蟻だ!鰐だ!いや、人型だ!




 蟻蟻蟻蟻蟻また蟻。
 蟻の巣に入っているのだから、当然と言えば当然だが、進んでも進んでも…と言うか進めば進むほどに蟻の山。
 本当に進んでいっても良いんだろうか、と思いつつも、少しでも蟻が途切れたら前へと進む…というのを繰り返しているうちに、ようやく蟻の待機部屋を越えたのか、まっすぐな一本道へと入っていった。
 その終点で前方と右側の両方に抜け道を見つけて、一息吐く。
 「ルークがいてくれて良かったですよね…バードがいないパーティーでは、とてもじゃないけどTP切れでここまで辿り着けなかったはずです」
 安らぎの子守唄をこまめにかけたおかげで、TPは十分に残っている。氷の術式が効果的だというのもラッキーだった。これで消費量の多い大爆炎だの覚えてない雷しか通じない相手だとかだと困っていただろうが。
 「はっはっは、たまにはそんなことも無いとな」
 「いえいえ、本当に。安らぎの子守唄に猛き戦いの舞曲、亀には火劇の序曲…すごく助かってます」
 特にアクシオンは猛き〜で攻撃力を上げてからがっつんがっつん殴るのがお気に入りだ。まあ、攻撃力を上げようとしたら、リヒャルトはチェイス、カーニャはドレインバイトやショックバイトをかけるが、アクシオンには攻撃技はまだ何も無いので、ルークに頼るしか無い、というのもあるのだが。さしものアクシオンも、必要な回復技よりもヘヴィストライク習得を優先するほど脳筋では無いのである。
 「そうですな、自分もTPが少ないので助かっております」
 総量が少ないのであまり回復しないリヒャルトが頭を下げた。
 やはりバードとは、呪曲をレベル10にしてからが勝負である。弓での攻撃は大したこと無いが、豊富なTPといい、育ってからその重要性が感じられる。
 だが、誉められ慣れていないルークは、あ〜とかう〜とか呻きながら乱暴に髪を掻き回した。特にアクシオンに「もう貴方無しではいられない」といううっとりした目で見られると、どうしたらいいのか分からない。…もちろん、安らぎの子守唄的な意味で、というだけの話だとは分かっているのだが。
 「あ〜…ま、まあ〜…お、俺は、やる時はやる男だぜ、うん」
 冗談に紛らわすしか無く、それも早口で照れていたのでは冗談にもなっていないが、ともかくぼそぼそと呟きながら、道を押し広げて出ていくと。
 半分沸騰しかけていた脳が、すぅっと冷えていくのを感じた。正面に、明らかにでっかい昆虫がいる。
 「…女王蟻、よね、あれ」
 「やだ、おなかが気持ち悪〜い」
 こちらに気づいているのかいないのか、部屋の真ん中でじっとしている巨体は、他の蟻に比べると確かに腹が丸く膨れていた。
 本気で嫌がっているらしい女性陣を横目に、アクシオンが柔らかく笑って杖をぱしりと自分の掌に打ち鳴らした。
 「卵が入ってるんでしょうかねぇ。剣で切ったり殴ったりして裂けると、そこから卵がぶちぶちぶちぶちぶちぶちと…」
 「やーめーてー!」
 「それを踏み潰すと楽しいですよ、きっと。ぷちぷちぷちぷちと」
 「…ぷちぷちは、もういいから」
 ナチュラルに残酷というか、幼児の昆虫虐めの延長だというか。目の前の自分より遙かにでかい蟻母を見て、暢気にしていられるのも凄いとは思うが。
 「…スノードリフトの時と同様、周囲に部下がおるようですな。巣の母の危機となれば、乱入してくるのは間違い無いと思われます」
 「とは言っても、誘き寄せるような空間もありませんし…そもそも、ここ自体が蟻の巣ですからねぇ。いつどこから増援がやってくることやら」
 周辺のハイキラーアントの数と距離、クイーンアントの位置…色々と鑑みた結果。
 「…むしろ、女王蟻を集中攻撃で早めに倒すのが吉と見た。…ってわけで、いっけ〜!」
 「ルークの、そういう思い切りの良さが大好きです」
 「ま、考えたってしょうがないもんね」
