女王陛下のプティガーヅ
オティーリエの手記。
わたくしが、朝目覚めると、すでにクルガンとダークマターの姿は室内に無かった。
朝の空気を入れようと窓を開けると、宿屋の裏庭にいる二人が見えた。
二人は軽装で…じゃれ合っている、と表現すべきだろうか。
本来なら、訓練している、とか、手合わせをしている、と言うべきなのだろうが、あまりにも力量差が歴然としていた。
いくらダークマターが突っかかって行っても、クルガンに軽くあしらわれている、といった態だ。
「あ〜〜!も〜〜!!腹立つ〜〜〜!!」
ダークマターが足を踏み鳴らして怒り狂っている。
「仕方がないだろう。今、レベル差は倍だ」
クルガンのセリフは冷静なようだが、その表情を見れば、浮かれていることがはっきりしており、よけいにダークマターの神経を苛立たせているようだった。
それにしても、レベル差は倍…わたくしも、目覚めてみれば自身の能力が増しているのを感じたが、盗賊という職業は、少ない経験からでも能力を増すことが出来るらしい。
昨日は僅かであったダークマターとクルガンの力の差が、他人の目にもくっきりと分かるようになってしまっている。「クルガンとは対等な関係」と明言しているダークマターからすれば、不愉快この上ないことであろう。
わたくしは、かつてのクイーンガードを思い浮かべた。
敏捷度においてはクルガンは他の追従を許さないが、魔力はダークマターの方が優れていた。二人が手合いをすると、他者の目には留まらぬほどの早さで打ち合う姿が美しかったものだ。
ダークマターがクイーンガードとなった初めの頃には、途中で止めねばどちらかの命が失われるのではないかと思えるほど激しく手合わせをしていたが、手の内をお互い熟知するにつれ、じゃれ合いのような戦いに変わっていった。無論、手を抜いているというのでは無く、気を抜けば一撃で死亡するような攻撃には違いなかったが、何というか…表情がまるで悪戯っ子のようで、二人が心底楽しんでいることがよく分かったのだ。
今もまた、クルガンは楽しんでいるようであったが、攻撃をことごとくいなされるダークマターは、楽しむどころではないようであった。
打ち合っていた場所から少し離れて、ダークマターは、足をとんとんと鳴らした。
その横顔から、不意に表情が消える。
す、と僅かに細められた目の意味を考える間もなく、ダークマターの身体が跳ねた。
その突進をそれまでと同じようにかわそうとして、クルガンは身を引きつつ腕を上げ…たが、ダークマターの足はいきなり軌道を変えて後頭部から首筋にと落ちてくる。
そのまま手前に巻き込むようにして踵が入り…耐えきれずクルガンの身体が地に転がった。
それを確認して、さっさと身を離し、ダークマターは極上のミルクを舐め終えた猫のような顔で、両手を腰に当てた。
「アサシンモード。今まで、危険だからやんなかったけどねー」
「…まったくだ…首の骨が折れるところだったぞ」
辛うじて右腕が入っていたから頸骨をへし折られることは免れたのであろう、クルガンが頭を振り振り身を起こした。
「だって、どーしても一本取りたかったんだもーん。毒使わなかっただけ、ありがたいと思ってねー♪」
「毒…持ってるのか?」
立ち上がり、首を回しながら、クルガンはイヤそうな声でダークマターに問う。
ダークマターは、薄い胸を張って、人差し指をクルガンにびしぃっと突きつけた。
「あたりきしゃりきカッパのブリキ!」
…意味が分からない…暗号だろうか…
「レベルが下がってんのを確認した時から、そーゆー補助が必要だと思ってさ。夕べ、メシ食いながらちょちょいっと…」
「…メシ食いながらって…」
夕食を摂りながら?普通に食事をしていたように見えたのだが…。
「スプーン一本と蝋燭一本あれば、毒なんて簡単に精製できるよー。とりあえず、レンの実から採った麻痺毒と、アオサンガの幼虫がいたから神経毒も精製してみたけど」
