成長する子供たち
文旦たちは、本パーティーと交代で迷宮に潜った。本パーティーは、何やら一方通行ばかりで疲れた、と17階の半分で戻ってきたのだ。
「さて、今日は獣道の奥に挑むが…」
「大丈夫だろ。俺もボンデージ覚えたしー」
びしっびしっとその辺の小枝を切り裂き鞭で払ったミケーロに小桃が注意した。
「慢心はならぬぞえ。覚えた、という程度では敵に通ずるやらどうやら…」
「俺のTP豊富だからよー。駄目でも何度も挑戦出来るんだぜ。…あんたと違って」
「どういう意味じゃ!」
「そのまんま」
けらけら笑ってミケーロはさっさと長閑な草原を歩いていった。小桃は確かに強い。が、本気で攻撃しようとするといちいち構えなくてはならないし、それはひどく集中力が必要なようでそう何度も出来ないのだ。シエルは防御陣形を目指しているし、実は攻撃的なスキルとしてはミケーロが一番有利なのだ。
難なくモグラだのネズミだのをやっつけて、獣道へと入っていった。
さすがに緊張する。前回はまるで歯が立たずに眠らされて殺されたのだ。
がさり、と茂みが鳴った。
「おっ、おいでなすったぜ!」
「にゃー。グレープゼリーにゃ」
「毒じゃぞ、気をつけい!」
紫色のぷるぷるが震えて何かをしようとする前に、ミケーロの鞭がそれをぐちゃりと弾き飛ばした。その残りをシエルが斬りつけ、もう一体のポイズンウーズは小桃が一刀両断にする。
最後に文旦がトドメを刺し、一息吐いた。
「ふぅ…何とかなったの」
「おっし、いけるぜ!」
「やったにゃ!」
ミケーロとシエルがぱしんと手を合わせる。二人で小桃一人分の攻撃力だという点については、あまり考えてないらしい。
こちらのダメージ無しに敵を倒せて、文旦も安堵した。この分なら予定通り一方通行を抜けられるだろう。
小部屋を確認して狂える鹿を倒していき、戻れるはずの道へと向かう。
そして、また敵が出現した。
「ナマケモノじゃ!強敵と聞いておるぞ!」
「俺とシエルで蜂倒すから、小桃がナマケモノをやってくれりゃいーだろ」
「承知!」
しかし。
楽勝、と鞭を振るったミケーロの次の瞬間、ナマケモノが大きな腕をぶんと振った。
「うぬぅ…」
小桃が血飛沫を上げて倒れる。
「小桃!」
「…へ?一撃死!?…やっべ」
予定通り蜂は一匹倒しているが、小桃の攻撃力が無ければ相当厳しい。
「ネクタルを飲ませる」
「…つーか、また一人死ぬんじゃね?」
ミケーロが腕を縛るために集中しながら呟いたとおり、後は泥沼だった。ネクタルで復活する、誰か別の前衛が死ぬ、また復活させる…。
それでも何とか倒して、彼らはぐったりと座り込んだ。
「ちぇ、俺だけ経験値貰い損ねた」
「仕方あるまい。無理を言うな」
たまたまミケーロが死んでいる時に倒せてしまったのだ。たまたま、と言うくらい、本当に皆よく死んだ。蜂の毒のせいでフレアまで死んでいる。
「わたくしが一番よく死んだわえ」
「マジでうっすいなぁ、あんた」
「その代わり、攻撃力が高かろう?」
「俺だってスキル使やぁ強ぇよ」
「ボクだったら2回は耐えられるにゃ!」
「ま、一応パラディンだもんな、一応」
ここまで何度も死んで生き返って死んで…となると、あまり感慨も無いらしい。前衛3人は平然とお喋りしていた。
文旦は、こきり、と首を鳴らしてから、リザレクションを取るべくキュア3にスキルを振った。まだ自力では出来そうに無い。ネクタルを買い込んでおいて良かった。
「フレア、大丈夫か?」
「…はい…」
フレアは見るからに顔色が悪かった。何度も何度も人が死ぬのを見たのだ。この少女にはきつかろう。
だが、フレアは唇を噛んで呟いた。