 「リヒャルト、チェイスフリーズ用意して!」
 「了解!」
 思いっきり、正面から女王蟻に突っ込む。
 医術防御に安らぎの子守唄、チェイスフリーズに氷結、カタストロフ。
 いつも通りに仕掛けて、さあ、女王様はどう出る?と思ったら、攻撃ではなく砂埃を立てて来た。蟻らしいといえば蟻らしい気もするが…地味にイヤな攻撃をしてくることだ。
 「テリアカ使うか?」
 「その前に舞曲下さい」
 まあ、その後に補助要員な俺が薬使えばいいか、とまずは舞曲を重ねる。
 そうしていると、予想通りハイキラーアントが女王の周囲に集まってきた。
 「4体のクイーンガード、か」
 何故かそんな単語が過ぎって、その響きに何やら妙な衝撃を受けたが、その理由を考える暇もなく攻撃を続けた。
 「リヒャルト、チェイスファイアに切り替えて!」
 「了解であります!」
 「アクシーとカーニャは女王を集中攻撃!周囲のはグレーテルとリヒャルトに任せろ!」
 「分かってるわよ!」
 「…あ、医術防御忘れてました」
 盲目だったせいでか、いつも冷静なアクシオンが医術防御の切れ時を見誤ったらしい。
 「一撃だけ、喰らって下さい」
 本当なら医術防御が完全に切れる前に重ね掛けするのだが、今回はほんの数十秒とはいえ完全に切れる時間帯が存在してしまった。
 「て、テリアカ、テリアカβ!」
 医術防御と同時に、ルークがテリアカβを振りまく。
 まあ、1本しか持ってなかったので、次に盲目になった時には、もうどうしようもなかったが。
 それでも、その他の蟻はチェイスファイアと大爆炎で吹き飛ばしていって、ついに女王蟻を叩き潰す時が来た。
 …そう、どういう巡り合わせかは知らないが、砂が目に入って目を閉じたままのアクシオンの杖が、女王蟻を殴り倒したのである。ぐちゃり、と飛び散る何かに、あぁ、せめて焼き殺してくれた方がなんぼかマシだったのに、とルークは声には出さずに思った。
 次々と湧いていたガードアントが死体の周囲をうろうろしてからかさかさと去っていった。おそらく次の女王候補のところに向かったのだろう。
 2回目の砂埃で盲目状態だったアクシオンとグレーテルが水袋の水で目を洗い流した。
 「結構、面白かったですねぇ。スイカ割りしたくなりました」
 「…この大量の蟻の死体に囲まれて、そんなこと言いマスカー」
 見えないまんま、がっつんがっつん杖を振り下ろして敵を粉砕したのだから、いい加減満足していてもいいと思うのだが。
 「スイカ割りって何?」
 「あ、カーニャは海に行ったことが無いんですね。そうですねぇ…海には限らないんですが、夏の風物詩と言いますか…目隠しして、砂浜でスイカを叩き割るんですよ」
 「それ、何が面白いの?」
 「飛び散る赤が、血のようで面白いです」
 「違う!」
 とりあえず裏手で突っ込んでおいて、ルークはカーニャに説明した。
 「目隠しで、周囲が『もっと右』とか『まっすぐ』とか指示を出して当てさせるんだ。ま、要するに、目隠しで弓を射て、的に当たったら嬉しいな、というのと同じような面白さ」
 カーニャは何度か瞬きした。分かったような分からないような感じらしい。
 
 12階の地図が完成したのでとりあえず執政院に報告に行ったルークが帰ってきた時には、裏庭でカーニャが目隠しをして棒きれでトマトを叩いているところだった。
 「あと一歩前ですね。…あぁ、残念」
 地面を叩いて手が痺れたのか顔を顰めて手を振っているカーニャの前に、転がってきたトマトを置き直してやった。
 的が小さいので難しいが、当たったら赤いのが飛び散る、というのは譲れない線だったらしい。もちろん、アクシオンの。
 やる前は「何が面白いのかさっぱりわかんない」とぶつぶつ言っていたカーニャだったが、結構はまったらしく、むきになって挑戦し続けたので、その夜の夕食はトマトを煮込んだシチューになったのだった。



