雪吹きすさぶドゥーハンの城下町に、クルガンは一人立っていた。
 そして、目当ての酒場の前で、「ここか」と呟き、ドアに手をかけた。




死者を悼む歌




 女王探索に忙しい彼が、わざわざこうして一般人向けの酒場に足を踏み入れる理由は、ただ一つ。
 迷宮にて邂逅を果たした、かつての友を求めてのことである。
 その『友』をどうしたいのか?
 『仇敵』として殺したいのか、それとも理由を問い質したかったのか。
 答えは出ぬままに、ただ「会わねばならぬ」との焦燥に狩られて、彼はここにいる。
 寒さ避けのため重厚な扉を開けると、外の寒気が吹き込み、酒場の喧噪が一瞬途絶え、視線が集中する。だが、フードを深く被り顔も見えぬその姿に、すぐに興味が逸れたのか、冒険者たちはそれぞれの会話に戻った。
 目線だけを走らせ、酒場の片隅に求める冒険者たちの集団を認めると、彼は足音も立てずにそちらへと歩を進めた。
 こちらを向いていた女が、確たる足取りで自分たちへと向かってくるフードの男を見つけて首を傾げる。
 その視線に気づいてテーブルについていた面々が全員クルガンの方へ向いた。
 だが、その中に求める姿は無い。
 テーブルの傍らに立ち止まり、クルガンはフードを軽く持ち上げ、自分の顔を僅かに晒した。
 「ダークマターは、どこにいる」
 「てめっ、ク…!」
 がたん、とイスを蹴り飛ばす勢いで立ち上がった男の口を、視線だけで塞ぐ。
 「…余計な騒ぎは起こしたくない」
 殺気で凍り付いた男の口が、ぱくぱくと開閉し、やがて諦めたようにどさりとイスにかけ直した。
 「話を、したいだけだ。あの男は、どこにいる」
 壁際で、つまらなそうにコインを放り投げていた妖艶な女が、物憂げな手つきでグラスを口に運んだ。
 「言いたくないわね」
 「私も嫌よ。だって、貴方を見てから…!」
 勝ち気そうな女僧侶の勢いは、クルガンの視線で急激に萎み、所在なげに視線を動かした。
 彼女に助けを求められて黒衣の忍者が慎重に言葉を選ぶ。
 「何やら事情があったことは推測申し上げるが、我らのリーダーの命を狙う者に、おいそれと居場所を教えるわけには…」
 「俺も反対だね。いくら『話をしたいだけ』〜なんて言われたって、信じられるかってんだ」
 この気候に妙に軽装な戦士も、早口で喋る。もっとも、視線をクルガンに合わせる勇気は無かったようだが。
 「お前たちは」
 クルガンは、自分の声がどこか疲れた響きを帯びているのを自覚した。
 「お前たちは、あの男を信頼しているのか」
 間髪入れず頷く4つの顔。
 だが、この人の良さそうな冒険者たちに信頼されているからと言って、あの男が善い人物であるということにはならない。
 あいつは、クイーンガード時代も、部下に信頼されていた。
 誰よりも配下の者たちを慈しみ、彼らの命を守るために奔走していた。
 だが、それと女王へ反旗を翻すことは、両立できる。クーデターを起こす人間が、ある程度のカリスマが無いわけは無いからだ。
 あの男は、優しく繊細な心を持っていた。それを覆うような氷の鎧は、徐々に溶け落ち、陛下に忠誠を誓う立派なクイーンガードとなったと思っていたのだ。
 それなのに。