「わたし…次からは、昏睡の呪言をかけます。ひょっとしたら…かかるかもしれないし…」
これまでは、ちょっと囓ったくらいの呪言では無駄だろうと、どうせ当たっても大したことのない(それでも彼らにとっては貴重だが)杖を振っていたのだが、もしも敵を眠らせられたら、1体ずつ相手に出来る。
「…私も…役に立ちたい」
まだ怖い。
血を見るのも、敵が倒れるのも、自分が怪我をするのも、怖い。
けれど、仲間が倒れて、自分には何も出来ないのは、もっと怖い。
フレアは、自分の肩をぎゅっと掴んだ。
カースメーカーには、カースメーカーの戦い方があるはず。
「期待しておるぞ」
優しく言った眼鏡のメディックに、フレアは小さくだがしっかりと頷いた。
そうして一方通行の道を抜け、夜清水に向かってTPを回復する。
「夜明けまで、頑張るのじゃぞ」
「よーっし、今度ナマケモノが出たら、腕縛るぞ、腕!…鹿対策に足縛りを先に取っちまったんだよなー。腕、取れば良かった」
「ボクも防御陣形使うにゃ!」
そうやって一方通行から抜ける直前の道で、せっせと鍛えていると。
「…我らに逆らうな…」
小さな小さな囁きが聞こえた。
目の前に出てきたのに、何もできずに硬直している敵を不思議に思いつつも、ラッキー!と攻撃を叩き込む。
久々にダメージ無しに倒してから、後ろを振り返る。
「…先制スタナー…初めて、発動した…」
同じように目を丸くしたフレアが、呆然と呟いた。
「すっげー!カースメーカーの呪文か!?」
「ほぅ…敵を威嚇して棒立ちにさせるようなものかや?」
「敵が動けないと怪我しなくていいにゃー」
口々に感心され、フレアはうっすらと目に涙を浮かべた。
「…初めて…役に立った…」
何もかもが恐ろしくて、カースメーカーの一族の落ちこぼれとして処分されるところだったのに。
けれど、これで一族に処分されずに済む、という安堵よりも、ようやくこの仲間を助けることが出来たのだ、ということが何より嬉しい。
文旦がぽんぽんと頭を撫でた。
「これからも、頼むぞ。何、フレアは大器晩成型なのじゃ。きっと我らに無くてはならぬ仲間となる」
「くっそー、次は俺だ、俺!」
地団駄踏んで、ミケーロは次の敵を探した。
出てきたスリーパーウーズを邪魔だとばかりに切り裂く。
「出てこい、ナマケモノ〜!」
「これ、ミケーロ、そなたもあれにやられては危なかろうに」
「しばーる!」
ミケーロに呼ばれたせいでは無かろうが、のっそりとナマケモノが現れた。
今度はフレアのスタナーは効いていない。
「よっし、俺がアームボンデージするから、お前らは蜂倒せ、蜂!」
「こたびはミケーロの顔を立てるがの。強敵は一番に倒すのが戦術ぞ」
窘めながらも小桃は右の蜂を一撃で落とした。
ミケーロは舌なめずりをして、ナマケモノの腕に集中する。
「いっけー!アームボンデージ!」
しゅる、と切り裂き鞭がナマケモノの腕を縛った。
次の瞬間、ナマケモノが振るおうとした剛腕は出ず、ナマケモノはただ身藻掻くのみとなっていた。
「や…やったー!できたー!!」
ミケーロは天を仰いで絶叫した。
思えばダークハンター養成所に入って訓練すること1年あまり、それから実戦を積んで死ぬこと数回、敵を本当に縛れたことは、これが初めてであった。
「攻撃、かつ、敵の攻撃を妨害!これがダークハンターの醍醐味!…すっげー!俺、すっげー!」
「にゃはははは、ミケーロ、嬉しそうにゃー」
「まだ敵は生きておるのじゃがの」
冷静な突っ込みに、ミケーロは慌ててサブの鞭を取り出した。
「今度はレッグボンテージ!」