 次の日には、蟻の巣から更に下へと向かった。
 そして、降りてきてまっすぐ進んで、広がった光景に息を飲む。
 「こりゃまた…随分と開けた景色だな」
 「蟻の巣と逆の配置なら水攻めが出来たのに…」
 「…いや、それはもういいから」
 目の前には流れる川が横たわり、向こう岸にいつもの宝箱が見える。
 更に奥には何やら滝のように…いや天井からだからただの水流だが…流れ落ちる水の柱が見えている。
 「なかなか綺麗な景色よねぇ。同じ蒼でも蟻の巣とはイメージが大違い!」
 意外とロマンティック好きなグレーテルが夢見るように両手を組んだ。
 「敵さえいなければ、絶好のデートスポットやもしれませんが…何やら熱い視線を感じるのであります」
 冗談のように言って、リヒャルトが剣に手をかけた。
 ばさばさっと音を立ててコウモリが天井から舞い降りる。
 「おぉ、洞窟でお馴染みの敵はこっちで出てきたか」
 「普通なら、雑魚、でしょうに、ねっ!」
 アクシオンが杖で打ちかかりながら言うように、とても雑魚とは思えない体力を持ったコウモリだった。
 「こんの…ちょこまかとっ!」
 噛みつかれたカーニャが苛立ってドレインバイトを仕掛けて、最後の一体を落とす。
 どうにか倒したコウモリを拾い上げ、灰色の皮膜を広げて、グレーテルがしげしげと眺めた。
 「私、普通のコウモリって奴をまじまじ見たこと無いんだけど…大きさってこんな感じなんだっけ?」
 「まぁでっかいのなら、このくらいあるのかも…」
 本体は手のひらほどだが、広げると結構でかい。別のコウモリを掴んでいたアクシオンが、顎を掴んで口を広げさせ、牙を見ながら呟いた。
 「変な病気を持っていなければ良いんですが」
 地面のコウモリをつついていたカーニャが慌てて立ち上がる。そのまま川縁に向かったので、アクシオンが足早に追いかけた。
 「どちらへ?」
 「手を洗うのよ」
 「ちょっと待って下さいね」
 アクシオンはちらりと水面に目を走らせてから、手にしたコウモリの死体を放り投げた。
 「何すんのよ!水が汚れるじゃない!」
 「その位置より川上なら大丈夫ですよ。それより、安全性を確認しないと」
 きょとんとした顔でカーニャは川を見つめた。
 綺麗に流れていく澄んだ水。蒼く翳っているせいで水底は確認できないが、どう見ても気持ちよさそうで、いっそ歩いて向こう岸まで辿り着けるんじゃないか、と思えるほどの……
  ばしゃん!
  ばしゃばしゃばしゃあん!
 水面が跳ねた。
 見る間にコウモリが落ちた地点から赤く染まっていく。
 「…あれ、何?」
 「さあ。肉食で獰猛な何かじゃないですか?」
 アクシオンはけろりとして言って、きびすを返した。カーニャも慌ててそれを追う。とてもじゃないが、手を洗う気は無くなっていた。
 マップに書き込んでいたルークが顔を上げる。
 「どうだった?」
 「川には踏み込まない方が良さそうです」
 「OK」
 川を壁と同じく通行不可の印で書き加えて、ルークは左右を見比べた。どちらもまっすぐ延びているようだ。
 「ま、いつも通り右から行くか」
 川に沿って歩いていって、確認していくと、小さく折れた場所で8階にあったのと同じような清水を見つけた。代表でリーダーが口を付けてみると、やはり同じように癒しの効果が確認できた。
 ぽたぽたと落ちる水を受ける切り株を見てから、天井を見上げる。
 「上…何かありましたっけ」
 「まあ、それを言い出すと、あの天井から落ちてきてる水の柱もどこからだ、ということに」
 上はひたすら蟻の巣で、水の溜まり場など無かったように思うのだが。
 まあ7階の雨が降る部屋も、何で地下7階で雨?という根本的な疑問が存在するのだが。
 「樹液…なのかね」
 「樹液は、樹木を養うものであって、人間用ではないですよね。…何にでも効く栄養剤が迷宮内を循環…」