   ソレナノニ。


 クルガンは僅かに瞠目し、それから彼らの顔を順繰りに見回した。
 「クイーンガード・クルガンが、女王の名にかけて誓う。今、あいつに危害を加えるつもりはない。だから、居場所を教えてくれ」
 時間さえあれば自分で調べることもできるし、部下を差し向けることもできよう。だが、女王探索の僅かな合間を縫ってここに来たのだ。彼らに聞くのが最も手っ取り早い。
 顔を見交わす冒険者たちの中で、黒衣の忍者が躊躇いがちに口を開いた。
 「女王の名にかけて、とまで言われるなら、信用は出来るが…」
 当たり前だ。
 クイーンガードが女王の名にかけて宣言した言葉を疑う馬鹿はいない。
 「危害さえ加えなきゃいいってもんでもないでしょ!ダークマターのあの様子じゃ…」
 「でも、あのままじゃ次の階に行くのも恐いわよ。私は、こいつと話をすることで事態が好転する方に賭けたいんだけど」
 「もっと悪くなるかもしれないぜ?」
 「かもね」
 肌も露な女は軽く肩を竦めて見せた。
 「だけど、何もしないままじゃ、今と一緒じゃない。なら、分が悪くても賭けるのは一つの選択だわ」
 先ほどから、こいつらは何を話しているんだろう、とクルガンは心中で呟いた。
 どうも彼と接触してからあいつの様子がおかしい(それも悪い方向に)ということらしいが…。
 冒険者たちは、二言三言相談し、結局クルガンに頭を下げた。
 それは、居場所を教える代わりに「ダークマターのことをよろしく頼む」という、命を狙った相手に言うには些か奇妙な依頼であった。





 ダークマターなら、町外れの古代の碑によくいる……そう情報を得たクルガンは、再び吹雪の中に出ていった。
 今日は一段と風が強い。降る雪ばかりでなく、積もった雪も風に巻き上げられ渺々と激しい音を立てている。
 だが、その中で。
 風に乗って切れ切れに届く声があった。
 それは間違いなくクルガンの進行方向から聞こえていた。
 悲鳴のような、女の啜り泣く声のようなそれ。
 近づくにつれ、覚えのある音程の切れ端が耳に届く。
 
 また、あいつは泣いているのか。

 幾度か見た、光景。
 ダークマターは、無論個人戦闘力も高かったが、それ以上に戦術家として傑出していた。
 本人は、読み漁った文献の真似事だ、と嬉しくもなさそうだったが、個人芸に偏りがちなクイーンガードとしては稀に見る才能であったため、時折軍団を率いる立場にもなった。
 だが、比較的少ない集団を束ねているのならともかく、数千の兵を指揮すれば、それはどう優秀な戦術であっても犠牲は出る。
 ダークマターはいつでも、戦術を提示した後は、最も危険な任務に当たる軍団を直接指揮した。
 それは大局的に戦場を見るべき指揮官としては非難を受けるやり方ではあったが、いくら言われても、それだけは譲る気配を見せなかった。
 それでも。ダークマターが直接に目を光らせても、いくら本人が戦闘の先頭を切っていても。
 犠牲者は、戦には付き物であった。
 それは、他の者が指揮するよりも少ない人数であったかもしれない…いや、確実に少なかった。
 だが、0ではない。
 だから、ダークマターは、戦の指揮を執り終えて王宮に帰還した時には、しばらくは鬱ぎ込んで会話すらしなくなる。ただでさえ乏しい表情を、ますます凍てつかせて。
 彼がするのは3つのみ。

 1つには、犠牲者の遺族へ頭を下げて回ること。たいてい、王宮から出る見舞金に、自分の報奨金を加えて届けて回っていた。
 それ専用の使者がいる、と何度言っても、自分で回るのだ、と聞かなかった。

 1つには、王宮付きの教会で祈りを捧げること。何を祈っているのかはクルガンには不明だったが、一度跪き祈りを捧げ出すと、水すら口にせず一日中祈っていることもざらであったため、無理矢理止めさせたことも何度かあった。
 優しい、優しい男。
 だが、どこか狂信的な側面も持っていた。
 どうにか死体を回収できた部下がロストでもしようものなら、石のように強張った面持ちで祈っていたものだった。
 クルガンなどは、いったん死した者を甦らせることが、むしろ神に意志に背いているように思えたが、ダークマターは別の考えを持っていたようだった。
 いや、それは彼の考えと言うより、彼を育てたという司教の考えであったようだけれど。
 それについて討論したときの言葉が甦る。
 「じゃああんたは、自分が死んでも蘇生して欲しく無いって言うのか?」
 「だけど、俺は、あんたが嫌がったって、寺院に運び込んで蘇生させる。それでロストしたら…」
 そうして微かに笑う。
 「神を、呪うかもな。…あの人と同じように」
 純粋であるが故に、危険な男。
 それが、クルガンが彼を最後の一欠片までは信用しきれなかった原因でもある。

