老子小話 VOL 969 (2019.06.08配信)

愚かなる 心一つの 行く末を 

六つの道とや 人のふむらん

(道元)

 

今回は、道元の和歌をお届けします。

道元は禅宗の僧で、「正法眼蔵」という

難しい本を書きましたが、和歌のほうは、

道元さんの気持ちが伝わってきます。

ひとは皆愚かな心を抱えて、死ぬまで

六つの道を歩んでいく。

六つの道とは、天道、人間道、修羅道、

畜生道、餓鬼道、地獄道の六つです。

仏教の輪廻転生の教えによれば、

死んで生まれ変わるとき、

人間で生まれるか、虫けらで生まれるか、

はたまた地獄で生まれるかは、生前の

行い(業)で決まります。

でも道元は、生きていくことが既に、

六つの道のいずれかを歩んでいると

考えているようです。

あるときは、天人となり、あるときは

修羅になり、あるときは餓鬼になる。

言ってみれば、煩悩の程度により、

その都度、六つの道を行き来する。

生きているうちに、少しでも道の修正

を行うのが修行だという。

大事なのは、自分が愚かな心を抱えて

いるのを自覚することです。

高齢者による車の暴走事故が後を絶ちません。

ブレーキとアクセルを踏み違える。

その過ちを車という機械が増幅し、地獄を生む。

そういう危うい人間と自覚すれば、運転免許を

返還し、天道に向かえる。

一方、自覚せずまだ大丈夫と油断していると、

地獄道に自ずと向かっている。

煩悩により、正道を進めないのが普通の人間。

だから修行により、自分が何者か知ることが

必要になる。

身心脱落できていない自分を修正する道しか、

ひとはたどれません。

 

有無相生

 

 

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