ダークマターは小さな小瓶をクルガンに振って見せた。
「あんたも使う?もし必要なら、マラバ蛇とか、腐肉とか探してきて、もっと強い毒も作れるけど?」
「…毒は、あまり好きではない…」
クルガンは、頭が痛い、といった風にこめかみを押さえ、呻くように言った。
「お前もなぁ…仮にも聖職者が、毒など精製するな…」
「使えるものは、何でも使うべし。実力が足りないのに、正々堂々に拘ってちゃ、死んじゃうじゃんか。…ま、一応、奥の手用に持っとくだけのつもりだけどさ」
苦笑して、ダークマターは懐に小瓶をしまいこんだ。
彼の毒に対する知識、というのは…やはり、わたくしを暗殺する用途で狂える司教に教えられたものなのであろう。
…そう考えると、いささか複雑な気分になるが。
彼がその気になれば、わたくしを暗殺することなど容易い作業であったはず。そうはならなかった、ということは、彼の善なる魂の賜物であろう。神よ、彼の魂に祝福を与え給え。
朝食を摂るために食堂に向かうと、ようやくユージンも帰ってきており、わたくし達に鑑定の結果を報告した。
それを聞いて、ダークマターが顔を顰めて唇を尖らせた。
「その司教の女ってさー、信用できんの?」
「君は、フィーカンティーナを疑っているのか?」
「だってさー、そんな初歩の鑑定に、こんなに時間かかるなんてさー……何やってんの?」
最後の言葉は、思い切りむせ返ったクルガンへのものだろう。
げほげほと咳き込むクルガンの気持ちは、わたくしにも理解できる。
男性が少なからず好意を持っている女性の元で一晩過ごす意味を、わたくしとて知っている。それゆえ、ユージンの帰りが朝になったことは、ある意味当然と受け止めていたのだが、ダークマターにとっては違うらしい。
よもや、鑑定が朝までかかったと思っているとは……ダークマターも、成人男子の一人であることだし…まさか……。
ソフィアがクルガンを肘打ちした。かなり痛そうだが…。
レドゥアは苦虫を噛み潰したような顔で、我関せずを決め込むようだ。
ユージンも些か困ったような表情で顎を撫でている。
「ちょっとちょっと、何、皆、その態度。俺、何か変なこと言った?」
ダークマターは怒った顔のまま、皆の顔を順に見ている。
もう一度、ソフィアの肘がクルガンの鳩尾に食い込んだ。
クルガンは、僅かに目尻に涙を溜めながら、一つ咳払いをして。
「あー、だから、そのー…お、雄しべと雌しべがだな」
………。
一体、何を………。
まさか、朝から性教育でもしようと言うのだろうか。
言われたダークマターは、きょとんと小首を傾げた。
「は?いきなり、何?」
「い、いや、だから。雄しべと雌しべがなければ子孫は産まれぬというか…」
「植物学の話?そりゃ知ってるけど。特にレンの実なんか、青いうちに摘まなきゃ毒にならないから、受粉時期の知識は大切だよー」
「そうじゃない…そうじゃなく、だなぁ…」
クルガンはぶつぶつと呟きながら頭を抱えた。
「そうではなくて…あー…人間において、というかだなぁ」
「人間の?あぁ」
ダークマターは、ぽん、と手を叩き、どこか高慢な態度で鼻を鳴らした。
「そのくらい知ってるよー」
「本当にかっ!?」
掴みかからんばかりの勢いで聞かれ、ダークマターは、むっとしたように唇を尖らせた。
「じゃあ、言ってみようか?えーと…性交、とは…」
…朝からする話題では無い、とは思うのだが、ダークマターの目が宙を向き、手が本でもめくるような動きをしているため、それに気を取られて、制止するタイミングを逸してしまった。
「…男性性器、すなわち陰茎が、女性性器、すなわち膣に挿入されることを、狭義の意味で性交と呼ぶ。広義の意味では、性的な意味合いを込めて性器を他部位に接触させることも性交と表現する。これには、口腔内性交、経直腸性交などが含まれる」