 そして、最後の一つが、歌うことであった。
 たいていは尖塔の鐘楼台で、窓に腰掛けて外に向かって歌っているのだ。
 それがあまりに哀切な響きであったため、一時は女(←何故かは不明。単にその方が雰囲気が出るからだろう)の幽霊が出たのだという噂さえ立ったのだが。
 旋律のみではなく言葉も乗せられていたが、それが誰にも理解できない言葉であったのが、幽霊と言われた一つの理由でもあっただろう。
 だが、出鱈目を歌っているのではなく、すでに失われた古代魔法語だとは本人から聞いた。
 死者を悼み、無事に天国へ迷わず行けるように、と。
 それは、鎮魂歌であった。
 ダークマターが涙を見せることはなかった。少なくとも、他者の前では。
 代わりに、聞く者が泣き出したくなるような歌を歌った。

 鎮魂歌が聞こえてくる。
 その歌詞を知る者は、ダークマター以外にはいなかった。
 『聖なる癒し手』であるソフィアや、知識の深いガード長ですら知らなかった。もっとも、ガード長は、辛うじて単語を拾い出すことは出来たようだが。それでも、とても歌うところまではいかない。
 となれば、やはりこの先にいるのは、彼の知っているダークマター本人であるということである。
 未だにクルガンは、迷宮で出会った男がダークマターかどうか確証が持てていなかった。
 顔立ちはやや若いようにも見えたがダークマターそのものであった。しかし、僧侶のような服装、冒険者のような戦い方。これはまだ誤魔化しが利くだろうが、その尖った耳を見ればエルフ族に間違いはなく。
 あれは付け耳かとも疑ってみたが、あまりに自然な色と動きを、その耳はしていた。
 しかも、決定的な違いがあった。
 彼の知るダークマターは、非常に特徴的な骨格をしていたのに、迷宮で遭遇した相手は、全く健康そのものであったのである。
 だが、赤の他人にしては似すぎている。かといって、いくら複雑な縁戚関係を想定しても、彼(純血のエルフ)がダークマター(純血の人間)の兄弟(あるいはその近辺)であるとは考えにくかった。
 問い質したいことは山ほどある。
 ここで悩み続けるよりも、本人に聞いた方が余程早い。
 クルガンは、雪の上を軽やかに走っていった。