 自分で呟いて、どんな状況か想像できなかったらしく、アクシオンは眉間に皺を寄せて何度か瞬きをした。
 この世界樹の迷宮は、巨大な樹木の内部に広がっている…ということになっている。よくよく考えると、樹木の内部が何故何層にもなっていていちいち景色が変わるのか、とか、どんな樹木なんだ、とか、もの凄く突っ込みどころの多い迷宮ではある。
 ひょっとして、この更に地下奥深くに、何かの成長を促すような凄い栄養剤があって、それを吸い上げた樹木が巨大に成長、その合間から漏れたそれが癒しの清水として存在…やはり穴の多い推論だ。
 ルークはしばらく考えてから、首を振った。
 「ま、いいや。ここがあれば、探索がはかどる。それでいいってことで」
 TPを思う存分使えるのと、切れるのを気にしながらの探索では随分とプレッシャーが違う。たとえ安らぎの子守唄があっても、雑魚ではなく全力で戦わなくてはならないような相手だと、消費量の方が遙かに上回る可能性があるのだ。
 「新しく増えたのはコウモリよねぇ。…微妙なのよね、氷結や大爆炎使うほどでも無いような気がするし、氷の術式じゃ落とせないし」
 「自分のハヤブサ駆けはどうでありましょうか」
 「…もっと発動が早けりゃなぁ…」
 カーニャとアクシオンの普通攻撃で一体、リヒャルトのダブルアタックが出れば1体、グレーテルが氷の術式ではなく氷結を使えば一体、とすぐに3体落とせるが…問題はダブルアタックの性能に難がある、ということか。…ちなみに、ルークの攻撃力は前衛より劣っているのでまあ無いよりマシくらいで。
 「まあ、まだコウモリとしか戦ってないしな。少しずつ効率を確認していくか」
 結局、右の道は奥で止まっていたので、今度は左へと進むことにする。
 右に見える川はずっと続いていて、対岸とは完全に分かたれているようだ。たぶん、下に降りてから上へと向かう階段が見つかるんだろう、と眺めるだけ眺めておいた。
 さて、左に折れる方は道が続いているようだが。
 「あみだくじみたいですね」
 川が複雑に入り組んでいて、どの道が奥へ繋がっているのか、ぱっと見にはさっぱり分からない。
 まあ、手前から潰していくしかないか、と踏み出そうとしたところで。
 ふっとリヒャルトが腰を下げた。剣の柄に手をかけている姿は、どう見ても警戒態勢。
 パーティーの中で一番危機察知能力に長けているのがリヒャルトであることは、全員が承知しているので、その姿を見て他の面々も警戒態勢になった。
 川の奥、茂みの間から、緑色の何かが覗いた。
 ちらちらと動くそれは、もしも1階か2階であれば見過ごすような色合いであったが、この蒼い光景では些かの違和感があった。
 「…敵…にしては、こちらに向かってきませんね」
 「そういや…執政院の眼鏡に頼まれてんだけどさぁ。…迷宮の中に、人間じゃない人型の生物がいるみたいなんで、調査しろって」
 「そういうことは、さっさと言いなさいよ!」
 「や、どう考えてもヨタ話の類だろーなーと…」
 そんなことをぼそぼそと言い交わしているうちに、奥にいた影は見えなくなった。
 「…消えたか?」
 「おそらく。…敵意は感じるが、殺気では無い、といったところでありました」
 「…人型、ねぇ」
 ふむ、とアクシオンが人差し指を顎に当てた。
 「まあ、ケルちゃんも人型っちゃ人型だったしさぁ。どうせでっかい猿でも見間違えたんじゃないかと思って、この目で見るまでは先入観入れずにいて貰おうと…」
 バード同盟にいると、ネタ情報というものに慣れてしまうのだ。曰く、空に巨大な光を見つけて、それが牛をさらっていった、だの、森の中で狼のリーダーになってる少女がいて生肉を四つ這いで食っていた、だの、全身灰色の濡れたような人間が山を彷徨いていた、だの…。
 新種だらけのこの迷宮内なら、ちょっと人間に似た二足歩行の獣の一つや二つ、いてもおかしくないとは思ったのだが。