それはさすがに外してしまったが、その攻撃でナマケモノは倒れた。
小桃が残りの蜂を斬り落として、戦闘は終了した。
ミケーロは動かなくなったナマケモノの腕から切り裂き鞭を外した。
「すっげー…俺、すっげー…そっかー、こうやればいいのかー」
しみじみ呟いて、ミケーロは巻き取った鞭に頬ずりした。
慢心するな、と言ってやりたいのは山々だったが、そのミケーロの様子があまりにもうっとりしていたので、小桃は苦笑するに留めておいた。
「わたくしも、かつて初めて藁束を全切断出来た折りには、天にも昇る心地じゃったからの。強くは言えぬわえ」
「仕方あるまいの」
「にゃー!今度はボクの番にゃー!」
えいえいおー!と叫んだシエルが、シルバーシールドをよっこいしょっと持ち上げて彷徨き始める。
わざわざ強敵を求めているのだが、血に飢えた冒険者、という姿からはほど遠く、単に力試しがしたくてたまらない子供たちの像だ。
文旦は苦笑して首を鳴らした。
「はは…拙者もそろそろ蘇生術が使えるようになるしの。鍛える、という意味では、間違うてはおらぬ」
そうしているうちに夜が明けて清水が使えなくなったので、いったん帰ることにした。
ギルドで交代の挨拶をして、皆で朝食を取る。
「ふーん、んじゃ、そろそろ8階の清水まで行けるかな?」
「まだ早くないですか?ナマケモノ相手に苦戦するようでは…」
「苦戦してねーよ!俺のアームボンデージと小桃の刀で殺れるようになったんだぜ!」
むっとして叫んだミケーロに、アクシオンは苦笑して見せた。
「8階の清水近くには、危険な花びらがいるんですよ。全員を眠らせてくる厄介なのが」
「先に倒せたら良いんだけどね。あんたたち、攻撃力は前衛だけだし」
本パーティーは後衛のグレーテルもルークも攻撃力があるのだ。ほとんどダメージの出せない文旦やフレアとは違う。
ルークが懐からマップを取り出して床に置いた。それを見ながら食べていると、アクシオンが「お行儀が悪いですよ」と窘めた。
「んー。…ここまで行っちゃえば、花びら出なかったっけ?」
清水からすぐの抜け道をスプーンで指す。
「サソリがいるわよ。いっそ、9階まで降りたら?結構すぐに清水まで帰れるし…」
「でも、彼らはレベルとしては低いんですよ?装備は最先端ですけど」
鍛えるのにはどこが効率的かつ安全か、と話し合っているのを見て、カーニャが肩をすくめて立ち上がった。部屋の隅の鏡に向かいながら、気のない様子で言う。
「どうでもいいじゃない。そんなの、鍛える本人たちが考えればいいのよ」
ルークとアクシオン、それにグレーテルは顔を見合わせた。
「ま、そりゃそうだ」
「手応えは本人たちにしか分かりませんしね」
「駄目ねー、つい、教えたがりなのよねー」
あれ、とカーニャは振り返った。どうやら自分の意見が正しいと思われているらしい。大人3人がカーニャの意見に従うなんて初めてのことだ。
「こっちが手取り足取り教えたらつまんないよな」
「そうだぜ!俺たちは俺たちでやってくんだ!」
「…そういうタイプだから心配なんですよね…」
アクシオンは困ったように笑っていたが、それでも心底心配でたまらない、という顔では無い。それなりにサブパーティーのことも認めているのだ。
今のミケーロたちは、どんどんスキルを覚えていって、それがうまく発動するようになって、という一番楽しい時期なのだ。少々即席栽培っぽいところもあるが、それでも伸びていっているのは間違いない。
そんな時期に無理に押しとどめることはない。武器のアドバンテージがあるうちに、どんどん成長していけばいい。
「んじゃ、お前らは、今夜から別の狩り場に移るんだな?」