 
 碑が、吹雪の中にうっすらと確認できる距離になった時。
 周囲を舞っていた雪が、不意に魔力を帯びた。
 緊張に肌を強ばらせ、いかなる動きにも対応できるよう余力を撓めつつ、クルガンは更に近づく。
 歌に、変化はない。
 相変わらず、哀切な調子で古代魔法語が綴られている。
 節も、単語の響きも、全く変わらぬまま、魔力を帯びた雪がクルガンを包囲する。
 それは、ダークマターが古代魔法語で雪に命じたということだ。
 厄介な力を持ったものだ、と魔力耐性があまり高くないクルガンは内心歯噛みした。
 だが、雪がそれ以上近づくこともなく、クルガンは碑の元に辿り着いた。
 「おい」
 彼は、碑を見上げる。
 古代に作られたにしてはやけに背の高い碑の頂上に、彼の求める人物はいた。
 歌は、止まない。
 再び、声をかける。
 「おい。…話がしたいだけだ。降りてこい」
 歌が、止まる。
 だが、雪に帯びた魔力は消失しない。意志の力だけで固定できているのだ。実に厄介な奴だ、とクルガンは再び思う。
 「あんた、忍者だろ?このっくらい、上がって来れないわけ?それとも、クイーンガードってのは、自分が話をしたいのに、他人を呼びつけるのが慣わしなのか?」
 つけつけとした物言いが頭上から降ってきた。
 クルガンの目が、僅かに細められる。同時に、撓められた肉体が雪を蹴った。
 傍らの碑を利用して、最も背の高い碑の先端に降り立つ。
 それを面白くもなさそうに見上げるダークマターの頭にも肩にも、雪が真っ白に積もっていた。
 一体、いつからこの寒空で歌っていたのか。一体、どうやって僧侶(未確定)の彼がここまで上がってきたのか。
 だが、クルガンの口が開かれる前に、ダークマターはある一方向を見つめ、指さして見せた。
 「俺は、気づいたら、街の入り口に立ってた」
 傍らに立つクルガンの方を見向きもせず、独り言のように呟く。
 「覚えているのは、名前だけ。とりあえず街に入ろうとしたら白髪のよれっとした剣士が、迷宮で真実が分かるとか抜かしやがったから、冒険者してるんだけど」
 何がおかしいのか、喉でくつくつと笑い、掌を差し出すように雪を受け止めた。瞬時に、拳に魔力が宿り、次の瞬間霧散する。
 「いわゆる『魔術師の魔法』も多少は扱えるようだけどね。生存確率の向上目指して、僧侶をやってるってわけ」
 そうして、満面の笑顔で、振り向いた。
 「で、あんたの話したいことって、何?」
 その目に踊るのは悪意の炎。
 記憶に残るダークマターも冷ややかな表情をすることはあったが、こんなに悪意が滴るような笑顔はしなかった。
 怒りのあまり眩暈すら感じて、クルガンは大きく息を吸った。
 「…お前は、誰だ」
 「俺の名前は、ダークマター。エルフの僧侶。現在職業は王宮の許可証も持ってる冒険者。OK?」
 笑いが、広がる。これ以上もなく悪意の塊のような笑顔が。
 「お前を、殺してやりたい」
 握りしめた拳に、じわりと汗が滲む。
 本気であることは、ダークマターにも容易に知れたはずだが、まるで動揺する気配もみせず、また笑った。
 「好きにすればぁ?」
 「あいつらに、貴様に危害を加えぬと誓ってさえいなければ、貴様などっ!」
 「あぁ、なるほど。そうやってあいつらを丸め込んで、俺の居場所を知ったんだ」
 一人ごちてから、あはははははは、と大きく喉を反らせて笑った。
 狂気じみた哄笑が、ぴたりと止まったかと思うと、無駄な動きを感じさせずにふわりと立ち上がる。
 「それは、言い訳だね」
 驚くほど間近に、ダークマターの顔があった。
 こんなに簡単に間合いに入られたことなどいつ以来だろう。確か、最後にその驚きを味わったときも…この男が相手だった気がする。
 笑いの形に細められた目を、じっと見つめる。
 淡い、白目に限りなく近いほど淡い水色の虹彩に、妙に開いた漆黒の瞳孔が、無表情に見返す。
 「あんたは、俺を殺せない」
 まるで、歌うように。
 「殺せないよ、可哀想なクイーンガード」
 「まさか、貴様は」
 無意識に伸びた手が、彼の首に触れる。氷のように冷えた肌に触れて自分を取り戻し、首に力を込める代わりに握り拳を作った。
 「まさか、貴様は、あれが俺の本気だと思っているわけではあるまいな?」
 迷宮の地下4階で遭遇したとき、クルガンの刃には躊躇いがあった。
 これがダークマターなのか確証を得なかったこと、それからまずは問うてみたかったこと。それらが攻撃を鈍らせ、致命傷を与えることを避けさせた。
 その隙を突かれて叩きのめされたが(それも、主にダークマターのメイスに!)、本気になれば、目の前の奴を殺すことなぞ造作もないこと。
 「あの時でさえ、本気じゃなかったから、殺せないんだよ」
 哀れなものでも見るかのように、ダークマターが一見慈悲深い笑みを浮かべた。
 「あんた、意外と慎重派だろ?感情に委ねてですら俺を殺せなかった。理性の戻った今では、ますます無理」
 表情は変わらぬまま、けたたましい笑いが漏れる。
 「あんたは、疑っている。俺が、あんたの知ってる奴なのか。そして」
 また、嘘のようにぴたりと笑いを止めたが、唇の両端が緩やかに吊り上がった。
 「俺が、裏切り者なのかどうか。あんたは疑っている。だから、あんたは俺を殺せない」
 鼻先が触れそうなほど、間近に顔を寄せて。
 「可哀想だねぇ、理詰めの苦手な武闘派エルフさん」
 その単語に、くらりと頭が振れるのを感じた。
 「ほんとに、あんたって武闘派エルフだな」
 耳の奥に甦る、声。
 目の前にあるのと同じ顔で、全く違った表情で。
 何とかそれを追い払い、ようよう声を絞り出す。
 「お前は、俺を挑発しているのか」
 「挑発ぅ?何がぁ?」
 わざと苛立たせているとしか思えない語尾の上げ方で、ダークマターは問い返した。
 「お前は」
 冒険者たちの会話を思い出す。
 「あの子は、あんたと会ってから様子がおかしいの。前から、自分が先頭に立つタイプだったし、治癒の力も私たちを優先する子だったけど…」
 「今のあいつは、まるで自分が傷つくのを楽しんでいるかのような戦い方をする」
 「御自分が傷つかれても、治癒しようともせず、時折、わざと敵の攻撃を受けることさえされる」
 「危なっかしくて、見てられないわ」
 「全て、貴方と会ってからだわ。あんな、まるで」