淡々と、本当に何かを読み上げているような言葉であったため、聞いていても卑猥な感じはしない。ただただ学術的な文章のようである。
そこまで言って、ダークマターは、何か皆の反応がおかしいと感じたのか、言葉を切って首を傾げた。
「間違ってる?」
「いえ、合っていますよ、ダークマター」
わたくしの言葉に、ダークマターは嬉しそうに笑った。
「えーと、それからー……女性の卵巣からは約一月に一度卵子が排出され、卵管采を通じ卵管内に遊走する。また、男性側からは陰嚢内の精巣で産生された精子が前立腺他の器官より分泌された精液と共に陰茎より放出され、膣より子宮へと遊走し、卵管内でただ一つの精子のみが卵子と結合する。これを以て妊卵の完成と呼ぶ。この妊卵は子宮内膜に着床し、約9ヶ月の時を経て出産に至る。
……もっと、詳しく言おうか?」
にこにことした様子は、難しい詩でも暗唱できたことを誉めて貰う子供のようであった。
だが、彼の期待とは裏腹に、クルガンは頭をますます抱えていたし、ユージンも居心地悪そうにもぞもぞしていたし、レドゥアは苦笑していた。
無邪気な様に刺激されたのだろう、ソフィアが立ち上がり、ダークマターの隣に立って、彼の頭を撫でた。
「凄いわ、ダークマター。それは、暗記しているのね?」
「んー、一応、解剖学のあたりの本も読んだから」
なるほど。
あくまで、彼にとっては生物学的な意味と言うか解剖学的な意味というか、ともかく机上の理論なのであろう。
暗殺技術に解剖学は必要であっても、低俗なラブロマンスなどは不要であったろうから、そのような文章は読んでもおらず、さりとて猥談をするような相手もいなかったとなれば、彼の知識の偏りもむべなるかな、と思われた。
クイーンガードとなってからの彼の性格を思い出すに、やはり猥談を仕掛けられるような雰囲気ではなかったろうし。
「思うに…」
ユージンが、ごほん、と咳払いをした。
「こういうことは、自然と知るようになるのではあるまいか?わざわざ今から教えずとも…」
「こいつが、幾つだと思っている!?今更、自然と知る、も何もあるか〜!」
以前のダークマターは20代半ば。今の外見が20歳前。…自然と知ることを期待するのは、一体何歳までであろうか…。
「いいんだ…作戦を立て直すことにする……」
クルガンは冷え切ったお茶を一息にのみ、よろよろと立ち上がって、部屋へと戻っていった。
それを不思議そうな顔で見送ったダークマターは、首を捻って聞いた。
「で、何で、そんな話になったんだっけ?」
わたくし達は、ひたすら生暖かく笑うより他に無かった。
そして、わたくし達は迷宮に挑む前に、錬金術ギルドへ足を向けた。昨日の戦闘でいくばくかの錬金術材料を手に入れていたからだ。
ギルドの魔法石合成部門で、合成組み合わせ表と手持ちの材料を見比べた結果、クレタとフィール、プロテクトといった初歩の魔法なら合成出来ることが分かった。
「どうしましょうか。未だクレタはわたくししか使えませんし…僧侶魔法から強化しますか?」
「んとー、でも、封傷の杖があるから、しばらくはフィールを強化する必要も無いんじゃないかなー。ま、いずれはするけど」
「プロテクトも…現在、私たち前衛は、そこそこの防御力がありますから、急ぎはしませんけど?」
差し迫って、となるとどれもピンとこないものだ。
考え込んでいると、ダークマターが、ぽん、と手を叩いた。
「あ、そーいえば!」
「何だ?」
退屈そうに議論を見ていたクルガンが、早い反応を示す。
「酒場に依頼が出てました。クレタの魔法石が欲しいって。今朝は確認してないから、もう済んじゃった可能性もあるけど、どうせクレタを合成するなら、1個酒場に持って行くのもありかと」
「あぁ、そう言えば…報酬は飾りの護符だったか?」
それがどんな効果を持つものかは知らないが、アイテムを売る店も無い所では、貴重であることには違いない。
「分かりました。では、クレタは一つ持っていくことにしましょう」