部屋の隅で座っているネルスに無理矢理食わせているため、やはり部屋の隅にいたショークスが声を大きくした。
確かに探索ではなく鍛えるのが主なのだが、狩り場、と言われると何だか、と文旦が思っている間に、ミケーロが返答した。
「おう!もっと強くなるんだ!」
「んじゃ、今夜は俺らが1階の獣道奥で狩りだな。ナマケモノも一撃でやれるようになったら、次ゃどこの狩り場に移りゃあいいんだろうな、俺らは。お前が癒しの清水は駄目っつぅから不便でいけねぇや、こん畜生」
<2層の磁軸から10階に上がるか、6階で蟻やカエルを自力で倒すか…やってみねば分からぬ>
「もうカエルの面ぁ見たくねぇよ、俺は」
<俺も見たくは無いがな>
アザステペインペアは、同じように戦っても経験値が2人で分ける分多いので、まだ1階奥でもそれなりに経験値が溜まる。逆に言えば、ペイントレードで倒せず相手の反撃を受けるようでは全滅の恐れもあるので無理は出来ないのだ。
「ま、どっちも<ナイトメア>らしくてよろしいことだ」
ルークは命名相手と顔を見合わせてくすくすと笑った。夜の清水狙いで活動するのを冗談で命名したのだが、まさかこの段階になってもフル活用するとは思っていなかった。
「俺たちは、メシ食い終わったら17階の残り半分の探索に出るわ。夜になるか、18階に降りる目処が付いたら帰ってくるから」
それまで休んでおくように、と言うと、まだまだ興奮しているらしいミケーロとシエルは渋々と、文旦と小桃はごく当たり前に頷いた。
「さぁて、俺らは麝香探しつつ17階の探索に励むかね」
「了解」
いつも通り、暢気に朝食を終えて、荷物を確認し、本パーティーは出かけていった。
採集レンジャーたちが家具を作ってくれるというのでシエルの家はそちらに任せ、文旦たちは別室で休むことにした。
きっと、いつも通り本パーティーが暢気に帰ってくると、疑いもせず。
流砂に乗って17階に降りる階段まで行くのは、もう地図を見ないでもよくなった。面倒な道筋だとは思うが、迷わなければ敵と遭うことなく下に向かえるのは悪くない。
その分、17階ではやたらと敵に遭遇した。これらがどれだけモリビトの手下で、どれだけ土着の魔物なのかは分からなかったが、探索の気が削がれるのも確かだった。
「えーと、前回は右半分が埋まったから…今度は左だな」
「いちいちあんたが戻ってくるから面倒なのよ。一方通行の道なんて、分かってたら通らなくてもいいじゃない」
「いやー、マッパーとしては、つい…」
この階は、やけに一方通行が多いのだ。ある道から一方通行で他の道に行くと、また一方通行の戻る道がある。いちいちそれを戻ってくるので、同じ道を2回(またはそれ以上)通り直しているのも同然なのだ。理屈では、とりあえず先に進んで下への階段を見つければいいと分かっているのだが、マッパーとしては通れるところはとりあえず通ってみないと落ち着かないのだ。
「まあ、良いじゃないですか。急ぐ旅でもなし。敵と戦うのも良い経験ですし」
「あんたは、ルークの意見に甘いだけでしょ!」
カーニャの言葉にアクシオンは一瞬だけ足を止め、また踏み出した。
「…でも、実際問題として、急ぐ理由はありませんし」
「階段を探すってのは、理由になんないの!?」
「まあまあ。どちらも一理ありますが。自分は、ハヤブサ駆けを多用しております分、清水を探したい気分であります」
多数の敵が出現した場合、早く発動するハヤブサ駆けで一気に倒すという戦法も取っているのだ。たまには安らぎかけてTP回復を兼用したり、大爆炎まで引っ張ったりもするが。
