戦い、骨竜と戦い、ついでに肋骨奪って…。
 「さて、階段もすぐに行き止まりになってた訳ですがっと」
 磁軸部屋で、ルークは地図を広げた。
 取っ手の一つもないつるりとしたドアだとか、完全に壁に囲まれた階段だとか、気になる場所はあるが、手持ちの武器では力づくで壁を壊して進む、というのには向いていない。
 とすると、あの一本道を行くしか無いのだが。
 「…うーん…行く?」
 「反対です」
 好戦的なアクシオンが真っ先に反対したので、珍しいなぁと思っていると、発言の姿勢で片手を上げたままアクシオンはにこやかに言った。
 「せいぜい、あの場所で待機して貰っておきましょう。こちらがいつ向かうか分からない、ということは、ずっとあそこから離れられないんですし」
 あの場所から離れられないのを見越して、待ちくたびれさせておけばいいんだ、と言うアクシオンに、リヒャルトが反対意見を述べる。
 「しかし、ですな。あの道しか先が無い以上、正面から突破するより他は無し、あちらは身を晒してこちらを誘っておるのですから、こちらも正々堂々と向かうのが筋でありますかと…」
 「肋骨。剣になってる方が嬉しいですよね?」
 「はう!」
 リヒャルトが肋骨を抱えて固まった。
 シリカ商店で剣に鍛え直すのは、一瞬で出来るものでは無い。最低でも一日がかりになる。
 「どうせなら、最高の剣で最高の敵に向かい合いたいものですよねぇ?」
 「はうううう」
 リヒャルトの視線が、抱えた肋骨と、カーニャの腰の魔剣とを忙しく行き来した。
 あれだけ魔剣に惚れ込んだのだ。自分の手で振るいたいのは間違い無い。
 「俺もねぇ、いい加減アルカナワンドより強力な杖が欲しいんですよね…あの17階の道に何か無いかと期待してるんですが」
 「そういえば、そろそろあのコロ何とか言うエイが復活してるんじゃない?あたしはどうでもいいけど、弓とか杖とか防具とか出来る素材がとれるかもしれないでしょ」
 吟遊詩人的なロマンと、新しい武器や防具を期待する、という実際的な計算とがルークの頭の中で目まぐるしく戦った後。
 「…強大な敵には、最高の武器、防具で挑む、というのも、礼を尽くした行為だよな」
 そういう結論になった。
 ある意味、生存確率という実際面と、吟遊詩人的盛り上がり、及び騎士道的正々堂々さが最大公約数で満たされた結論に、ちょっと自分でも突っ込みたい気はしたが、これで丸く収まるというものである。
 「ま、それには金も必要なんだけどな」
 「隣の部屋の採掘場所で高価なものが採れればいいんですが」
 「そういえば、妙な依頼もあったわねぇ。7階の棘床奥で女の子の泣き声がするとか何とか」
 ということで。
 結果的には、一本道で待っているレンツスには気の毒だが、こっちもしっかり準備させて貰うことにした。


 「磁軸から出てほんの少しの採掘場所、ねぇ」
 本パーティーから採掘依頼を受けたレンジャーたちの話を何気なく聞いていたショークスは、相棒を振り返った。
 <まだ見たことが無い敵であろう?俺が一撃でやれるかどうか分からぬ。確かめぬとな>
 「とりあえず、俺らだけで行ってみる?」
 <そうだな。またお前が怪我をする可能性があるが…>
 「一撃で死ななかったらOK」
 あっさり言って、ショークスは兄妹たちに提案した。
 「俺らが採集の護衛になってやるよ。その前に、ホントにネルスの一撃でやれるかどうか確かめてくるから待ってろ」
 もしもレベルの低いクラウドやターベルを連れていってそっちに攻撃が向かったら困る。ショークスだけなら、まだ一撃くらい耐えられるだろう。
 だが、クラウドは首を振った。
 「いや、どうせなら、一斉に行こう。大丈夫、俺たちも採集スキルの他に先制を磨いているところだからな。確かにレベルは低いが、3人揃えばそれなりに先制出来る」
 「あ、なるほど」
 ショークスを加えればレンジャーが4人である。先制出来れば、仮に撃ち漏らしても敵の攻撃前にもう一度ペイントレードを放てる。
 「よっしゃ、んじゃ、家族で出稼ぎだ」
 「…待て、それはネルスももう、うちの家族の頭数に入ってんのか」
 一応突っ込んだクラウドをクゥが睨んだ。
 「だって小兄ちゃんの恋人なんでしょ?だったら家族じゃない」
 「…いや、俺としてはまだそこまで割り切れないと言うか…」
 ぶつぶつ言うクラウドに、ネルスが頭を下げる。
 「…家族に加えろ、とは言っておらぬよ。歓迎されぬのは当然だ。…ただ、護衛として連れていってくれれば、それでいい」
 「いや、あんたがどうこうじゃないんだけどな…」
 クラウドは、美形と評判ではあったが性別:男としてしか認識していなかった弟と、その相棒を見比べて溜息を吐いた。
 「ただ俺は…俺は、可愛い義妹が欲しかったんだ…」
 遠い目をした長兄が、弟妹たちに殴られたのは言うまでもない。

 「ヘヴィストライク!」
 「きゅいいいい!」
 コロトラングルがアクシオンの一撃で動きを止めた。
 ぐちゃぐちゃに潰された頭を避けて、グレーテルとアクシオンが何か素材が採れないかとその死体を弄り回す。
 「えーと、この辺の骨なんてどうですかねぇ」
 「そうねぇ、まあ持って帰ってみましょ」

 「くー…くー…」
 「…寝ている相手を背後から襲うのは卑怯かと…」
 「いいじゃないの、人間の女の子のふりをして冒険者を誘って殺すのも卑怯なんだし。卑怯には卑怯よ」
 がっつりざっくりこんがりと、その巨大な花の上に人形が乗っているような姿の魔物を倒す。
 「なかなか良い手触りの花びらですよ。時間があれば、俺がマントに仕立てたいところですが…」
 「ま、シリカに任せよう」

 「うわー!伝説でしか聞いたことないが、マンティコアってやつかー!」
 「ルーク、楽しそうなのは結構ですが、相手の特性とかは…」
 「えーと、尻尾がサソリで、あと暗黒魔法とか炎のブレスとか…」
 「何、その暗黒魔法って」
 
 
 ということで。
 21階でレンたちを発見してから、約1週間が経った。
 「…くっ…あやつら、いつここにやってくるのだ!」
 「レン…携帯用スープが尽きるわ…」
 「おのれ、兵糧攻めとは卑怯なり!」
 「ふふ…良心の咎め無しに、思い切り殺せるわね…」
 彼女たちは、ひたすら待っていた。
 気の毒な話である。



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