    自分を罰しているかのような

 「お前は、俺に殺されたいのか」
 だとすれば、それは彼にはやはり裏切ったという自覚があって、罪を償おうとしているということだろうか?
 だが、目の前の青年は、どうでもよさそうに肩を竦めて見せた。
 「さあ?あんたが殺したけりゃ、そうすればいいんじゃないの?」
 酷く投げやりな、その言葉。
 「ま、俺は、別に、死にたい訳じゃないけどね。…もっとも」
 言って、無造作に宙に身を投げ出した。
 「生きていたい訳でもないけど」
 そんな言葉が、残された。
 受け身も取らずに大の字になって落ちた体だが、深く積もった雪のおかげで、傷一つつかなかったようだ。
 無表情に天を見つめるダークマターの側に降り立ち、腰に手を当て見下ろす。
 「今度迷宮で会ったら、お前を殺すぞ。それまで、凍死だのモンスターにやられるだの、つまらぬ死に方をするなよ」
 「今度?」
 「あぁ、今度、だ」
 きびすを返すクルガンに、背中から声がかかる。
 「じゃあ、教えといてあげるよ。今度、会ったら、その時は、俺は僧侶じゃなくなってると思うよ」
 「あぁ、仲間に僧侶がいたからな」
 「そうじゃなくて、さ」
 身を起こして、ぱたぱたと雪を払う。
 「なーんかこの体、思うように動かなかったんだけど、ようやくイメージのぶれを修正できたからさ。そろそろ打撃系武器より、相手を切り刻む武器に転向したいと思ってね。その方が性に合ってるみたいだし」
 それは、まるで。
 まるで、他人の体をコントロールしているかのような言いぐさで。
 思わず振り返り、凝視するも、ダークマターの顔には、相変わらず悪意に満ちた笑顔が貼り付いていて、意図が読めない。
 「今度会ったら殺す?いいねぇ、俺もそうしようっと。あんたのことが嫌いだし」
 
 「俺、あんたのことが好きだよ。ひょっとしたら陛下やソフィア様よりも。あんたと一緒にいるのが一番楽しい」
 
 「一目見たときから、気に入らなかったんだよね。あんた見てるとむかついて、むかついて。そうだね、殺せば良いんだ。そうしよっと」
 良いことを思いついた、とでも言うように、楽しそうに手を叩く。
 子供のように笑う彼から目を逸らし、クルガンは吐き捨てた。
 「望むところだ」
 

 立ち去るクルガンの耳に、哄笑がいつまでも響いていた。


 そして、それから、歌が始まる。



 死者を悼む、歌が。













なんなんざますか、これは。
主人公、分裂気味。
ひっそりとテーマは
『不完全な肉体に宿った完全な魂・完全な肉体に宿った不完全な魂』。
ダークマター(エルフVer)は、自分の魂の欠落に気付いていて、いつもイライラしています。
クルガンは、八つ当たり相手(笑)。
ま、そんな具合で。




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