暫定版 北海道立図書館探訪記
北海道立図書館へ行って参りました。
後日、詳細は『放浪記』のページへ「放浪の記録」としてアップするとして、
お前の旅行なんぞはどうでもいいから、
道立図書館で私が何を目撃してきたのかだけでも(笑)先に教えろ
という空気を薄々感じますので、そちらだけでも取り急ぎアップします。
『収穫』ということで、私が資料入手してきたモノに関しては以下に列挙しますが、
その前に、なぜ北海道立図書館に、これほどの雑誌資料があるのか…ということを
今回改めてちゃんと知ることができましたので、
その資料をありがたく利用させていただいてもいることでもありますし、
そのあたりから書かせてもらいます。(興味ない人は読み飛ばして下さいね〜)
ネットで道立図書館にアクセスし、蔵書検索にて雑誌を検索してみると
戦後の貴重な雑誌類が膨大に所蔵されていることがわかる。
が、一部では、直接道立図書館へ行ってみたことのある人が
道立図書館で見たというのにも関わらず、検索データの中には見つけることができないモノも少なくない。
当然考えられるのは、まだデータ化されていないので、検索に引っ掛からないのだろうということである。
と、いう話しを前提に道立図書館の人に尋ねてみると、
やはりまだ雑誌関係に関しては完全にデータ化されていないということであった。
それでは、オンラインで見ることができるデータ以外に閲覧することができる資料一覧くらいはあるはずだと
尋ねてみると、一冊の目録を出してくれた。
それが
『栗田出版販売株式会社寄贈雑誌目録(未定稿)』 北海道立図書館 刊
である。
北海道滞在時間と他の資料取得時間との関係で細部までくまなく目を通すことはできなかったが、
ざっと流し見ただけでも、
「うぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!!なんじゃこりゃぁ!!
今までどうしてもみつからないと泣いていたヤツがこんなところ(失礼)に あるじゃないか!!!
あ、これもある!!ぎゃっ!!こ、これまでありやがんの!!! 」
状態でした。まさしく驚愕でした。
ここにその目録の巻頭に掲げられている「まえがき」を書き写してきたので、
これを引用させてもらうことにして、この道立図書館所蔵資料の概略案内に変えさせてもらおうと思う。
昭和50年の秋に、栗田出版販売株式会社から、30万冊を越える大量の雑誌が寄贈された。
これは、当時社長であられた栗田確也氏が、戦後、昭和25年以降のものを中心に収集・保存
されていたものです。雑誌の資料的価値については、近年ますます重要性が認識されてきてお
りますが、その収集・保存については、充分でないのが現状であります。
戦後間もない頃の雑誌の研究や、大衆雑誌の研究は、資料の欠如から、長い間空白状態にあ
りました。さきごろ、ようやく二、三の研究が発表されましたが、今後この寄贈雑誌が、この
方面の研究や当時の世相等の解明に、大きな役割を果たすものと信じます。
ここに目録を作成いたしましたので、関係各位に広くご利用いただければ幸いです。もとよ
り、未定稿ですので、不備な点は多々あることと思います。お気付きの点は忌憚なくご意見を
お寄せくださるようお願いいたします。
なお、栗田確也氏は、惜しくも昨秋他界されました。謹んでご冥福をお祈りするとともに、
あらためて感謝の意を表する次第であります。
昭和53年3月 北海道立図書館長 田中 保
30万冊である。
…ただ、北海道立図書館のHPの沿革を改めてみると11万4千冊という記載になってるし、
栗田出版販売株式会社のHP(栗田BOOK-SITE)
にある会社沿革を拝見させてもらっても
11万4千冊となっているんだけど…(笑)
でも、それにしたってとんでもない数である。
これだけの資料を一朝一夕にデータ化するのは、やはり大変なことであろうし、
まだデータ化されていないものが多いというのも頷けないこともない。
これからキチンと整理されれば、とんでもない発見があるかもしれない宝の山であろうということは
何も横溝正史ファンだからというだけでなく、戦後の作家の研究者には極めて重要なものであろう。
