老子小話 VOL 991 (2019.11.09配信)

危険な時。―

轢かれる危険が一番多いのは、

丁度車をよけた途端だ。

(ニーチェ、「人間的な、あまりに人間的な」)

 

今回は、ニーチェの言葉をお届けします。

交通安全の標語みたいです。

これは歩行者の場合ですが、車の運転でも、

直進車をよけて右折したら、横断歩道の

歩行者をはねてしまう場合にあたる。

一難去ってほっとした時、次の災難で

ひどい目に遇う。

ニーチェの時代の交通事情が今より

厳しくなかったにせよ、当時でもこんな

怖い場面をよく見かけたのでしょう。

この言葉の意味するところは、二つある

ように思えます。

危険というのは、一つずつ向こうから

やって来るのではなく、二つ三つ

同時にやって来る。

従って、状況を大局的に見ていないと

行動を誤るということ。

もう一つは心理的な側面で、危険を

脱したとき気が緩むため、次の危険に

気がつかないこと。

これは路上の集団スリや高齢者を狙う

詐欺で利用されます。

道で誰かにコーヒーを服にかけられる。

困っていたらハンカチを貸す人が現れる。

お礼を言っていたら、財布がない。

かける人、貸す人、盗る人が協力して

行うスリです。

最初の危機を救ってくれた人が、次の

危機を招く。

始めの危険は次の危険の導入口。

このような危険の連鎖への対応策は

何でしょうか?

自分の油断が自ら危険を招くという

自覚を持つことでしょうか。

 

有無相生

 

 

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