◆老子小話 VOL
970 (2019.06.15配信)
井蛙不可以語於海者。
拘於虚也。
(荘子、秋水篇第十七)
井蛙は以って海を語るべからざる者は、
虚になずめばなり。
今回は、荘子秋水篇よりお届けします。
「井戸の中の蛙に海の話をしても仕方がない。
それは、蛙は井戸が己の世界だと信じるから」
一言で言えば、「井の中の蛙大海を知らず」
となります。
小さな世界に住んでいると、小さな知しか
得られない。
それが大きな世界に出ると、これまで気が
つかなかった新たな発見をする。
「拘於虚也」は大切な言葉です。
虚とは自分の居場所で、拘は拘束の意です。
自分の居る所に拘束されるということです。
人間というのは、安定した場所を好むという
習性があります。
そこにとどまれば、現状維持はできる。
しかし、居続けると、そこが世界の全てだと
思ってしまう。
消費税率10%の問題も、年金2000万不足の
問題も狭い日本の問題です。
世界に目を拡げれば、スウェーデンのように、
消費税率25%で、所得の60%を税金と社会保障費
にあてる世界もあります。
そこでは、国民が老後の安定のために高負担する
ことに納得している。
当然ながら、軽減税率もうまく機能している。
一方日本では、国全体が井の中の蛙になって、
慌てふためいている。
日本の場合は、本来社会保障にあてるお金が貯金
などの個人資産として滞っている。
政府は中途半端な対応を採るので、国を井戸から
出せずにいる。
国の未来を安定にするには、高負担という関門に
国民が納得する事が先決となる。
お金を使わずに余暇を過ごす知恵をスウェーデン
国民は身に着けているそうです。
高負担も、生活を切り詰めて乗り切っている。
高齢化社会に合ったシステム作りをするには、
「拘於虚也」を自覚することだと思われます。
有無相生