老子小話 VOL 992 (2019.11.16配信)

自己をはこびて万法を修証するを迷とす、

万法すすみて自己を修証するはさとりなり。

(道元、「正法眼蔵」現成公案)

 

今回は、道元の言葉をお届けします。

道元は曹洞宗の開祖ですが、その教えは

宗教を超えた普遍的な哲学を語ります。

「自分の認識を頼りに道を理解しようと

するのは迷いである。

道の教えに従って自己を理解するのが

さとりである。」

NHK ETVの「こころの時代」で、サヘル・

ローズさんが、

「孤児院の子供たちを励ましに行くが、

いつも子供たちに励まされて帰ってくる」

と語っていました。

サヘルさんはイランで生まれ、故郷の村を

戦争で追われ、孤児院に預けられ、養母と

ともに日本に渡ってきました。

そんな自分の境遇をもとに、孤児たちに

何かを与えにいくけど、逆に子供たちから

優しさをいただいて戻ってくる。

子供たちにお年玉をあげても、もっと苦しい

友達のため使わずにとっておく。

厳しい環境下にいても、子供たちは優しさを

忘れない。

子供たちの反応を見ることで、忘れていた、

かつての自分を知ることになる。

万法というのは、この世を動かしている真理

のようなもの、老子で言えば道だと思います。

さとりは、お坊さんが座禅で得るというもの

じゃなく、身の回りの真理から自己の有りよう

を教えられることだと道元さんは語っている

ようです。

 

有無相生

 

 

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