 「様子を窺ってきたってぇことは、多少は知性があるってことだよな」
 「その程度の知性で良いなら、森ネズミにだってあるわよ。あいつら、こっちが強かったら何もせずに逃げ出すし」
 「まぁ、そりゃそうなんだが…」
 社会生活を営んでいるような集団じゃないといいなぁ、とルークは思った。迷宮の中に巣でもあって、そこを荒らすことになったらちょっと気が咎める。
 まあ、ともかくは進んでいくしかないので、一応メモだけは書いておいて、いつも通りに探索を進める。
 「一応、リヒャルトはさっきのと同じ気配がしないかどうか、警戒しといてくれな」
 「了解であります」
 そうして川縁を歩いていったが、もうその怪しい緑色の影は見当たらなかった。
 それどころではなかった、というのもあるが。
 真っ赤な熊だの、集団コウモリだの、いつの間にか川からこっそり忍び寄ってる<悪人顔のカニ>だの…癒しの清水が同じ階にあるとはいえ、すぐにアクシオンのTPが減ってきてしまう。ルークの安らぎの子守歌も、それよりも攻撃した方が良い、と使っていないし。
 「なかなか進まないわねぇ」
 「あたし、もう帰りた〜い!」
 「もうちょっとだけ我慢してくれ。癒しの清水に通じるショートカットが出来るはずなんで、せめてそこまで…」
 だれてきた女性陣を何とか説得して進んでいくと。
  ぐもおぅぅわあ
 妙な欠伸のような呻り声が聞こえた。
 盤目のように十字路が整然と並んでいる通路に、でーんと横たわるものがいた。
 いかにも堅そうな鱗、ぎざぎざと尖った背中、でかい口…。
 「「ワニ皮!」」
 グレーテルとカーニャの声が重なった。
 「バッグよ、バッグ!」
 「新しいベルトが欲しいって思ってたの!」
 「…気持ちは分からんでもないんだけどさぁ…せめてワニが出たって言ってあげなされ…」
 「メスで剥ぐのは大変そうです」
 「いや、だから、材料の調達のことは、倒してから考えろって」
 一応突っ込んでおいてから、戦闘配置に付く。
 医術防御をかけて、攻撃力を上げて、ショックバイトにチェイスフリーズ、氷結。いつも通りにしかけていけば、それなりに怪我はするが危険と言うほどでもない。
 ひっそりと他のワニも這い寄ってきていたのだが、ワニ皮を剥いでいる間にまた元の位置に戻ってしまったし。
 「どうせなら、さっさと寄ってきてくれれば早いのに…」
 医術防御やら補助呪曲やらが効いている間に複数倒せたらその方がTP消費が少なくて済む。まあ、その分こちらが受けるダメージも大きいはずだが、死ぬことはまずないレベルなのでどうでもいい。
 女性陣はワニ皮を剥いでご満悦、ルークは癒しの清水へのショートカットを広げられてご満悦、リヒャルトはTPを気にせずチェイスを仕掛けられたので、自分の技の威力にご満悦。
 とりあえずいったん清水で回復してから、下へ行く階段も見つけられたので、<ナイトメア>は意気揚々と帰ったのだった。
 
 ちなみに、期待のワニ皮はバッグでもベルトでもなくマントに仕上げられ、非常に不評であった。確かに、ごつくて重いマントを羽織っていると、体力も増えそうだし防御力も上がりそうではあったが、お洒落とは対極の位置にある装備のようだった。
 「何つーかこう…素っ裸のバーバリアンが羽織ってると格好良さそうなマントだよな、うん…」
 「今度ワニが出たら、皮は売らずにあたしに頂戴!絶対ベルトにするんだから〜!」
 「私のバッグも作ってよ、バッグ。ブーツに一部使うのも良いかな」
 「…ま、出たらその時のことで」
 などと言いつつ、たぶん女性陣に押されてワニ皮あげちゃうんだろうな〜とルークは思った。爬虫類のバッグなんぞ、何が楽しいんだ、まったく。



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