「一方通行は確認したらそれっきりだからさ。勘弁してくれよ」
どうせ次からここを通るときは最短距離で効率的なルートを選ぶのだ。帰りの一方通行なんて使わないだろう。
カーニャの機嫌が悪いのは、せっかく覚えたトラッピングが面白くないスキルだったせいでもある。ヒュージモアの突撃相手にはトラッピングが有効、と師匠に聞いて覚えたのはいいが、とりあえずこっちも攻撃されないと発動しないし、ダメージも大したことないし、これなら最初から攻撃してダメージを食らわないように倒した方がマシ、という結論になったのだ。もちろん、極めればもっとダメージ量は増すだろうが…今の時点では他のスキルを使う方が良い。
何とかカーニャの機嫌を取りつつ進んでいくと、またしても一方通行の果てに下に向かう階段を見つけた。
見つけたが…その隣にやはり一方通行らしき通路も見つけてしまった。
「…さすがに、行かないわよね?」
どう見ても、その通路を抜けると右半分の区画に出て、またここまで戻るにはほぼ全周しなければならない。
「…うー…」
「見つけたんだから、18階に挑むのは次回にして、今日はこの一方通行を抜ける、というのでもいいですが」
「だから、あんたはルークに甘いんだってば!どうしてもってんなら、帰りに通ってみて、それから帰還の術式使えばいいでしょ!」
カーニャ本人は、ごくごく当たり前のことを言っているつもりだ。せっかく先へと進む階段が見つかったのに、何故わざわざ後戻りしなければならないのか。
アクシオンの意見は、どう考えても、惚れた弱みだとかそういう類のルークに同調しているだけのものに思える。実際のアクシオンは攻撃的で先に進むのを楽しんでいるのだから。
「麝香は2つ手に入れたから、私はどっちでもいいわ。でも、どうせならどんな階なのか覗きたいかな」
依頼はとりあえず完了したので、帰って報告してもいいし、逆に言えばもうこの階をうろうろする必然性もなくなったということだ。
ルークはカーニャの顔を見て、それから一方通行の通路を見て、うん、と頷いた。
「だな。カーニャが正しい。帰りにでも確かめればいいさ。もし、ショートカットになるんなら、とも思ったが、どうせ左回りでも右回りでも大した違いはないし」
「…あっそ」
自分の意見が正しい、と言われて、カーニャは顔を逸らした。実家では、子供の意見など聞かれもしなかったし、仮に正しくても無視された。ここでは無視こそされないものの、他のメンバーの意見に比べたら軽く見られていたのに、最近、何故かちゃんと聞いてくれるようになった。
それは、単純に、最初の頃のカーニャの意見というのは自己中心的な子供の我が儘に近いものであったため比重が軽かったのが、最近はちゃんと冒険者としての意見であるため普通に聞き入れられるようになった、ということなのだが、まだそこまでの自覚は無かった。
自分の意見が普通に通る、ということは、嬉しくもあったが、少し怖くもあった。どうせ子供の意見と何も考えずに自分の好きなように言っていたのが、パーティーの一員としての発言だと取られるのなら、それなりにパーティー全体のことも考えなくてはならないからだ。
そういう事柄をカーニャはきちんと認識してはいなかったが、漠然と、自分はもう子供ではなく一人前の冒険者であり、欠かすことの出来ないパーティーの一員なのだ、と、うっすら感じた。
「き、決めたのなら、さっさと行きましょうよ」
カーニャはぎこちなく言って、さっさと階段へと向かった。
「あぁ、自分が先頭で参りますから」
慌ててリヒャルトが先に立つ。
そうして、彼らは18階に降り立った。