ともあれ、それだけの資料数なので、未だにデータ化されていないモノも多く、
見たことがある人がいるのに、検索ではまだ見つけることができないという資料も多いのだということでした。
さて。本題である(笑)。
今回私が取り敢えずの目標としていたのは、「読切小説集」という雑誌であるが、
これは既にデータ化されているのでネットの検索でもちゃんと引っ掛かる。
「人形佐七捕物帳」の初出掲載誌より何本か資料を入手させてもらうが、
その他にも「読切小説集」掲載の再録作品などの状況も確認してきた。
一部からの噂として耳にしていたが、
道立図書館では、雑誌名だけを書いて閲覧希望すると、
所蔵されている雑誌を全部、キャリアーに積んで見せてくれるという話しがあったが、
まさしく、今、この噂を体験することになったのである(!)。
「読切小説集」2巻12号 昭和25年12月号から約10年分、その約百冊。
それが、ワゴンにドーンと載せられて運ばれてくる姿は、もう荘厳というか、驚異的とすら言える。
もちろん、残念ながら、全ての号が揃っているわけではなく、時々抜けがある。
あらかじめ下調べをしてあるリストを元に、掲載がわかっている号の確認をしつつ、
念の為他の号の目次に目を通す。…それだけでも、うんざりするほどの時間がかかる。
それでも、これまで古書店、古書市などで目を皿のようにして探しまわっていたものが、
こうも簡単に手にして、その中身まで確認することができるのである。
これほど幸せなことはない。…いや、それはちょっと言い過ぎか…(笑)。
「たぬき汁」が掲載されているハズである号を除いて、「うかれ坊主」「拝領の茶釜」、
「伝七捕物帳」のうち横溝正史が書き、後に佐七モノに書き改められた「雷の宿」「江戸名所図絵」「通り魔」、
書誌にはあまり記載されていない再録の佐七モノもいくつか。「どもり和尚」「仇打走馬灯」。
『清艶口絵小説』と銘打ってカラーグラビアのような形で、まとめられた「雪女郎」。
もちろん、既に私が入手済みであるところの昭和30年に連載されたときのモノも何本かは所蔵されていた。
更には、昭和29年から30年にかけては、そのほとんどの増刊号に掲載されていた由利先生モノや、
戦前の短編などの再録など、「なんでまたこの話がこの時期に再録されてるの?」と首を傾げたくなるほど掲載されていた。
題名だけでも列記すれば「鸚鵡を飼う女」「白蝋少年」「盲目の犬」「蝋の首」「花髑髏」「面影双紙」
「かひやぐら物語」「妖説血屋敷」「悪魔の家」「黒衣の女」「変化獅子」「名槍まんじ暦」といったところであろうか…。
あ、そうそう。忘れてた。ぎょぎょぎょとさせられたのが、金田一耕助モノの「妖獣」。
何これ?…こんなタイトルの作品ってあったっけ?…と、目を通しつつ、取り敢えず資料入手してから
ホテルに戻ってから確認してみてわかったが、「睡れる花嫁」の初出原題 だったのね。
「読切小説集」だけでこれである。
これがネット検索に引っ掛からない他の雑誌になると、更に様相は深刻なものとなっていく。
まず、「小説倶楽部」である(!)。
道立図書館所蔵の詳細は後日改めてちゃんとリスト化するつもりですが、ざっと今回の入手資料を上同様列記すると
「地獄の花嫁(前篇)」「くらげ大尽(解決篇)」「くらやみ婿(解決篇)」「蛇性の肌」といったこれまで未入手だったもの。
「笛を吹く浪人」「ふたり後家」「色比尼丘」「花扇人形」「振袖幻之丞」などの再録作品。
佐七以外の再録も「獣人」「迷路の三人」「薔薇と蝋人形」「三十の顔を持った男」「鸚鵡を飼う女」「どくろ検校」などなど、
「三つ首塔」や「魔女の暦」といた既に持っているものまで入れたらとんでもない量になってしまう。
何せ、昭和27年8月号(第5巻8号)から昭和32年までごっそりとあるのだから…(もちろん途中抜けは有り)。
「小説倶楽部」だけで疲れていては、先が思い遣られる。まだまだ後があるのである。
次に控えしは、「傑作倶楽部」ときたもんだ。
これもまだデータ化されていなかったが、所蔵リストにはあったので、
閲覧を申し込んでみると……。
出たッ!!きゃー!!!
