ほろ苦い思い出

 

その5.鼻に管!?
 まだ、「クランキーコンテスト」が新台で続々入荷していた頃、私はとある某店へ毎週日曜日に通っていた。

日曜日はそのころ、どの店も設定値が渋くて、このおもいっきり郊外の某店だけは、

毎日設定5を使ってくれるので、行く店がない週末は、ここに決めていた。

 いつものように、日曜日にのこのこと某店に出かけて設定5を掴みのんきに打っていた私。

すると、おもいっきり腰の曲がったおじいちゃんが、私の2つ隣に腰を下ろす。

よく見ると、鼻に呼吸器のようなクダが通っている!

おいおい、大丈夫かよ....。元々この店は、こういった超年配の客ばかりなので、

少々の事では驚かないが、さすがにこの呼吸器にはビックリ!

しかもこのオジイチャン、1Kで右枠下青7出してやがる!

でも当然のように全く気付かず追い銭の準備をしているので、

私の持ちコインの中から1枚コインをあげてBIGを目押ししてあげると、

心臓が止まりそうな程のビックリした顔と、ウレシサのあまりほころびすぎの喜んだ顔の入り乱れ。

何だか私もウレシクなってしまう。

そのオジイチャンがBIG終了後クレジット50枚を全部落として、私の左隣に着席。

どうやら気に入られてしまった模様で、ガンガン話しかけてくる。

 この日から毎週日曜日は、このオジイチャンとの連れスロが日課になり、

毎日私がちょうど設定5を掴んだ頃オジイチャンも登場して、世間話に花を咲かせる日々が続いた。

でもやはり、毎日鼻には管が.....。

 色んな会話から、今入院中で日曜日だけは3時間の外出が認められている事、ナカナカ退院できない事、

ここでスロった後は必ず孫が見舞いに来てくれる事、その孫が世界一かわいい事などなど、

さまざまな事を楽しそうに、また辛そうに話してくれていた。

いつしか私も、そのオジイチャンの話を聞く事が楽しくなってきていた。

 そんなある日の日曜日、オジイチャンが「最近勝てなくて...」と悲しそうにぼやく。

今までは私も、「そのうち運が廻ってきますよ。」と言っていたが、

仲良くなった今では罪悪感がふつふつとわいてくる。2人が打っているのは「クランキーコンテスト」。

そう、技術介入度満点で、そのオジイチャンの打ち方だと、設定6でも負けてしまう、

そんな機種なのである。今日は心を鬼にして...

ガリ「今日はもう帰って、お孫さんと楽しい話でもした方がいいですよ。

   パチスロは、目押しが出来ないと勝ちづらいから、ここでお金を使うより、

   お孫さんに何かオモチャでも買ってあげた方がいいですよ。」

 私の持ちコインの中から200枚ほどレシートに変えて、ありったけのお菓子をカウンターで貰い、

オジイチャンに手渡す。

ガリ「これをお孫さんにあげて下さい。」

 その時、いつも笑っていたオジイチャンの顔は、困ったような、怒ったような、

なんとも言えない初めて見る顔だった。

それでも無理やり手渡して、無理やり追い返すような雰囲気を作ってしまい...。

 それ以来、その店には日曜日にもオジイチャンがこなくなり、

私もいつしかその店には訪れなくなってしまい、今では店自体がつぶれてしまって、

再度出会う機会も見つからなくなってしまったが、今でも時々思う事は、

「よかれと思ってしたあの行動・発言を本当に喜んでもらってくれたのか? とてもそうは見えなかった。」

という後悔の念.....。でも、オジイチャン! 私は、オジイチャンの笑顔が大好きでした。

またきっとどこかで会える事を信じて。それまでお元気で!