老子小話 VOL 983 (2019.09.14配信)

あなたがたは自分の量る秤で

量り与えられ、

更にたくさん与えられる。

(マルコによる福音書、第4章25節)

 

今回は、新約聖書から選びました。

この言葉は、宮下規久朗著の

「モチーフで読む美術史」(ちくま文庫)

の天秤の章で知りました。

フェルメールの絵にも出てくる天秤

ですが、この天秤は善悪を量る意味が

あり、最後の審判を暗示するそうです。

最後の審判で魂の計量を行い、

重い人は天国に、軽い人は地獄に落ちる。

それはさておき、今回の言葉は面白い。

自分の秤は何となく意味がわかります。

自分の価値観や人生観みたいなもので、

日々それに照らし合わせて判断を行い、

それに見合った結果を得る。

結果は、自分の秤次第で大きくなったり、

小さくなったりする。

わからないのは、「更にたくさん与えられる」

ところです。

「与えられる」ものが、富や恵みと考えると、

意味がわからなくなります。

しかし、「与えられる」ものを、神や自然の

教え(声)と考えると、少しわかってきます。

自分の秤を善悪とか好き嫌いとか二項対立的

な価値観に置かない。

自分を含む自然全体を運命共同体として捉え、

それに身を任せることで調和を図るという

創造主の秤を持てば、教えがもっと見えてくる。

キリストの言葉ですが、老荘思想に近づいて

きました。

天国と地獄という区別自体が二項対立です。

現実世界は、天国と地獄の共存状態で、

仏の中に鬼が居て、鬼の中に仏がいる。

そんな世界だから、生きる価値があるのでは。

 

有無相生

 

 

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