老子小話 VOL 996 (2019.12.14配信)

信人者、人未必尽誠、己則独誠矣。

(菜根譚)

 

人を信ずる者は、人未だに必ずしも

尽くは誠ならざるも、

己は則ち独り誠なり。

 

今回は、菜根譚から選びました。

人はまず、自分自身は誠実であれと

いう言葉です。

「人を信用する者は、人は必ずしも

皆が皆誠実とは限らないが、

少なくとも自分は誠実である。」

人間社会は、人を信用することから

始まるといっても過言ではない。

従って、一度信用を失うと再び信用を

取り戻すには、多大の時間を要する。

商売の取引で信用を失えば、お客は

二度と寄り付かない。

一対一の人間関係の場合、相手を信用

することは、相手を責任ある存在として

認めることを意味する。

例えば、相手を信用して、一年後に返済

するという約束のもとでお金を貸すとする。

ところが相手は一年後返済してくれない。

しかし大切なのは、自分が相手を信用し、

誠意をもって相手の相談に乗ったこと。

それが、「少なくとも自分は誠実だった」と

言える理由です。

相手も始めから返済できないと考えたわけ

ではなく、結果的に返済できるお金を準備

できなかった。

結果的に誠実でありえなかった。

誠実に相手のことを考えた時、お金を貸さない

選択肢もあり得ます。

相手からすれば、自分を信用しなかったから、

お金を貸してくれなかったと考えてしまう。

しかしその選択が相手を信用した上で採った

選択だったことを誠意をもって説明する。

このことが人間関係を深める上で大事なこと

だと、菜根譚は伝えているようです。

親子関係でも、まず子供を信用して自分の

誠を丁寧に相手に伝えないと、相手の誠は

なかなか育ちません。

 

有無相生

 

 

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