老子小話 VOL 963 (2019.04.27配信)

大成若缺、其用不弊。

大盈若沖、其用不窮。

(老子、第四十五章)

 

大成は欠くるが若く、

其の用は弊れず。

大盈は沖しきが若く、

其の用は窮まらず。

 

いよいよ平成最後のメルマガとなりました。

今回も老子で平成最後を締めくくりたいと

思います。

「本当に完全なものは、どこか欠けている

ようであるが、その働きは衰えない。

本当に満ち足りたものは、どこか空っぽの

ようであるが、その働きは尽きない。」

平成は、戦争のない時代でありましたが、

雲仙岳噴火や阪神淡路震災や東日本大震災

など、自然災害が多い時代でした。

地下鉄サリン事件や福島原発事故という

人災も起き、最後は高齢者の自動車事故

で終わろうとしています。

洪水・地震・噴火という自然の変化は

大昔から繰り返されていますが、人間が

どこに住むかによって、災害に変わるかが

決まります。

そこで人間は、技術の進歩により、堤防を築き、

センサーを配備して地震予知し、放射能漏れを

防ぐ安全装置を生み出し、最小限の災害に止め

ようとします。

いわば平成という時代は、技術を過信した

人間がそれに裏切られた時代ともいえます。

一言で言うと、「思い上がり」の時代です。

論語には、50歳で天命を知り、60でどんな

ことが耳に聞こえても動揺せず、70で道徳

規範から外れる行動はしないという言葉が

あります。

しかし、高齢になっても、動揺し、道徳を

外れ、思い上がりが直らない時代になった。

人間が生み出したものに完全なものはない。

老子の言葉にいう、完全で満ち足りたもの

は自然のことをいいます。

自然は、太陽の光や水を絶えず人間に施し、

それにより新緑が育ち、農作物が収穫できる。

ただ、時としてその程度を間違えて、自然は

日照や洪水を引き起こすという欠けた所がある。

一方宇宙は、僅かな星が点在する暗黒の空間で、

空っぽのように見えますが、中は暗黒物質で

満たされて、地球の運行を陰で支えている。

平成という時代の反省を踏まえ、令和の時代は、

技術もあえて完全なものを作らず、抜けた所を

組み込んでおく視点が求められます。

AIという人工知能も、学習結果をプログラム

するのではなく、学習プロセスをプログラム

するので、抜けた所を組み込んでいるようです。

老子の言葉も、何とか平成を総括し、令和に

つながる視点を提供できたようです。

 

有無相生

 

 

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