老子小話 VOL 994 (2019.11.30配信)

棺を蓋いて事定まる。

(「晋書」劉毅伝)

 

今回は、中国のことわざをお届けします。

日本は中国からはかり知れない文化的恩恵

を受けているのは言うまでもないこと。

「晋書」は今から1300年以上の唐の時代に

中国で編さんされた歴史書です。

人は死ねば棺に入れられ蓋をされる。

人は死んで評価が定まるという意味です。

言い返せば、人は死ぬまで評価は定まらない

ということです。

この言葉のもつ意味は非常に重いと考えます。

過去に華々しい経歴を持っていても、今をどう生き、

死ぬまでどう生きたかで、最終評価が決まる。

反対に、過ちで人を殺めたとしても、悔い改めて、

どう世のために働いたかで、最終評価が決まる。

かつて永山則夫という連続射殺事件を起こした男が

いた。育児放棄され、学校教育も受けず、逮捕時に

満足に読み書きできなかった。

刑務所の中で独学し字を覚え、自己の経歴を小説に

書き、死刑執行の直前まで死刑制度の重さを訴えた。

取り返しのつかない罪を犯しても、その罪を背負って、

どのように生きたかで、その人の評価は決まる。

自暴自棄で余生を送れば、時間を無駄に使ったこと

になる。

世の中のために何が自分にできるかを考えると、

その生き方は決まってくるように思える。

今回の言葉は、禅語を探していて見つけたもの。

「一大事とは、今日ただ今の心なり」

というのが、今回の言葉とセットになる禅語です。

今日という日をどう生きるか決める心が一大事です。

 

有無相生

 

 

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