そして、わたくし達は他にも幾つかの石を合成し、酒場へと向かった。
酒場にいたのは、昨日錬金術ギルドで出会った内気そうなエルフの少女と、その保護者であろうピクシーであった。
「きゃー!ほんとに、ほんとに!?書いてみるものねー!」
ピクシーはわたくしが差し出したクレタの魔法石を重そうに持ちながら、周りを飛び回った。
「ほら、メラーニエ!あんたも何か言いなさいよ!」
「あ…あの…お、おれい…」
「あ、そうそう!」
ピクシーは、少女の背負った荷物に飛び込み、護符を手にしてわたくしの前に飛んできた。
「はい!ありがとう!また、何かあったら、頼むわ!」
「わたくし達に可能なことであれば、いつでも力になりますよ」
なにやら放ってはおけない気がして、わたくしは思わずそう言っていたが、背後で誰かの溜息が聞こえた気がした。
その場から逃げるように立ち去るエルフの少女を見送って、わたくし達も立ち去ろうとした。
とことこと歩きながら、背後ではダークマターがクルガンに、皮肉げに言っている。
「どーですか、クルガンさん。あーゆー儚げな美少女はお好みで?」
…妬いている、のであろうか。
クルガンは、賢明にも答えることはせず、ふん、と鼻を鳴らしただけであった。
「可愛いわよねーvvもう、ぎゅーってしていい子いい子したくなっちゃう!」
ほんわかとソフィアは両手を組み合わせたが、ダークマターはますます皮肉の色を濃くした。
「えーもーまったく、可愛らしいことで。…思わずゲイズハウンドをけしかけたくなる可愛さ!」
……表現が穏やかでない。
しかし、ダークマターの頭をぽかりと殴りつつも、クルガンがこっそりと「実は、同意なのだが」と呟いたのが、わたくしには聞こえた。
……実は、わたくしも……あのようにはきつかぬ娘は得手とは言えぬのだが……。
酒場から出て迷宮へと向かおうとしたところで、傍らの茂みから何やら声が聞こえてきた。
「やっぱり、偉大なる第一歩は、こんなところより雰囲気のあるところで踏み出すべきなのよ!」
「え…で、でも、どこで……」
「そうねぇ……うん、錬金術ギルド!あんたはこれからあそこに何度もお世話になるんだし!そうよ、そうしましょう!」
「え、えぇ……」
さて。
錬金術ギルドは、我々が向かうのとは逆方向ではあるが。
「乗りかかった船、と言いますし…わたくし達も、彼女が踏み出す第一歩とやらを見守りますか?」
「はい、リーエ!そうしましょう!あぁ…私にもあったわ…初めて魔法が使えたときのときめき…」
「……一体、何十年くらい大昔の話なんだろ……」
ソフィアのさりげない背後への蹴りは、慌ててダークマターを自分の背後に押しやったクルガンの臑にヒットした。
再度くぐった錬金術ギルドの扉の内側で、ピクシーが目聡くわたくし達を認めて、嬉しそうに近寄ってきた。
「あら、あんたたち、ちょうど良かったわ。あんたたちも偉大なる儀式を見たいんでしょう?」
「そうですね。是非とも拝見させて頂きたいものです」
背後のくすくす笑いは、振り返らずとも誰のものかは分かった。さぞかし目は凍えていることだろう。
「そうよね、そうよね!そうだと思ったわ!はい!」
差し出された手の意味が分からず首を傾げていると、ピクシーは次第に怒りだした。
「偉大なる儀式に参加するってのよ!?ご祝儀を寄越して然るべきでしょ!」
わたくしは頷き、少し悩んだが500Gold手渡した。
「あら、ホントにくれるの!?ありがとう!でも、ちゃんと後でプレゼントもあるのよ!ただで貰うってんじゃないから安心してね!」
微笑むわたくしの背後からは、「ゲイズハウンドからキメラに格上げけってーい♪」という呟きが聞こえてきた。その後、殴る音が聞こえないということは、クルガンも同意だったのだろう。甘い子たちだ。わたくしなら、ファイヤドラゴンをけしかけたい。この少ない手持ちから500Goldも奪っていくとは!