昭和27年11月号(第2巻11号)から昭和40年くらいまで…って。
「すいません。全部だと、ワゴンに乗りきらないものですから…とりあえず乗せられるだけ出してきましたが…」
と恐縮されても……。こっちの方が恐縮しちゃうよ。
…何年から何年の号があるのか良くわからないから、取り敢えずあるだけ見せてもらえばいいや…
と軽い気持ちで閲覧申し込みをしただけなのに、そ、そんなにあったの!?
ワゴンに乗せられた百冊近い雑誌をみるだけでも、もうこれは至福を通り過ぎて、一種苦行かもしれない…と思う。
片っ端から確認じゃ。
幸い、横溝正史がに作品掲載をしていたのはだいたい昭和30年代中頃までだろうからと、
最初にワゴンに乗せられてきた昭和34年の分までは確認してみた。
佐七モノの再録が、既に入手済みのものも含めていくつか。
「二枚の絵馬」「珠数の彫物」「金色の爪」「幽霊屋敷」「春色眉かくし」「いなり娘」「地獄の花嫁」「女難剣難」
佐七モノ以外には「風盗賊」「からす凧」「名槍まんじ暦」 ときたもんだ。
くやしいのが、これだけありながらも「浄玻璃の手紙」を確認できなかったことである。
これで、ホッとしていたらいけません。
「読切読物倶楽部」!…こやつまでおったか…。
通巻49号から83号まで(途中欠号あり)所蔵で、
既に入手済みのモノは抜きにして、
「風盗賊」「緋牡丹変化」「夜毎来る男」「風魔あらし」「浄玻璃の鏡」。
「人生倶楽部」…お前まで。
「萬引き娘」…。げげっ!!目次には「お高祖頭巾の女」ってあるのに〜〜(笑)
こいつは、例の本の巻末解説に対してちょっと異説を唱える存在じゃないのか?(爆)
ついでに、「人魚の彫物」の既入手資料の難あり部分もこちらの所蔵号から補填させてもらう。
いや、ちょっとまて。補填…よりもなによりも、あっちだと一枚百円もしたコピーが…こちらでは…。
う〜〜〜〜む。ちくしょう!先にこちらにあることが判っていたらぁ〜〜〜〜〜!!!!!!!!
