老子小話 VOL 981 (2019.08.31配信)

天は必ず人の相愛し相利するを欲して、

人の相悪み相賊うを欲せざるなり。

(墨子、法儀篇)

 

今回は、墨子から選びました。

政治の基準は何かと聞かれ、

天を手本にするのが一番よいと

答えた言葉です。

天は自然と置き換えてもよいと思います。

天の行為は、広く行きわたって公平で、

その恩恵は厚いが目立たない。

そして永遠に衰える事がない。

まさに老子の言う、天網恢恢です。

その天は、人間に何を望むのか?

天が人間に及ぼす恩恵を人間同士が

互いに及ぼしあえば、争いのない

平和が訪れるといいます。

「天は人々が互いに愛しあい、

利益を分かちあうことを希望し、

人々が憎みあい、傷つけあう

ことを希望しない。」

これは政治の基本どころか、

人間が生きていく上の基本だと思います。

平等に公平に扱うことで、信頼が生まれます。

兄弟や師弟において、えこひいきを行うと、

不信感と恨みを生み、争いの元になっていく。

相手に施した恩恵を目立たせ、恩着せがましく

すると、反発を招く。

恩恵は厚くても、気づかれないように

それとなく行うのが天のやり方です。

このように、天の当たり前の振る舞いが、

人間にはいかに難しいかがわかります。

それは何故でしょうか?

人間は、自分だけの力で生きていると

勘違いするからです。

自分の真の姿は、周りのひとの恩恵を頂き、

更に自然の恩恵を頂いて、初めて生きて

いける存在です。

墨子の言葉は理想論かもしれませんが、

自然から学べる、人生の基本であることに

間違いありません。

 

有無相生

 

 

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