老子小話 VOL 964 (2019.05.04配信)

天下莫柔弱於水。

而攻堅強者、莫之能勝。

以其無以易之。

(老子、第七十八章)

 

天下水より柔弱なるは莫し。

而も堅強を攻むる者、

これに能く勝る莫し。

その以ってこれを易うるもの

無きを以ってなり。

 

いよいよ令和の世になりました。

10連休中ずっと家にいて、退位の礼と

即位の礼をTVで見ていました。

安堵と希望をもって皇位の承継の儀を行え、

しかも、参列者の衣装も黒に染まらず、

明るい色も交じり、光に満ちていました。

生前退位というのは、時代のバトンタッチ

を笑顔で行える点でいいなと思いました。

新天皇のご専門は、「水」問題ということで、

令和初の言葉は、再び老子から選びました。

「この世に水よりも柔らかく弱々しいものはない。

しかも堅強なものを攻撃するとき、水に勝るもの

はない。

何者もその性質を変えられないからである。」

ろう城した敵を負かすには、秀吉が高松城で

用いた水攻めが一番です。

水で城を包囲すれば、補給路は完全に閉ざされる。

戦闘で血を流すことなく落城に導ける。

人が溺れるのも、水が酸素の補給路を絶つからです。

一方、樹木が成長するのは、水の毛管現象のお陰で、

枝葉のどんな所へも形を変えて入り込み、養分を

届けてくれるからです。

人体の中の体液もまた同じで、末端細胞に酸素と

栄養分を届け、老廃物を回収します。

このように水は、目に見えないところで生命を

支えている。

新天皇の「水」へのご関心も、生命維持という

水の働きを守っていく使命感に基づくものと

思われます。

令和の世は、ひとびとが水のように生きれば、

結果として平和が訪れると、老子の言葉は

語っているようです。

 

有無相生

 

 

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