ま、こんなこともあるさ…(泣)
さすがに疲れてきた。
「実話と讀物」。
まさかこいつまで見ることができるとは…(涙)。
「影右エ門」
それと、ついでに、「別冊読物と講談」より「半七捕物帖断想」(随筆)
おっと、そうそう。
忘れちゃいけない「別冊週刊サンケイ」「番太郎殺し」
と、いい加減、このあたりまでくると時間切れである。
…信じられない事に、人形佐七の初出掲載雑誌で、戦前の「講談雑誌」掲載分以外は、
上記した「たぬき汁」掲載の「読切小説集」を除くと、
おそらく 現状の書誌にて明らかにされている物は
全て入手できてしまったことになるのである。
もちろん、初出がハッキリしていないモノもあることではあるし、 探求は続けますけどね…。
でも、もう、しばらくは今回入手してきた資料の整理だけでいいや…(笑)
と、今回の入手資料に関して、ざっと御案内させていただくことで、
北海道立図書館の所蔵資料がどれほど凄いものかの一端くらいは垣間見てもらえたかと思う。
なんといっても、手前ミソで恐縮だが、
これでも国会図書館、神奈川近代文学館、日本近代文学館などを始め、
それなりに雑誌探索にあちらこちらと渡り歩いて来て少しくらいのことでは驚かないだろう私が驚愕しているのであるから、
持って推し量れるというものだろう(笑)
惜しむらくは、実際に所蔵されている所蔵庫も見てみたかったなぁ…。
さて、こう、私の大満足を一通り話しをさせてもらうだけでは、
物足りないとお感じになられる人もいるかもしれません(笑)。
北海道立図書館へ直接行かねば、結局のところそういった資料を目にすることはかなわないのか…。
道立図書館の職員さんの御努力を期待し、データ化されてネットで検索できるようになるまで指をくわえて待たねばならないのか…。
いえいえ。襟裳屋とて北海道を後にしてしまえば、またいつ行けることやらわかりません。
まだまだ調べ足りないもの。調べたいと思うものもこれから出てこないとも限りません。
その時にはどうしたらよいのか…。そのくらいのことは、在道中にも気にかかってましたとも。
で、職員さんに、「この、まだデータ化されていない雑誌の所蔵状況がわかる
『栗田出版販売株式会社寄贈雑誌目録(未定稿)』は、道立図書館以外でも見る事ができないのですかね?」
と尋ねてみました。
調べてみてもらったところ、
東京都立図書館 中央図書館にこの目録が所蔵されているようです。
ネットでこの目録のことを検索してみると、確かに所蔵されているようです、
請求記号 /0503/127/78
配置 書庫
閲覧 可
貸出 否
状態 定位置
資料ID 1120891190
こちらで、道立図書館所蔵の雑誌を一通り確認してみたうえで、
道立図書館レファレンスサービスの方へお問い合わせいただくと調査しやすいかと思います。
目録には“欠号”という記載だけで、こまかな所蔵号数までは記載されていませんが、
おおよその所蔵雑誌名と年代くらいはわかります。
また、関西方面の方も、
NACSIS Webcat 総合目録データベースWWW検索サービス
にて検索してみますと、
奈良県立奈良図書館や神戸市立中央図書館
にもこの目録はあるような検索結果を見る事ができます。
その他の地方にお住まいの方は、すいませんが、私とて全国規模で情報を管理しているわけではありませんので、
御自分でお調べになられるか、或いは上記図書館にて調べてもらえるかもしれない友人知人に問い合わせしてみたらいかがでしょうか。
上記の図書館以外にも他の図書館…例えば国会図書館や神奈川近代文学館などにも、いかにもありそうな感じもしないこともないのですが、
道立図書館でざっと調べていただいたところでは、有るかどうかはわかりませんでした(笑)。
絶対に無いという話しではありませんでしたから、もしかしたらあるかもしれません。
よろしければ、御確認下さい。
もちろん、道立図書館レファレンスサービスの係の方がおっしゃるには、
「直接お問い合わせいただければ、お調べしますから、お気軽にお問い合わせ下さい」
と、おっしゃっておられましたが、やはり、あまり漠然とした問い合わせを直接するのであれば、
下調べくらいはして問い合わせても、いいのかもしれませんね。
なお、上記雑誌で私が確認してきたモノの道立図書館所蔵巻号リスト等に関しては、後日あらためてリスト化して公開できたらと考えております。
また、具体的に入手してきたモノについてのお問い合わせ等も直接いただけましたら
私に出来る限りのことはさせていただきます(笑)。
以上、取り急ぎの御案内でした。
佐七図覧に関しては、後日少しずつ資料を整理しながらアップしていきます。
なんといっても、あまりにも入手資料が多いもので…(笑)
2004年5月4日 襟裳屋