『偉大なる儀式』とやらは、錬金術ギルドの魔法石合成部門で行われた。
気弱そうなエルフの青年が、「何で僕はこんなことしてるんだろう?」と顔に書きつつ、手渡された紙を読み上げている。
そして、ピクシーがクレタの魔法石をエルフの少女に手渡した。
「さあ、メラーニエ!一気に飲み込むのよ!」
……飲み込む?
この時代の魔法石は、飲み込むものなのだろうか?
わたくし達が見守る中、エルフの少女は震える手で石を持ち……飲み込んだ。
何度か咳き込んだが、どうにか飲み下したのだろう、涙目で立ち上がる。
そして、小さな声で「クレタ」と呟くと、彼女の前に、小さな小さな炎が生まれた。
「きゃーっ!やったわ、やったわ!可愛い炎が出たじゃない!」
エルフの少女も、やや緊張が解けたのか、かすかに笑みを浮かべた。
「やぁん、可愛い〜vv」
ソフィアが両手を口に当てて目を潤ませている。
「…ま、可愛いっちゃ可愛い炎だったね。灯りくらいにしか使えなさそうなところが」
ダークマターの意見は、あくまで辛辣であったが。
そして、彼女たちが立ち去った後、ダークマターは、作っていたプロテクトの石をじーっと見つめていた。
「おい、お前、つまらんことを考えてないか?」
クルガンの声に上げた顔は、悪戯っ子そのもので。
「やー、やっぱ気になるなー。これ、飲んだらどんな感触かなー、と」
魔法石は、やはりこの時代でも念じるだけで使用出来るのだが、どうやら試してみたいらしい。
止める間もなく、ダークマターはそれを口に放り込んだ。
「うげ…げほげほげほっ!…うくっ!」
「……馬鹿か、お前は……」
呆れながらもクルガンが差し出した水筒をひったくるように奪い取って、一口飲み下す。
上げた顔は涙目で、息が苦しかったのか真っ赤に染まっている。
「うげー…めっちゃきついよ、これ……よくまー、俺より小さいのに、飲めたな、あの子。…ちょっと評価が上がったかも」
「お前の評価は下がったぞ」
「いや、別の意味で上がったがな、私などは」
「あぁ!?」
「いや、何、こちらの話だ」
ユージンは人の悪い笑みを浮かべ、クルガンがそれ以上追求する前にレドゥアの方に向いた。
「しかし、ピクシーというものは、魔法石を飲み込んで使用するのでしょうかな?あの体格では、飲み込めそうにもないのだが」
「ふむ…あやつらは多少の魔法は使えるが、それは我らのように魔法石を利用したものではなく、生来のものではなかろうか」
「さて、では、彼女たちはこれ以上の魔法の発展は得られない、と?」
「ふむ、どうであろうな。念じ方さえ習得すれば、我らと同じように魔法を得られるかもしれぬが…逆に言えば、我らはあれらのような魔法の修練の仕方は出来ぬ。あれらが魔法石を使えるか否かは……」
どうやら、レドゥアもユージンも、魔物の生態というものに興味を持っているようだ。
放っておくと延々と続きそうな議論に、わたくしは不本意ながら彼らに注意を促し、ようやく迷宮に向かうことにした。
「しかしですな。その場合、亜種とも言えるフェアリーの魔法は…」
まだ、議論は背後で続いていた。