老子小話 VOL 974 (2019.07.13配信)

記憶は消えてしまってもよい。

現在の瞬間の判断があやまらなければ。

(ゲーテ)

 

今回は、ドイツの文豪ゲーテの言葉です。

「ゲーテ格言集」(新潮文庫)で見つけました。

記憶を失いつつある高齢者を勇気づけると共に

生きることの意味を教えてくれます。

記憶というものは頭に保存されます。

道順の記憶を失うと散歩に出ても家に帰れなく

なります。

認知症になると迷子になるのはこのためです。

ですから、記憶というのは日常の判断には

欠かせません。

一方、記憶という判断材料が増えすぎると、

逆に判断に困ってしまうこともあります。

ネットに溢れる口コミは判断を迷わせるもとです。

ゲーテは、記憶に頼るなという。

生きることは、その瞬間の判断に基づいて選択し、

行動することだと教えます。

言ってみれば、地頭力に基づき行動することです。

ある人との間にいやな過去の記憶があっても、

それに引きずられて判断すると判断を誤る。

現在の瞬間における彼の発言に耳を傾け、

生きるべき道を選択していく。

老荘的に考えると、現在の瞬間の判断には、

大自然のルールというか掟が基準になる。

頭で判断するよりも、身体(肌)で感じとる。

本能を遺伝子に刻み込まれた先祖の記憶と

考えるなら、頭の記憶ではなく遺伝子の記憶

を大切にする。

人と人の関係にとどまらず、国と国の関係に

おいても、ゲーテの言葉は大きな意味を含んで

いますね。

 

有無相生

 

 

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